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売り上げ総額64億6833万!真夏の人気イベント「サマーナイトフェスティバル」

JR北松戸駅から2、3分も歩けば、すぐサーカステントっぽい入場ゲートが見えてくる。住宅街の真ん中にあるここが松戸競輪場。同日開催の男子GII「サマーナイトフェスティバル」とガールズFII「ガールズケイリンフェスティバル」を取材するために、編集部きっての競輪スペシャリストであるセンパイ細田さんと一緒にやってきたのでした。

松戸けいりんイベント情報が掲示された北松戸駅の改札口 photo: Yuichiro Hosoda
北松戸駅の駅スタンプも競輪のシンボルマークが入っている photo: Yuichiro Hosoda



久しぶりの競輪場来訪となったイソベ photo: Yuichiro Hosoda

開催中は無料で入場が可能だ photo: Yuichiro Hosoda
明るいうちからメインスタンドには人がギッシリ photo: Yuichiro Hosoda


男子の「サマーナイトフェスティバル」は、2005年からスタートしたGII開催(レースではなく"開催"と言うのが競輪流)で、「特別競輪」に位置付けられる名称の通りのナイター競走だ。2014年から「ガールズケイリンフェスティバル」を併催し、翌年から3日間開催となった。

特別競輪は、最高峰のKEIRINグランプリ、その次から順に「GI(合計6開催)」、「GII(合計4開催)」とカテゴライズされており、ビッグレースとも呼ばれる(略してビッグとも)。GIIはこの中で見れば低い格付けだが、それでも過去のビッグレースの優勝者等が選抜出場してハイレベルな戦いを繰り広げる。ロードレースで例えるならモニュメントとはいかずとも、UCIワールドツアーの1戦レベル以上に重要度は高いのだ。

ロイヤル席のエントランスの壁面いっぱいに描かれた画家・絹谷幸二氏の作品「日月万丈富嶽」 photo: Yuichiro Hosoda
胃がんで2004年に逝去した地元の東出剛選手のバイクやトロフィーが並ぶ photo: Yuichiro Hosoda


2センター側から見る松戸のバンク photo: Yuichiro Hosoda

ガールズケイリンフェスティバルにも有名選手が多数出場するとあって、終わってみれば売り上げ総額はサマーナイトフェスティバル史上過去最高となる64億6833万2900円(!)を達成。昨年140億円以上を売り上げたグランプリは別格ではあるものの、目標の55億円を9億円以上も上回る人気開催となったのだった。

フードもイベントも安くて充実 今の競輪は街を挙げたフェスティバル

見渡す限り人、人、人。若い人や家族連れが本当に多かった photo: Yuichiro Hosoda

アイドルグループやお笑い芸人がステージで観客を盛り上げる photo: Yuichiro Hosoda
射的やくじ引きも。全部無料で楽しめます photo:So Isobe


人気なのはレースだけじゃない。何度もお伝えしているように、今の競輪は一昔前のような鉄火場的雰囲気はほとんどなくて、ファミリー層がお祭り的に楽しめる「街をあげてのイベント」に生まれ変わっている。特に松戸競輪、このフェスティバルはびっくりするくらい子供連れが多くて、それはGoogleのクチコミにも投稿されている通り。

常設レストラン「北門食堂」 photo: Yuichiro Hosoda

常設の北門食堂でカツカレーが品切れと聞いたイソベは、カレーに串カツのトッピングをお願い photo: Yuichiro Hosoda
松戸競輪場で人気のおでん屋さん。静岡名物の黒はんぺんが味わえる(売り切れ涙) photo: Yuichiro Hosoda


マッピー辨財天は、幸運を呼ぶ松戸競輪場のキャラクター「マッピー」を祀っている photo: Yuichiro Hosoda
ステージの予想コーナーに人々が集まる photo: Yuichiro Hosoda


日が落ちて、観客で埋め尽くされたメインスタンドの立ち見エリアと一般席 photo: Yuichiro Hosoda

なんせ入場料は無料で(最近は大多数の競輪場が開催期間中無料なのだ)、フードトラックはたくさん出ているし、併設食堂は某孤独のグルメよろしく渋くて安ウマで、アイドルのライブも、お笑いライブも、プロレスもお化け屋敷もふれあい動物わんにゃんフェスもやってるし、子供たちに大人気の射的も、くじ引きも、ふわふわ遊具も全部タダ。串カツかじりながらお隣の家族連れに聞いてみたら「競輪場ってちょっと怖いイメージがあったんですけど、全然違くてびっくりしました。子どもたちも大満足です」とのこと。個人的に競輪取材は初回の川崎に続いて2度目だが、もうすでに競輪のイメージは良いものとして上書きされているのです。

