2021/03/20(土) - 18:10
土佐清水〜愛南 走行距離:105.63 km、獲得標高:1,114 m
四国一周サイクリングもついに10日目。土佐清水のペンション木のくじらは手造りログハウスの居心地いい宿だった。オーナーのおじさんはコルナゴ乗りのサイクリスト。まだ自転車を初めて間もないそうだけど、最高の環境でのサイクリングを楽しんでいる様子。奥さんもフレンドリーな方で、色々と話が弾んだ。
「木のくじら」の名前どおり、すべて木で組まれたログハウスは自分たちの手で建てたそうだ。お風呂もお部屋も広々としていて、ベッドもふかふかで清潔感たっぷり。テラスからは海が眺められて、ここはハワイ? 居心地いいったらありゃしない。連泊してお庭でくつろげたら最高だろうな。
旨みたっぷりの鯵の干物の焼き魚に、土佐のブランド鶏「土佐ジロー」の卵かけご飯。お米もツヤツヤの正しい日本の朝食は素晴らしく美味しかった。もし昨日早くに連絡していれば美味しくてボリュームたっぷりと評判の晩御飯もお願いできたのに! ともかくおススメの宿。kinokujiraのインスタグラムにも登場させてもらって、その後もSNSではお互い「イイね!」を押しあって繋がってくれるのはSNS時代ならではの楽しさですね。また泊まりに行きますね!
昨日は一日じゅう雨にやられた消耗の1日だったが、今日は朝から快晴。しかも気温は最高17℃まで上がるという予報。木のくじらのオーナーさん曰く、こんな気温は1月でも珍しくないこととか。シューズカバーは不要。冬ものアンダーウェアも脱いで膝下出してニッカーで走れるなんて、さすが四国の最南端だ。
国道321号線・足摺サニー(321)ロードの名のとおり太陽はさんさんと降り注ぐ。クルマはめったに通らず。足摺から南宇和にかけては綺麗な海にかわいい漁村や集落が点在する大好きなエリア。昨日は時間的な余裕があったけど、早めに切り上げたのは天気の悪いなか走り抜けてしまうにはあまりにもったいない一帯だから。
足摺宇和海国立公園の中にあって、日本ではじめて海中公園に指定されたという竜串・見残しエリアへ。
海中展望台「足摺海底館」を37年ぶりに訪問。赤いペンキが色褪せた、未来少年コナンに出てきそうな海中展望台はまるで昭和の遺構のようだけど、らせん階段で海底7mの深さにアクセスして、潜水艦のように窓から眺める海の魚影の濃さに驚く。
岩礁に色鮮やかなテーブルサンゴにグレやブダイ、熱帯魚のような群れ泳ぐ魚たちを観れば必ず感動できます。これ、飼ってる水族館じゃないんだよ。気軽にダイバーにはなれないけど、同じ気分を味わえます。ちなみに入場するとき、かぶっているキャップを見てか、四国一周サイクリング中のサイクリストへのサービスとして入場料を1割り引きしてくれた。
「ここだけ昭和で時間が停まったままですね」と受付のスタッフ文野さんは笑う。自転車でアクセスできる遊歩道からの海と奇岩の眺めも素晴らしいです。(歩きだとちょっと遠い)。
ちなみに近くに新しくできたばかりの新・足摺海洋館「SATOUMI」のほうが当然人気がある。ウミガメが空を飛ぶように見える水槽に、見せ方が洗練された最先端の展示水槽の数々。観光客のほとんどすべてはそちらに行くと思うけど、あえて遠くに見える足摺海底館にも足を運んでみて欲しい。
それら2つの施設のすぐ脇のエリアには、アウトドアブランドのスノーピークがプロデュースするSnow Peak Tosashimizuがある。オートキャンプ場と、コンテナのようなモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」が12棟並ぶ。住箱は1棟2名までの利用で16,000円(税抜)。カツオの藁焼き体験コーナーやスノーピークのキャンプ用品やアパレルの直営店もあり、自転車旅でも人数と料金の折り合いがつけば流行りのスタイルでキャンプ&グランピング体験ができそうだ。
観光地としてはあまりに交通の便が悪いため忘れられつつあったこのエリアだが、魅力的な自然の宝庫だけに再開発が着々と進んでいるようだ。
海岸沿いの道はアップダウンが多い。叶崎の灯台は国道56号線からすぐ脇の細道でアクセスできる。茂った木のトンネルの歩道を抜けると、小さな小さな可愛い灯台に出る。
