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宇都宮の女子オールスター競輪から1週間待たずに、筆者は日本最北端の競輪場へ。新幹線に乗って青函トンネルをくぐり、一路函館。8月16日(土)、17日(日)とオールスター競輪の取材に訪れた。準決勝があった土曜は快晴。決勝開催日の日曜は、午前10時頃から雨が降り続き、13時過ぎには土砂降りとなったものの、14時過ぎにはくもり空に。第1レースが始まる前には、バンクの路面も乾き出していた。

日本最北端の競輪場、函館 photo: Yuichiro Hosoda

本場へのアクセスは、JR函館駅から無料送迎バスである「りんりんバス」に乗ると約20分。または路面電車に乗って函館駅前から深堀町まで行き、道を歩いて南下すると15〜20分程で本場に着く。全体で50分ほどかかるが、路面電車の情緒を味わうなら、こちらのルートもお勧めだ。

函館のバンク周長は400mで、カント30゜36´51”。スタンダードなバンクだが、フィニッシュラインまでの見なし直線は51.3mとなっており、全国平均より5m以上短い。1センター側が海岸寄りのため、海風によりホームストレッチは向かい風になりがちだ。バンク内側は降雪のある12〜2月の間、函館市民スケート場として利用されているそうで、雪国らしい特徴も持ち合わせている。

函館駅前は、オールスター競輪ののぼり旗が入口付近まで続いていた photo: Yuichiro Hosoda
函館競輪場のメインエントランス photo: Yuichiro Hosoda


1コーナーの向こうには海が見える photo: Yuichiro Hosoda
メインスタンド2階、一般観覧席からレースを見る photo: Yuichiro Hosoda


カレーは飲み物! ウニにアワビのオールスター丼も

北の大地のオールスター、グルメも魅力的。土曜の取材をマッタリと過ごしておきながら、日曜はグルメ三昧。手始めにメインスタンド2階にあるフードコートへ。通常開催時は閉鎖されている事もあるそうだが、やはりこの開催は特別。オープンした上に、元競輪選手の堂田将治さん(元44期、北海道)が「堂田劇場」と称して特製ラーメンとスパイスカレーを提供していた。

私は「ミルク代わりにカレーを飲んで育った」と言う入口ポスターに書かれた堂田さんのフレコミに惹かれ、スパイスカレーを注文。やあ、これは……美味しい!濃厚でコクのある、オリジナリティ溢れる味わい。窓ごしに第1レースを眺めながら、取材であることをすっかり忘れ、ゆっくり完食。ごちそうさまでした。

メインスタンド2階にあるフードコート。この日は堂田劇場としてオープン photo: Yuichiro Hosoda
フードコート入口のフレコミ「人生3周目 ミルク代わりにカレーを飲んで育った男が放つ堂田劇場!」 photo: Yuichiro Hosoda


元競輪選手の堂田将治さん(元44期、北海道)。普段は札幌で焼肉屋「炭王」を営む photo: Yuichiro Hosoda
ノンビリと堂田さん特製のスパイスカレーを食べながらレース観戦 photo: Yuichiro Hosoda


カレーを頂いた後は、北海の幸を食すべく、屋台立ち並ぶ広場へ。カレーは飲み物、主食はこれからだ!こちらでは当開催特別価格の特別メニュー、限定100食のオールスター丼が、なんと1000円!早速行列に並んで購入に成功。酢飯に載った具は、ウニ、アワビ、カニ、etc…とまさに海のオールスター。新鮮さも間違いなしで、大満足。「今日は何しに来たんだっけ?」としばし問うた後、本来の仕事を思い出し、ようやく場内の撮影に繰り出した。もう日が暮れるよ!

「四季料理 旬花」により、1日100食限定で販売されていたオールスター丼 photo: Yuichiro Hosoda
ウニ、アワビ、カニ、イクラ…豪華なオールスター丼 photo: Yuichiro Hosoda


北海道独自の競馬「ばんえい競馬」。ばん馬の等身大バルーンドールを飾ってPR photo: Yuichiro Hosoda
屋外ステージでは函館躍魂いさり火によるよさこいなど、様々な催しが行われていた photo: Yuichiro Hosoda


競輪選手養成所のブースで入所試験を体験。皆さん本気でペダルを踏み込んでいた photo: Yuichiro Hosoda
コミュニティーロビーでは、選手サイン入りグッズ等のチャリティーオークションを実施 photo: Yuichiro Hosoda


