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朝一番で東京から新幹線に揺られること約5時間、福岡県北九州市の小倉競輪場で開催される今年最後のGI「朝日新聞社杯競輪祭・競輪祭女子王座戦」へとやってきた。

小倉競輪場は、競輪発祥の地として知られる。戦後間もない1948年11月20日、第二次世界大戦により疲弊した地域の復興を願い、この地で競輪が初めて開催された。当初は競輪と言う用語自体がまだ未定着の段階であったため、広告等では「公認車券附サイクル・レース(※1)」とも表記されていた。なお、漢字は同じだが、始めのうちは「きょうりん(※1)」と読まれていたようだ。

※1 出典:轡田隆史ほか著 文春新書「競輪という世界 」より。

小倉競輪場の片隅にある「競輪発祥の地」の碑。左隣は競輪開設に尽力した旧小倉市長 浜田良祐氏の功績を称える石碑 photo: Yuichiro Hosoda

場内では競輪70周年記念写真展が行われていた photo: Yuichiro Hosoda
第1回小倉競輪の様子 photo: Yuichiro Hosoda


かつては出場選手達が自転車に跨り、市内を行進したと言う photo: Yuichiro Hosoda

いつしか呼び名が「けいりん」となった競輪も今年で76年目。競輪祭は、競輪発祥を記念して行われる大会であり、今年で66回目となる。そして昨年より、本稿でリポートする競輪祭女子王座戦が、開催全6日間のうち初日から3日目までに組み込まれている。

最寄り駅は、JR小倉駅から北九州モノレールに乗り換えて3駅先の香春口三萩野(かわらぐちみはぎの)駅。そこから7〜8分ほど歩くと小倉けいりんの開催場である「北九州メディアドーム」に到着する。バンク周長は開設当初500mであったが、後に400mへ。1998年のドーム化後もこの周長は維持された。見なし直線は56.9メートル。屋内競技場のため、風雨の影響を受けることなく競走と観戦が行える。

北九州モノレールの始発駅でもある小倉駅 photo: Yuichiro Hosoda

競輪祭開催中、小倉駅のコンコースには大会をPRする大型タペストリーや看板、デジタルサイネージが見られた photo: Yuichiro Hosoda
モノレール小倉駅のエスカレーターに設置されたサイネージも競輪祭。銀河鉄道999のメーテルも photo: Yuichiro Hosoda


小倉けいりんの開催場である北九州メディアドーム photo: Yuichiro Hosoda

競輪場前で観客を出迎える看板とビッグモニター photo: Yuichiro Hosoda
メインエントランスへ続く階段とエスカレーター。逆側にもあり、エレベーターもあるため、アクセスは良好 photo: Yuichiro Hosoda


小倉の400mバンク全貌 photo: Yuichiro Hosoda

数々の名選手を生み出した小倉競輪場だが、中でもやはり世界選手権V10・競輪祭最多5勝の中野浩一さんの後継者とされた、吉岡稔真(よしおかとしまさ)さんを紹介したい。前回バイク紹介で登場いただいた神山雄一郎選手ともしのぎを削った吉岡さんは、GIを11勝、KEIRINグランプリ2勝、うち競輪祭3勝と、その期待にそぐわぬ活躍を見せ、神山選手とともに東西の横綱と並び称された。場内には記念館が設けられ、勝利した数々のGIやKEIRINグランプリのトロフィーや楯、ご本人が乗っていたバイク等を間近に見ることが出来る。

吉岡さんは、引退後解説者などでご活躍されていたが、2024年2月に脳梗塞を発症し、現在まで復帰に向けリハビリに励んでいる。7月、自身の名を冠した「吉岡稔真カップ争奪戦」で愛弟子の小川勇介選手(福岡)が優勝。表彰式に登場し、共に涙していた姿が思い出される。ご快癒を祈りたい。

小倉をホームバンクとしていた吉岡稔真さんの記念館 photo: Yuichiro Hosoda

吉岡稔真さんが打ち立てた輝かしい競走実績を解説付きで知ることが出来る photo: Yuichiro Hosoda
4度制覇した日本選手権競輪の優勝楯や、競輪祭のトロフィーなどが並ぶ photo: Yuichiro Hosoda


吉岡稔真さんが駆ったウノ・ピスタ photo: Yuichiro Hosoda
引退後の2007年から小倉で開催されている「吉岡稔真カップ争奪戦[FI]」のトロフィー photo: Yuichiro Hosoda