大月の手前では海岸線側にそれる遍路道を行くことに。「四国のみち」の道標を頼りに、クルマもほとんど通らない方向へ寄り道してみる。
路面が荒れていてアップダウンはあるが、地元の人がたくさん散歩していた。周囲の森の美しさと、時おり覗く海の風景が魅力的。ウバメガシなど照葉樹林の独特の雰囲気が楽しめる。
誰に聞いてもこのエリアでは柏島(かしわじま)が今いちばん人気とのことで、向かうことにする。東京から最も遠い地域と言われる四国西南地域の中でも、さらに西南端に位置する大月町の大堂・柏島エリア。321号線を離れてアップダウンの多い半島先端への往復となるので、行くにはなかなかの覚悟が必要だ。
長い山道を抜けて、まずは一切休憩所の展望台から柏島の絶景が臨める。海の上にはマダイやブリの養殖場が浮かんでいる。柏島は橋で繋がる小さな島だが、高台から眺めただけで海の美しさと島の連なる素朴な風景に癒される。島へはかなり下るようだが(つまり帰りにまた登り返す)、もう期待しかない。
柏島へのダウンヒル中に、反対方向から登ってきたサイクリストに出会う。高知の南国市からキャンプサイクリングに来たと言う2人組だが、地元高知県民なのに海の美しさに感心していた。海に浮かぶ生簀(いけす)について説明してくれた。これから四万十市に向かうとのこと(ボクが2日前に通ってきた方向だ)。
柏島には日本の海の1/3の魚種が生息しているとも言われており、世界でも有数のダイビングスポット。橋の上から観る海は限りなく透き通ったエメラルドブルー。海底の砂が白いからか、より青さが際立つ。「船が宙に浮いて見えるほど透明度の高い海」としてSNSで話題となったその青を感じに行くだけでも行く価値はあります。
柏島へは四国一周サイクリング推奨ルートを示す路面ピクト(ブルーライン)も引かれているけど、なんと島側には「折返し」のピクトがあった。四国じゅうで折り返しピクトがあるのはここだけかもしれない!? 四国一周サイクリング事務局に聞いても、おそらく地元の方の判断で付けられたサインのようで、大変珍しいという。
橋の近くに居た住民のおばあちゃんから、港の桟橋あたりに2頭のイルカが居付いていると聞いてしばらく探してみるが、見つけられず。
柏島は人口400人の小さな島。渡ってから東京の友人がおススメしてくれた食堂「お好み きみ」を訪ねたが、おばあちゃんは店の奥から「コロナが怖くて店は閉めているんよ」と言って出てきてくれなかった。今はそれも仕方ないよね。
島での昼食は断念。当分店が無いエリアで食いっぱぐれてしまったが、そんな時は持ってたお菓子と自販機の缶コーヒーでカロリー摂取。海岸線のあまりの美しさ、素朴さにいつまでも留まりたいところだが、しばらく走り続けるだけのエネルギーしか無いから、次を急ごう。宿毛(すくも)を目指す。
午後4時に宿毛着。日暮れまでまだ余裕があるから、あとひとふんばり。20km先の愛南町を目指す。高知を離れて愛媛に入った。愛南町は御荘(みしょう)、城辺町など5ヶ町村が合併して誕生した町のことでしたか(今ようやく把握する元愛媛県民)。
愛南町では町の中心にある「青い国ホテルに泊まることに。結婚式も挙げられる、普通にビジネスホテル以上のホテルだ。
夜はホテルのすぐ隣のお食事処 なにわで夕食と晩酌。南宇和に入ったので南予式の鯛めし、御荘の焼き牡蠣、ふぐの天ぷらなどをいただく。
ちなみに鯛めしには鯛を米と一緒に炊き上げる「東予式(1日めのレポートに登場)」と、刺し身を生卵と出汁であえていただく宇和島発祥の「南予式」がある。幼少の頃は東予式でさんざん食べた記憶があるが、愛南は南予の入り口だから、さっそく南予式でいただく。
今日は細かなアップダウンが多く、総獲得標高は1,114 mと厳しかったけど、景色も最高でいい一日だった。天気が良くて暖かいとずいぶん余裕があるし、なにより気がラクになる。が、明日も午後から雨マーク。あと2日でこの旅も終わりかな。
この旅の写真はすべてスマホ(iPhone12pro)で撮影しています。
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写真と文:綾野 真、取材協力:愛媛県自転車新文化推進協会