2021/03/09(火) - 07:48
4日目 高松〜美波 走行距離:129.85km、獲得標高:910m
四国一周サイクリングもいよいよ4日目。寝坊気味に高松のビジネスホテルを後にし、今日目指すは徳島の阿南。ルートのとり方にもよるけれど、香川と徳島は半日+半日=たった1日で通りすぎてしまう。そして今日も予定を決めない旅だ。宿の予約もせず走り出す。高松市街を抜け、途中で海沿いのローカル道に回避したりしながら、交通量の多い国道11号を飛ばす。津田からの122号・津田引田線がクルマが少ない海沿いルートでおすすめ。のどかな海に讃岐富士のような小島が浮かぶのも讃岐らしい風景だ。
東かがわ市から三本松あたりで「東讃コースショートカットルート」の案内板を見つける。そんな看板もちゃんと設置されてるのが四国一周サイクリング推奨ルートの気配りの細かい所で、感心。海沿いで鳴門方面を目指すことも考えたが、ここまで海の風景が続いたので、このショートカットルートに沿って鳴門方面をパスし、南下して吉野川を目指すことにした。
徳島との県境の山方面へ向かう道は広々としていて、ほとんど車道と同じ広さのサイクリングロードが付けられていたのには驚いてしまった。これはもともとの道の構造? 車道を走ってもクルマの通行量は少なかったから、ちょっと不思議だった。
318号線で鵜の田尾トンネルを越え、一路吉野川市へ。勾配が緩い峠越え。心配したトンネルは1.7kmほどの長さだったので、難なくクリア。徳島側へと下る道沿いには、この一帯の名物「たらいうどん」の店が多く並んでいたが、月曜とあってどこも閉まっていた。頼りにしていた道の駅どなりも閉まっていた。開いていれば食堂でたらいうどんを食べて温まりたかったのだが、月曜は不便な日だ。
「四国三郎」こと吉野川の河岸に出た。四国随一の大河の川岸には、サイクリングロードとも歩道ともつかない広い道がつけられている。車両はほぼ通行禁止で、見晴らしの良い広々とした道を追い風にのってヨットのように快速クルージング。ところどころに渡し船か漁船か、木の船があってロマンを感じる。河口の徳島市中心部までは23kmという表示。
昨日までの3日間は四国に住む知り合いや大学時代の友人とに会ったり一緒に走ったりしたが、今日からは孤独な「ぼっち旅」だ。ひとりになると急に寂しくなるが、同時に自由さも感じる。晴れやかな空の下を快走していると、寂しさよりも一人になれたことの開放感が喜びに変わるのが分かる。こんな気分も案外お天気次第なのかもしれないけど、社会に揉まれているとなかなか独りになる時間というのは持ちにくいものだから。
スイスイ走って、平均40km/hぐらいは出ていたかもしれない。川の流れと同じ方向に下り、あっという間に河口の徳島市街へ。阿波おどりの銅像が迎えてくれる。
市街外れでさっそく徳島ラーメンの店 東大へ。徳島ラーメンとは、豚骨スープに濃口醤油やたまり醤油で味付けされたこってり系の濃い味とトッピングされた煮付け肉が特徴のすき焼き風ラーメンで、寒い日のライドの昼食にはぴったり。
テーブルのかごに積まれた生卵は無料。麺を食べ終わればライスと卵をスープに投入しておじや。お代わり自由で、しっかり2杯食べた。からっ風で冷えた身体が温まった。
しばらくは交通量の多い車道が続く。国道55号線沿いのサイクルサイエンス小松島店さんに立ち寄り、この先のアドバイスをいただく。店長さん曰く「美波まで行けば安く泊まれる遍路宿もありますよ」とのこと。とはいえ美波市までは約40kmと、ちょっと遠すぎる感じなので迷いどころだ。
午後4時。阿南市に着き、まだ日が高いのでホテル予約が無いのをいいことに走り続けることにした。この先は地図で見る限り山道が続き、しばらく街が途絶えてしまうので、宿の予約をしていないことでの不安はちょっと高まる。まぁ、そのスリルも気まま旅の楽しさでもあるのだけど。
日が傾いてくると山間の道には陽が当たらず、たまらなく冷える。冷えながら淡々と走る。日没が近づいてだんだん身体がキツくなった頃、映画マッドマックスに出てくるようなイカつい3輪オートバイに2人が跨ったタンデムが真横でストップした。
内心「こりゃヤバい...」と思ったら、ヘルメットのバイザーを上げた顔に見覚えあり。梅丹本舗の元社長の松本喜久一さんではないですか!
