2024/07/24(水) - 18:30
売り上げ総額64億6833万!真夏の人気イベント「サマーナイトフェスティバル」
JR北松戸駅から2、3分も歩けば、すぐサーカステントっぽい入場ゲートが見えてくる。住宅街の真ん中にあるここが松戸競輪場。同日開催の男子GII「サマーナイトフェスティバル」とガールズFII「ガールズケイリンフェスティバル」を取材するために、編集部きっての競輪スペシャリストであるセンパイ細田さんと一緒にやってきたのでした。男子の「サマーナイトフェスティバル」は、2005年からスタートしたGII開催(レースではなく"開催"と言うのが競輪流)で、「特別競輪」に位置付けられる名称の通りのナイター競走だ。2014年から「ガールズケイリンフェスティバル」を併催し、翌年から3日間開催となった。
特別競輪は、最高峰のKEIRINグランプリ、その次から順に「GI(合計6開催)」、「GII(合計4開催)」とカテゴライズされており、ビッグレースとも呼ばれる(略してビッグとも)。GIIはこの中で見れば低い格付けだが、それでも過去のビッグレースの優勝者等が選抜出場してハイレベルな戦いを繰り広げる。ロードレースで例えるならモニュメントとはいかずとも、UCIワールドツアーの1戦レベル以上に重要度は高いのだ。
ガールズケイリンフェスティバルにも有名選手が多数出場するとあって、終わってみれば売り上げ総額はサマーナイトフェスティバル史上過去最高となる64億6833万2900円(!)を達成。昨年140億円以上を売り上げたグランプリは別格ではあるものの、目標の55億円を9億円以上も上回る人気開催となったのだった。
フードもイベントも安くて充実 今の競輪は街を挙げたフェスティバル
人気なのはレースだけじゃない。何度もお伝えしているように、今の競輪は一昔前のような鉄火場的雰囲気はほとんどなくて、ファミリー層がお祭り的に楽しめる「街をあげてのイベント」に生まれ変わっている。特に松戸競輪、このフェスティバルはびっくりするくらい子供連れが多くて、それはGoogleのクチコミにも投稿されている通り。
なんせ入場料は無料で(最近は大多数の競輪場が開催期間中無料なのだ)、フードトラックはたくさん出ているし、併設食堂は某孤独のグルメよろしく渋くて安ウマで、アイドルのライブも、お笑いライブも、プロレスもお化け屋敷もふれあい動物わんにゃんフェスもやってるし、子供たちに大人気の射的も、くじ引きも、ふわふわ遊具も全部タダ。串カツかじりながらお隣の家族連れに聞いてみたら「競輪場ってちょっと怖いイメージがあったんですけど、全然違くてびっくりしました。子どもたちも大満足です」とのこと。個人的に競輪取材は初回の川崎に続いて2度目だが、もうすでに競輪のイメージは良いものとして上書きされているのです。
ここからはセンパイ細田さんにバトンタッチして男女決勝戦のレースレポートを紹介します。
後続を寄せ付けぬ走り 尾方真生が最後のフェスティバル優勝
夜も更けつつある中、まずはガールズケイリンフェスティバルの決勝が第11レースに行われた。来年度よりガールズGIの女子オールスター競輪が新設されるため、2014年に始まった当レースは第11回目の今回がラスト。最後の女王の座を賭けて、7名の選手が決勝に挑んだ。岸和田のガールズGI・パールカップでは決勝進出ならなかった児玉碧衣(福岡)が1番車に。児玉に次ぐ勝率をマークしている坂口楓華(愛知)、同県の當銘直美(愛知)が隣の5番に収まり、高い先行力を見せる尾方真生(福岡)までが人気の上位となった。出場選手の所属を見ると、愛知が3名、福岡が3名、高知1名。男子の競輪であればラインが形成されるところだが、ガールズでは単騎同士の戦い。それぞれの自力が試されるレースとなる。
スタート直後に勢いよく飛び出したのは當銘直美。しかしマークからの差しを狙う當銘は、1周かけてゆっくりと前に上がってきた尾方に先頭を譲り、その番手に付く。その後は坂口楓香、小林優香(福岡)、山原さくら(高知)、児玉碧衣、中野咲(愛知)の順で周回した。
