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JR名古屋駅から東海道線に乗って約20分、ガールズ選手だけのナイターGI「オールガールズクラシック」が開催される岐阜へとやってきた。屋外ナイターは昨年8月のオールスター競輪以来。場所も変わり、昼から夜へと移ろう景色の変化を久しぶりに堪能することが出来た。バイク紹介には期待の新星・仲澤春香選手も登場、その名にも相応しい春の爽やかな雰囲気を味わっていただければ幸いだ。

JR岐阜駅北口にある「黄金の織田信長公像」。この日はブース出店やバンドの演奏などが行われていた photo: Yuichiro Hosoda

JR岐阜駅前にて、10分置きくらいに発着していた岐阜競輪場ファンバス photo: Yuichiro Hosoda
バスターミナルの一角には、かつて岐阜市内を走った丸窓電車「モ513」が佇む photo: Yuichiro Hosoda


岐阜競輪場。2つの大きな池と、その中央を通る橋が特徴 photo: Yuichiro Hosoda

岐阜競輪場へのアクセスは、JR岐阜駅から無料のファンバスに乗り、東へさらに10分ほど。昨年1月に改修を終え、選手管理棟やバンク照明がリニューアル。周長400mのバンクはカントが32°15´7″とキツめだが、コース的にはクセのないバンクと言える。そのため、逃げや捲りと言った戦法による有利不利はないが、日や時間帯により風向きが変わるため、展開とともに風を読む力も必要となるようだ。

岐阜市はJCFトラック競技ナショナルチームの強化育成組織であるHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling)と連携協定を結んでおり、岐阜競輪場では強化指定選手の合宿や、彼らが使うレベルのトレーニング機器の設置、選手達によるワークショップや講演会なども行われている。

メインスタンドにある有料の特別観覧席は天候や温度に左右されないが、その下にある2階の一般席でもバンクを一望出来るため、季節の風を身体に感じながら、ビール片手に観戦するのも良いだろう。

岐阜競輪場の正面入場門。この斜め前にバス停がある photo: Yuichiro Hosoda
正面入場門から入るとすぐ、キッチンカーや各種ブースが立ち並ぶ、屋根付きの広場に出る photo: Yuichiro Hosoda


バンク中央の照明灯を囲むように、橋の通路と池が配置されている photo: Yuichiro Hosoda
岐阜競輪場は、HPCJCと連携協定を結んでいる施設でもある photo: Yuichiro Hosoda


競輪選手会岐阜支部のブースでは、岐阜競輪場を走るバーチャルタイムアタックで子供たちが競い合っていた photo: Yuichiro Hosoda
FC岐阜はキックターゲットのコーナーを開いており、子供たちで賑わっていた photo: Yuichiro Hosoda


取材エリアとなるミックスゾーンには、出場選手達全員の似顔絵が入ったオールガールズクラシックの特大パネルが。各選手が直筆サインも入れていた photo: Yuichiro Hosoda

珈琲食房「めるね」で高山ラーメンを味わう

ひとしきり場内を巡り終え、遅いお昼の腹ごしらえは、南入場門から最初にアクセス出来るサイクルプラザ1階に常設された珈琲食房「めるね」へ。迎えてくれたのは、懐かしき3番の勝負服を着た店主の遠藤さん。ビッグレース開催でお孫さん達もお手伝いするご多忙の中、取材に応じてくださった。

遠藤さんはかつて市内に喫茶店を開いており、13年ほど前、場内にここを開店したのだそう。喫茶店はその後閉じ、ここ1本に絞って営業を続けているそうだ。そんなめるねのメニューからセレクトしたのは、飛騨高山より現地直送の名物、高山ラーメン 650円。競輪場と言えば揚げ物やカレーなどの油ものが定番だが、これはその逆で、さっぱりとした出汁に細麺がマッチ。サラリと頂くことが出来た。

岐阜競輪場・南入場門 photo: Yuichiro Hosoda

南入場門入ってすぐのサイクルプラザ。1階はドリームホームと名前がついている photo: Yuichiro Hosoda
めるね店主の遠藤さん。快く取材に応じてくださった photo: Yuichiro Hosoda


選手サインが並ぶ店内。「これは岐阜の宇野紅音ちゃんと、同期や同県の子のサイン」と遠藤さんが教えてくれた。左は熊谷芽緯選手(岩手)、右は増田夕華選手(岐阜) photo: Yuichiro Hosoda
名物・高山ラーメン。細麺にアッサリめのダシで胃にも優しい photo: Yuichiro Hosoda