定番メニュー+串づくし メディア食堂

毎度おなじみ競輪場グルメ、今回は常設店舗の一つ「メディア食堂」にお邪魔した。様々な揚げ物やフランクフルトなどが串に刺されて販売されていた。

見ればキュウリやラッキョウも串になっている。「これはなんと言う名前ですか?」と店員のお姉様に聞くと「名前はないのよ〜。キュウリの串刺し?こっちはラッキョウの串刺しかな?」とのお答え。これまでの他場では見たことのない串メニューに出会えたので、競輪場定番のモツ煮込みとともにこれらをいただくことに。

よく考えてみると、串刺しの食べ物は利き手でない方にも持てるので、合理的だ。もう片方の手にビールを持ったり、ペンを持ちながらも食べられる。キュウリはそのままかと思いきや、浅漬でほんのり味が載っており、美味しい。モツ煮やラッキョウももちろん!ごちそうさまでした。

にこやかに料理を紹介してくださったメディア食堂の皆さん photo: Yuichiro Hosoda
とにもかくにも串モノ尽くし photo: Yuichiro Hosoda


ラッキョウとキュウリの串、それにモツ煮込みをいただいた photo: Yuichiro Hosoda
場内常設の食事処「メディア食堂」と隣接する「ドリーム」の案内板がそこかしこに見られた。自らB級グルメと称しているところが微笑ましい photo: Yuichiro Hosoda


世界女王・佐藤水菜が昨年2着の雪辱をはらす 競輪祭女子王座戦[GI]

11月21日(木)に決勝を迎えた競輪祭女子王座戦は、ガールズケイリンのGIとして昨年より新設され、今年が2回目。初代女王は、アジア選手権などでもメダルを獲るなど活躍し、先日ナショナルチーム引退を発表した梅川風子(東京)。今年も決勝へと歩を進めた。

しかし注目は、やはり世界選女子ケイリンでアルカンシェルを獲得した佐藤水菜(神奈川)に集まった。競馬のように単勝があればオッズはおそらく1.1倍と言ったところだろうか。今夏のオールスター優勝も含め、昨年の当レースで2着となって以降、ガールズケイリンでは負けなしの絶対女王に他の選手がどう立ち向かうか、と言う構図となった。

決勝出場選手紹介のステージに並んだ選手達 photo: Yuichiro Hosoda

にこやかな笑顔の合間に緊張感も漂わせていた佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda
ナショナルチーム引退後、初のGI決勝となる太田りゆ(埼玉) photo: Yuichiro Hosoda


準決勝で佐藤の番手を逃さず着いて決勝に駒を進めた當銘直美(愛知) photo: Yuichiro Hosoda
準決勝で梅川風子(東京)と太田りゆ(埼玉)を負かして1着の久米詩(静岡) photo: Yuichiro Hosoda


太田りゆ(埼玉)も含め、ナショナルチームでの活動に専念していた選手3名が年末のガールズグランプリに出るには、GI優勝で優先出場権を獲る、即ちここで勝つしかない状況。準決勝でその太田、梅川に土をつけた久米詩(静岡)や、佐藤の番手を取り準決勝2着とし優出※を果たした當銘直美(愛知)が対抗馬と見られた(※優勝戦出場のこと)。

先頭誘導員が発走機の横を通過して号砲がなると、太田がS(スタート:先頭誘導員を除いて一番前)を取り、その番手に石井貴子(千葉)、梅川、尾崎睦(神奈川)と続いた。5番手に付けた佐藤の番手を取ったのは準決勝に続きここも當銘。最後方には久米詩(静岡)が控えた。

赤板(残り2周)に入ると梅川と尾崎が前2人から大きく車間を開け、さらには佐藤も同様にこの2人との間を開けた。久米が上がっていく。バックストレッチに入るところで、最後尾から久米が進出。それに合わせるように佐藤と當銘も後ろに付き、前との差を詰める。

先頭員がバックからスタート。選手達が待つホームストレッチへと駆ける photo: Yuichiro Hosoda
太田りゆ(埼玉)がSを取りに行く photo: Yuichiro Hosoda


すんなりと並びは決まり、太田りゆ(埼玉)が前受け、その番手に石井貴子(千葉)がつけた photo: Yuichiro Hosoda

赤板の2センター、3番手につけていた梅川風子(東京)が大きく車間を開く photo: Yuichiro Hosoda
何度も振り返って後ろの動きに注意を払っていた太田りゆ(埼玉) photo: Yuichiro Hosoda


