DTスイスのグラベルレーシングホイール、GRC1100を長期インプレッション。画期的な製法のカーボンリムを採用し、ワイドタイヤ装着時のエアロダイナミクスと低回転抵抗を追求した最高峰ホイールをオン&オフロードで徹底的に試した。


DTスイス GRC1100 DICUT photo:Makoto AYANO

多くのホイールブランドにハブやスポークを供給し、その性能と品質に絶対的な信頼を寄せられるDTスイス。リム、ハブ、スポーク、ニップルまで、ホイールを構成する全てのパーツを手掛ける総合メーカーであり、そのアドバンテージを活かした自社ブランドのコンプリートホイールもまた高い評価を受けている。

幅広いラインアップを誇るDTスイスのホイール群において、グラベルロード用の頂点に立つレーシングホイールがGRC1100 DICUTだ。 ロードホイールと同様に、空力のスペシャリストである研究機関SWISSSIDE(スイスサイド)とタッグを組んで開発され、エアロダイナミクスを追求したトップレベルのパフォーマンスを発揮するレーシングホイールに仕上げられる。

コーティングの施されないカーボン素地そのままのリム photo:Makoto AYANO

GRC1100に使用されるカーボンリムは、樹脂の不均衡や空気混入のないレイアップを実現するDTスイス独自の製法によって製造される。成形時にモールド(金型)から取り出されたリムは化粧カーボンを纏わず、仕上げのコーティングも必要とせず、そのままの状態でホイールアッセンブル行程へと回される。GRC1100のカーボンリムは高い強度と美しさ、優れた空力特性と軽量性を併せ持つ。

ハブはDT 180 with Ratchet EXP 36 最高峰仕様だ photo:Makoto AYANO

その新製法カーボンリムに、低摩擦のSINCセラミックベアリングを採用した同社最高峰のDT180 DICUTハブが搭載される。スポークにはDT Aerolite II&Aerocomp IIを組み合わせ、ニップルはリム内に完全内蔵されるヒドゥン構造となる。

スポークはDT aerolite II t-head photo:Makoto AYANO

フリーボディには大きな接触面を持つラチェットが素早く噛み合うRatchet EXP36システムが採用される。部品点数が少なく軽量でシンプルな構造で、工具無しで分解&メンテナンスが可能。

センターロックローター取り付け部も徹底的な軽量化が図られる
DTのスターラチェットを内蔵するフリーボディ(シマノHGタイプ)



転がり抵抗を低減しつつ加速性能を高め、エアロダイナミクスを最大限に高めるべく組み上げられたのがGRC 1100 DICUTホイールだ。

リムハイトは50mmと30mmの2種が用意される。リムウォールにはフックを備え、クリンチャー&チューブレス対応となる。なおリムテープにもバルブにもDT製のものがセットされる「100%DTスイス製」のホイールセットとなる。

インプレッション

このGRC1100 DICUTは2025年の春に導入して以来、グラベルレース&ツーリングに、ロードバイクライドにと、複数のバイクにセットしてオン&オフ様々な状況で使いこんできた。

マキシスREAVER 45Cをセットしたグラベルレーシング仕様だ photo:Makoto AYANO

リムハイトには高速レース用の50mmとアドベンチャーライド用の30mmの2種類があるが、筆者が選んだのは30mm。じつはこの選択は大いに迷った。一度入れたオーダーを後日変更したほどに...。

アンバウンドグラベル100マイルレース参戦を控えていたため50mmを最初に選んだのだが、自分の脚質とパワー、そしてリムハイトから得られるメリット・デメリットを鑑みて、最終的には30mmをチョイスした。

チャプター2 KAHA+DTスイス GRC 1100 DICUT photo:Makoto AYANO

もちろんエアロ効果を考えれば50mmは魅力だが、自身の(貧弱な)脚力、そして上り下りの多い山岳ルートを走るライドが好きという志向から、総合的には30mmハイトのほうが良いだろうという結論に達したのだ。

カーボンリムにはしっかりとしたフックがつく photo:Makoto AYANO

さらに決め手になったのはセット重量1,298gと軽量で、ロードバイクにも使えるプロファイルはグラベルバイクとの兼用ができるという点があった。リム内幅24mmという数値は最近のグラベルで主流の25mmより狭く、ロードで主流の23mmより広いという、他にないもの。実はこの点がこのホイール導入の決定打になった。グラベルにもロードにも使える、つまりオールロードの可能性だ。

