B-Shop OCHI（ビーショップ・オチ）

霊峰・石鎚山からの伏流水により「水の都」として知られる愛媛県西条市。JR伊予西条駅から西に伸びるメインストリートの喜多川通り沿いにB-Shop OCHI（ビーショップ・オチ）はある。瀬戸内海にそそぐ加茂川の近くに位置する大型店舗は、2024年2月に大改装を終えた。

約80坪という驚くほど広々とした店舗スペースに、スポーツバイクが余裕を持ってゆったりとディスプレイされる。店内に整然と並ぶバイクはスペシャライズド製品がそのほとんどを占めるが、ジャンルによって選べるラインナップをわかりやすく揃えている。

それまでの店舗では、多くのブランドのバイクを並べディスプレイされていたが、改装を契機に思いきってブランドとバイクの展示数を絞り込み、あえてゆったりとした空間を確保。車種カテゴリーやジャンルごとにバイクがわかりやすく整理されて並べられ、スタッフの説明を聞きながらそれぞれのバイクの全体像や特徴、細部の違いを確認しながら見て回ることができるようになっている。

人気のS-Worksコーナーを筆頭にスペシャライズドのバイクが店内の8割以上を占め、ロードバイク、クロスバイク、MTB、グラベルバイク、キッズバイク、小径車などをカテゴリーごとに並べて展示する。ほかにピナレロのロードバイクや小径車のDAHON、KHS、トライアスロンバイクのCEEPO(シーポ）など、特色のあるブランドや車種を生かした展示もある。またオフロードコーナー、グラベルコーナー、トライアスロンコーナーなど、乗り方・遊び方のジャンルを軸とした展示も展開される。スポーツバイクに詳しくなくても、ゆったりした空間で、グレードやジャンルごとに並んだバイクの一台一台をしっかり見て、確かめながら選ぶことができるのだ。

店内の右奥にはソファーが設置されたコーナーがあり、ウェアやシューズ、サングラスなどをゆったり選ぶことができるほか、休憩スペースにもなっている。そしてフィッティングルームにも大きくスペースが取られ、奥には商談室も設けられた。それらは別室となり、仕切りが設けられることでプライベートが保たれる空間となる。

「最近は女性のお客様も増え、ゆっくりと説明を聞きながら自転車を選びたいという方が増えました。またフィッティングも好評で、一人ひとりのお客様に対し、じっくりと時間を掛けてご対応する必要も出てきました。それらを他のお客様の目を気にすることなくできるようにと、パーソナルな空間を設けました」と、店舗リニューアルのポイントを店長の中田さんは説明してくれた。

整然とした店舗は清潔感がありつつも、親しみのある明るい空間だ。「ビギナーさんにとって敷居の低い店でありたい」という代表の越智さんの思いから、専門店に入るのが初めての方が感じてしまいがちな入りづらさは一切無い。「スポーツバイクの認知度が上がった影響で、これからスポーツバイクを始めたいと言われる方の来店が多いですね」と越智さんは言う。しかも最近は女性客の方が多い日もあるのだそう。お店の中をまずは気軽に見て回ってもらいたいとの思いから、「いらっしゃいませ」の声がけはあえてしていないという。

店舗前には試乗できるバイクが並び、レンタル可能な本格的なe-Bikeやe-MTBも店内に多く揃っているため、興味のあるスポーツバイクやEバイクを、まずは体験してみたいといった要望に応えてくれる。

バイク以外の用品もかなり充実している。人気のあるスペシャライズドのサドルやアクセサリーは充実の品揃え。マヴィックのホイール＆アパレルや、MTBブランドとして人気のFOXやPOCのアパレルやプロテクター類、ヘルメットはジロやKABUTOの人気モデル、オークリーやDontPanickのアイウェア、2XUのトライアスロン用ウェットスーツなどが揃う。オルトリーブやアピデュラのバッグやバイクパッキング製品類も充実している。サイクリング向きの気が利いたアウトドア用品まで揃っている。

スパカズのボトルケージやシクロベーションのバーテープなど、バイクをカラフルに彩るアクセサリー類も厳選した人気ブランドのものを揃えるほか、キャットアイのライト、ガーミンのサイクルコンピュータ類、TOPEAKの携帯工具などが揃い、街乗りに便利な用品類も充実。好評のマックオフのケミカルはフルラインナップで展示され、今マーケットで人気のある製品の数々を厳選してラインナップしている。

「お客さんを迷わせないよう、スタッフが実際に使って良かったもの、間違いのない商品だけに厳選しています。いい意味で無駄を削ぎ落とした品揃えです」と中田さんは言う。だからどの商品もスタッフに適切な使用方法などのアドバイスを受けることができる。

