サーヴェロが誇るグラベルレーサーのAspero5が 、さらなるエアロダイナミクスを身に纏ってフルモデルチェンジ。前モデル比で37ワットの出力向上を実現し、グラベル史上最速とも言えるレースバイクとなった。オン&オフロード、そしてオールロードツーリングで長期間乗り込んだインプレッションをお届けする。

サーヴェロ Aspero5 photo:Makoto AYANO
1995年にカナダ・トロントにて創業したレーシングバイクメーカーのサーヴェロ。フィル・ホワイトとジェラルド・ヴルーメンの2人によって創業されたブランドは、ロードバイクとトライアスロンバイク開発からスタートし、エアロダイナミクスとスピードを追求してきた。
2002年のチームCSCへの供給からツール・ド・フランス参戦を果たし、以降サーヴェロ・テストチームやガーミン・サーヴェロ、チームディメンションデータ、チームサンウェブ等への機材サプライを経て急成長。現在はチームユンボ・ヴィスマの活躍を支えるトップブランドとなった。

エアロチューブで構成されるフレーム photo:Makoto AYANO
創業当初からエアロダイナミクスはサーヴェロが最も重視し、得意とする開発分野であり、空力性能の向上に挑み続けてきた。
エアロ性能への飽くなき追求はグラベルバイク開発においても同様で、2021年にデビューした先代Aspero5もそのエアロを突き詰めたフォルムとスピードで、当時は類まれな存在だった。
あれから4年、エアロロードのS5が完成度を高めたモデルに進化すると同時に、そのフォルムとテクノロジーを受け継ぐグラベルモデルとして登場したのが新型Aspero5だ。
フロントフォークとヘッドチューブはよりボリュームのある形状となり、空気の流れを積極的にコントロール。加えてリアホイールに沿ったシートチューブやBB周辺の形状も空気抵抗を削減する大きな要因となっている。

リアホイールに沿うような形状のシートチューブ photo:Makoto AYANO
ダウンチューブとシートステイにはホイールに沿うカットアウト形状と、空気の流れを計算し尽くした整流形状が採用される。S5が特徴的なVシェイプの一体型ハンドル&ステムを採用するのに対し、Aspero5はステム別体式ながらエアロ効果と調整のフレキシブルさを持つ翼状ハンドルを採用。もちろんケーブル類はフル内装される。

専用ハンドル&ステムはユニークな形状と構造。ケーブルはフル内装される photo:Makoto AYANO

コンパクトなエアロフォームが取れるハンドル 
FD台座を備えるため2✕(フロントダブル)仕様も可能だ
フレーム各部のエアロ形状はS5の流れを組みつつ、ジオメトリーに関してはパリ〜ルーべなど荒れた石畳レースでも実績のあるSOLOISTをベースに開発され、オフロードでの安定したハンドリングを実現したという。
エアロ性能を求めた結果、前モデルよりフレーム面積のボリュームが増えたものの、フォーク、シートポスト、ステムなどのダイエットによりフレーム総重量は66g軽量化している。

GRX RX825 RDにXTRスプロケット、GRXクランクにウルフトゥースのエアロ形状48Tシングルギアがセット photo:Makoto AYANO
最大タイヤクリアランスは45mmで、前後に同サイズのタイヤを使用すれば安定性に、例えば前輪に40C・後輪に44Cタイヤをセットすれば、よりクイックなハンドリングと機敏なコントロール性が得られるとしている。「トレイルミキサー」と呼ぶこの設計アイデアは、エンド小物等の交換を伴わずにジオメトリーを変更するため構造のシンプル化と軽量化にもつながる。
ダウンチューブにはレバー開閉式カバーによる内蔵ストレージを備え、スペアチューブやツールなどの収納が可能。取り付けるボトルケージもハイ&ローの2ポジションを選べる。それらのユーティリティ向上も同時にエアロ効果向上に寄与している。