まずは速く走るためのグラベル用途として、アンバウンド・グラベル100マイルレースで実戦使用したレビューから綴ろう。

高級感あふれるシルバーのDT SWISSロゴが入る
無処理のカーボンリムに研究機関スイスサイドのロゴが入る



DTスイスがGRC 1100 DICUTを内幅24mmという形状に設定したのはスイスサイドとの研究開発により、40mm幅タイヤをセットした状態でエアロダイナミクス的にこの幅がベストという結論に達したからだという。

他にもリム形状、エアロスポーク、ニップルがリム内に完全に隠れる構造、ハブ形状、専用バルブの形状も風洞実験によって決定されているという徹底ぶり。オーソドックスなルックスに反し、細部までエアロを極めたホイールと言える。

アンバウンドグラベルのレース日にセットしたタイヤはマキシスREAVER。コースの路面状態と天候から45Cを選んだ。(タイヤについてのインプレはこちら
45Cを選んだ時点でスイスサイドの考える「エアロベスト」ではないが、そこは路面状況と自身の好みのチョイスを優先した。

レースでの走りはアンバウンド・グラベル参戦レポートを読んでもらうとして、レース前半の2時間を平均時速37km/hという先頭集団の猛スピードについていけたのはホイールの速さによるものが大きかった。

GRC1100ホイールでアンバウンド・グラベル100マイルレースを走った photo:Lifetime
先頭集団内に居る時間はGRC 1100のエアロ効果と回転抵抗の軽さを常に感じながら走っていた。ほとんどロードレースのような集団の密集度での高速走行。そして時々、路面の穴に落ちた選手が弾かれて落車やパンクすることもあり、太めの45Cタイヤの選択も良かったと感じた。

GRC1100 DICUTホイールの美点をもっとも感じたのは回転の軽さとスピードの維持性能だ。空気抵抗の少なさと回転抵抗の軽さの相乗効果による感覚があるため、どちらがより効いているかは判別つかないが、6時間超のレースを走りきった後で、その速さと疲労度の少なさ両方の恩恵を存分に感じる結果になった。ちなみに自己最速記録を更新できた。

DTスイスが元祖のスターラチェットの軽やかさにも感心。昨今の他ブランドのハブはコースティング(ペダルを止めた空転)時に爆音を響かせるものが多いが、Ratchet EXPは軽やかなサウンド。静粛さとともに回転の軽さも感じる。音が発生する=エネルギー消失とも考えられるので、DTスイスの「ラチェットの最適解」がこの調律なのだろう。

プロ選手にはGRC1100の50mmを使用する選手が多いが、リムハイトの低い30mmを選んだことで、コーナー立ち上がりでの再加速や、登りの軽さにメリットを感じた。もっとも50mmなら巡航性が高くなる面と引き換えに、登りで重量が足を引っ張る面はあると思うが、175kmのレースを走り終えて「自分の出力なら軽い30にメリットがあった」と感じることができた。

同時に、30mmハイトとは思えない空力の良さも感じることができた。これはリムとスポークのエアロ形状とヒドゥンニップルによるエアロダイナミクスによるものだろう。

SINCセラミックベアリング搭載を謳うフロントハブのキャップ
ハブキャップを外した状態。内部のSINCセラミックベアリング



そしてセラミックベアリング採用ハブの低抵抗とスムーズな回転は特筆ものだ。コースティング時の軽さとスピードの維持性能の高さは体感できるほどで、スムーズに回り続けるホイールの素晴らしさを感じながら走るレースだった。

一点気をつけねばと思っていたことは浸水。渡渉(としょう)=川を渡ることだ。アンバウンド・グラベルには毎年渡渉セクションがあるが、ハブまで浸かる水深の場合はベアリングに悪影響があるはずだ。

というのも、ハブ構造をみればサイドキャップが簡易的な「蓋」にすぎず、シール等も無いため、水に浸かればハブ内に浸水する構造になっている。どのハブでも程度の差こそあれ浸水はするのだが、GRC1100に採用されるSINCセラミックベアリングのシールは片側接触式で、内側については非接触式シールになっている。ハブの構造的に雨や泥は届かないが、水没させた場合の浸水までは防ぎきれないと考えるべきだ。今回のレース中に深い渡渉は登場しなかったが、水は大敵。普段からグラベルライド中は調子に乗って川に入らないように心がけている。