ここからはセンパイ細田さんにバトンタッチして男女決勝戦のレースレポートを紹介します。

宵闇が訪れ、ライトに照らされる正門 photo: Yuichiro Hosoda

後続を寄せ付けぬ走り 尾方真生が最後のフェスティバル優勝

夜も更けつつある中、まずはガールズケイリンフェスティバルの決勝が第11レースに行われた。来年度よりガールズGIの女子オールスター競輪が新設されるため、2014年に始まった当レースは第11回目の今回がラスト。最後の女王の座を賭けて、7名の選手が決勝に挑んだ。

岸和田のガールズGI・パールカップでは決勝進出ならなかった児玉碧衣(福岡)が1番車に。児玉に次ぐ勝率をマークしている坂口楓華(愛知)、同県の當銘直美(愛知)が隣の5番に収まり、高い先行力を見せる尾方真生(福岡)までが人気の上位となった。出場選手の所属を見ると、愛知が3名、福岡が3名、高知1名。男子の競輪であればラインが形成されるところだが、ガールズでは単騎同士の戦い。それぞれの自力が試されるレースとなる。

當銘直美(愛知)が勢いよく飛び出して、最後のガールズケイリンフェスティバルがスタート photo: Yuichiro Hosoda

スタート直後に勢いよく飛び出したのは當銘直美。しかしマークからの差しを狙う當銘は、1周かけてゆっくりと前に上がってきた尾方に先頭を譲り、その番手に付く。その後は坂口楓香、小林優香(福岡)、山原さくら(高知)、児玉碧衣、中野咲(愛知)の順で周回した。

赤板を過ぎてバックストレッチで先頭誘導選手が外れると、互いに前をやや切っていた3番手の坂口、5番手の山原が仕掛ける。しかし最終周回に入ってすぐ、1センターに入る前に山原が失速。山原の後ろにいた児玉がそこから追い出すも、前3人を抜くことは出来ず。

先頭を取った尾方真生(福岡)。その番手に當銘直美(愛知)、後ろに坂口楓香(愛知)が続く photo: Yuichiro Hosoda
児玉碧衣(福岡)は後ろから2番手 photo: Yuichiro Hosoda


先行を続ける尾方真生(福岡)との差は詰まらず、バックストレッチへ差し掛かる photo: Yuichiro Hosoda

ホームストレッチで最内から進出してきた小林が、前で粘っていた當銘と坂口を交わすも、先頭で逃げ続ける尾方を捉えることは叶わずフィニッシュ。終始先行し、力で押し切った尾方真生がビッグタイトルを手にした。

最終レースの後の表彰式では「全部突っ張って先行したいと思っていた。今までの練習と、奈良で練習させてもらった成果が出たと思う。(ゴール前は後ろから選手が迫っていたが)2センターからちょっと余裕があり、しっかり踏み直しも出来て勝てた」とレースを振り返った尾方。昨年までガールズグランプリに3年連続で出場もビッグタイトルに手が届かずにいた彼女は、「自分の走りでタイトルを取れて嬉しい」と勝利の喜びも口にした。

終始先頭で駆けた尾方真生(福岡)が後続を寄せ付けず最後のガールズケイリンフェスティバルを制した photo: Yuichiro Hosoda

小さくガッツポーズを繰り返して喜びを表す尾方真生(福岡) photo: Yuichiro Hosoda
マッピーから花束を受け取る尾方真生(福岡) photo: Yuichiro Hosoda

ガールズケイリンフェスティバル 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 6 尾方真生(福岡) L1 10.1秒
2着 7 小林優香(福岡) L1 3/4車身 9.9秒
3着 5 當銘直美(愛知) L1 1/8車輪 10.1秒
4着 4 坂口楓華(愛知) L1 3/4車身 10.1秒
5着 1 児玉碧衣(福岡) L1 1/2車身 10.0秒
6着 3 中野咲(愛知) L1 1車身1/2 10.0秒
7着 2 山原さくら(高知) L1 大差

