2021/03/23(火) - 17:49
内子〜松山 走行距離:82.47 km、獲得標高:478m
四国一周サイクリングも12日目。ついに最終日だ。2年前のシクロクロス全日本選手権の取材の際に仕事の宿にしたHOTEL AZは半徹夜仕事での缶詰の3日間を思い出してしまうも、コスパが良くて快適だった。そのとき気になっていた内子の町並み保存地区へ向かう。3日間滞在したからホテルの裏から墓地の間を抜ける路地が近道と知ってるくらい地の利があるけど、その時はゆっくり訪問できなかったから。内子は四国一周サイクリング推奨ルートからは外れてるんだけど、自分が行きたいように走ればいい。
味のある古い町並みを自転車で散策。平日の朝早くなので観光客も居なくて独占状態だ。内子町は古くから大洲街道の交通の要衝として、また四国遍路の通過地として栄えた町。ハゼの流通で財をなした商家が建ち並ぶ町並み保存を手かがりに、「白壁と木蝋のまちづくり」を進めてきた古都。歴史的な街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されている。
町から小田川沿いで内子町役場へと向かう。役場は観光名所でもなんでもないけど、シクロクロス全日本の開催に尽力してくれたのでこっそり表敬訪問しようというわけだ。目の前の河川敷で繰り広げられた熱戦の数々を思い出す。
その役場から山側に行った民家の集落には折り紙の自動販売機がある。なんと折り紙作品が自動販売機で売られているのだ。たぶん日本で唯一だと思われる。
この折り紙はすべて隣の岡野商店の店主の岡野千鶴さんがつくっている。手漉き和紙の伝統産業で栄えた内子町で、和紙作品の展覧会に出品していた岡野さんだが、たばこの自販機がTaspo導入で使えなくなったことで、儲けなしの折り紙作品の販売を思いついた。だから折り紙が入った透明ケースはタバコの箱サイズ。観光地の町並み保存地区から離れた不便な場所なので、ここを訪れる人はごくわずかだ。
10円とか50円で買える可愛い作品たち。ふうせんきんぎょ、おはじき、しゅりけん、ぴょんかえる、パクパクすずめ...。ぴょんうさぎを買ったら、ちゃんと跳ねさせ方の取説がついていた。ほのぼのしちゃう。
内子から大洲をかすめ、肱川沿いに13km先の海を目指す。途中、JR五郎駅を訪問。予讃線(愛ある伊予灘線)の無人駅で、この一帯の地名が五郎という。
近くを国道56号線が通り、内子町役場の前にかけては県道56号線が通る。そして内子で開催されたシクロクロス全日本選手権ではマスターズクラスで筧五郎(56サイクル)が優勝したという、まさにここは56づくめ!(笑)の土地。かつて野口五郎がアイドルだった頃には、ファンも巡礼にやってきたという。
海沿いの伊予長浜へ向かうにつれ、強い向かい風が吹くようになる。河口に出るとその先は海だ。坂本龍馬らが脱藩の際に泊まった宿や、赤い鉄橋「長浜大橋」を眺める。
長浜商店街の外れにある米田菓子舗で大洲銘菓「志ぐれ」を2本買う。羊羹とも「ういろう」とも違う、小豆の餅菓子。素朴で懐かしい味はサイクリングに最高な和風エナジーバーだ。ちなみに志ぐれを作る和菓子屋は長浜に3軒あり、それぞれの味は微妙に違うようだ。
海沿いの378号線「夕焼けこやけメロディーライン」にでた。西側に海の広がる直線路が伊予市まで続く夕焼けの道。昨夜のフェイスブック投稿をみてくれた松山在住の女性サイクリスト、大澤愛さんが近くに居るとのことで、双海町下灘近くの水仙畑で合流することに。
愛(まな)ちゃんは愛媛女子のサイクルユニットノッてる!ガールズehimeのメンバーで、4年前に一緒にお仕事した仲間。最終日に美女サイクリストとお花畑で再会って、ちょっとロマンスを感じませんか!?