ダウンチューブのストレージ蓋。ボトル台座は2ポジションから選べる photo:Makoto AYANO 
ヒンジ構造になっているダウンチューブのストレージ蓋を外した状態 photo:Makoto AYANO
開発拠点および本社をアメリカ・カリフォルニア州に置き、サンディエゴで風洞実験を重ねるサーヴェロ。オフロードバイクが得意なサンタクルズやホイールブランドのリザーブも同じグループ会社である強みも活かし、Aspero5は最先端の最速エアログラベルレーサーに仕上げられた。
今回はAspero5に昨年末から乗り始め、オールロードツーリングからグラベルライドまで様々な路面&用途で乗り込んだ綾野真(シクロワイアード)がインプレッションする。
インプレッション
インプレするモデルはシマノGRX Di2の1✕(フロントシングル)仕様にリザーブ40/44GRホイールがセットされた完成車。GRX RX825リアディレイラーにXTRのスプロケット、GRXクランクにウルフトゥースのエアロ形状48Tシングルギアがセットされるというグラベルレーシング仕様。タイヤにはヴィットリアCorsa Pro Control 42Cがセットされ、デフォルトではオンロード向けセッティングの完成車となっている。

デフォルトでセットされたヴィットリアCorsa Pro Control 42C タフコンディション用極太ロードタイヤだ photo:Makoto AYANO
Aspero5はグラベルレーサーであり、決してオールロードバイクではないが、完成車に舗装路メインのタフコンディション用ロードタイヤがセットされているのは、「まずはオンロードでその速さを体感して欲しい」というサーヴェロが込めたメッセージだろう。

Aspero5で走った奄美群島ツーリング。徳之島の世界自然遺産の森林風景が美しいローカル道を走った photo:Makoto AYANO
Aspero5に乗ってオンロード&簡易舗装の林道メインで走った奄美群島ツーリングで感じたのは、42Cの極太ロードタイヤを履いた状態での速さと快適性、巡航性能の高さ。平坦路では路面の微振動をいなし滑るように進んでくれ、とくに下りの速さは全バイクカテゴリーのなかで最速と言えるレベル。確実にロードバイクより速く、不安無くダウンヒルできるのだ。

舗装路6割、簡易舗装の林道3割、グラベル1割ほどで奄美群島を走り回った photo:Makoto AYANO
コンパクトなエアロフォームが取れるハンドル周りの設定はS5とも通じるもの。そしてフレームのエアロダイナミクスの高さで、スルスルと滑るように走ってくれる。
エアロに優れるリザーブのホイールとのベストマッチングで設計されているだけに、平坦や下りの速さは特筆モノだ。グループライドをしていても惰性で自然と前へ前へと出てしまうので、一緒に走っている皆が驚くほど。

サーヴェロ Aspero5 グラベルタイヤをセットした状態 photo:Makoto AYANO
そしてグラベルタイヤに履き替えて走ってみる。セットしたタイヤはENVEがグラベルレース用に開発したHEXの40C。日本でポピュラーなタイヤではないが、レースで速く走ることをターゲットに設計されたレーシングタイヤ。

六角形状の低いノブが特徴的なENVE HEX40 Aspero5の最大タイヤクリアランスは45Cだ photo:Makoto AYANO

ENVE HEX40 グラベルタイヤ 
エアロを突き詰めたリザーブ40/44 GRホイール
Aspero5はボリュームの大きなBB周りやエアロチューブの形状、ホイールに沿って歪曲した形状のシートチューブ、そして垂直に突き出るエアロシートピラーなどなど、フレーム形状がエアロを突き詰めているぶん、それらの視覚から受ける印象で、振動を受けた際にネガが出るだろうことを予測して、実はオフロード性能についてはそれほど期待をしていなかった。
しかしハードパックのグラベルを走っても快適性が高く、ナチュラルな乗りやすさ。強いて言えば今もう一台乗り分けているグラベルバイクはさらに太い45Cタイヤにドロッパーポスト装備のアドベンチャー寄り仕様なのだが、それと同等なほどに快適で乗りやすいことに驚かされた。

