2021/03/10(水) - 16:56
5日目 美波〜室戸岬 走行距離:89.03km、獲得標高:784m
四国一周サイクリング5日目。Guest Houseさくら庵」で迎えた朝。朝食にいただいたおにぎりとお味噌汁は300円。宿代込みで3,000円の安くて贅沢な滞在だった。女将はアジアにアフリカ、世界中をバックパック背負って旅したらしく、旅の話に花が咲いた。でも今は旅熱は冷めて日和佐ライフを楽しんでるご様子。ボクも旅好きだから、世界中を旅してたどり着いたのがこの四国の端っこの小さな町で、古民家ゲストハウスを営む暮らしというのが何だか分かる気がする。
さくら庵は「ばる二軒目」というBARにもなっていて、居間でお酒も飲めるのだけど、昨夜は疲れてしまっていつの間にか寝てしまったことが心残り。地酒やクラフトビールまでいろいろ揃ってたのに!。そして聞けばボディケアサロンもやっていて、お願いすればマッサージを受けられたとか。遅く到着してすぐに外に食事に出てしまったから気が付かなかった...。脚の疲れも溜まっていたから、惜しいことをした。美波にまた来ることがあったらさくら庵に泊まろう。
町の高台にある薬王寺に登って眺める美波の街並みはお気に入りの風景だ。小さくて可愛い町。暖かな陽を浴びているとなおさら居心地のいい町に思える。お寺やお遍路に興味は無くても、階段は長くても、ここ薬王寺の境内に登って町を眺めるのは四国旅のマストだと思う。
快晴だけど今日も風は冷たい。海岸線を離れ、しばし山あいへと入る。日陰になると寒さが堪える。夏なら涼しいのだろうけど、冬のサイクリングは日陰にならないルートどりも必要だな。
しばらく太平洋ぞいの単調な道が続く。いつしか高知入り。55号線沿いにはへんろ道のサインがあちこちにあり、歩道や山道、浜辺を歩ける道へと分岐していく。へんろ道は自転車もなんとか走れる道なので、ちょくちょく入って楽しむことに。
ところどころで海岸線から浜へ降りる小道がある。こうした小道はお遍路さんが歩くことでできた道で、浜と藪を縫うようにして繋がっている。国道のクルマの通行量は少ないけど、その道を行くほうが景色と静寂が楽しめる。
しかし冬だからか歩き遍路にはぜんぜん遭わない。じつは20年近く前に歩き遍路の取材をしていた時期があるのだけど、状況はコロナでずいぶん変わってしまったようだ。四国入りして5日目にしてまったく遭わないとは。この長い海岸線に点在する民宿は遍路宿としても活用されていて、遍路の減少で商売をやめてしまった宿が目につく。
風光明媚な小さな入り江には「那佐(なさ)」の地名がある。=NASA(アメリカ航空宇宙局)とかけるのはお約束。この先、土佐市の海岸沿いには宇佐(うさ)=USAの地名もあり、それに気づけば太平洋沿岸のアメリカ合衆国2ポイントを制することができます(笑)。
道の駅 宍喰温泉にはヨーロッパ調の建物が目を引く高級ホテル HOTEL RIVIERA ししくいが並んで建つ。全室オーシャンビューで、最高のロケーション。泊まりたくなるけど先へと進みます。ちなみに日帰り入浴はこのホテルのお風呂に入れます。
海の駅 東洋町は食堂があって販売コーナーでは多くの種類のお弁当や手作りパンなどが並ぶ、お店の少ないこのエリアでは頼もしい存在。名物の海鮮丼を、海が目の前の屋外テラスでいただく。明るく開放的な砂浜を眺めながらいただくランチは最高でした。
陽を浴びていたら眠くなり、しばし休憩。5日目だから疲れが溜まってきているようだ。南下を続けるごとに日がさんさんと降り注ぎ、天候がよくなってくのは幸運とはいえさすが南国高知だ。
左手に太平洋を見ながら続く真っ直ぐな道。その先には遠景として室戸岬付近が見えている。遍路の世界では「修業の道場」と呼ばれる高知。とくにこの長い長い海岸線は歩き遍路泣かせだ。
岬の先端が近づく頃、道沿いにむろと廃校水族館が現れる。ここは文字通り廃校になった学校を活用した水族館で、教室にウミガメの水槽が設置され、25mプールでシュモクザメが飼われていたりと、飽きることのないお魚展示が楽しめる。時間に余裕があれば立ち寄って見る価値大だ(水族館好きなんだけど、今回は疲れてたのでパス)。
「高知の先端」室戸岬が近づくと、この地で修行したと言われる弘法大師の「青年大師像」が迎えてくれる。道端には海難事故で亡くなられた漁業関係者の方々を供養するお地蔵さんも。天気が荒れた日のことを想像して、ちょっと気が引き締まる思いだ。美味しく食べたカツオのことを、漁師さんに感謝しなくては。