薄暮に映えるバンク photo: Yuichiro Hosoda

オールスター競輪の光るうちわ photo: Yuichiro Hosoda
北側サブエントランスのイルミネーションも美しく光る photo: Yuichiro Hosoda


夜の帳がバンクに下り始める photo: Yuichiro Hosoda

寺崎浩平が歓喜のグレードレース初優勝 オールスター競輪[GI]決勝

昼間のうちに天候が回復し、雲間から星が見えるほどになった函館。ナイター競輪発祥の地・函館での初GI・オールスター競輪の決勝に向け、選手達が発走機に向かう。

福井から2人、大阪から2人を決勝に送り込んだ近畿勢は4車結束。9番車・脇本雄太(福井)、7番車・寺崎浩平(福井)、1番車・古性優作(大阪)、4番車・南修二(大阪)と並び、盤石の態勢を築いた。その近畿の中でも優勝候補と目されたのは寺崎。強烈な先行力を誇る脇本の番手に入り、後ろには横の動きにも強い古性と南が控えたことで、GI初優勝はここと推された。

中国は2番車・太田海也(岡山)と8番車・岩津裕介(岡山)の岡山コンビ。こちらもGI初優勝を狙う太田が人気上位に。岩津は2016年オールスター競輪覇者でもある。対する関東は茨城の2人、今年のダービー王、吉田拓矢(茨城)が3番車、初のGI優出となった佐藤礼文(茨城)が6番車。四国からはただ一人決勝に駒を進めた松本貴治(愛媛)が単騎で5番車に収まった。

敢闘門から選手が入場してくる photo: Yuichiro Hosoda
出走表
車番 選手名 期別 級班
1 古性優作(大阪) 100期 SS
2 太田海也(岡山) 121期 S1
3 吉田拓矢(茨城) 107期 S1
4 南修二(大阪) 88期 S1
5 松本貴治(愛媛) 111期 S1
6 佐藤礼文(茨城) 115期 S2
7 寺崎浩平(福井) 117期 S1
8 岩津裕介(岡山) 87期 S1
9 脇本雄太(福井) 94期 SS
発走すると、古性が先頭を奪うべく、最内から飛び出していく。それに並びかけて行った6番車の佐藤だが、内枠の利を活かして、古性が先頭に出る。後ろではこの2人を追いながら同県の南が、5番車・松本の動きを防ぎつつ、3番手を取った。

南は近畿ラインを形成すべく外から前進し、バックストレッチへ入ってから古性の後ろに。後方からはゆっくりと脇本と寺崎の福井コンビが上がっていく。2周目に入って1コーナーへと差し掛かる頃には、古性がこの2人を前に受け入れて、4車による近畿ラインが完成。その後ろに吉田、佐藤の茨城勢、単騎の松本、岡山の太田と岩津が続いた。

発走直後、南修二(大阪)が松本貴治(愛媛)の進出をブロックしていく photo: Yuichiro Hosoda
並んで前を狙っていく佐藤礼文(茨城)と古性優作(大阪) photo: Yuichiro Hosoda


脇本雄太(福井)と寺崎浩平(福井)が連れ立って前へと上がっていく photo: Yuichiro Hosoda
1周目を終える頃、脇本雄太(福井)と寺崎浩平(福井)が先頭に入る photo: Yuichiro Hosoda


脇本、寺崎、古性、南、吉田、佐藤、松本、太田、岩津の並びで周回を重ねる photo: Yuichiro Hosoda

3周目に入ると最後方の岡山勢が動く。太田が岩津を連れて1-2コーナーで外に大きく持ち出した後、前へと進出していく。3-4コーナーにかけて近畿勢がこの動きを牽制すると、隊列全体が先頭員の位置から外れてイエローライン付近で展開する。

そして、残り2周回の決勝線を過ぎてすぐに先頭員が離れると、外から太田が先頭を行く脇本の横へと上がる。しかし脇本が突っ張ってこれを譲らず。太田は1センター付近で直後の寺崎にもかわされると、古性、南、松本にも抜かれていく。その煽りで岩津も大きく後退し、岡山勢は分断を喫する。

最後方の岡山勢2人が外にバイクを振り、前を伺う photo: Yuichiro Hosoda
外から来た太田海也(岡山)と岩津裕介(岡山)を、脇本雄太(福井)らの近畿勢が牽制し、隊列が外へ膨らむ photo: Yuichiro Hosoda