夜の決勝レース前のおやつは正面入場門入ってすぐ、立ち並ぶキッチンカーへと向かった。見ると當銘直美選手(愛知)の写真が掲示されたタコ焼き屋さんが。店の名は「オクトパス・ファイヤーズ」。聞くと當銘選手のスポンサーなのだとか。ねぎポンたこ焼をオススメいただき、購入。ホクホクしたタコ焼にねぎスーっとした辛味が加わり、頭をクリアにしてくれた。

それでは夜の競輪場の風景をお伝えしつつ、決勝レースのレポートへと移ろう。

日が沈む頃、風は凪いだ photo: Yuichiro Hosoda
キッチンカーにも明かりが灯り、雰囲気が出てきた photo: Yuichiro Hosoda


色々なたこ焼がある「オクトパス・ファイヤーズ」 photo: Yuichiro Hosoda
ねぎポンたこ焼に當銘直美選手のステッカーを付けていただいた photo: Yuichiro Hosoda


カラー照明が、噴水を染める photo: Yuichiro Hosoda

メインスタンドにも光の演出 photo: Yuichiro Hosoda
バンク照明は、平塚競輪場の照明も手掛けた株式会社MLJによるもの photo: Yuichiro Hosoda


この日の勝利者インタビュアーは、ガールズケイリンの元選手達が務めていた。こちらは、小松島競輪場の実況でもおなじみの岩原紗也香さん(2022年引退) photo: Yuichiro Hosoda
第11レースの勝利者インタビューを受ける小林優香(福岡) photo: Yuichiro Hosoda


サトミナvs児玉碧衣 女王対決の行方は!? オールガールズクラシック[GI]

第3回となるオールガールズクラシック。前回、パリ五輪との兼ね合いでガールズケイリンを離れていた初代女王の佐藤水菜(神奈川)が参戦し、前回女王・児玉碧衣(福岡)との直接対決が、決勝で実現。準決勝でも相まみえた二人は、先行した児玉が追い込んできた佐藤を2着に封じて勝利。展開によっては…のレースであり、両者とも調子の良さを見せる中、注目の決戦となった。

佐藤と同じくナショナルチームで活躍し、今年からガールズケイリンに専念している梅川風子(東京)は、順当に2連勝し2番車。今年3月に名古屋で通算500勝を達成した小林莉子(東京)が3番車、同時期に佐世保で通算300勝を達成した柳原真緒(福井)が6番車、初のGI決勝進出を果たした細田愛未(埼玉)が5番車に。昨年のパールカップ覇者・石井貴子(千葉)は、準決勝3着も7番車へと滑り込んだ(当レース決勝は、準決勝3レースの1、2着計6名に加え、3着のうち1名が成績等により選抜される)。

MCの手越祐也さんと共に「テイッ」のポーズを取るオールガールズクラシック決勝進出選手達 photo: Yuichiro Hosoda

2連勝で優出した児玉碧衣(福岡)と梅川風子(東京)が1、2番車、3番車に小林莉子(東京)、4番車に佐藤水菜(神奈川)が入った photo: Yuichiro Hosoda
車番 選手名 期別 級班
1 児玉碧衣(福岡) 108期 L1
2 梅川風子(東京) 112期 L1
3 小林莉子(東京) 102期 L1
4 佐藤水菜(神奈川) 114期 L1
5 細田愛未(埼玉) 108期 L1
6 柳原真緒(福井) 114期 L1
7 石井貴子(千葉) 106期 L1
スタートすると、小林莉子が先陣を切る。それを追ったのは児玉碧衣。3番手に佐藤水菜が入るも、細田愛未が外で並走。その後ろに梅川風子、柳原真緒、石井貴子と続いた。

1周目をこの態勢で終え、2周目バックストレッチから動きが出始める。佐藤が細田に前を譲り、さらには石井が外から番手を上げて行き、細田の後ろ4番手へ。佐藤は車間を空けながら5番手からこれを見て、踏み出しのタイミングを図る。

スタートから小林莉子(東京)が果敢に飛び出す photo: Yuichiro Hosoda
細田愛未(埼玉)と佐藤水菜(神奈川)が並走しながら1周目を終える photo: Yuichiro Hosoda