ハードパックのグラベルでのAspero5の速さと快適さは格別だ photo:Makoto AYANO
そしてオンロードで走ったときに感じた速さは、グラベルでもそのまま感じることができる。スルスルと伸びるようにスピードが上がっていく走りには快感を覚えるほどだ。
ハンドリングは安定性がありながらもクイックで、俊敏なレーンチェンジも可能。直進性にも優れ、アグレッシブかつ素直なハンドリングには何の不満も無い。しかしよりクイックな操舵感が欲しければ後輪側に1サイズ太いタイヤをセットすることが推奨されている。
前モデルはFフォークエンド部に可変式のフリップチップを装備して2ポジションのオフセット可変が可能だったが、それをタイヤサイズの変更(つまりマレットセッティング)で同じ効果を出そうというのは面白い。やはりエンド金具等の小物を伴うフリップチップは、どうしても重量がかさむからだ。
シクロクロスもたしなむ筆者の場合、そのクイックさや旋回性をグラベルバイクにも求めたいとは思わない。むしろ距離を伸ばすスピードツーリングの方向に振りたい嗜好がある(つまり直進安定性重視だ)。しかしグラベルであってもバイクを操ってアグレッシブに楽しむのが好みという人ならば「トレイルミキサー」を試してみる価値はあるだろう。ただしAsper5は前後同径タイヤの状態で十分に機敏だ。
Asper5のメインターゲットはUCIグラベルワールドシリーズ等のハイスピードレースだという。2025年のUCIグラベル世界選手権を制したマリアンヌ・フォス(ヴィスマ・リースアバイク)によってAspero5はすでにアルカンシェルを獲得していることで、それはすでに実証されている。
細部を見ていこう。ダウンチューブには内蔵ストレージを備える。レースバイクのなかにはこれを省くブランドもあるが、はやりフレーム内にリペアキットやスペアチューブなどを収容できたほうが外付けバッグの容量を減らせるため便利で、エアロ的にも有利になる。
専用トップチューブバッグも付属する。見たところ前モデルから形状の変化がないバッグだが、フレーム装着側のアダプタープレート等がアップデートされ、底の隙間を無くし、揺れが少なくなる工夫がされている。ミニマルなデザインでエアロ効果も高い。

専用のトップチューブバッグを標準装備。スリムでミニマル 
トップチューブバッグの揺れを防止する補助プレートが備わる徹底ぶり
またFブレーキキャリパーはマウントボルト貫通式で台座プレートが不要になるため軽量化に繋がっている。ステムの高さを調整するスペーサーも2.5mm刻みで用意され、満足行くまでポジションの微調整が可能だ。このように細部に渡って隙のない構成で、レースバイクとしては申し分がない。

貫通型のFキャリパー固定により軽量化される 
細かいピッチで用意されたスペーサーでハンドル高の調整も不満はない

ボリュームのあるBB周辺。BBはCeramic Speed製T47 BBright 
クランクに4iiiのパワーメーターを標準装備する
Aspero5は筆者お気に入りの房総のグラベルツーリングへも連れ出した。そのグラベル林道は激しくガレていることでアドベンチャー要素満点で、かつ低山の担ぎ上げ+トレイルもあるMTBライクなルート。
そうした状況ではAspero5のエアロなキャラクターに起因するネガが見つかるだろうかと思っていたのだが、どうしてAspero5はそうしたルートでも乗りやすく、素直なハンドリングと快適な乗り心地で、まったくネガなく乗りこなせ、かつ激坂トレイルの下りもこなせてしまった。