赤板を過ぎてバックストレッチで先頭誘導選手が外れると、互いに前をやや切っていた3番手の坂口、5番手の山原が仕掛ける。しかし最終周回に入ってすぐ、1センターに入る前に山原が失速。山原の後ろにいた児玉がそこから追い出すも、前3人を抜くことは出来ず。
ホームストレッチで最内から進出してきた小林が、前で粘っていた當銘と坂口を交わすも、先頭で逃げ続ける尾方を捉えることは叶わずフィニッシュ。終始先行し、力で押し切った尾方真生がビッグタイトルを手にした。
最終レースの後の表彰式では「全部突っ張って先行したいと思っていた。今までの練習と、奈良で練習させてもらった成果が出たと思う。(ゴール前は後ろから選手が迫っていたが)2センターからちょっと余裕があり、しっかり踏み直しも出来て勝てた」とレースを振り返った尾方。昨年までガールズグランプリに3年連続で出場もビッグタイトルに手が届かずにいた彼女は、「自分の走りでタイトルを取れて嬉しい」と勝利の喜びも口にした。
ガールズケイリンフェスティバル 結果
着 | 車番 | 選手名 | 級班 | 着差 | 上りタイム |
---|---|---|---|---|---|
1着 | 6 | 尾方真生(福岡) | L1 | 10.1秒 | |
2着 | 7 | 小林優香(福岡) | L1 | 3/4車身 | 9.9秒 |
3着 | 5 | 當銘直美(愛知) | L1 | 1/8車輪 | 10.1秒 |
4着 | 4 | 坂口楓華(愛知) | L1 | 3/4車身 | 10.1秒 |
5着 | 1 | 児玉碧衣(福岡) | L1 | 1/2車身 | 10.0秒 |
6着 | 3 | 中野咲(愛知) | L1 | 1車身1/2 | 10.0秒 |
7着 | 2 | 山原さくら(高知) | L1 | 大差 |
サマーナイトの締めくくり 眞杉と吉田が関東ワンツーを決める
ガールズケイリンフェスティバルの余韻残る中、涼しげな風がその熱気を冷ましながら迎える最終レースは、もちろん男子のサマーナイトフェスティバル決勝。神奈川勢は1番の高松宮記念杯覇者・北井佑季を筆頭に、準決勝で後続に差を付け快勝した5番郡司浩平と6番松谷秀幸の3名が進出し最多勢力に。近畿は9番の脇本雄太(福井)が前受けし、2番古性優作(大阪)が番手。調子を取り戻しつつある3番眞杉匠(栃木)と4番吉田拓矢(茨城)が関東ライン、残る8番の新田祐大(福島)と7番山口拳矢(岐阜)が単騎参戦する形となった。
レースが始まると、先頭員の後ろをまずは古性が取りに行く。外から脇本が前を受ける形でこれに割って入り、古性の後ろには関東の眞杉と吉田が続く。単騎の山口がその後ろを取り、神奈川勢は北井、郡司、松谷の順で並び、最後尾に新田が付いた。
残り3周回となる1センターで北井が踏み始め、神奈川の2人を連れて前を狙っていく。バックストレッチで先頭員が離れると北井が先頭を張ろうと脇本に並びかける。しかしここで脇本も前を譲らない。この北井と脇本、南関東と近畿の激しい競り合いは最終周回のジャンが鳴っても続き、会場を大いに沸かせた。
残り半周となるバックストレッチに入る頃、ついに北井が番手を下げていくと、一旦後ろに下げていた眞杉が吉田を引き連れて外から前を伺う。眞杉は一気に古性と脇本を抜き去る勢いを見せたが、3コーナーで古性から横の牽制を受け、イエローライン付近まで膨らんでしまう。しかしこれに怯むことなく瞬時に体制を立て直して4コーナー出口までにこれを抜き去ると、直線で単独先頭に躍り出る。
古性はこの時点で差し返す力は残っておらず、外から追い込んできた吉田と新田の後塵も拝して4番手に後退。道中不利を受けながらも脚色で勝った眞杉匠が、吉田の3/4車身前でゴールラインを超え、昨年11月以来のビッグVを決めた。2着には眞杉の動きに着いていった吉田拓矢が入り、関東勢のワンツーフィニッシュで夏の夜の大競り合いは終幕となった。
「作戦にはなかったが、いい位置が取れて恵まれた。最後までかかりきりで苦しかった。厳しい牽制を受けたが、なんとか乗り越えられて良かった」とレースについて話した眞杉。今年初のビッグレース制覇には「正月から怪我続きで決勝にも乗れてなかったので、後期いいスタートが切れた。前半は苦しかった。去年も後半上がってきたので、オールスター、その前の福井記念も優勝目指して頑張ります」と抱負も。昨年のオールスター覇者が、ここで息を吹き返した。
