2024/06/27(木) - 17:50
パールカップから中2日空けて再び訪れた岸和田競輪場。6月16日は1週間ほど前までは雨予報で、いよいよ梅雨らしい雨のレースになるかと思いきや、今回も見事な晴天。そんな状況も手伝ってか、高松宮記念杯競輪と言うビッグレースをこの目で見ようと、朝から多くの人達が行き交い、場内を賑わせていた。
この日は外の児童公園に、大きなハローキティふわふわが登場、サーカス団の「クロワッサンサーカス」もやって来て、玉乗りやジャグリングなどのパフォーマンスを披露し、子どもたちの元気な声が聞かれた。また、西入場門の入口付近では地元・春木の皆さんが、地元の競輪開催を盛り上げようと岸和田の祭囃子を実演。ここにも多くの人だかりが出来た。
場内を歩いていると、「選手全力応援団」と書かれたハッピを着た2人の男性が、子どもたちに「岸和田」とプリントされたハリセンを配っていた。聞けば、主催者公認で、全国の競輪場を周りながら、競輪や選手を応援することの楽しさを知ってもらおうと活動しているのだとか。ハリセンの配布のみならずスタンドへの呼びかけや個別の声掛けをするなど、積極的に観客の人達と交流しており、その熱意が伝わってきた。
岸和田競輪オアシスショップと言うコンビニに近い形態の店舗もその西スタンドへ向かう途中にある。食事はキッチンカーやレストラン、ここで買えるお弁当やその他惣菜が中心となる。
13日、窓に掲示された「牛丼はじめました。」の文字に惹かれてオアシスショップの中に入って店内の撮影を試みていると、「写真撮って〜」と後ろにあるテーブル席から子連れのお姉さん方が話しかけてきた。「もちろん」と快く引き受けつつ「今日はどこから?」と尋ねると、「地元の春木だよ。競輪よく知らないけど、来てみたら人いっぱい居て驚いた〜」と楽しげに話してくれた。ものはついでと他の方にも話を聞いたのだが、「今年のGI全部回ってるよ」と言う競輪愛溢れる人がいつつも、場所柄もあってか土日開催ともなれば、ここへ来ると言う地元の方が何人かいらした。
西スタンドの下にあるガイダンスコーナー「K-SPOT」には、岸和田競輪の歴史を綴った年表や写真とともに、地元の名選手、井上薫さんのピストバイクや獲得トロフィーなどが飾られており、機材好きの方にもお勧めしたい。
メインスタンドは有料の特別観覧席のため、直線走路側から無料観戦したい場合はその前、バンクのフェンス際での立ち見が主になるが、1コーナーにある西スタンドと、4コーナーにある東スタンドは無料だ。どちらも眼下にレースを観ることが出来、屋根もあるので雨の日も安心だ。ただし人気の度合いで言うと、やはりスタートとゴールを正面気味に観ることが可能な西スタンドがやや優勢。オーロラビジョンも3コーナーのセンターにあり、東スタンドはその死角になる。
とは言え、昨今はスマートフォンでレースのライブ映像視聴や車券購入まで出来るため、あえて東スタンドに行き、生でしか見られない角度を味わうのも一興。駅から線路沿いに歩くだけでアクセス出来る東入場門から、入ってすぐの位置にあることも利点だ。
号砲が鳴ると、序盤の先頭を取ったのは郡司。その後ろに、初めて郡司の番手を任されたと言う北井がついて2番手。和田も3番手を取り、互いに気心の知れた神奈川県勢の南関東ラインが前方をキープ。そこから新山、桑原、小林と続き、近畿勢は脇本、古性、南の順で後方からのレースとなった。
先頭員が離れると同時に一気に加速したのは郡司浩平。北井と和田がこの引きに呼応して食らいついていく。脇本が引く近畿勢や他の3選手が郡司の猛烈な引きに追いつけぬまま最終周回へ入ると、その後を受けた北井と和田が、1-2コーナーで徐々に進出していく。バックストレッチに入ったところで郡司は仕事を終え、2人に任せて後ろに下がっていった。
近畿勢もここから追撃を見せ、4コーナーで古性がようやく前を捉え始める。古性は4番車小林の内を割って前を狙うも、これとやや絡む形でゴール入線寸前にバランスを崩し落車。その煽りで後輪に古性の身体が当たり、前方にいた北井も落車を喫する。しかし、北井はその時点ですでにゴールラインを先頭で切っており、北井の宮杯優勝が決定。外から来た和田が2着に入り、南関東がワンツーフィニッシュを飾った。