限界を試すべくMTBトレイル的なライドもこなしてみた photo:Yasuo Yamashita
そのエアロ形状から変なクセがあったり硬すぎるのでは?と思っていたフレームが、実は快適性にも優れていることに驚かされた。
50Cまでの太さのタイヤが使えることがグラベルバイク選択のひとつのポイントになってきているが、思うにレースで50Cは重量増のデメリットが出てくるし、あくまで乗り手のパワー次第の選択だと思う。もっとも欧米系プロ選手は、集団でのハイスピード走行中に路面の石や穴を避けられないからパンク予防のために50Cを好んでいるという面がある。
むしろタイヤ選択は40〜45C程度で、エアロ効果を最大限高めるセッティングで乗りこなすのがAspero5のメリットの引き出し方だと思う。バッグ類の装着も最低限に、エアロに配慮したウェアやヘルメットなどのチョイスで高効率なスピード走行を楽しむ。そうした乗り方が向いたバイクだと思う。
ライディングポジションも現代ロードバイク的な前乗りセッティングであるため、とくにレース好きのロードバイカーが乗ったときにも違和感無く、むしろしっくりくるだろう。
一点、タイヤ外周にギリギリ沿うように整形されたシートチューブは泥詰まりには弱そうだ。そうした限定的な不利は出てくる(泥除け効果があるので雨のオンロード走行には良かった)。そして、強いて言えばシートピラーがDシェイプのためドロッパーポストが装着できないという点はある。

GRXクランクにウルフトゥースのエアロ48Tギアがセットされる。スプロケットはXTRだ photo:Makoto AYANO
48T✕10〜51Tはレーススピードに振ったギアレシオだ。トップ側のギア比が高すぎ、ロー側がやや足りないだろうと思っていた。そのため当初はFチェンリングを44Tに下げようかと思っていた。しかしAspero5は予想以上にスピードが出ること、ハイペースが保てること、そしてクライミング時の「大きなギア✕大きなギア」となるローギア側の組み合わせの「踏み応え」フィーリングが思いのほか良く、そのパワー伝達の良さ、高効率なことで、ギア交換の必要性は思い直している。
単に計算上のギアテーブルで考えれば理解に苦しむのだが、トップレーサーたちがこのレシオの1✕(ワンバイ)ギアセッティングを好む理由は、この高効率な踏み心地の良さにあるのだと認識できた。
またMTB用コンポのXTと共通プラットフォームのGRXリアディレイラーとXTRスプロケットの組み合わせは変速がパワフルで、悪路でもチェーンが暴れない。Fチェンリングは歯がナローワイド設計となるためチェーン外れも生じず、オフロードでのメリットを感じた。筆者はこれまで2✕(ツーバイ)派であったが、1✕のメリットは確かにある。なおフレームにはFD台座も備わっている。

サーヴェロ Aspero5 photo:Makoto AYANO
サーヴェロ Aspero5 Shimano GRX RX825 Di2 1
カラー:Five Black、Royal Mercury
サイズ:48、51、54、56、58、61
サドル:Prologo Nago R4 PAS Tirox
BB:Ceramic Speed SL, T47 BBright for 24mm spindle
ホイール:Reserve 40/44 GR +DT Swiss 350
タイヤ: ヴィットリア Corsa Pro Control TLR G2.0 700x42c
STIレバー:シマノ GRX
リアディレイラー: シマノ GRX RX825 SGS
クランク:シマノ GRX RX825
チェーンリング:Wolf Tooth Components Aero 48T Chainring for GRX
パワーメーター:4iiii Precision, GEN3+ Single Sided
チェーン:シマノ M8100
カセットスプロケット:シマノXTR M9200, 10-51T, 12-Speed
完成車価格:1,449,800円(税込)
text&photo:Makoto AYANO

1995年にカナダ・トロントにて創業したレーシングバイクメーカーのサーヴェロ。フィル・ホワイトとジェラルド・ヴルーメンの2人によって創業されたブランドは、ロードバイクとトライアスロンバイク開発からスタートし、エアロダイナミクスとスピードを追求してきた。
2002年のチームCSCへの供給からツール・ド・フランス参戦を果たし、以降サーヴェロ・テストチームやガーミン・サーヴェロ、チームディメンションデータ、チームサンウェブ等への機材サプライを経て急成長。現在はチームユンボ・ヴィスマの活躍を支えるトップブランドとなった。

