2024/09/29(日) - 18:30
祝日の9月16日(月)、例年とは違う目的で宇都宮駅に降り立った。このシリーズで扱うのはもちろん競輪。共同通信社杯競輪(GII)の決勝開催に合わせて、雷神バンクこと宇都宮競輪場にお邪魔した。駅ナカ施設のパセオでは、その例年の目的である10月のジャパンカップに関する掲示物が早くも登場していた。
駅西口から発着している無料の競輪ファン専用バス・通称「ファンバス」に乗って15分ほど揺られると、八幡山公園の一角にある宇都宮競輪場に到着。バンク周長は500mで、全国に43ある競輪場の中でも大宮、高知とここの3箇所のみとなっており、7箇所ある333mバンクよりも珍しい。コーナー部分の傾斜「カント」は25°47'44"と緩やかで、全国平均である31°53′15″に比べて約6度の差がある(※平均値は独自計算によるもの。木製250mバンクのTIPSTAR DOME CHIBAを除く)。周長に応じてみなし直線も63.3mと長く、追い込み型の選手に有利と言われている。
さて場内はと言うと、長いバンク周長とは裏腹に、これまでこのシリーズで紹介してきたどこよりもコンパクト。バックストレッチ側に観覧施設がないため、入場門や場内全てのアクセスがホーム側となっている。メインスタンド前も立ち見スペースから後ろの座席までの距離が短く、着席した状態でも生でレースの迫力を楽しめるのが魅力だ。
この日の宇都宮は、雨予報が少し後ろへズレて曇り空。お昼頃に多少雨がパラついた程度で最後まで持ちこたえてくれた。客入りは相当なものだったようで、道行く常連と思しき方何人かに尋ねると「こんなに人が入っているのは見たことない」と口を揃えていた。
メインスタンド裏のステージ周りはもちろんのこと、東入場門の場外にも栃木県競輪選手会のブースや、宇都宮餃子、ラーメン店などのブースが立ち並ぶ。開催中は入場無料となっていて場外に出ても気にならない上、何よりメインスタンドからも近いため、第1レースの開始前から賑わいを見せた。
東入場門に隣接し、らいりんルームと呼ばれる初心者ガイダンスコーナーも盛況。競輪好きの落語家・柳家禽太夫さんによる競輪初心者教室が開かれており、まさに老若男女、子どもから大人まで、笑いを交えた柳家さんの話に聞き入っていた。
ここの日替わりランチは表示が時価となっていて少し怖気づきそうになるが、実際のところはチキン・なすカレー 900円との表示。お安い。これを頂こうと思ったが、次々とお客さんが訪れて席を埋めていたため、取材時間も考慮してここでの食事は断念。メインスタンドの2階観覧席にある食堂へと向かった。
最初に行ったメインスタンド2階の東端にある3号食堂で見かけたのが「とりそば」。見れば競輪場内のグルメグランプリで優勝したとある。これだ!と迷わず注文すると、ほとんど待たずに出てきたそれは500円。ワンコインで鶏肉タップリのそばを頂けて大満足だった。食事用のテーブルは、通路の向かいにバンク側に向けて設置されており、レースを観戦しながら食事をすることも可能だ。
さあ、お腹を満たしたところで、いよいよ共同通信社杯競輪の決勝の模様をお伝えしよう。
号砲が鳴り、最内に並んだ1番車・眞杉匠(栃木)、2番車・古性優作(大阪)、3番車・郡司浩平(神奈川)が先頭を取ろうと並びかけていく。車間を空けた牽制の後、先頭誘導選手の後ろを取ったのは地元の眞杉。後方からラインを組む6番車・恩田淳平(群馬)を番手に迎え入れ、その後ろに古性、5番車・南修二(大阪)の近畿、郡司を前にして9番車・深谷知広(静岡)の南関東、3人連携の九州勢、4番車・山崎賢人(長崎)、8番車・北津留翼(福岡)、7番車・荒井崇博(長崎)が後ろ攻めとなった。
3周目1センター付近から九州勢が前へ出始めると、バックストレッチ半ばからジャンの鳴る中、先頭員が離脱し、外から前に出た九州勢に、南関東の郡司と深谷が被せていく。近畿の古性と南が九州勢の後ろに周り、それを見る形で関東の眞杉と恩田は最後方へと退く。眞杉はこの時の展開を「本来中段あたりが欲しかったが、前で受ける形になってしまったので、なんとか組み立てた。ホームでは後手を踏んでしまった」と振り返る。