最終周回に差し掛かる直線で梅川が踏むと、久米が着いていく。1センター過ぎには、その外から佐藤が當銘を連れる形で捲ってくる。しかし先頭で太田が粘り、直線勝負に。ここでも脚色衰えない太田が譲らぬ走りを見せるも、佐藤が外から力強く踏み続け、太田を捲り切って優勝を決めた。選手紹介のステージで「昨年負けた1番車となったので、2番車が良かった」と話していたが、その唯一とも言える不安を自ら払拭し、ガールズグランプリへの切符を掴んだ。

3着は當銘直美。予選から有力選手の番手を取って追い込む形を徹底し、GI決勝の確定板に名を乗せた。

最終周回に入ったところから佐藤水菜(神奈川)が捲りを見せる photo: Yuichiro Hosoda
ホームストレッチで逃げ粘る太田りゆ(埼玉)を佐藤水菜(神奈川)が追い込む photo: Yuichiro Hosoda


ゴールライン手前で太田りゆ(埼玉)を捉え、佐藤水菜(神奈川)が優勝 photo: Yuichiro Hosoda

「今日はSを取りに行こうかと思っていたけど、2番がすかさず(自分の)後ろに入るのを見て、番手に入られるよりは別の選手の前がいいと思って作戦を変えた。そしたらやっぱり(先頭員を含めて)6番手だったので、遅めの仕掛けになるだろうと思い、5番(梅川)の山を乗り超えられたら優勝出来ると組み立てを変えて走ったら、その通りレースが運んだ」と佐藤はレースを振り返った。

インタビューでは国内でガールズケイリンを走り続けた選手達の最後のグランプリ出場枠を自分が埋めたことに「勝負の世界の難しさ」と複雑な表情も見せるも、「出場権を獲れたので、ガールズグランプリ2連覇に向けて頑張りたい」と前を向いた。

トロフィーを高く掲げて見せる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda
プレゼンターのパリ五輪柔道48kg級金メダリスト・角田夏実さんと写真に収まる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda


突然の祝福のテープの雨に驚く2人 photo: Yuichiro Hosoda

同県の男子選手達に胴上げされる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda
競輪祭女子王座戦[GI] 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 1 佐藤水菜(神奈川) L1 11.8秒
2着 3 太田りゆ(埼玉) L1 3/4車身 12.1秒
3着 4 當銘直美(愛知) L1 1/4車輪 11.8秒
4着 7 石井貴子(千葉) L1 1/2車身 12.0秒
5着 2 久米詩(静岡) L1 3/4車身 12.0秒
6着 6 尾崎睦(神奈川) L1 3/4車身 12.0秒
7着 5 梅川風子(東京) L1 1/4車輪 12.2秒
ガールズグランプリ2024出場予定選手
選手名
児玉碧衣(108期、福岡)
石井貴子(106期、千葉)
佐藤水菜(114期、神奈川)
坂口楓華(112期、愛知)
尾崎睦(108期、神奈川)
尾方真生(118期、福岡)
石井寛子(104期、東京)

あなたの自転車見せて下さい 〜元ロードトップレーサー・吉川美穂編〜

このコーナーも初回の川崎開催から数えて飛び石で6回目。この回では、ロードレースでも活躍し、栃木のライブガーデンビチステンレやスペインの強豪「ビスカヤ・ドゥランゴ」にも所属していた吉川美穂選手(和歌山)に、競走後のバイクを見せていただいた。ガールズケイリンの世界に入ってもその実力は健在。3着までの連対率は直近4ヶ月で9割超えで、トップクラスが揃う開催でも決勝に乗ることが多い存在となっている。

ロードレースでも活躍した吉川美穂選手(和歌山)のピストはブリヂストン・アンカーのTR9 photo: Yuichiro Hosoda

彼女のバイクは、他の選手にはない拘りが詰まった、ブリヂストン・アンカーTR9。競輪を始める際、師匠に用意してもらったモデルで、他と乗り比べた事もあるが、これがシックリ来ているとのこと。全体のセッティングは「ちょっと大きく乗りたいので」と120mmのステムにしていると言う。他の選手のように調子の良し悪しでポジションをいじる事はなく「絶対に変えません」と首尾一貫している。

サドルを見るとブランドはセッレ・イタリアだが、競輪選手がよく使うフライトシリーズではなかった。本人に聞くと「よくわかりません。一番安いモデルじゃなかったかな」とモデル名までは気にしていない様子。後で調べてみたところ「X1レディ」と言う女性向けの穴開きサドルと言うことがわかった。

