キャノンデールが誇るオールラウンドレーサーのSuperSix EVOをインプレッション。今回はベースグレードとなるノーマルモッドにフォーカスし、その性能に徹底的に迫る。



キャノンデール SuperSix Evo 3 photo: Makoto AYANO / cyclowired.jp

個性的なアプローチで、独自の魅力を放つバイクを世に問うてきたアメリカンブランド、キャノンデール。そのロードバイクラインアップの屋台骨を支えてきたオールラウンドレーサーが"SuperSix"シリーズだ。

イヴァン・バッソやペテル・サガンなど、名だたるエースたちの走りを支えてきたSuperSix。2007年の初代の登場以降、幾度もモデルチェンジを果たしつつ、2023年に最新の第4世代へと生まれ変わっている。

剛性と乗り心地のバランスを整えるリア三角
エアロと剛性のバランスに優れるダウンチューブ
ヘッドチューブも薄く作られている



常にキャノンデール最高のレーシングバイクとして開発されてきたSuperSix EVO。その最新作となる第4世代は、山岳を飛ぶように登る軽量性と、平坦路を風のように駆ける空力性能を併せ持つ真のオールラウンダーとして世に送り出された。

その試みは最上級グレードであるLAB71モデルにおいては、フレームで770gという重量をマーク。ペイント済み、56サイズのフレームの数値としては非常に優れた数値を示した。

一方、現代のレーシングバイクの必修科目とも言えるエアロダイナミクスについても長足の進歩を遂げている。同社のエアロロードであるSystem SixやTTバイクのSliceなどの開発で得た知見をフィードバックすることで、大きな空力的アドバンテージを手に入れた。

ハイエンドのDNAを受け継ぐSUPERSIX  EVO3
コックピットはステムとハンドルが別体とされている


シマノ105 DI2がメインコンポーネントに据えられる
ホイールはDT Swiss R470だ



フレームの各チューブはカムテール形状を採用。細身でありながら空力と剛性バランスに優れたチュービングによって、前面投影面積を低減しつつ空気抵抗係数を下げることで大幅にエアロダイナミクスを向上させた。

また、ワイドスタンスのフォークブレードはホイールとの間の空気抜けを改善。もちろんケーブルはフル内装とされており、露出をゼロとすることで更なるドラッグの低減を図っている。

ボトムブラケットの規格はBSAだ
キャノンデールが得意とする形状で乗り心地の良さを演出する



これらの空力的進化によって、SuperSix EVOは前世代に比べて圧倒的な速さを得た。45km/hでの走行時では、前世代と比較し12Wもの出力節約効果を発揮し、アセンブルによってはSystemSixに迫る性能を記録したという。

タイヤクリアランスは30mm幅のタイヤを装着してなお、6mmの余裕が生まれるほど。ホイールとの相性次第では28Cタイヤを装着しても30mm近い幅となる組合せもあるため、現在のレースシーンで主流となった28Cタイヤだけでなく、30Cまでも使用可能となるキャパシティは今後の拡張性という意味でも魅力的な点だ。

非常に薄いシートポストが採用されている
ボトルケージ台座は3ボルト仕様
ワイドスタンスのフォークもエアロを意識した形だ



今回インプレッションするSuperSix EVO 3は、上位モデルと同一のフレームデザインを踏襲しつつ、ノーマルモッドカーボンを使用することで手の届きやすい価格と扱いやすい性能を実現した一台。

ケーブルフル内装システムの恩恵を最大限に受けられるシマノ 105DI2コンポーネントを装備し、ポテンシャルを高めた戦略スペックの完成車を、アルディナサイクラリーの成毛店長とシクロワイアード編集部の高木がインプレッション。



−インプレッション
「レーシングバイクのDNAがありつつ、乗りやすさも魅力なミドルグレード」成毛千尋(アルディナサイクラリー)

「レーシングバイクのDNAがありつつ、乗りやすさも魅力なミドルグレード」成毛千尋(アルディナサイクラリー) photo: Kenta Onoguchi

SUPERSIX EVO 3の第一印象としては、奇をてらわない乗りやすい自転車だと感じました。レーシングバイクのコンセプトながら、乗り心地も悪くなく、レース一辺倒という感じはしませんでした。

見た目はエアロを重視しているような印象を受けますが、実際に乗ってみると従来のオーソドックスなレーシングバイクの雰囲気があります。踏み込んでも、バイクがヨレるような感じはせず、レーシングバイクとしてしっかりとした印象があります。ただ、純粋な軽さとスピードを求めるなら、もっと上位グレードの方が適しているでしょう。

このバイクはフロントセンターが相当長いと乗っていても感じられます。一方でチェーンステー長は一般的なレーシングバイクのような設定なので、フロントセンターが長い分、ホイールベースも増加しており、その結果快適なバイクが生まれていると思いました。(※テストバイク:51サイズ、フロントセンター59.8cm、チェーンステー41.0cm、ホイールベース99.6cm)

「レーサーらしいシャープな反応を味わいたい、レースに出たいという気持ちがある方にはおすすめ」成毛千尋(アルディナサイクラリー) photo: Kenta Onoguchi