最終周回へのホームストレッチで郡司が山崎の前へ出て、深谷が追走。やや車間を空けて北津留、古性、南が続く。しかし2コーナー出口付近から、8番手まで下げていた眞杉が追撃に出る。3コーナーへ差し掛かると内を縫って古性の後ろを取り、再び勝負可能な位置に浮上。山崎に代わって先頭に立った北都留を、外に出た古性と眞杉が4コーナーから直線にかけて追い詰めていくと、一旦前に出た古性も捉えきり、眞杉が先頭でゴールイン。力強く拳を振り上げながら、7月のサマーナイトフェスティバルに続くGII連勝を地元で決めた。
勝負所での動きを聞かれた眞杉は「バックで仕掛けた感じは、外へ行くと浮いちゃうなと思ったので、内へ行った。コース取り的には良かった。勝負は最後までわからなかったが、優勝はゴールした瞬間に確信した」と話し、「(地元・宇都宮の直線で前を飲み込めたのは)高校生の時から10年くらい走ってるので、それが出たかなと思う。」と、地の利も活かした勝利に酔いしれた。
一方の関東勢、眞杉に前を任せた恩田淳平も大外から追い込んで、GII初の決勝で3着。「苦しい展開になった時は、眞杉が優勝出来るパターンだけ頭に入れて走ってほしいと言ってあった。自分は無我夢中でついていく感じだった。なかなか走れる場所じゃない中で確定板に載ることができて嬉しいし、課題も見つかっているので、次からの競走に活かしていけるようにしたい」と充実の表情を浮かべていた。
GIオールスター競輪を制している古性優作は、「横が(眞杉でなく近畿の)南と思って張らなかった」とするも「自分の力不足」と悔いた。しかし事前に腰痛も発症しながら当開催の初日から決勝まで全て2着。「負けてなお強し」の印象を残した。
駅西口から発着している無料の競輪ファン専用バス・通称「ファンバス」に乗って15分ほど揺られると、八幡山公園の一角にある宇都宮競輪場に到着。バンク周長は500mで、全国に43ある競輪場の中でも大宮、高知とここの3箇所のみとなっており、7箇所ある333mバンクよりも珍しい。コーナー部分の傾斜「カント」は25°47'44"と緩やかで、全国平均である31°53′15″に比べて約6度の差がある(※平均値は独自計算によるもの。木製250mバンクのTIPSTAR DOME CHIBAを除く)。周長に応じてみなし直線も63.3mと長く、追い込み型の選手に有利と言われている。
さて場内はと言うと、長いバンク周長とは裏腹に、これまでこのシリーズで紹介してきたどこよりもコンパクト。バックストレッチ側に観覧施設がないため、入場門や場内全てのアクセスがホーム側となっている。メインスタンド前も立ち見スペースから後ろの座席までの距離が短く、着席した状態でも生でレースの迫力を楽しめるのが魅力だ。
この日の宇都宮は、雨予報が少し後ろへズレて曇り空。お昼頃に多少雨がパラついた程度で最後まで持ちこたえてくれた。客入りは相当なものだったようで、道行く常連と思しき方何人かに尋ねると「こんなに人が入っているのは見たことない」と口を揃えていた。
メインスタンド裏のステージ周りはもちろんのこと、東入場門の場外にも栃木県競輪選手会のブースや、宇都宮餃子、ラーメン店などのブースが立ち並ぶ。開催中は入場無料となっていて場外に出ても気にならない上、何よりメインスタンドからも近いため、第1レースの開始前から賑わいを見せた。
東入場門に隣接し、らいりんルームと呼ばれる初心者ガイダンスコーナーも盛況。競輪好きの落語家・柳家禽太夫さんによる競輪初心者教室が開かれており、まさに老若男女、子どもから大人まで、笑いを交えた柳家さんの話に聞き入っていた。
競輪場グルメ優勝作品の「とりそば」をいただく
1日競輪場を楽しむには食事は外せない、ということで、今回も場内の食堂をご紹介。宇都宮競輪場は、無料観覧席のある範囲内だけで常設の食事処が5箇所ある。中でもメインスタンドとセンタースタンドの間の2階デッキからアクセスできる「競輪場の見えるレストラン」は広く、ゆったりと出来る。ここは競輪場の開場日は無料で一般開放されており、公園を訪れる宇都宮市民の憩いの場ともなっている。ここの日替わりランチは表示が時価となっていて少し怖気づきそうになるが、実際のところはチキン・なすカレー 900円との表示。お安い。これを頂こうと思ったが、次々とお客さんが訪れて席を埋めていたため、取材時間も考慮してここでの食事は断念。メインスタンドの2階観覧席にある食堂へと向かった。