サマーナイトフェスティバル[GII] 結果
着 | 車番 | 選手名 | 級班 | 着差 | 上りタイム |
---|---|---|---|---|---|
1着 | 3 | 眞杉匠(栃木) | SS | 9.7秒 | |
2着 | 4 | 吉田拓矢(茨城) | S2 | 3/4車身 | 9.7秒 |
3着 | 8 | 新田祐大(福島) | S1 | 3/4車輪 | 9.4秒 |
4着 | 2 | 古性優作(大阪) | SS | 1/2車身 | 9.9秒 |
5着 | 7 | 山口拳矢(岐阜) | SS | 1車身 | 9.7秒 |
6着 | 9 | 脇本雄太(福井) | SS | 1/2車身 | 10.1秒 |
7着 | 6 | 松谷秀幸(神奈川) | S1 | 8車身 | 9.8秒 |
8着 | 1 | 北井佑季(神奈川) | S1 | 大差 | |
9着 | 5 | 郡司浩平(神奈川) | S1 | 3/4車輪 |
あなたの自転車見せて下さい 〜ガールズケイリン・久米詩選手編〜
今回の「あなたの自転車見せてください~競輪選手編~」で紹介するのは、ガールズファンから高い人気を誇る久米詩選手(静岡)。自転車経験無しの状態から父で元選手の康徳さんを追って競輪界に飛び込み、一躍トップ選手の仲間入りを果たした彼女と、そのバイクにフォーカスしました。
ハンドメイドのスチールフレームではなく、エアロ形状のカーボントラックバイクを使うガールズケイリン。ボーマやブリヂストン、ガンウェル、カラビンカ、MBKと合計5ブランドあるNJS認定フレームの中で、久米詩選手が駆るのはブリヂストンのTS9。東京オリンピックの日本代表メンバーに供給された短距離特化型のハイエンドフレームだ。1年半以上乗っているそうだがヘタリもなく、硬く頑丈だという。
「特に機材のこだわりは全然無いんですよね。ただ速く走ればいい、というくらいで。」と言う久米選手だが、細部に至るまで磨き上げられた車体から競技に対する熱意が見えてくる。ホイールは反応性を上げるためにスポーク結線処理が施され、ハブはグランコンペプロ。空気圧は「入れられるだけ(9.5気圧)」入れているとのこと。
男子選手では極限までハンドル位置を下げたセッティングが多いが、体格が小さいガールズ選手はややアップライトなポジションがスタンダード。久米選手も20mm弱のスペーサーを使っていることがポイントだ。なお久米選手が使う日東のNJ-89EXステム(-17度)は、オーバーサイズコラムに対応したNJSアヘッドステムという唯一無二の特徴を持つことも面白いポイントだ。
JKA協賛プレゼントキャンペーン! 特別デザインのクオカード1,000円分を5名様に
シクロワイアードではこの度、競輪関係団体の公益財団法人 JKAの協賛を得てプレゼントキャンペーンを実施します。応募フォームにあるアンケートにお答えいただいた方の中から、サマーナイトフェスティバルのために作成された特別デザインのクオカード1,000円分(500円x2枚セット)を抽選で5名様にプレゼント。クオカードは、2023年版と2024年版の1枚ずつがひと組となっています。競輪ファンにとっては是非とも手に入れておきたい、特別競輪恒例の人気アイテムです。応募はこの下のボタンをクリックし、フォームからエントリーを!
※ご応募は、お一人様1回限りとさせていただきます。複数回ご応募された場合は、抽選対象から除外となりますので、ご注意ください。
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夜風涼しい松戸のナイターレースを楽しんだCW取材班。次は8月13日(火)~18日(日)に神奈川県平塚競輪場で開催される男女のオールスター競輪へ。ファン投票の結果を重視して出場選手が決まる唯一のGIレースであり、男子の昨年大会は今回優勝した眞杉匠選手が制しています。どんな熱戦が繰り広げられるのか、今から楽しみです。
提供:公益財団法人 JKA text&photo: So Isobe, Yuichiro Hosoda