ゴール後、古性はすぐに起き上がり芝生上の担架まで自ら歩いて乗ったものの、北井はしばらく起き上がれず。観客が北井コールで鼓舞する中、ゆっくりと身体を起こすとスタンドに一礼。近くまで来ていた担架に乗り込み、敢闘門手前でその無事を確認した神奈川の同僚、郡司と和田に祝福を受けながらバンクを去っていった。
ゴールの瞬間は「落車したので、何がなんだかわからぬまま」と語った北井。怪我の容態が心配されたものの、治療を終えて無事表彰式に現れ、観客の喝采を浴びた。元Jリーガーが、「サッカーはやりきったので悔いはない」と言って挑んだ競輪の舞台でGI初制覇。共同インタビューでは、これまでの苦難への想いと喜びの入り混じった涙を見せた。
この日は外の児童公園に、大きなハローキティふわふわが登場、サーカス団の「クロワッサンサーカス」もやって来て、玉乗りやジャグリングなどのパフォーマンスを披露し、子どもたちの元気な声が聞かれた。また、西入場門の入口付近では地元・春木の皆さんが、地元の競輪開催を盛り上げようと岸和田の祭囃子を実演。ここにも多くの人だかりが出来た。
場内を歩いていると、「選手全力応援団」と書かれたハッピを着た2人の男性が、子どもたちに「岸和田」とプリントされたハリセンを配っていた。聞けば、主催者公認で、全国の競輪場を周りながら、競輪や選手を応援することの楽しさを知ってもらおうと活動しているのだとか。ハリセンの配布のみならずスタンドへの呼びかけや個別の声掛けをするなど、積極的に観客の人達と交流しており、その熱意が伝わってきた。
駅チカ競輪場、岸和田の魅力
ここからは、パールカップ開催日の6月13日に歩いた記憶も辿りつつ、場内の様子を紹介していく。最寄りの南海線・春木駅からも歩いて4〜5分と至近にある岸和田競輪場は、コンパクトな都市型の競輪場だ。西入場門に入ってすぐ右手にはイベントステージがあり、1コーナーにある西スタンドへも1分も歩かず到達可能だ。岸和田競輪オアシスショップと言うコンビニに近い形態の店舗もその西スタンドへ向かう途中にある。食事はキッチンカーやレストラン、ここで買えるお弁当やその他惣菜が中心となる。
13日、窓に掲示された「牛丼はじめました。」の文字に惹かれてオアシスショップの中に入って店内の撮影を試みていると、「写真撮って〜」と後ろにあるテーブル席から子連れのお姉さん方が話しかけてきた。「もちろん」と快く引き受けつつ「今日はどこから?」と尋ねると、「地元の春木だよ。競輪よく知らないけど、来てみたら人いっぱい居て驚いた〜」と楽しげに話してくれた。ものはついでと他の方にも話を聞いたのだが、「今年のGI全部回ってるよ」と言う競輪愛溢れる人がいつつも、場所柄もあってか土日開催ともなれば、ここへ来ると言う地元の方が何人かいらした。
西スタンドの下にあるガイダンスコーナー「K-SPOT」には、岸和田競輪の歴史を綴った年表や写真とともに、地元の名選手、井上薫さんのピストバイクや獲得トロフィーなどが飾られており、機材好きの方にもお勧めしたい。
メインスタンドは有料の特別観覧席のため、直線走路側から無料観戦したい場合はその前、バンクのフェンス際での立ち見が主になるが、1コーナーにある西スタンドと、4コーナーにある東スタンドは無料だ。どちらも眼下にレースを観ることが出来、屋根もあるので雨の日も安心だ。ただし人気の度合いで言うと、やはりスタートとゴールを正面気味に観ることが可能な西スタンドがやや優勢。オーロラビジョンも3コーナーのセンターにあり、東スタンドはその死角になる。
とは言え、昨今はスマートフォンでレースのライブ映像視聴や車券購入まで出来るため、あえて東スタンドに行き、生でしか見られない角度を味わうのも一興。駅から線路沿いに歩くだけでアクセス出来る東入場門から、入ってすぐの位置にあることも利点だ。
結束力見せた南関東ライン 高松宮記念杯競輪[GI]は、北井佑季がGI初V