最初に行ったメインスタンド2階の東端にある3号食堂で見かけたのが「とりそば」。見れば競輪場内のグルメグランプリで優勝したとある。これだ!と迷わず注文すると、ほとんど待たずに出てきたそれは500円。ワンコインで鶏肉タップリのそばを頂けて大満足だった。食事用のテーブルは、通路の向かいにバンク側に向けて設置されており、レースを観戦しながら食事をすることも可能だ。
さあ、お腹を満たしたところで、いよいよ共同通信社杯競輪の決勝の模様をお伝えしよう。
地の利も活かして好調・眞杉匠が地元V 共同通信社杯競輪 決勝[GII]
決勝の第11レースを前にして、メインスタンドが観客で埋まりきる。雷神バンクの名に相応しく、と言うべきか、今にも雷鳴が響いてきそうな空模様の下、決勝出場選手が敢闘門両脇から吹き出すスモークと歓声を浴びながら、スタートラインへと着いた。号砲が鳴り、最内に並んだ1番車・眞杉匠(栃木)、2番車・古性優作(大阪)、3番車・郡司浩平(神奈川)が先頭を取ろうと並びかけていく。車間を空けた牽制の後、先頭誘導選手の後ろを取ったのは地元の眞杉。後方からラインを組む6番車・恩田淳平(群馬)を番手に迎え入れ、その後ろに古性、5番車・南修二(大阪)の近畿、郡司を前にして9番車・深谷知広(静岡)の南関東、3人連携の九州勢、4番車・山崎賢人(長崎)、8番車・北津留翼(福岡)、7番車・荒井崇博(長崎)が後ろ攻めとなった。
3周目1センター付近から九州勢が前へ出始めると、バックストレッチ半ばからジャンの鳴る中、先頭員が離脱し、外から前に出た九州勢に、南関東の郡司と深谷が被せていく。近畿の古性と南が九州勢の後ろに周り、それを見る形で関東の眞杉と恩田は最後方へと退く。眞杉はこの時の展開を「本来中段あたりが欲しかったが、前で受ける形になってしまったので、なんとか組み立てた。ホームでは後手を踏んでしまった」と振り返る。
最終周回へのホームストレッチで郡司が山崎の前へ出て、深谷が追走。やや車間を空けて北津留、古性、南が続く。しかし2コーナー出口付近から、8番手まで下げていた眞杉が追撃に出る。3コーナーへ差し掛かると内を縫って古性の後ろを取り、再び勝負可能な位置に浮上。山崎に代わって先頭に立った北都留を、外に出た古性と眞杉が4コーナーから直線にかけて追い詰めていくと、一旦前に出た古性も捉えきり、眞杉が先頭でゴールイン。力強く拳を振り上げながら、7月のサマーナイトフェスティバルに続くGII連勝を地元で決めた。
勝負所での動きを聞かれた眞杉は「バックで仕掛けた感じは、外へ行くと浮いちゃうなと思ったので、内へ行った。コース取り的には良かった。勝負は最後までわからなかったが、優勝はゴールした瞬間に確信した」と話し、「(地元・宇都宮の直線で前を飲み込めたのは)高校生の時から10年くらい走ってるので、それが出たかなと思う。」と、地の利も活かした勝利に酔いしれた。
一方の関東勢、眞杉に前を任せた恩田淳平も大外から追い込んで、GII初の決勝で3着。「苦しい展開になった時は、眞杉が優勝出来るパターンだけ頭に入れて走ってほしいと言ってあった。自分は無我夢中でついていく感じだった。なかなか走れる場所じゃない中で確定板に載ることができて嬉しいし、課題も見つかっているので、次からの競走に活かしていけるようにしたい」と充実の表情を浮かべていた。
GIオールスター競輪を制している古性優作は、「横が(眞杉でなく近畿の)南と思って張らなかった」とするも「自分の力不足」と悔いた。しかし事前に腰痛も発症しながら当開催の初日から決勝まで全て2着。「負けてなお強し」の印象を残した。
着 | 車番 | 選手名 | 級班 | 着差 | 上りタイム |
---|---|---|---|---|---|
1着 | 1 | 眞杉匠(栃木) | SS | 13.6秒 | |
2着 | 2 | 古性優作(大阪) | SS | 1/2車身 | 13.7秒 |
3着 | 6 | 恩田淳平(群馬) | S1 | 1/2車輪 | 13.5秒 |
4着 | 8 | 北津留翼(福岡) | S1 | 1/4車輪 | 13.9秒 |
5着 | 9 | 深谷知広(静岡) | SS | 1/2車身 | 14.0秒 |
6着 | 5 | 南修二(大阪) | S1 | 3車身 | 14.0秒 |
7着 | 7 | 荒井崇博(長崎) | S1 | 3車身 | 14.2秒 |
8着 | 3 | 郡司浩平(神奈川) | S1 | 1車身1/2 | 14.8秒 |
9着 | 4 | 山崎賢人(長崎) | S1 | 大差 | 15.6秒 |