ハンドル幅350mm、ステムは「ちょっと大きめに乗りたい」と120mm photo: Yuichiro Hosoda
セッレ・イタリアの穴開きサドルは、よく見るフライトシリーズではなくX1レディ photo: Yuichiro Hosoda


自署が入った蛍光ピンクのサドルカバー photo: Yuichiro Hosoda
「アルミはシックリ来なくて」とスチール製のトゥークリップを奢ったMKS SUPREME photo: Yuichiro Hosoda


「自分のバイクにしかない一番の特徴は?」と聞くと、クランク長をあげてくれた。競輪選手のスタンダードである165mmではなく、170mmをチョイス。「クランク短い方が回転はしやすいんですけど。山とかなら短い方がいいので、ロードは167.5を使ってます。競輪でも165は試して、今年も一回迷走して165にしたんですが、やはり170の方が使いたい筋肉が使えます」

「それと、見た目の方なんですがフレームも。古いタイプのANCHORと入ったモデル。この古い重たいやつが自分には合ってますね。慣れの問題かもしれないんですけど、好きですね」言われてみれば確かに!現行モデルは「BRIDGESTONE」がメインロゴとなっており、ガールズケイリンで見るのもこちらが主流だ。一番目立つ部分を見落とすなど、目の付け所が甘い筆者でありました。

競輪選手には珍しい170mm長のデュラエースクランク photo: Yuichiro Hosoda
ホイールベースの試行錯誤の跡が垣間見えるリアエンド photo: Yuichiro Hosoda


今では珍しい、ダウンチューブに「ANCHOR」ロゴが入ったフレーム photo: Yuichiro Hosoda

吉川選手は、競輪祭女子王座戦の決勝進出はならなかったものの、この日は第1レースのL級 ガールズ選抜を1着で飾り、開催を締めた。この結果を受け、年末のガールズグランプリは補欠となったが、記者会見でも時折笑顔を交えながら、その先を見据えてコメントをしていた。吉川選手、取材に応じてくださり、ありがとうございました。

吉川美穂選手(和歌山)は最後に1着(白・1番車)を獲り、当開催を締めた photo: Yuichiro Hosoda
笑顔で記者会見後の写真撮影に応じる吉川美穂選手(和歌山) photo: Yuichiro Hosoda



JKA協賛プレゼントキャンペーン第4弾
競輪祭・競輪祭女子王座戦 選手サイン入りクオカード & 2025競輪カレンダー

早くも第4回となりました公益財団法人 JKA協賛によるプレゼントキャンペーン。応募フォームにあるアンケートにお答えいただいた方の中から「競輪祭・競輪祭女子王座戦」オリジナルデザインのクオカード1枚(500円分)を抽選で5名様にプレゼントします。

今回のクオカードももちろん選手直筆サイン入り。世界王者で競輪祭女子王座優勝の佐藤水菜選手を2枚、競輪祭優勝の脇本雄太選手を3枚、ご用意しました。さらに、2025年版競輪カレンダーも1名様に当たります!応募時にクオカードかカレンダーかを選べます。この下のボタンをクリックし、ぜひフォームからご応募ください。

佐藤水菜選手、脇本雄太選手の直筆サイン入りクオカード photo: Yuichiro Hosoda
ビッグレースやナショナルチームで活躍する選手達が月替りで登場する2025競輪カレンダー photo: Yuichiro Hosoda


応募締切:2024年12月14日(土)

応募フォームはこちら!

どちらの選手のサイン入りクオカードにするかはお選びいただけません。
カレンダーに選手直筆サインはありません。
ご応募は、お一人様1回限りとさせていただきます。複数回ご応募された場合は、抽選対象から除外となりますので、ご注意ください。
当選者の発表は、賞品の発送をもって代えさせていただきます。電話やメールでの当選結果のご質問にはお答えできませんので、ご了承ください。
当サイトにおける個人情報の取り扱いについて、ご応募される前に下記のリンク先にある文章をお読みください。応募と同時に当方針に同意したものとみなされます。

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次回は11月24日(日)の男子GI・競輪祭。実質残り2枠となったKEIRINグランプリ出場権を賭けた賞金争いが熾烈となっており、緊張感漂う最終日となりそうだ。

佐藤水菜(神奈川)が、観客に手を振りながらバンクを後にする photo: Yuichiro Hosoda
提供:公益財団法人 JKA text&photo: Yuichiro Hosoda