2周目3コーナー付近、石井貴子(千葉)が上昇していく photo: Yuichiro Hosoda
石井貴子(千葉)が4番手に収まる photo: Yuichiro Hosoda


残り2周となったバックストレッチ、敢闘門の前にかかる辺りで、先頭員が離れると佐藤が動き始める。2センターで先頭に出た佐藤だが、直後についていた梅川も外から合わせにかかり、児玉も前を行っていた小林をかわして佐藤の後を追う。3コーナーで先頭に立った佐藤はそのまま前で踏み続け、最終周回へ。

そのバックストレッチに入り梅川が加速を強めたタイミングで、佐藤もサドルから腰を上げて再加速し、先頭を譲らず。外を行く梅川の後ろには石井が続き、佐藤の番手を取っていた児玉は、内で石井と並走する形に。梅川が4コーナーで佐藤からやや離れたのを見て、児玉が外に車を出すも、力強くペダルを踏み続けた佐藤との車間は変わらぬまま。佐藤が早め先頭から逃げ続けてフィニッシュし、自身2度目のオールガールズクラシック優勝を決めた。

敢闘門付近から佐藤水菜(神奈川)が前を捲っていく photo: Yuichiro Hosoda
3コーナーで早くも佐藤水菜(神奈川)が先頭に立つ photo: Yuichiro Hosoda


佐藤水菜(神奈川)が先頭で最終周回へ photo: Yuichiro Hosoda

外は梅川風子(東京)に石井貴子(千葉)、柳原真緒(福井)が続き、3コーナーにかかる photo: Yuichiro Hosoda
佐藤水菜(神奈川)先頭で4コーナーを立ち上がる photo: Yuichiro Hosoda


後続を前に出すことなく佐藤水菜(神奈川)が逃げ切ってレースを制した photo: Yuichiro Hosoda
力強く拳を突き出す佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda


カメラマンに佐藤水菜(神奈川)がガッツポーズを見せる photo: Yuichiro Hosoda

レースを振り返る中で佐藤は、準決勝で児玉の後塵を拝した事にも触れ、「後手を踏んだらああいう風になると教訓になった。後手を踏んで転んだり、詰まったり、散々学んできたので、これからは果敢に攻めていくようなレースを作っていきたい」と話した。

これで「今年の最大目標として、年間グランプリスラムを目指す」と公言している佐藤が、まず最初のGIを勝利し、ガールズグランプリの出場権も獲得。まずはこの日の勝利を喜びつつ「GIを完全制覇するためにGIに完全にフォーカスして、世界選手権もしっかり結果を残しつつ、欲張っていきたい」と貪欲な姿勢を見せていた。

頭上に賞金ボードを掲げる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda

佐藤水菜(神奈川)が力強いガッツポーズでトロフィーを掲げる photo: Yuichiro Hosoda
「表彰式では私のために残ってくれたファンの皆さんが、自分の名前をたくさん呼んでくれるので嬉しい」と話す佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda

オールガールズクラシック[GI] 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 4 佐藤水菜(神奈川) L1 12.0秒
2着 1 児玉碧衣(福岡) L1 1車身 12.0秒
3着 2 梅川風子(東京) L1 3/4車身 12.2秒
4着 3 小林莉子(東京) L1 1/2車輪 12.0秒
5着 7 石井貴子(千葉) L1 3/4車身 12.2秒
6着 6 柳原真緒(福井) L1 3/4車輪 12.1秒
7着 5 細田愛未(埼玉) L1 2車身 12.1秒

あなたの自転車見せて下さい 〜仲澤春香編〜

2025年度最初のバイク紹介は、春らしくフレッシュな選手を!と言うことで、昨年5月に126期卒業生としてデビューした期待の新星・仲澤春香選手(福井)にご登場頂いた。

仲澤春香選手(福井)は、他を圧倒する着差で3連勝し、当開催を締めた photo: Yuichiro Hosoda
第6レースのガールズ決勝Cに勝利した仲澤春香選手(福井) photo: Yuichiro Hosoda


仲澤選手は、昨年12月よりJCFの強化指定B選手となってナショナルチームに所属。前回特集のウィナーズカップ決勝と同日開催されたガールズフレッシュクイーンでは2着と、自身の連勝記録を23で止めたものの、当開催はガールズ決勝Cまで3連勝。大器の片鱗を伺わせた。