さあ、レース本編に移ろう。特別観覧席まで満員御礼となったこの日の岸和田。スタンド席から立ち見までギッシリと詰めかけた観客の中、高松宮記念杯競輪の入場が始まる。近畿からは2連覇中の地元・古性優作、2020年勝者の脇本雄太(福井)、南修二(大阪)が進出。南関東は神奈川の郡司浩平、和田真久留、北井佑季が揃い、それぞれ3名ずつのラインを形成。そこに新山響平(青森)、小林泰正(群馬)、桑原大志(山口)が加わって決勝が争われた。号砲が鳴ると、序盤の先頭を取ったのは郡司。その後ろに、初めて郡司の番手を任されたと言う北井がついて2番手。和田も3番手を取り、互いに気心の知れた神奈川県勢の南関東ラインが前方をキープ。そこから新山、桑原、小林と続き、近畿勢は脇本、古性、南の順で後方からのレースとなった。
先頭員が離れると同時に一気に加速したのは郡司浩平。北井と和田がこの引きに呼応して食らいついていく。脇本が引く近畿勢や他の3選手が郡司の猛烈な引きに追いつけぬまま最終周回へ入ると、その後を受けた北井と和田が、1-2コーナーで徐々に進出していく。バックストレッチに入ったところで郡司は仕事を終え、2人に任せて後ろに下がっていった。
近畿勢もここから追撃を見せ、4コーナーで古性がようやく前を捉え始める。古性は4番車小林の内を割って前を狙うも、これとやや絡む形でゴール入線寸前にバランスを崩し落車。その煽りで後輪に古性の身体が当たり、前方にいた北井も落車を喫する。しかし、北井はその時点ですでにゴールラインを先頭で切っており、北井の宮杯優勝が決定。外から来た和田が2着に入り、南関東がワンツーフィニッシュを飾った。
ゴール後、古性はすぐに起き上がり芝生上の担架まで自ら歩いて乗ったものの、北井はしばらく起き上がれず。観客が北井コールで鼓舞する中、ゆっくりと身体を起こすとスタンドに一礼。近くまで来ていた担架に乗り込み、敢闘門手前でその無事を確認した神奈川の同僚、郡司と和田に祝福を受けながらバンクを去っていった。
ゴールの瞬間は「落車したので、何がなんだかわからぬまま」と語った北井。怪我の容態が心配されたものの、治療を終えて無事表彰式に現れ、観客の喝采を浴びた。元Jリーガーが、「サッカーはやりきったので悔いはない」と言って挑んだ競輪の舞台でGI初制覇。共同インタビューでは、これまでの苦難への想いと喜びの入り混じった涙を見せた。
高松宮記念杯競輪 決勝 結果
着 | 車番 | 選手名 | 級班 | 着差 | 上りタイム |
---|---|---|---|---|---|
1着 | 9 | 北井佑季(神奈川) | S1 | 11.3秒 | |
2着 | 8 | 和田真久留(神奈川) | S1 | 3/4車輪 | 11.2秒 |
3着 | 7 | 古性優作(大阪) | SS | 1/2車身 | 11.0秒 |
4着 | 4 | 小林泰正(群馬) | S1 | 微差 | 11.1秒 |
5着 | 1 | 南修二(大阪) | S1 | 1車身1/2 | 11.0秒 |
6着 | 2 | 新山響平(青森) | SS | 3車身 | 11.7秒 |
7着 | 6 | 桑原大志(山口) | S1 | 5車身 | 11.9秒 |
8着 | 3 | 郡司浩平(神奈川) | S1 | 大差 | 14.0秒 |
9着 | 5 | 脇本雄太(福井) | SS | 大差 | 13.7秒 |
選手同士の牽制や、火花が見えるようなぶつかり合いも競輪の魅力の一つ。バンク上部のフェンス間際までの過度な押し上げを避けるためにイエローラインが設けられたり、FI、FIIと言った下位グレードのレースは7車立てとするなど、リスクを下げるルール改正も行われてきており、落車や失格は昔よりも減ってきている。今後もルール改正等により安全性を高めながらも、その魅力は保たれていくだろう。
次回は久しぶりの関東圏、7月15日の松戸競輪場のナイターGII「サマーナイトフェスティバル」へ行くことに。これまで訪れたのは全て国内普及率の高い400mバンクだったが、松戸のバンク周長は333mと距離が短い。周回数が増え、みなし直線もかなり短くなるため、仕掛けのタイミングの変化などが楽しめそうだ。
提供:公益財団法人 JKA text&photo: Yuichiro Hosoda