愛ちゃんが教えてくれた「日本水仙花開道(にほんすいせんはなかいどう)」は何の案内看板も無いけど、路地裏から登る歩道があり、線路を越えた小山の斜面に水仙畑が海を背景に広がる。
いい匂いに包まれて、斜面いっぱいの水仙の白いお花畑と海と素朴な漁港の展望を眺めれば、時間はゆっくり流れていく。ここは名所になりますね。ただし水仙の見頃は12月から1月下旬頃までと短い。ぬかるんだ道のハイキングで、バイクシューズはドロドロになってしまいましたが...。歩けるシューズのほうがいいですね。
松山まで一緒に走ろう! と愛ちゃんのナンパに成功。最近の愛媛のサイクリング事情なんかを色々話しながらルンルンサイクリング(死語?)のはじまり。
国道脇の小道から線路沿いの細道へと入っていく愛ちゃん。その先には青春18切符のポスターで有名になった下灘駅があった。ベンチに座れば目の前は海。何も無い小さな単線の駅は、今や超人気インスタスポット。ただ、何もない無人駅。ここでぼ〜っとするのが良い時間だが、今や夕刻ともなれば多くの人が訪れるという。ボクも大学時代は青春18切符で日本じゅう輪行旅をよくしたもんだ。
次に愛ちゃんは双海町の山側に2km入った山村にあるパン屋、「ぱんや107(いちまるなな)」に案内してくれた。いつもこの付近を走るときはお目当てのパンのお取り置きをお願いしてあるのだという。
畑のなかにぽつんとあるパン屋は超人気店だそうで、お取り置きしないとすぐに売り切れるとか。住所を頼りにオーナー一家の住むお家でもある可愛い古民家を探すだけで楽しいと思う。ちなみに県道221号線を翠小学校を目指して東(山側)へ走ると近づくけど、そこからが本当にわかりにくいです(ヒント:倉庫脇のあぜ道を進みます)。
海からの強風に煽られながらメロディーラインを進み、「私が唯一越えられる峠」と愛ちゃんが言う三秋峠(標高90m)を越える。この一帯は砥部焼の窯が点在するエリア。
378号線から56号線に合流する交差点近く、向井原駅の向かいにあるKitchen ichi-nichi(キッチン イチニチ)でちょっと遅めのランチ。ちょっとおしゃれな洋食屋さんで、ずっと海産物ばかり食べていた自分にはパスタランチが新鮮だった。海のものじゃなく、洋食を食べたのっていったい何日ぶりだろう!
これまでの日々を噛みしめるように走り、16時すぎに松山に到着した。愛ちゃん、色々案内してくれてありがとう。
四国一周サイクリング完走の報告をするために愛媛県自転車新文化推進協会を県庁に訪問したら、なんと担当の河上さんや山中さん、坂本さんらが盛大にお迎えしてくれた。2013年に台湾一周サイクリングでご一緒した和田さんも職場が遠いのにわざわざ会いに来てくれた。
13日前に出発した県庁のファザード前で、完走の記念写真をパチリ。
通常はオンライン申請になる完走証や記念メダル、台湾一周と四国一周のダブル環島完走ジャージまで用意してくださっていた。お役所とは思えない柔軟対応で、さすが自転車先進県! ますます育ち故郷の愛媛が好きになってしまった。
ありがとう四国一周サイクリング。12日間と雨の停滞日1日、川下り15kmを含めて総走行距離は1223.69kmでした。
この旅の写真はすべてスマホ(iPhone12pro)で撮影しています。
四国一周サイクリング完走の認定について
今回の私の場合は台湾とのダブル環島完走の達成、かつ以前に四国一周サイクリングのPRのお仕事をご一緒にした仲ということで特別にゴール時に完走証とダブル環島完走ジャージの授与を行っていただいたが、通常は公式サイトからオンライン申請によるデータの提出が必要です。「完走証」のプレゼントを受け取るには、四国一周を完走した証明として「公式チャレンジパス」に四国内29カ所の道の駅に備え付けのスタンプを指定数以上押したものか、GPS付きサイクルコンピューターで記録した走行データを送る2つの方法で申請する必要がある。いずれの場合もエントリーした際に送付されてくるチャレンジキットに同封される案内に沿って、四国一周サイクリング公式サイトからの申請となる。送付データによって申請が受理されれば、自分の走行データが記された「走行証」と「完走証」、そしてバックル式の記念メダルが郵送によってプレゼント(無料)される。
また、プレゼントされる完走メダルの箱に同包されているカードを、しまなみ海道の大三島にある多々羅しまなみ公園に持参すると「四国一周サイクリングオリジナルヘッドスペーサー」が贈呈される。バックル式の完走メダルの箱にはそのスペーサーを収めるスペースがあらかじめ設けられており、完走メダルと一緒にディスプレイすることができる。ヘッドスペーサーは1周完走でスカイブルー、2周完走でシルバー、3周完走でゴールドが贈呈される。詳しくはこちらを参照。
四国一周サイクリング 記事一覧
写真と文:綾野 真、取材協力:愛媛県自転車新文化推進協会