2022年には隣の香川県にスペシャライズド高松がオープンしたが、そのお店もB-Shop OCHIの経営による。スペシャライズド製品が多くを占めるのはそうした理由もあるが、B-Shop OCHIはもとの店舗の良さを活かしつつ、スペシャライズド高松との連携も図っている。2店の共同でライドイベントを立ち上げ、相互のお客さんの交流をはかっているという。愛媛はオフロードのフィールドに恵まれているため、香川のお客さんを愛媛や高知のフィールドに招いて走るイベントなどを実施し、県またぎでサイクリングコミュニティの拡大をはかっているのだとか。

「自転車って楽しいね」をキャッチフレーズにするB-Shop OCHIには、毎週日曜日に実施しているイベント「サンデーライド」がある。STEP1・2・3と、レベルごとに分けてのライドを開催。内容は気楽なカフェライドからロード練習会、MTBライドツアーまで、様々な楽しみを提供している。

女性スタッフの大成さんが案内する美味しいものを訪ねて走るカフェライドにはじまり、寒風山までの初心者ライドや石鎚山ヒルクライムを目指した練習会、オフロード好きの中田さんと大前さんが案内するMTBトレイルライド、小径車好きの大串さんが教える輪行サイクリングやeBIKEツーリング、トライアスリートでもある越智代表が教えるトライアスロン練習会など、サンデーライドの楽しみ方はバラエティーに富んでいる。

若手の谷さんなどレースも走れるスタッフが居るが、いずれのイベントもレベルが高くなりすぎないように、初心者でも参加しやすいように設定しているという。ホームページにはイベント告知ページがあり、お店で自転車を購入した方でなくても誰もが参加可能だという。「西条はUFOラインの入口として有名ですから、いずれは皆さんとご一緒に走りに行きたいですね」と中田さん。

誰でも歓迎のB-Shop OCHIだが、バイクやホイールの購入者にはゴールド、シルバーなど、ランクに応じた特典が用意され、バイクの点検整備や修理にはお得な会員料金が適応される。「アフターサービスでメリットが出る仕組みとなっています。せっかく購入いただいたバイクですから。私達スタッフがメンテナンスさせていただくことで、いつも良い状態で乗ってほしいからです。自己流メンテほど危険なものはないですから」と中田さん。

どんな小さな修理でも、カルテに記して正確な記録を残すようにしているとも言う。履歴を残すことで不調の原因を特定しやすくなり、複数いるメカニックの間での情報共有も可能になる。また場合によっては修理より買い替えたほうが良い場合もあるため、2通りの見積もりを出すなど、お客様にとっていい選択をしてもらう判断剤用にもなるという。

シマノサービスセンターともなっているメカニックブースは広く、クリーンな空間だ。ときにメカニック4人が同時に作業を行っても充分なスペースが確保される。ときにメカニック同士で作業内容を確認しあい、正確性を期している様子が伺えた。

「作業方針として心がけているのは、マニュアルや基本に忠実に則って正確に作業することで、自己流を取り入れないことです。E-Bikeなど技術的に難しい製品も増える傾向ですが、メーカーとタッグを組んで学び、対応できるよう努力していきます」と中田さん。そしてクオリティとスピード感を大切に、お客様をお待たせしないという点も重視しているという。「お預かりすることもありますが、日常生活に使う自転車の場合はなるべく短時間で修理を完了してお戻しするようにしています」とも。

「メカニック作業は基本に忠実に」をモットーとしながらも、上級者の要望にも充分応える技術力とノウハウを持つことがB-Shop OCHIの強みだ。愛媛県にありながら四国4県から来店があり、とくにフィッティングを受けにくる人は県外からも多いという。現在スペシャライズドのフィッティングメソッド「RETUL」を取り入れており、中田さんと大前さん、そして越智代表の3人ものフィッター有資格者が対応にあたっている。購入前のバイクのポジション測定からのフレームサイズ選定はもちろん、スポーツライド入門者からロングライドやレースなどを目指す人の要望にも対応する。フィッティングルームのパーソナルスペース化は、より満足度の高い対応を目指した設備の充実でもある。

愛媛の貴重なスポーツサイクル専門店にして、県内外からユーザーを集める存在のB-Shop OCHI。四国のキーショップとなるほどに技術と実績を積んできた同店だが、その創業からの歴史は近代的な店舗と似つかわしくないほどに古いという。しかし戦時中の混乱により記録が途絶え、越智代表で4代目ということ以外は、創業年さえ分からないという。ただし過去は過去として、次の10年を見据えて進化することを目指している。

お店に長く居ても快適なのは、ただ店舗空間の居心地が良いからだけではなさそうだ。フランクになりすぎず、適度にフレンドリーで親切丁寧なスタッフとのやりとりが心地良いのだ。「他業界に比べても負けない接客をということで、言葉遣いや立ち居振る舞いなどから見直しているんです」と中田さん。サービス業向けの接客セミナー等に学び、研鑽を積んでいるとのこと。だからスポーツバイクを始めたいという友人を連れて行ったとしても安心してお任せできそうだ。