すでにお仕事を引退し、今は悠々自適に過ごしている松本さん。ツーリングで室戸岬方面から走ってきて、ボクが四国一周をしていたことはフェイスブックの投稿で知ってたから、すれ違いざまに気付いてUターンして戻ってきてくれたのだとか。寒くて長い峠道に気が遠くなりかけてた時だったので、元気もらいました。いつもサイクリストを応援してくれる人。まさにCC! CC! サイクルチャージ!(かつてのテレビCMのフレーズです)
道標には「美波(旧日和佐)」とでてきた。なんだ、町名変更した日和佐のことか! 「日和佐うみがめトライアスロン」で有名な薬王寺とウミガメの町だ。日和佐なら知ってる。分からなくなるから市町村の名前を変えるのは勘弁して下さい...(2006年に町村合併で名前が変わったらしい)。
日が暮れて美波町に到着。そこからの宿探し。スマホで「ホテル、民宿、ゲストハウス」などとキーワード検索して、良さそうな宿をサーチ。薬王寺の参道に2,700円で泊まれるGuest Houseさくら庵」を見つけて投宿することに。オフシーズンの日が暮れてからだから、宿の女将さんは思いも寄らない飛び込みの客が現れたことにちょっと戸惑った様子だったが、すぐに部屋の支度をしてくれた。
古民家を改修した簡素なゲストハウスだった。狭くて急すぎる木の階段を登れば、広い部屋に掛け軸や箪笥が昔のままの生活感で迎えてくれた。古くても清潔感ある快適な和の寝室に大満足。お気に入りの雰囲気のある町で、こうした雰囲気のある宿に泊まれるなら、ホテルなんかよりよっぽどいい。
しかし日暮れまで走ったのが冷えた。気温が低かったし、手前の阿南市で泊まれば楽だったんだろうけど、結局は時間の余裕があると日没ギリギリまで走ってしまう性分なんだな。今日の走行距離は約130km。
食事をしに夜の町へ出る。四国八十八ヶ所の札所でもある薬王寺はライトアップされて町のシンボル的存在になっている。小さな小さな可愛い町。さくら庵の女将おすすめの阿波尾鶏と地魚料理の「ひわさ屋」へ。「1,000円ちょっとで定食が食べれてリーズナブルで美味しいから、いつも地元の人で混んでますよ」という言葉の通り。
しらす丼と阿波尾鶏の唐揚げ定食、そしてカツオの刺身がなんとも美味かった。関東じゃ見たこともない赤の鮮やかな鰹はとれたてならでは。「カツオってこんな味なんだ!」と、美味しさに素直に感動。タタキもいいけど、くさみが一切ない刺し身は初めての味だった。東京でもこれは手に入らないんだろう。
お腹を満たしたら薬王寺の温泉に浸かり、身体が芯から温まった。札所にもなっているからお遍路さんも必ず立ち寄る薬王寺と日和佐。自転車の旅人にも温かい町だ。夜はさくら庵の和室の暖かな雰囲気に包まれて早々に眠りについた。4日ぶんの疲れが溜まっていたのかもしれない。翌日のプランもあまり考えないうちに寝落ちしてしまった。
この旅の写真はすべてスマホ(iPhone12pro)で撮影しています。
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写真と文:綾野 真、取材協力:愛媛県自転車新文化推進協会