あなたの自転車見せて下さい 〜レジェンド・神山雄一郎選手編〜
今回のバイク紹介は、競輪界のレジェンド・神山雄一郎選手にお声がけさせていただいた。その名は、かつて取材したツール・ド・フランス覇者、グレッグ・レモンも知るほど。私自身、そんな憧れの自転車選手に直接お会い出来るということで非常に緊張していたものの、ご挨拶した瞬間からにこやかな笑顔で応じてくださり、改めてそのお人柄に惚れ直してしまった。GI史上最多16勝はよく知られるところだが、22年ぶりとなる宇都宮競輪場での共同通信社杯、前回2002年開催の優勝者も神山選手だ。その後2015年にもこのレース(開催は防府)を勝ち通算6勝。これは当レースの最多勝利かつ47歳22日での最高齢優勝として記録されている。ロードレースとの繋がりに触れると、2014年のジャパンカップクリテリウム前に行われたレジェンドクリテリウムでも勝利した事を覚えている方もいるだろう。
そんな神山選手のフレームは、地元栃木のビルダー・井田倫正氏が生み出す「RINSEI LAB」。2012年に井田製作所を立ち上げ、翌年NJS登録をして以来、競輪選手のフレームを作り続けている。
喋り始めるとその口ぶりや表情は、自転車好きの少年そのもの。一つ聞けばセッティングについてのこだわりを目を輝かせながら話してくださった。「サドルはずいぶんと使い込まれてますね」と尋ねると「このサドルは、もう3年くらい使っています。そろそろ替えたいのだけど、替えると前後の位置、傾き、収まり、全部違ってしまうから、時間に余裕がある時にしか出来なくて、めんどくさい。でも、そのめんどくさいのが好きなんですけどね(笑)」
選手が自転車をいじってしっくり来たとよく聞くが、実際にはどういじったりするのでしょうか?との問いには、「そう言う時、いじった事実によってプラセボ的な効果が生じることもある。ただ実際はどうかと言うと、たとえばハンドルやステムも同じサイズ表記でも実際のリーチが5mmくらい違う事があるんです。それを表記まんまと思って使ってしまうと、乗った時に違和感が出る。そこでステムを5mm短くするとハンドルまでの距離が元通りになるからピタっとくるんですね。わからないでやってる選手は、これがなんとなくになってしまうから、(自分のポジションが)しっかり決まらない」
神山選手は、現在56歳。淘汰が激しい競輪界で長年トップレーサーとして君臨し、900以上の勝利を重ねて来られたのは、感覚に頼るのみならず、パーツ一つ一つの誤差をも把握した上で自転車を調整してきたからこそだろう。神山選手、この度は貴重な機会を設けてくださり、ありがとうございました。
JKA協賛プレゼントキャンペーン第3弾
共同通信社杯競輪 選手サイン入りクオカードを5名様に
公益財団法人 JKA協賛によるプレゼントキャンペーンも第3回目となりました。前2回と同じく応募フォームにあるアンケートにお答えいただいた方の中から「共同通信社杯競輪」オリジナルデザインのクオカード1,000円分(2023、2024年版1枚ずつの500円x2枚セット)を抽選で5名様にプレゼントします。そして今回はなんと、共同通信社杯競輪でGII 2連勝を達成した眞杉匠選手と、パリ五輪男子マディソンで5位に入賞し、2015年の全日本ロード覇者でもある窪木一茂選手のお二人に、封筒やクオカードにサインを頂きました。それぞれ5組中3組、2組ずつのご提供となります。この下のボタンをクリックし、ぜひフォームからご応募ください!
※どちらの選手のサイン入りクオカードかはお選びいただけません。
※ご応募は、お一人様1回限りとさせていただきます。複数回ご応募された場合は、抽選対象から除外となりますので、ご注意ください。
※当選者の発表は、賞品の発送をもって代えさせていただきます。電話やメールでの当選結果のご質問にはお答えできませんので、ご了承ください。
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次回は今年最後のGIとなる「第66回 朝日新聞社杯競輪祭・第2回競輪祭女子王座戦」。開催地となる小倉競輪場はドーム状の全天候型で、風雨の影響を受けずに走れる400mバンクとなっている。ガールズ決勝と男子決勝を、二編に分けてお伝えする予定だ。
提供:公益財団法人 JKA text&photo: Yuichiro Hosoda