残り2周回に入って先頭誘導員が離れ、脇本雄太(福井)と太田海也(岡山)が前を競っていく photo: Yuichiro Hosoda
近畿勢に阻まれ、太田海也(岡山)は一気に8番手まで後退 photo: Yuichiro Hosoda


バックストレッチで独走力に勝る脇本が先頭のまま加速していくと、レースは完全に近畿4車の支配下に置かれ、最終周回へ。2コーナーまでこのまま推移していく。

ここで仕掛けたのは6番手に位置していた吉田。バックへの立ち上がりから、直線で松本を抜き、南のやや前まで捲り上げる。しかし、3コーナー入口で脇本が退いて寺崎が先頭に立つ。寺崎が速度を緩める事なく踏み続けると、吉田の追撃もこれまで。直線に入っても近畿の連携を崩す者は現れず、そのまま寺崎が先頭で押し切り、デビューから5年半、6度目のGI決勝で、ついにビッグタイトルを手中に収めた。

脇本雄太(福井)が大歓声を浴びながら、先頭で最終周回へ。後ろも続く近畿3車がしっかり固める photo: Yuichiro Hosoda

脇本雄太(福井)が後退し、その番手に着いていた寺崎浩平(福井)が前へ進出 photo: Yuichiro Hosoda
吉田拓矢(茨城)が外から南修二(大阪)を捲りかける photo: Yuichiro Hosoda


トップスピードを維持した寺崎浩平(福井)を先頭に、古性優作(大阪)と南修二(大阪)の近畿勢が内を固めて4コーナーへ photo: Yuichiro Hosoda
寺崎浩平(福井)が先頭のまま最後の直線に入る photo: Yuichiro Hosoda


脇本雄太(福井)の後ろから番手捲りを決めた寺崎浩平(福井)がGI初優勝を飾った photo: Yuichiro Hosoda

この時の様子を「あとは縦に踏むだけでした。前に出切ってからはゴールまで長く感じた」と寺崎は振り返る。近畿勢は2着に古性、3着南と続き、確定板も独占。表彰式で観客達の祝福の声に包まれた寺崎、今回は近畿勢の結束力にも助けられた形だが、それは、これまでその先頭で走り続けた寺崎への信頼が生んだものだ。

「脇本さんに番手を回れと言って頂いて、しっかりとそのチャンスをモノに出来て良かった。これが最初で最後のチャンスだと思って臨んだ」と話し、「次は自分の力でしっかりタイトルを取れるように頑張ります」と力強くインタビューを締めた。

健闘を称え合う寺崎浩平(福井)と脇本雄太(福井) photo: Yuichiro Hosoda

寺崎浩平(福井)が、大会アンバサダーの松岡昌宏さんと笑顔で記念撮影を行う photo: Yuichiro Hosoda
経済産業大臣旗を掲げる寺崎浩平(福井) photo: Yuichiro Hosoda


表彰式の後まで残っていた選手達に胴上げされる寺崎浩平(福井)。アマ時代に福井のバルバレーシングに所属し、ロードレースでも活躍した寺崎が、競輪のビッグレースの頂点に立った photo: Yuichiro Hosoda
オールスター競輪[GI] 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 7 寺崎浩平(福井) S1 11.3秒
2着 1 古性優作(大阪) SS 1車輪 11.3秒
3着 4 南修二(大阪) S1 1/2車身 11.1秒
4着 5 松本貴治(愛媛) S1 1車輪 11.0秒
5着 3 吉田拓矢(茨城) S1 1車身1/2 11.4秒
6着 6 佐藤礼文(茨城) S2 1/2車身 11.2秒
7着 2 太田海也(岡山) S1 3/4車身 11.3秒
8着 8 岩津裕介(岡山) S1 6車身 11.5秒
9着 9 脇本雄太(福井) SS 7車身 13.0秒

あなたの自転車見せてください 〜2023マスターズ世界王者・皿屋豊編〜

第13回目の当企画、今回は若き社会人レーサーのモデルケースにもなりそうな方、皿屋豊選手(111期、三重)に自身のバイクを紹介頂いた。

皿屋選手は高校卒業後に市役所職員として長年務めた後、33歳で競輪選手に。現在までイナーメ信濃山形に所属し、アマチュア時代はシマノ鈴鹿ロードレース2013の5ステージ・スズカで総合優勝、JBCF全日本トラックチャンピオンシップ2015の男子ケイリンで優勝するなど、ロードとトラックの両輪で活躍した社会人トップレーサーだった。