創業当初からエアロダイナミクスはサーヴェロが最も重視し、得意とする開発分野であり、空力性能の向上に挑み続けてきた。
エアロ性能への飽くなき追求はグラベルバイク開発においても同様で、2021年にデビューした先代Aspero5もそのエアロを突き詰めたフォルムとスピードで、当時は類まれな存在だった。
あれから4年、エアロロードのS5が完成度を高めたモデルに進化すると同時に、そのフォルムとテクノロジーを受け継ぐグラベルモデルとして登場したのが新型Aspero5だ。
フロントフォークとヘッドチューブはよりボリュームのある形状となり、空気の流れを積極的にコントロール。加えてリアホイールに沿ったシートチューブやBB周辺の形状も空気抵抗を削減する大きな要因となっている。

ダウンチューブとシートステイにはホイールに沿うカットアウト形状と、空気の流れを計算し尽くした整流形状が採用される。S5が特徴的なVシェイプの一体型ハンドル&ステムを採用するのに対し、Aspero5はステム別体式ながらエアロ効果と調整のフレキシブルさを持つ翼状ハンドルを採用。もちろんケーブル類はフル内装される。



フレーム各部のエアロ形状はS5の流れを組みつつ、ジオメトリーに関してはパリ〜ルーべなど荒れた石畳レースでも実績のあるSOLOISTをベースに開発され、オフロードでの安定したハンドリングを実現したという。
エアロ性能を求めた結果、前モデルよりフレーム面積のボリュームが増えたものの、フォーク、シートポスト、ステムなどのダイエットによりフレーム総重量は66g軽量化している。

最大タイヤクリアランスは45mmで、前後に同サイズのタイヤを使用すれば安定性に、例えば前輪に40C・後輪に44Cタイヤをセットすれば、よりクイックなハンドリングと機敏なコントロール性が得られるとしている。「トレイルミキサー」と呼ぶこの設計アイデアは、エンド小物等の交換を伴わずにジオメトリーを変更するため構造のシンプル化と軽量化にもつながる。
ダウンチューブにはレバー開閉式カバーによる内蔵ストレージを備え、スペアチューブやツールなどの収納が可能。取り付けるボトルケージもハイ&ローの2ポジションを選べる。それらのユーティリティ向上も同時にエアロ効果向上に寄与している。


開発拠点および本社をアメリカ・カリフォルニア州に置き、サンディエゴで風洞実験を重ねるサーヴェロ。オフロードバイクが得意なサンタクルズやホイールブランドのリザーブも同じグループ会社である強みも活かし、Aspero5は最先端の最速エアログラベルレーサーに仕上げられた。
今回はAspero5に昨年末から乗り始め、オールロードツーリングからグラベルライドまで様々な路面&用途で乗り込んだ綾野真(シクロワイアード)がインプレッションする。
インプレッション
インプレするモデルはシマノGRX Di2の1✕(フロントシングル)仕様にリザーブ40/44GRホイールがセットされた完成車。GRX RX825リアディレイラーにXTRのスプロケット、GRXクランクにウルフトゥースのエアロ形状48Tシングルギアがセットされるというグラベルレーシング仕様。タイヤにはヴィットリアCorsa Pro Control 42Cがセットされ、デフォルトではオンロード向けセッティングの完成車となっている。

Aspero5はグラベルレーサーであり、決してオールロードバイクではないが、完成車に舗装路メインのタフコンディション用ロードタイヤがセットされているのは、「まずはオンロードでその速さを体感して欲しい」というサーヴェロが込めたメッセージだろう。

Aspero5に乗ってオンロード&簡易舗装の林道メインで走った奄美群島ツーリングで感じたのは、42Cの極太ロードタイヤを履いた状態での速さと快適性、巡航性能の高さ。平坦路では路面の微振動をいなし滑るように進んでくれ、とくに下りの速さは全バイクカテゴリーのなかで最速と言えるレベル。確実にロードバイクより速く、不安無くダウンヒルできるのだ。