サマーナイトの締めくくり 眞杉と吉田が関東ワンツーを決める

ガールズケイリンフェスティバルの余韻残る中、涼しげな風がその熱気を冷ましながら迎える最終レースは、もちろん男子のサマーナイトフェスティバル決勝。

神奈川勢は1番の高松宮記念杯覇者・北井佑季を筆頭に、準決勝で後続に差を付け快勝した5番郡司浩平と6番松谷秀幸の3名が進出し最多勢力に。近畿は9番の脇本雄太(福井)が前受けし、2番古性優作(大阪)が番手。調子を取り戻しつつある3番眞杉匠(栃木)と4番吉田拓矢(茨城)が関東ライン、残る8番の新田祐大(福島)と7番山口拳矢(岐阜)が単騎参戦する形となった。

レースが始まると、先頭員の後ろをまずは古性が取りに行く。外から脇本が前を受ける形でこれに割って入り、古性の後ろには関東の眞杉と吉田が続く。単騎の山口がその後ろを取り、神奈川勢は北井、郡司、松谷の順で並び、最後尾に新田が付いた。

号砲とともにサマーナイトフェスティバルの決勝出場選手たちが駆け出す photo: Yuichiro Hosoda

脇本雄太(福井)を一番前にして周回を重ねる photo: Yuichiro Hosoda
郡司浩平(神奈川)を連れて北井佑季(神奈川)が前を伺う photo: Yuichiro Hosoda


残り3周回となる1センターで北井が踏み始め、神奈川の2人を連れて前を狙っていく。バックストレッチで先頭員が離れると北井が先頭を張ろうと脇本に並びかける。しかしここで脇本も前を譲らない。この北井と脇本、南関東と近畿の激しい競り合いは最終周回のジャンが鳴っても続き、会場を大いに沸かせた。

残り半周となるバックストレッチに入る頃、ついに北井が番手を下げていくと、一旦後ろに下げていた眞杉が吉田を引き連れて外から前を伺う。眞杉は一気に古性と脇本を抜き去る勢いを見せたが、3コーナーで古性から横の牽制を受け、イエローライン付近まで膨らんでしまう。しかしこれに怯むことなく瞬時に体制を立て直して4コーナー出口までにこれを抜き去ると、直線で単独先頭に躍り出る。

北井佑季(神奈川)と脇本雄太(福井)が前で激しく突っ張り合う photo: Yuichiro Hosoda
一旦番手を下げる眞杉匠(栃木)と吉田拓矢(茨城)の関東ライン photo: Yuichiro Hosoda


古性はこの時点で差し返す力は残っておらず、外から追い込んできた吉田と新田の後塵も拝して4番手に後退。道中不利を受けながらも脚色で勝った眞杉匠が、吉田の3/4車身前でゴールラインを超え、昨年11月以来のビッグVを決めた。2着には眞杉の動きに着いていった吉田拓矢が入り、関東勢のワンツーフィニッシュで夏の夜の大競り合いは終幕となった。

「作戦にはなかったが、いい位置が取れて恵まれた。最後までかかりきりで苦しかった。厳しい牽制を受けたが、なんとか乗り越えられて良かった」とレースについて話した眞杉。今年初のビッグレース制覇には「正月から怪我続きで決勝にも乗れてなかったので、後期いいスタートが切れた。前半は苦しかった。去年も後半上がってきたので、オールスター、その前の福井記念も優勝目指して頑張ります」と抱負も。昨年のオールスター覇者が、ここで息を吹き返した。

古性優作(大阪)の横の動きにも怯まず前へと進出する眞杉匠(栃木) photo: Yuichiro Hosoda

眞杉匠(栃木)が外から追い込んだ吉田拓矢(茨城)とともに関東のワンツーフィニッシュを決めた photo: Yuichiro Hosoda

サマーナイトフェスティバルを制した眞杉匠(栃木) photo:So Isobe
賞金パネルを掲げる眞杉匠(栃木) photo:So Isobe


2人揃ってガッツポーズを決める尾方真生(福岡)と眞杉匠(栃木) photo:So Isobe
サマーナイトフェスティバル[GII] 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 3 眞杉匠(栃木) SS 9.7秒
2着 4 吉田拓矢(茨城) S2 3/4車身 9.7秒
3着 8 新田祐大(福島) S1 3/4車輪 9.4秒
4着 2 古性優作(大阪) SS 1/2車身 9.9秒
5着 7 山口拳矢(岐阜) SS 1車身 9.7秒
6着 9 脇本雄太(福井) SS 1/2車身 10.1秒
7着 6 松谷秀幸(神奈川) S1 8車身 9.8秒
8着 1 北井佑季(神奈川) S1 大差
9着 5 郡司浩平(神奈川) S1 3/4車輪