ブリヂストンアンカーTS9を駆る仲澤選手、そのサイズはL。養成所在籍中に頼んで入手したフレームをここまで乗り続けているとのこと。

ブリヂストンアンカーTS9を駆る、仲澤春香選手(福井) photo: Yuichiro Hosoda

そのキッカケを聞くと「養成所在籍中の(福井への)夏季帰省で、養成所に借りているTR9を乗っていたんですけども、(同郷の)柳原真緒さんのTS9に乗らせてもらった時に「軽すぎてこれはヤバい、買わなきゃ」と思って買いました。それまでは借り物の自転車に乗っていて、初めて買ったのがこれで、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えています。」と当時の様子を振り返ってくれた。

サドルはセッレ・イタリア「フライト ジェルフロー」。競技の方では同社の前の型のオーソドックスな穴開きサドルを使っており、お気に入りだったそうだが「型が新しくなって固いものしかなくて」とこれに落ち着いたのだとか。そのフィット感については、あまりしっくり来ていないと話すものの「競走の間だけだし、いいかなと」割り切った様子。

サドルはセッレ・イタリアのフライト ジェルフロー photo: Yuichiro Hosoda
NITTO製の120mmステム photo: Yuichiro Hosoda


扁平スポークで組まれたリアホイール photo: Yuichiro Hosoda
フロントはダブルバテッドスポークを奢る photo: Yuichiro Hosoda


ポジションもまだ定まっておらず、開催ごとに変えていると言う。ハンドルとサドルを離して遠く乗るのが楽ではあるようだが、「それだと高いスピードが出せなくて」と当開催ではサドルを前めにセット。

「本当はハンドルも上げたいんですけど、(TS9のフォーク)コラムの突き出しが元からこれしかなく、高さが変えられない。どうしても落差が出てしまうので、ハンドル周り、ステムを短くするのもなと。お尻が後ろに引けてしまっているので、サドルを前に出しました。」

チェーンリングとコグは53✕14Tとしており「前ギアが大きい方が何回も踏める感触がある。前ギアが小さいと一発目は入るんですけど、その後はアタリがない感じがする」と、ギア比に関しては決まっているようだ。

14Tのコグ。チェーンはIZUMI-KAI photo: Yuichiro Hosoda
オクタリンクのFC-7710に54Tのチェーンリングを装着 photo: Yuichiro Hosoda


ペダルはMKS ROYAL NUEVO photo: Yuichiro Hosoda
シューズに合わせ、トゥークリップはMサイズに photo: Yuichiro Hosoda


チェーンはIZUMI-KAI。現在使用するシューズ「BONT Zero+ Li2 Durolite」に合わせてのもの。以前はD.I.D.のチェーンとシマノS-PHYREの組み合わせが、柔らかくて感触も良かったと言うが、「もっとガッツリ踏みたいと思って」練習で使っていた硬めのIZUMI-KAIに変更したことで、シューズも変えることになったと言う。

トラック競技での状況についても尋ねると「ホイールなども含めて全部違うんですけど、そちらもまだセッティングを見てもらって出したものではない」そうで、このTS9と同じく、まだ正解を探っている最中のよう。

圧倒的な強さを見せつつも、デビューから間もない選手らしく、ポジションや機材面でも様々に模索を続ける仲澤選手。「まだまだこれから進化していく可能性が沢山ありますね」と振ると「進化すると言うより、進化しないとダメですよね」と笑顔で返してくれた。仲澤選手、競走直後にもかかわらず快くご対応くださり、ありがとうございました。

朗らかに取材に応じてくれた仲澤春香選手(福井) photo: Yuichiro Hosoda



次回は1週間後、隣県・愛知の名古屋競輪場で開催される、競輪ダービーこと「日本選手権競輪」。GIの中でも最高勝金額を誇るこのレースは、誰もが欲しいタイトルだ。シクロワイアードでは5月3日(土)と4日(日)の2日間にわたって取材し、決勝の模様をお送りする予定だ。

JKA協賛プレゼントキャンペーン第9弾
オールガールズクラシック 優勝選手サイン入りクオカード

バイクレポに並び、おなじみとなった公益財団法人 JKA協賛によるプレゼントキャンペーン。今回も応募フォームにあるアンケートにお答えいただいた方の中から、佐藤選手の直筆サイン入り「オールガールズクラシック」オリジナルクオカード1枚(500円分)を抽選で5名様にプレゼントします。

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QUOカードにサインする佐藤水菜選手 photo: Yuichiro Hosoda

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