2024/06/21(金) - 18:15
梅雨入り直後の6月13日、岸和田競輪場を訪ねた。今回は本企画で初めて、同開催中の男女GI併催。レースは、ガールズGIの「パールカップ」と男子GIの「高松宮記念杯競輪」の2つ。各決勝が中2日で行われたため、大阪に連泊して両レースを取材。その模様を2回に渡ってお届けする。
周辺を住宅地に囲まれる岸和田競輪場は、関西空港から電車・車で約30分の場所に位置する。JR新大阪駅からも約1時間ほどでアクセスが可能だ。最寄りは南海本線「春木駅」で、そこから線路沿いの東入場門までは歩いて5分ほど。岸和田市内にある「岸和田だんじり祭」の安全祈願が行われる「浪切神社」の名を取って「浪切バンク」とも呼ばれる。
話が横道に逸れるが、浪切神社は、春木駅から2駅南に下った岸和田駅の西出口から、その参道であろう岸和田駅前通商店街をまっすぐ抜けていくと、10分程度で到着する。横に浪切ホールやショッピングモールと言った巨大な建造物もあり、勇壮なだんじり祭りから連想して見ると、ややかわいらしい印象を受ける小さな神社だ。
閑話休題、競輪場のバンク仕様を見ると、その周長は400m、見なし直線は56.7m、カント角は30.56度とある。癖のない走りやすいバンクで、どの脚質にも勝つチャンスがある。 ただし海岸に近い位置にあるため、海風の影響があり、主にバックストレッチが追い風、ホーム側は向かい風となり、2コーナー辺りからの仕掛けが決まりやすいと言われる。 降雨などの悪天候時は逆の風になりやすく、ホームで追い風となることが多い。そのため、勝負を制するには風向きを読んでおくことも重要だ。
かつて「大津びわこ競輪」が開催していた「高松宮記念杯競輪」、通称「宮杯」。岸和田競輪場は、2011年3月末の大津びわこ競輪場廃止後に持ち回り制となったこのレースを積極的に誘致、2013、2015、2017〜2019年と開催。2019年7月からの全面改修工事で2年間は他場に開催を譲るも、リニューアルオープンした2021年に2年ぶり6回目の本場開催、その後本年まで連続開催されている。2025年も開催予定で、そこで通算10回目となる。
1963年にGIにカテゴライズされ、昨年より6日制に復帰し、ガールズケイリン初のGI「パールカップ」と併催される形となった。第2回目を迎えるパールカップの名称の由来は、6月の誕生石である「パール」から。
この両レースはともに東西対抗戦の形を取り、予選から準決勝まで東地区、西地区とに分かれて決勝進出選手の選抜が行われる。男子は決勝前々日に東の青龍賞(「せいりゅうしょう」と読む)、西の白虎賞の2レースが勝ち上がり選手によって組まれ、これに出る18選手は自動的に翌日の準決勝まで進むことが出来る(失格の場合を除く)。なお現在のところ、ガールズGIはナイター開催が主となっており、昼間の開催はパールカップのみだ。
地区の区分は、以下の通り。
東地区:北日本・関東・南関東のいずれかに在籍する選手
西地区:中部・近畿・中国・四国・九州のいずれかに在籍する選手
昨年の高松宮記念杯勝者は、2022年から2連覇中の古性優作(大阪)で、今年も決勝に歩を進めている。パールカップ初代勝者は、先日のオールガールズクラシック(GI)も制した児玉碧衣(福岡)。
優勝候補に挙げられた児玉碧衣は、予選、準決勝と早めの仕掛けから2度とも當銘直美(愛知)のマークに屈して敗退。準決勝で4着だった児玉と石井貴子(千葉)のうち、初日1着を決めていた石井に決勝の切符が渡された。吉川美穂(和歌山)、坂口楓華(愛知)、久米詩(静岡)と言った他の有力どころも決勝進出を逃し、やや混戦模様の決勝となった。
レースのキーマンは、早めの先行から持ち前の持久力で押し切るスタイルの奥井。彼女の番手を取れれば、捲りや差しで行く選手には有利となる。児玉をマークしてここまで2連勝で上がってきた當銘が決勝でもそれを狙うかに見えたが、奥井の番手を取ったのは「この場所は絶対に譲らない」と決めていた大外の石井貴子。先頭員が引く間の順番は、山原さくら(高知)、吉村早耶香(静岡)、尾崎睦(神奈川)、その後ろに柳原真緒(福井)が當銘と並走する格好。6-7番手に奥井、石井と続いた。