コーナリングに関しては、バイクを倒す時に少しだけ真っ直ぐ進んで行こうとする感じがあります。これは直進安定性を重視したジオメトリー設計になっているからでしょう。ここはエアロロードのような感覚がありましたね。

SUPERSIX EVOを気持ちよく進ませるペダリングも左右に車体を振るというよりは、真下におろすようなペダリングが似合っています。クライミングバイクよりはエアロ、とはいえピュアなエアロロードほどバイクが左右に振りにくくないバランスに調整されています。

装備面では今のホイールでも十分ですが、エアロホイールに履き替えることでさらに性能が引き出せそうです。現在の28Cタイヤは最近のトレンドに合っており、安定性と快適性のバランスが取れています。それより25Cタイヤだとヒラヒラ感が出てしまい、リズムが取りにくくなるでしょう。

試乗車の構成は25Cのクリンチャータイヤを使っていたので、アップデートするならばチューブレスの28Cに替えたいです。細いシートチューブによる乗り心地の良さと相まって、さらに快適な自転車になると思います。

SUPERSIX EVO 3はプレミアムグレードのLAB71からの設計を受け継いでいるモデルという点も評価は高いです。プロスペックよりも乗りやすくアレンジされ、手の届きやすい価格帯に設定されているので、カーボンレーシングバイクを初めて購入する方にはピッタリでしょう。レーサーらしいシャープな反応を味わいたい、レースに出たいという気持ちがある方にはおすすめの一台です。


「どんな踏み方でも応えてくれる成長性に満ちた一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「どんな踏み方でも応えてくれる成長性に満ちた一台」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

まずカッコイイバイクですよね。ハイエンドモデルと共通のシルエットで、所有欲をかなり刺激されますね。実際、走りの面でもベースグレードの枠を越えたポテンシャルを感じます。以前に上位モデルを試したことがあるのですが、苦手な領域が無い万能感のある走りはこのバイクにも受け継がれています。

とてもバランスが乗れた乗り味で、登り、下り、平坦、曲がる、停まる、ロードバイクに必要な全ての動作がニュートラルにこなせます。良い意味でクセが無い。レースを視野に入れつつ、スポーツバイクを始めたいという方にとって、有力な選択肢になるでしょう。

フレームの優れた剛性バランスがその源泉になっているのでしょう。全体的に万遍ない剛性感で、どう踏んでも良く進んでくれます。こうやって走らせてくれ!と自転車から要求されるようなモデルもありますが、このバイクはそういった自己主張は無く、あくまでライダーが主役という哲学を感じさせます。

「レースを視野に入れつつ、スポーツバイクを始めたいという方にとって、有力な選択肢」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

リズムの取りやすいバイクでダンシングもしやすいですし、下りでもニュートラルなハンドリングを見せてくれるので、落ち着いてコントロールできます。撮影時に、車が突然右折してきて進路を急に塞がれてしまう、なんてシーンもあったのですが、落ち着いて対応できる余裕がありました。

乗り始めて5分も経っていないくらいのタイミングでも、しっかりと自分のバイクとしてコントロール下に置ける素直さは大きな魅力です。特にバイクの扱いに慣れていない方にとっては心強い特性だと言えるでしょう。

この性能のフレームに、電動コンポーネントがアセンブルされて60万円台というのは、非常に納得感のある価格だと思いますね。

非常に素性の良いフレームなので、ホイールをアップグレードすればした分だけ性能が底上げされていきます。特に完成車にアセンブルされているホイールは、やはり重さが否めません。どうしても反応性や軽快感がスポイルされてしまう面があります。

「どう踏んでも良く進んでくれる」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

実際、ハイエンドなカーボンホイールに交換してみたところ、一気にその性能は底上げされました。もともと空力性能はトップグレードと同等の性能を有しているバイクですので、40mmハイトくらいのオールラウンドモデルとの相性も抜群ですし、より軽量なホイールを入れればヒルクライムや加減速の多いコースのレースへの適性もグッと向上します。

ライダーが成長していくのに合わせて、パーツをアップグレードしていくことで共に進化していくことが出来る一台です。視点を変えれば、50万円を超えるようなトップエンドのホイールと合わせても、見劣りしないだけのポテンシャルを秘めたバイクだと言えるでしょう。

キャノンデール SuperSix Evo 3

キャノンデール SuperSix Evo 3
フレーム:SuperSix EVO Carbon
フォーク:SuperSix EVO Carbon, 1-1/8" to 1-1/4" Delta steerer
ホイール:DT Swiss R470 db
コンポーネント:Shimano 105Di2
ハンドル:Vision Trimax Aero
サイズ:48, 51, 54, 56
カラー:Chalk、Viper Green、Black
価格:550,000円(税込)



インプレッションライダーのプロフィール

成毛千尋(アルディナサイクラリー)
成毛千尋(アルディナサイクラリー)

東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。

アルディナサイクラリー


高木三千成(シクロワイアード編集部)
高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。



text:Naoki Yasuoka, Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO, Kenta Onoguchi


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