コンパクトなエアロフォームが取れるハンドル周りの設定はS5とも通じるもの。そしてフレームのエアロダイナミクスの高さで、スルスルと滑るように走ってくれる。
エアロに優れるリザーブのホイールとのベストマッチングで設計されているだけに、平坦や下りの速さは特筆モノだ。グループライドをしていても惰性で自然と前へ前へと出てしまうので、一緒に走っている皆が驚くほど。

そしてグラベルタイヤに履き替えて走ってみる。セットしたタイヤはENVEがグラベルレース用に開発したHEXの40C。日本でポピュラーなタイヤではないが、レースで速く走ることをターゲットに設計されたレーシングタイヤ。



Aspero5はボリュームの大きなBB周りやエアロチューブの形状、ホイールに沿って歪曲した形状のシートチューブ、そして垂直に突き出るエアロシートピラーなどなど、フレーム形状がエアロを突き詰めているぶん、それらの視覚から受ける印象で、振動を受けた際にネガが出るだろうことを予測して、実はオフロード性能についてはそれほど期待をしていなかった。
しかしハードパックのグラベルを走っても快適性が高く、ナチュラルな乗りやすさ。強いて言えば今もう一台乗り分けているグラベルバイクはさらに太い45Cタイヤにドロッパーポスト装備のアドベンチャー寄り仕様なのだが、それと同等なほどに快適で乗りやすいことに驚かされた。

そしてオンロードで走ったときに感じた速さは、グラベルでもそのまま感じることができる。スルスルと伸びるようにスピードが上がっていく走りには快感を覚えるほどだ。
ハンドリングは安定性がありながらもクイックで、俊敏なレーンチェンジも可能。直進性にも優れ、アグレッシブかつ素直なハンドリングには何の不満も無い。しかしよりクイックな操舵感が欲しければ後輪側に1サイズ太いタイヤをセットすることが推奨されている。
前モデルはFフォークエンド部に可変式のフリップチップを装備して2ポジションのオフセット可変が可能だったが、それをタイヤサイズの変更(つまりマレットセッティング)で同じ効果を出そうというのは面白い。やはりエンド金具等の小物を伴うフリップチップは、どうしても重量がかさむからだ。
シクロクロスもたしなむ筆者の場合、そのクイックさや旋回性をグラベルバイクにも求めたいとは思わない。むしろ距離を伸ばすスピードツーリングの方向に振りたい嗜好がある(つまり直進安定性重視だ)。しかしグラベルであってもバイクを操ってアグレッシブに楽しむのが好みという人ならば「トレイルミキサー」を試してみる価値はあるだろう。ただしAsper5は前後同径タイヤの状態で十分に機敏だ。
Asper5のメインターゲットはUCIグラベルワールドシリーズ等のハイスピードレースだという。2025年のUCIグラベル世界選手権を制したマリアンヌ・フォス(ヴィスマ・リースアバイク)によってAspero5はすでにアルカンシェルを獲得していることで、それはすでに実証されている。
細部を見ていこう。ダウンチューブには内蔵ストレージを備える。レースバイクのなかにはこれを省くブランドもあるが、はやりフレーム内にリペアキットやスペアチューブなどを収容できたほうが外付けバッグの容量を減らせるため便利で、エアロ的にも有利になる。
専用トップチューブバッグも付属する。見たところ前モデルから形状の変化がないバッグだが、フレーム装着側のアダプタープレート等がアップデートされ、底の隙間を無くし、揺れが少なくなる工夫がされている。ミニマルなデザインでエアロ効果も高い。


またFブレーキキャリパーはマウントボルト貫通式で台座プレートが不要になるため軽量化に繋がっている。ステムの高さを調整するスペーサーも2.5mm刻みで用意され、満足行くまでポジションの微調整が可能だ。このように細部に渡って隙のない構成で、レースバイクとしては申し分がない。