残り2周回を過ぎて1車身ほど空けながら前を伺っていた奥井が4コーナーから仕掛けると、これを石井が追走。ジャンが鳴る中、この2人が一気に前に出ると、残り半周のバックストレッチでは立ち遅れたその他の選手との間がやや空く。尾崎がそれを捉えるべく追いすがるも、最後の直線は奥井とその横に出た石井のマッチスプリントに。
ゴール直前、脚色一杯で一瞬内によれた奥井に対し、脚を残していた石井が4分の1車輪前に出てパールカップが決着した。外から追い込んだ尾崎が3着。対応が遅れた當銘は、最後まで前に出られず悔しい5着となった。
2021年にレース中の落車で大怪我を負い、以降も練習中の落車で骨折に泣くなど苦しみ、一時は引退も考えたと言う石井。この日は展開を自分の元へ引き寄せ、GI決勝初出場にして、初のGIタイトルを獲得した。表彰式では「いい時も悪い時も頑張れと声をかけてくださる皆さんがいたからここまで来れた」とインタビューに答え、勝利の実感に浸った。また、一人先行から石井の追撃に最後まで抵抗を見せた奥井の戦いぶりにも、レース直後にファンから熱い声援が飛んでいた。
周辺を住宅地に囲まれる岸和田競輪場は、関西空港から電車・車で約30分の場所に位置する。JR新大阪駅からも約1時間ほどでアクセスが可能だ。最寄りは南海本線「春木駅」で、そこから線路沿いの東入場門までは歩いて5分ほど。岸和田市内にある「岸和田だんじり祭」の安全祈願が行われる「浪切神社」の名を取って「浪切バンク」とも呼ばれる。
話が横道に逸れるが、浪切神社は、春木駅から2駅南に下った岸和田駅の西出口から、その参道であろう岸和田駅前通商店街をまっすぐ抜けていくと、10分程度で到着する。横に浪切ホールやショッピングモールと言った巨大な建造物もあり、勇壮なだんじり祭りから連想して見ると、ややかわいらしい印象を受ける小さな神社だ。
閑話休題、競輪場のバンク仕様を見ると、その周長は400m、見なし直線は56.7m、カント角は30.56度とある。癖のない走りやすいバンクで、どの脚質にも勝つチャンスがある。 ただし海岸に近い位置にあるため、海風の影響があり、主にバックストレッチが追い風、ホーム側は向かい風となり、2コーナー辺りからの仕掛けが決まりやすいと言われる。 降雨などの悪天候時は逆の風になりやすく、ホームで追い風となることが多い。そのため、勝負を制するには風向きを読んでおくことも重要だ。
東西対抗戦となる「高松宮記念杯競輪」とそのガールズケイリン版「パールカップ」
場内の詳しい様子は次回に譲ることにして、ここで当開催の2つのGIレースの特徴を、近年の経歴も交えて紐解いておこう。見出しの通り、このレースには、他のGIとはまた違った特色がある。かつて「大津びわこ競輪」が開催していた「高松宮記念杯競輪」、通称「宮杯」。岸和田競輪場は、2011年3月末の大津びわこ競輪場廃止後に持ち回り制となったこのレースを積極的に誘致、2013、2015、2017〜2019年と開催。2019年7月からの全面改修工事で2年間は他場に開催を譲るも、リニューアルオープンした2021年に2年ぶり6回目の本場開催、その後本年まで連続開催されている。2025年も開催予定で、そこで通算10回目となる。
1963年にGIにカテゴライズされ、昨年より6日制に復帰し、ガールズケイリン初のGI「パールカップ」と併催される形となった。第2回目を迎えるパールカップの名称の由来は、6月の誕生石である「パール」から。
この両レースはともに東西対抗戦の形を取り、予選から準決勝まで東地区、西地区とに分かれて決勝進出選手の選抜が行われる。男子は決勝前々日に東の青龍賞(「せいりゅうしょう」と読む)、西の白虎賞の2レースが勝ち上がり選手によって組まれ、これに出る18選手は自動的に翌日の準決勝まで進むことが出来る(失格の場合を除く)。なお現在のところ、ガールズGIはナイター開催が主となっており、昼間の開催はパールカップのみだ。