あなたの自転車見せて下さい 〜ガールズケイリン・久米詩選手編〜

久米詩選手(静岡)のバイクはブリヂストンのTS9 photo: Yuichiro Hosoda

今回の「あなたの自転車見せてください~競輪選手編~」で紹介するのは、ガールズファンから高い人気を誇る久米詩選手(静岡)。自転車経験無しの状態から父で元選手の康徳さんを追って競輪界に飛び込み、一躍トップ選手の仲間入りを果たした彼女と、そのバイクにフォーカスしました。

ハンドメイドのスチールフレームではなく、エアロ形状のカーボントラックバイクを使うガールズケイリン。ボーマやブリヂストン、ガンウェル、カラビンカ、MBKと合計5ブランドあるNJS認定フレームの中で、久米詩選手が駆るのはブリヂストンのTS9。東京オリンピックの日本代表メンバーに供給された短距離特化型のハイエンドフレームだ。1年半以上乗っているそうだがヘタリもなく、硬く頑丈だという。

120mmのNITTO製アヘッドステム photo: Yuichiro Hosoda
サドルにはセッレイタリアのフライトジェルフローをチョイス photo: Yuichiro Hosoda



クランクはデュラエースFC-7700。チェーンも油汚れは一切ない photo: Yuichiro Hosoda

リアハブは両切りのグランコンペプロ photo: Yuichiro Hosoda
出走レースと車番が記された出走前点検終了証 photo: Yuichiro Hosoda


笑顔でバイクを紹介してくれた久米詩選手 photo: Yuichiro Hosoda

「特に機材のこだわりは全然無いんですよね。ただ速く走ればいい、というくらいで。」と言う久米選手だが、細部に至るまで磨き上げられた車体から競技に対する熱意が見えてくる。ホイールは反応性を上げるためにスポーク結線処理が施され、ハブはグランコンペプロ。空気圧は「入れられるだけ(9.5気圧)」入れているとのこと。

男子選手では極限までハンドル位置を下げたセッティングが多いが、体格が小さいガールズ選手はややアップライトなポジションがスタンダード。久米選手も20mm弱のスペーサーを使っていることがポイントだ。なお久米選手が使う日東のNJ-89EXステム(-17度)は、オーバーサイズコラムに対応したNJSアヘッドステムという唯一無二の特徴を持つことも面白いポイントだ。

JKA協賛プレゼントキャンペーン! 特別デザインのクオカード1,000円分を5名様に

シクロワイアードではこの度、競輪関係団体の公益財団法人 JKAの協賛を得てプレゼントキャンペーンを実施します。応募フォームにあるアンケートにお答えいただいた方の中から、サマーナイトフェスティバルのために作成された特別デザインのクオカード1,000円分(500円x2枚セット)を抽選で5名様にプレゼント。

サマーナイトフェスティバルの特製クオカード500円分2枚セット(2023年&2024年デザイン)を抽選で5名様にプレゼント

クオカードは、2023年版と2024年版の1枚ずつがひと組となっています。競輪ファンにとっては是非とも手に入れておきたい、特別競輪恒例の人気アイテムです。応募はこの下のボタンをクリックし、フォームからエントリーを!

応募締切:2024年7月30日(火)

応募フォームはこちら!

ご応募は、お一人様1回限りとさせていただきます。複数回ご応募された場合は、抽選対象から除外となりますので、ご注意ください。
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夜風涼しい松戸のナイターレースを楽しんだCW取材班。次は8月13日(火)~18日(日)に神奈川県平塚競輪場で開催される男女のオールスター競輪へ。ファン投票の結果を重視して出場選手が決まる唯一のGIレースであり、男子の昨年大会は今回優勝した眞杉匠選手が制しています。どんな熱戦が繰り広げられるのか、今から楽しみです。
提供:公益財団法人 JKA text&photo: So Isobe, Yuichiro Hosoda