Aspero5は筆者お気に入りの房総のグラベルツーリングへも連れ出した。そのグラベル林道は激しくガレていることでアドベンチャー要素満点で、かつ低山の担ぎ上げ+トレイルもあるMTBライクなルート。
そうした状況ではAspero5のエアロなキャラクターに起因するネガが見つかるだろうかと思っていたのだが、どうしてAspero5はそうしたルートでも乗りやすく、素直なハンドリングと快適な乗り心地で、まったくネガなく乗りこなせ、かつ激坂トレイルの下りもこなせてしまった。

そのエアロ形状から変なクセがあったり硬すぎるのでは?と思っていたフレームが、実は快適性にも優れていることに驚かされた。
50Cまでの太さのタイヤが使えることがグラベルバイク選択のひとつのポイントになってきているが、思うにレースで50Cは重量増のデメリットが出てくるし、あくまで乗り手のパワー次第の選択だと思う。もっとも欧米系プロ選手は、集団でのハイスピード走行中に路面の石や穴を避けられないからパンク予防のために50Cを好んでいるという面がある。
むしろタイヤ選択は40〜45C程度で、エアロ効果を最大限高めるセッティングで乗りこなすのがAspero5のメリットの引き出し方だと思う。バッグ類の装着も最低限に、エアロに配慮したウェアやヘルメットなどのチョイスで高効率なスピード走行を楽しむ。そうした乗り方が向いたバイクだと思う。
ライディングポジションも現代ロードバイク的な前乗りセッティングであるため、とくにレース好きのロードバイカーが乗ったときにも違和感無く、むしろしっくりくるだろう。
一点、タイヤ外周にギリギリ沿うように整形されたシートチューブは泥詰まりには弱そうだ。そうした限定的な不利は出てくる(泥除け効果があるので雨のオンロード走行には良かった)。そして、強いて言えばシートピラーがDシェイプのためドロッパーポストが装着できないという点はある。

48T✕10〜51Tはレーススピードに振ったギアレシオだ。トップ側のギア比が高すぎ、ロー側がやや足りないだろうと思っていた。そのため当初はFチェンリングを44Tに下げようかと思っていた。しかしAspero5は予想以上にスピードが出ること、ハイペースが保てること、そしてクライミング時の「大きなギア✕大きなギア」となるローギア側の組み合わせの「踏み応え」フィーリングが思いのほか良く、そのパワー伝達の良さ、高効率なことで、ギア交換の必要性は思い直している。
単に計算上のギアテーブルで考えれば理解に苦しむのだが、トップレーサーたちがこのレシオの1✕(ワンバイ)ギアセッティングを好む理由は、この高効率な踏み心地の良さにあるのだと認識できた。
またMTB用コンポのXTと共通プラットフォームのGRXリアディレイラーとXTRスプロケットの組み合わせは変速がパワフルで、悪路でもチェーンが暴れない。Fチェンリングは歯がナローワイド設計となるためチェーン外れも生じず、オフロードでのメリットを感じた。筆者はこれまで2✕(ツーバイ)派であったが、1✕のメリットは確かにある。なおフレームにはFD台座も備わっている。

サーヴェロ Aspero5 Shimano GRX RX825 Di2 1
カラー:Five Black、Royal Mercury
サイズ:48、51、54、56、58、61
サドル:Prologo Nago R4 PAS Tirox
BB:Ceramic Speed SL, T47 BBright for 24mm spindle
ホイール:Reserve 40/44 GR +DT Swiss 350
タイヤ: ヴィットリア Corsa Pro Control TLR G2.0 700x42c
STIレバー:シマノ GRX
リアディレイラー: シマノ GRX RX825 SGS
クランク:シマノ GRX RX825
チェーンリング:Wolf Tooth Components Aero 48T Chainring for GRX
パワーメーター:4iiii Precision, GEN3+ Single Sided
チェーン:シマノ M8100
カセットスプロケット:シマノXTR M9200, 10-51T, 12-Speed
完成車価格:1,449,800円(税込)
text&photo:Makoto AYANO
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