ベルギーに拠点を構えるリドレーの新型フラッグシップレーサー、FALCN RSをインプレッション。軽量性、エアロ、剛性というレースに求められる全ての要素を高次元でバランスさせたピュアレーサーの真価を問う。



リドレー FALCN RS

ベルギーの名門と名高いリドレーが、エアロロードのNoah Fastと並ぶレーシングバイクとして用意するのがFALCN RS。軽量モデルとして君臨してきたHeliumシリーズに代わる新たなコンセプトのバイクとして、ウノエックス・モビリティの選手らが駆るピュアレーサーだ。

FALCN RSに求められたのは、軽量でありながら一定のエアロ性能を確保したオールラウンダーであること。リドレーがLAB(Lightweight Aero Bike)プロジェクトとして、次世代の主力機たらんと開発した一台が目指したのは、勝負どころとなりやすい上り坂でアドバンテージとなる軽さ、そして、その後に訪れるダウンヒルやスプリントで重要性を増すエアロダイナミクスと剛性、その全てを妥協なく高いレベルで実現すること。

リアセクションもエアロを意識したチューブ形状とされている
キャリパー取り付け部もオフセットされ、エアロ性能に寄与する形状に
エアロを意識した形状のフロントフォーク



わかりやすく表現すれば、Heliumよりもエアロで、Noah Fastよりも軽量なバイク。そんな夢のような一台を実現するために、リドレーはジオメトリーからチューブ形状に至るまで、全てをフルスクラッチで設計している。フォークブレードは翼断面、ダウンチューブはカムテールというように様々なプロファイルを適材適所に配置し、一見空力に影響の少なそうなトップチューブも扁平させることで横風の影響を抑える徹底ぶり。ケーブルを完全に内装するF-Stearも採用されている。

数あるエアロな造作の中でも、特筆すべきはフォーククラウン部分。徹底したCFD解析、そしてフランダースバイクバレーの風洞実験の結果、リドレーは風が真っ先に当たるフロントセクションの気流を整えるために、レーシングカーで用いられるディフューザーという概念を取り入れることに。

すっきりとした形状のトップチューブ
フォルツァのNimbus Pro Integrated Cockpitを採用


D型コラムを採用するF-Steererテクノロジーを採用
ヘッドチューブは後方に綺麗な気流を流すような設計とされている



フォーククラウン部の間口を広くとりつつダウンチューブ側を薄くつくることで、フォークブレード内側に入り込んだ風がスムーズに流れるようになり、フォークからダウンチューブにかけてのエアロダイナミクスを改善。ディフューザーなしのフォークより時速50kmで走行時10%の空気抵抗削減を達成したとリドレーは言う。

更に、ジオメトリー面ではトッププロたちから集めた意見を反映し、よりレーシングなスペックに。短いヘッドチューブと低重心となるよう拡大したBB下り、低めのスタック、長いリーチ設計によってアグレッシブな前傾姿勢を取れるようになっている。一方で、チェーンステーを長めにすることでスタビリティを確保し、荒れたパヴェや下りでも攻められる安定感を確保した。

ボトルケージは上下から位置を選択可能
ボリューミーなカムテールデザインのダウンチューブ



フレーム素材としては、高品質な60T/40T HM UDカーボンを使用することで、フレーム重量は816g(Sサイズ)、フォークは380gと非常に軽量に。先進的なエアロ性能を確保しつつ、クライミングバイクとして胸を張れる軽量性を兼ね備えている。

推奨されるタイヤクリアランスは現在のレースシーンでのトレンドど真ん中の28mm。一方で、最大34mmまで装着できる余裕が持たせられているのは、全車石畳で走行テストを行うというアイデンティティを持つリドレーらしさ。荒れた路面でも高い快適性とトラクション、そしてコントロールを発揮できるワイドタイヤを想定しているのは一台でなんでもこなしたいホビーライダーにも嬉しいスペックだ。

フォーククラウン部分からダウンチューブへ気流を誘導するディフューザーデザイン
BB付近がカットアウトされたエアロ感溢れるデザイン
オリジナル形状のエアロシートピラーを採用



リアディレイラーハンガーはスラムが提唱するUDH(ユニバーサルディレイラーハンガー)が採用される。フロントは取り外し可能でフロントシングルで運用しても、クリーンなルックスで組み上げられるのも嬉しい点だ。

販売パッケージはミズタニ自転車のバイククラフト(フレームセット+コンポーネント)とフレームセット。バイククラフトではDURA-ACE DI2、ULTEGRA DI2、105 DI2の三種類から選ぶことができる。

リドレーの総力を結集したオールラウンドパフォーマンスバイクのFALCN RS。ブランドの現在地を示す一台を、なるしまフレンドの小畑郁と、シクロワイアード編集部の高木三千成がインプレッション。



ーインプレッション

「プロ供給モデルらしい剛性感に優れたオールラウンダー」小畑郁(なるしまフレンド)

「プロ供給モデルらしい剛性感に優れたオールラウンダー」小畑郁(なるしまフレンド)

一踏み目からレーシングバイク。トッププロに供給しているというのが、乗っただけでもわかるような剛性感が印象的な一台ですね。

良いカーボンを使ったパリッとした踏み味で、良い意味で昔から変わらないレーシングバイクらしいフィーリングです。とにかく軽く足を置いただけで進むような反応性が光りますね。