地区の区分は、以下の通り。
東地区:北日本・関東・南関東のいずれかに在籍する選手
西地区:中部・近畿・中国・四国・九州のいずれかに在籍する選手
昨年の高松宮記念杯勝者は、2022年から2連覇中の古性優作(大阪)で、今年も決勝に歩を進めている。パールカップ初代勝者は、先日のオールガールズクラシック(GI)も制した児玉碧衣(福岡)。
前走4着から進出した石井貴子が復活のGI初優勝 パールカップ[GI]決勝
岸和田開催前半の締めとなるガールズGI、パールカップ。事前の雨予報とは裏腹に、6月13日は熱中症も心配されるほどの晴天に恵まれた。ともに本命を下し、波乱の準決勝を演出した當銘直美(愛知)、奥井迪(東京)が最内の1-2番に並ぶ。優勝候補に挙げられた児玉碧衣は、予選、準決勝と早めの仕掛けから2度とも當銘直美(愛知)のマークに屈して敗退。準決勝で4着だった児玉と石井貴子(千葉)のうち、初日1着を決めていた石井に決勝の切符が渡された。吉川美穂(和歌山)、坂口楓華(愛知)、久米詩(静岡)と言った他の有力どころも決勝進出を逃し、やや混戦模様の決勝となった。
レースのキーマンは、早めの先行から持ち前の持久力で押し切るスタイルの奥井。彼女の番手を取れれば、捲りや差しで行く選手には有利となる。児玉をマークしてここまで2連勝で上がってきた當銘が決勝でもそれを狙うかに見えたが、奥井の番手を取ったのは「この場所は絶対に譲らない」と決めていた大外の石井貴子。先頭員が引く間の順番は、山原さくら(高知)、吉村早耶香(静岡)、尾崎睦(神奈川)、その後ろに柳原真緒(福井)が當銘と並走する格好。6-7番手に奥井、石井と続いた。
残り2周回を過ぎて1車身ほど空けながら前を伺っていた奥井が4コーナーから仕掛けると、これを石井が追走。ジャンが鳴る中、この2人が一気に前に出ると、残り半周のバックストレッチでは立ち遅れたその他の選手との間がやや空く。尾崎がそれを捉えるべく追いすがるも、最後の直線は奥井とその横に出た石井のマッチスプリントに。
ゴール直前、脚色一杯で一瞬内によれた奥井に対し、脚を残していた石井が4分の1車輪前に出てパールカップが決着した。外から追い込んだ尾崎が3着。対応が遅れた當銘は、最後まで前に出られず悔しい5着となった。
2021年にレース中の落車で大怪我を負い、以降も練習中の落車で骨折に泣くなど苦しみ、一時は引退も考えたと言う石井。この日は展開を自分の元へ引き寄せ、GI決勝初出場にして、初のGIタイトルを獲得した。表彰式では「いい時も悪い時も頑張れと声をかけてくださる皆さんがいたからここまで来れた」とインタビューに答え、勝利の実感に浸った。また、一人先行から石井の追撃に最後まで抵抗を見せた奥井の戦いぶりにも、レース直後にファンから熱い声援が飛んでいた。
パールカップ 決勝 結果
着 | 車番 | 選手名 | 級班 | 着差 | 上りタイム |
---|---|---|---|---|---|
1着 | 7 | 石井貴子(千葉) | L1 | 12.2秒 | |
2着 | 2 | 奥井迪(東京) | L1 | 1/4車輪 | 12.3秒 |
3着 | 5 | 尾崎睦(神奈川) | L1 | 1/2車身 | 12.1秒 |
4着 | 3 | 柳原真緒(福井) | L1 | 1/2車輪 | 12.0秒 |
5着 | 1 | 當銘直美(愛知) | L1 | 3/4車身 | 12.1秒 |
6着 | 4 | 吉村早耶香(静岡) | L1 | 1車身 | 12.2秒 |
7着 | 6 | 山原さくら(高知) | L1 | 1/2車輪 | 12.2秒 |
次回は、高松宮記念杯競輪の決勝の模様を絡めながら、岸和田競輪場の施設や周辺の様子をお伝えしていきたい。
提供:公益財団法人 JKA text&photo: Yuichiro Hosoda