室戸岬では高台にある最御崎寺(ほつみさきじ)と室戸岬灯台を目指して激坂登り。スイッチバックで登る急勾配の坂をこなせば、あっという間に高度を稼げる。
しかし灯台へと通じる遊歩道が大雨で崩れたため、アクセス禁止であるという看板が立っていた。「登る前に案内出しといてよ〜!」。標高160mとはいえ、人力だとそれはツラい。さすが「修行の道場」とされる、土佐で最初の霊場だ。
お遍路さん取材時代にはこのお寺の宿坊に泊まって精進料理を食べたことが何度もある。そう、八十八ヶ所の札所になっているお寺の多くでは 宿坊に泊まることができて、質素だが旅館のように食事もお願いできるし、朝のお勤めに出ることもできる。でも今回はお遍路旅じゃないから別路線で行こう!と、スマホで今夜の宿を検索して探すことにした。
四国の端っこの岬周辺はシーズンオフだからか、僻地だからか、休業中のホテルや大型旅館が多いようだった。結果、選んだのは今風なグランピング体験宿「MUROTO base 55」。場所は室戸岬をぐるっと回り込み、室津の集落から登った山の斜面にある。そこまではちょっとしたヒルクライムだった。
近年キャンプスタイルのひとつとして人気の「グランピング」。自分のテントを張るわけじゃなく、テント気分が味わえるキャビンに泊まる気軽な宿泊形態とでも言えばいいのだろうか。MUROTO base 55は貨車を客室にしたスタイルで、夕食は庭でバーベキューが楽しめるという。ひとりでどんなもんかと思ったが、電話で予約した際に「普通の夕食も提供できますが、焚き火BBQがオススメです。一人でもできますよ」と言われて、迷わず頼んでしまった(笑)。新しい世界を開拓するつもりで体験してみようじゃないか。
貨車を改造したキャビンはIKEAとコラボして内装をコーディネートしたとあってお洒落。都会的なデザインの家具、ベッド、カーテンなど、驚くのは各キャビンすべてが違うデザインで仕立てられていること。この四国の端っこの山の中におしゃれな空間があるのは不思議な感じ。
宿泊棟が広がる庭にはソファーやデッキチェア、ハンモックが設置されたくつろぎスペース。そして到着したときにはちょうど日が沈むタイミングで、刻一刻と色を変える夕焼け空のグラデーションが美しかった。隣ではセルフィーに萌えてる女子大生3人組が。なるほどこれはインスタ映えしますね。
テラスから日が暮れるのをぼ〜っと眺める時間。空は次第に闇が支配していく。屋外のガーデンスペースに設置されたソファーに座り、薪をくべて焚き火を起こす。専用の焚き火台を使うので、火はあっというまに燃え上がる。支配人がもってきてくれたBBQ食材セットをみて驚いた。大きな肉・肉・肉...。これで3,000円? 食べ切れるのか疑惑が。
屋外で炭火を眺める心地良い時間。焚き火なんてしばらくやってなかったな...。備長炭ビールという黒ビールをいただきながら、網の上で肉を焼き、無心に食べる。BBQの炭も備長炭で、ここのオーナーは実は炭焼がもともとの本業なのだとか。
隣の女子大生3人組もセルフィーしながらBBQして、キャッキャと楽しそうだ。こっちはおっさん一人だけどね! そして負けじとスマホでセルフィー撮ります(じつは管理人さんにシャッターお願いしました)。
居酒屋で一人晩酌もいいけど、ひとりBBQもなかなかいいもんだ。というか、「おっさんひとりで何やってんだか」って感じはあるけど、楽しかった(笑)。食べきれない量に見えた大量の肉も、焼けば小さくなるもんで、苦労なく食べきっちゃいました。ここ2日はガッツリ走った割に質素系食事が続いてたからそろそろ肉補給のタイミングだったかも。
ひとりで焼きマシュマロもやりましたよ。焚き火料金もプラスされるけど、ソロサイクリストにもオススメできます。女子大生と仲良くなれるかはあなた次第ですけど!(笑)
今日の走行距離96.24km。一日じゅう寒いなか走って芯まで冷え切った身にホットシャワーのみはキツかった(熱いとはいえ)。キャンプ気分を味わいながらも身体が温まりきらず、エアコンをつけっぱなしにして寝てしまった。やっぱり寒い日のサイクリング旅の締めくくりには、熱い熱い風呂が必要だな。
この旅の写真はすべてスマホ(iPhone12pro)で撮影しています。
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写真と文:綾野 真、取材協力:愛媛県自転車新文化推進協会