アマチュア時代からシクロワイアードの読者でもある皿屋選手、バイクとの撮影をお願いすると、しゃがんで弊誌おなじみのポーズを取ってくださった photo: Yuichiro Hosoda

競輪選手となった後には、UCIマスターズ世界選手権2023の40~44歳カテゴリーの750mTTで優勝(スプリントでも銀メダル)。今回はその時のアルカンシェルジャージを着てご登場頂いた。

フレームはトップチューブが570mmと長めのブリヂストン。身長167cmの皿屋選手には大きく映るが、これは空力や直進性を意識した結果。ビルダー選定にあたっては、安定供給が望める点を重視したとのこと。

これまで見た競輪選手のフレームの中でも独特のカラーリングは、カーレース好きな皿屋選手ならではのもの。「アメリカのオイルメーカーであるガルフ石油がスポンサードしている車のカラーが好きで、再現してもらっています」

ガルフカラーで統一されたブリヂストンのフレーム photo: Yuichiro Hosoda

トップチューブからヘッドチューブへと繋がっているレーシングストライプ photo: Yuichiro Hosoda
クラウン形状が特徴的なコロンバスのマックスフォーク。重さを伴うが、軽さよりも「加速時にしっかり力が伝わるように」と、剛性があるこちらをチョイス photo: Yuichiro Hosoda


フレームパイプはタンゲ プレステージ。こちらも剛性重視。デビュー当時よりも硬めの素材セレクトになっていると言う photo: Yuichiro Hosoda
大きな穴開き形状のセッレイタリアSLR SUPERFLOW photo: Yuichiro Hosoda


サドルはセッレイタリアSLR SUPERFLOW。数年前から選べるようになったと言うこのサドル。「ロード出身なので、使いやすく、馴染みのあるものを」と、選定理由を教えてくれた。

ハンドルは340mmと規定の中で最も狭い幅をチョイス。装着されているグリップがよく見るソーヨー製ではないため尋ねてみると、「最近出たばかりのイオミックです。これがフィット感、グリップ力が強くて滑らないので、ここ半年くらい愛用してます」

ハンドル幅は340mm、ステムは110mm photo: Yuichiro Hosoda
ゴルフ用品メーカーIOMICが開発したiX-B TRACK GRIP。独自素材IOMAXを用いて高い耐久性とグリップ力を生み出す photo: Yuichiro Hosoda


165mmのクランクに51Tのチェーンリングを奢る photo: Yuichiro Hosoda

ギアは「55Tはトルク感がなくなり、47Tは逆に重たく感じた」とのことで、バランスや使いやすさから51✕13Tの組み合わせで倍数3.92に。「回転の効率を考えれば、短ければ短いほど良いので」とクランク長は165mm。

スポークはフロントのみ結線と男子選手によく見られるセッティングだが、よく見るとハブも前後違う。前はラージフランジ、後ろはスモールフランジだ。

フロントは、ラージフランジのHB-7600。スポークは結線されている photo: Yuichiro Hosoda
リアハブはスモールフランジ。コグは13T photo: Yuichiro Hosoda


「後輪はこの方が剛性が出ると聞いて。実際やはり縦剛性はスモールの方が強く感じます。よくスモールの方がスポークが長く見られるんですが、ラージと同じ長さなんです。スモールの方が角度が深く長くかかっているんで、その分タテが強くなる……らしいです(笑)」と解説してくれた。

皿屋選手と私は初対面であったにもかかわらず、取材後にはシクロワイアードでご活躍頂いた故・高木秀彰カメラマンを懐かしむなど、共通の話題を通じて昔話にも花が咲いた。そしてなんと、今年のシマノ鈴鹿ロードレースに参戦するそう。ブルー&グリーンのイナーメジャージを着た皿屋選手が久しぶりに見られそうだ。皿屋選手、レース直後に長い時間ご対応くださり、ありがとうございました。

イナーメ信濃山形のロゴが入った皿屋豊選手(三重)のアルカンシェル。共通の記憶を繋げてくれた photo: Yuichiro Hosoda

JKA協賛プレゼントキャンペーン第14弾
オールスター競輪 優勝選手サイン入りクオカード

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サインを書き入れたクオカードを持ち、撮影に応じてくれた寺崎浩平選手(福井) photo: Yuichiro Hosoda

応募締切:2025年9月1日(月)

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提供:公益財団法人 JKA text&photo: Yuichiro Hosoda