軽量バイクではありますが、ヘッド周りとフォークのボリュームがあるからか、スプリントでもがいても腰砕けになるようなところはありません。

「このレベルの剛性があっても乗り心地は不快ではない」小畑郁(なるしまフレンド)

ただ、決して踏み切れないようなレベルではなく、軽く回していくもよし、ギアを掛けてダンシングで進んでいくのもスムーズです。特にダンシングでは、車体がコンパクトにまとまっているような感覚で、自分の重心の中でバイクが収まっているような扱いやすさを感じました。

ローハイトの軽量ホイールを入れれば、もっとヒルクライムバイクらしい乗り味になると思いますし、ディープリムを入れれば高速巡航が得意になるでしょう。それはフレームの剛性がしっかりしていて、なおかつ変なクセが無いからこそホイールの性格を引き出せるという意味でもあります。

とはいえ、今の自分ではちょっと硬すぎるかな、という印象はありました。個人的にはもう少ししなってくれた方が登りでのダンシングなども楽かもしれませんね。

「良いカーボンを使ったパリッとした踏み味が印象に残る」小畑郁(なるしまフレンド)

一方で、このレベルの剛性があっても乗り心地が不快ではないのは、現代のレーシングバイクらしいところですね。ディスクブレーキとワイドタイヤのおかげで、トータルでの快適性はしっかり担保されています。このレベルの剛性感のバイクを23Cのリムブレーキロードで作ったら、多分かなり身体にダメージが来ると思います(笑)。

非常に剛性感に溢れたバイクなので、レーサーによっても好みが分かれる一台だと思いますね。実際、今のハイエンドバイクはこういった剛性高めのパリッとしたモデルと、もう少ししなやかで脚当たりのいいモデルの2つに分かれているのですが、どちらを選ぶかは乗り手の脚質やパワー次第。

リドレーはベルギーブランドということもあり、体格が大きなパワーライダーが開発におけるターゲットとして大きいのではないでしょうか。そんな想像がつくのも、面白いですよね。

「レースシーンにおいて万能な一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「踏んだら踏んだだけ、余さず前へと進んでくれる反応性がとても気持ちよい」高木三千成(シクロワイアード編集部)

これはもうわかりやすくレーサー向けのバイクですね。それもかなりハイレベルなレーサーを想定している一台だと思います。

具体的に言えば、硬い。踏んだら踏んだだけ、余さず前へと進んでくれる反応性がとても気持ちよくて、加速の鋭さは最高峰です。仕掛けるにもいいですし、誰かのアタックに反応するのもこのバイクであれば自分の反応が遅れてもカバーしてくれそうなくらいの俊敏さがあります。

一方で、乗りこなすためには相当な脚力が必要ですね。もちろんチョイ乗りであればビギナーでも大丈夫ですが、本格的に乗るのであればしっかりと踏み切れるだけのパワーが無いとかなり脚に来ます。

「レースシーンにおいて万能な一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)

以前、ミドルグレードも乗りましたが、ここは大きく違うポイントですね。ミドルグレードは万人受けする乗り味でしたが、このRSはもっとシリアスなライダーだけにフォーカスを当てて調整されているように感じました。

とはいえ、どこかが突出して硬いというわけではなくて、全体的な剛性バランスは非常に優れているので、踏み方を問うような感覚は無かったですね。回転型でもトルク型でも、しっかりと前に進んでくれます。ただ要求出力は高い、という。

この軽さと剛性感で登りはかなり軽快ですし、平坦もかなりハイスピードで走れます。エアロ形状もしっかりと効果があるようで、高速域でも明らかにラクにスピードをキープできますね。

「。エアロ形状もしっかりと効果があるようで、高速域でも明らかにラクにスピードをキープ可能」高木三千成(シクロワイアード編集部)

一点、コックピットの存在感はかなり強めです。かなり剛性が高くて、ダンシングでこじってもビクともしない。薄いエアロプロファイルですが、しなり感はほぼゼロ。下ハンでは多少感じられますが、ブラケットポジションでは一ミリも変形しているようには感じられませんでした。

一方で、D型のシートピラーはかなりしなやかです。リアバックの硬さの割りには体への突き上げが少ないのは、このピラーが良い働きをしてくれているのでしょう。

剛性感溢れるバイクですので、ホイールは少ししなるモデルが良いでしょう。ローハイトでスポークが長めのホイールを組み合わせて、少しタメを作ってあげれば乗りやすさがアップすると思いますね。

ヒルクライムでも良いですし、起伏の激しいロードレースや加減速が多いクリテでも活躍してくれるでしょう。サーキットエンデューロでも、勝利を狙う人には武器になると思います。まさに、レースシーンにおいて万能な一台ですね。

リドレー FALCN RS
フレーム:Elite カーボン
フレーム重量:792g(XXS) / 806g(XS) / 816g(S) / 826g(M)
フォーク:フルカーボン
フォーク重量:380g (コラム⻑300mm)
ハンドル/ステム:Forza Nimbus Pro Integrated Cockpit
ヘッドセット:1-1/8 - 1-1/2 (IS42/28.6 45x45° - IS52/40 45x45°)
シートポスト:Forza Aero D-Shaped Seat Post (6mm offset)
最大タイヤ幅:34mm(700c) ※実測
サイズ:XXS / XS / S / M
価格:770,000円(税込、フレームセット)



インプレッションライダープロフィール

小畑郁(なるしまフレンド)
小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。

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高木三千成(シクロワイアード編集部)
高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。



text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto AYANO、Naoki Yasuoka
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