ロードホイールとしても使える万能性

GRC 1100 DICUTはロードバイクにもセットしてオールロード的に走っている。筆者のバイクはエアロロードのウィリエールFilante SLRで、タイヤクリアランスは今どきのロードバイクらしく32mmまでに対応している。

ロードバイクにDTスイス GRC1100 DICUT+32Cタイヤをセットした状態で山岳ツーリングへ photo:Makoto AYANO

内幅24mmのリムに32Cのタイヤをセットするのが好みで、相性が良い感触だ。32Cタイヤをセットすればリムからタイヤ側面がほぼツライチの状態になり、空力が良さそうな状態になる。32Cタイヤなら空気量が大きく快適なライドが楽しめるロードホイールになる。

32Cタイヤをセットすればリムからタイヤサイドまでほぼツライチになる photo:Makoto AYANO

GRC1100のリムウォールにはフックが付けられており、安全上の問題が無いのも安心度が高い。太いオフロードタイヤの場合は空気圧が低いため気にしなくても良いが、ロードタイヤにおいては細め・高圧になるほどリムとタイヤの相性起因のトラブルが起こりがちだ。多くのブランドのOEM生産を手掛けているDTスイスが、自社ブランドのフラッグシップ製品においてフックドリムを採用しているのは、根拠あることだと考えている。

天竜スーパー林道へのツーリング。標高1,000mを越える林道を走った photo:Makoto AYANO

ロード系タイヤをセットした状態でのライドを重ねた。ホイールが軽量で登りが軽やか。舗装路でも転がり抵抗が少なく、スムーズに走る。リムハイトが低いぶん巡航性能に秀でているわけではないが、空気抵抗が少なく回転抵抗が軽いからか想像以上に高速の維持が楽で、純ロードホイールと比べて劣る点は感じられない。

とくに32C等の太めのオールシーズン系タイヤを履いてのオールロードツーリング的な用途に重宝している。ホイールが軽いぶん、重めのタイヤを履けるマージンがあるのだ。そして標準のHGフリー仕様のホイールセットにスラムXDRフリーも付属する(しかもセラミックベアリング仕様)。フリーボディは工具無しでカセットごと抜き差し交換できて、スラムとシマノ仕様のバイクで共用できる(それは無駄と言う人も居るだろう)。

エアロと回転性に優れるDTスイス最高峰の180ハブ
バルブナットとキャップまでもがエアロ形状だ



現在筆者はロードホイールもグラベルホイールも、他社のトップレンジ製品を数本所有している。GRC1100はこの1年、おもにグラベルのファストライド用あるいはオールロードツーリング用としての役割を担ってきたが、タイヤのワイド化が止まらない昨今において、GRC1100の使用頻度がますます高くなっている。これから35〜42Cといった極太ロードタイヤが増えてくる気配があるので楽しみだ。

使用を重ねて、とくに30mmハイトリムのGRC1100はパワーの小さなライダーにとってメリットが大きいと感じている。対してスピードのあるパワフルライダーなら50mmの選択にメリットがあるだろう。

リム規格が各種もれなく表記される photo:Makoto AYANO
バルブはエアロ形状。シマノHG仕様ホイールにもセラミックベアリング搭載のXDRフリーボディがもう1つ付属する



DTスイスのホームページでは、30mmハイトモデルを「究極のオフロードアドベンチャー」向けと記述しているが、一般的な解釈のアドベンチャーと言うよりは、「エアロ&軽量なオールラウンドモデル」として捉えるべきだろう。

GRC1100 DICUTの細部を見れば、つくづく究極なハイエンドホイールだと感じる。少々オーバースペックとも感じるが、ホイール総合ブランドの威信をかけて速く効率的に走ることを追求した最高峰のエアロオールロードホイールだと言えるだろう。

またDTスイスの良い点として、補修パーツがいつでも迅速に揃うサービス体制の良さが挙げられる。安心して長く使い続けられることもホイール性能のひとつだ。



DTスイス GRC 1100 DICUT
リム高:30mm, 50mm
リムタイプ:Carbon, Hooked / Crotchet tubeless TC
セット重量:1,298g(30mm)、1,575g(50mm)
ハブ:180 with Ratchet EXP 36
カセット:シマノHG(標準)、スラムXDRも付属
ディスクローター:センターロック
スポーク:DT aerolite II t-head, DT aerocomp II t-head
適応タイヤ幅:最小30mm〜最大69mm
ホイールバッグ付属
価格:384,585円(税込)


text&photo:Makoto AYANO

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