内幅23mmワイド化と新開発のブラックセラミックベアリング搭載でブラッシュアップしたマヴィックのハイエンドロードホイール COSMIC SLR45 Ceramicをインプレッション。旧モデルのセラミックベアリングへの打ち替え・交換についても徹底的に掘り下げてリポートする。



マヴィック COSMIC SLR45 Disc photo:Makoto AYANO

2025年末にブラッシュアップされたマヴィックCOSMICのハイエンドホイールシリーズ。注目すべきスペックはリムの内幅23mmへのワイド化とともに、ブランド初のセラミックベアリングが搭載されたことだろう。

マヴィック純正セラミックベアリング(シールを剥がしてグリスを除去した状態で撮影しています) photo:Makoto AYANO

新開発の「マヴィック・セラミックベアリングシステム」には、ブラックセラミック=窒化ケイ素(Si₃N₄)ボールが採用される。ブラックセラミックとは、高い機械的強度、耐熱衝撃性、低熱膨張率、耐摩耗性を備えた高性能エンジニアリングセラミックス。高温下でも強度を維持できるため、自動車エンジン部品や半導体製造装置、そしてベアリングなどの構造材料として、高温や腐食環境に適するとされる。

極めて高い信頼性と苛酷な条件に耐える特性から「セラミックスの王様」と称されるSi₃N₄ブラックセラミックを採用したマヴィック・セラミックベアリングシステムは、金属製ボールに比べて摩擦抵抗を17%低減、高性能ポリマーケージがボールの位置を最適化することで高速域でも極めてスムーズな回転を維持。高負荷・高温の過酷な状況下でも安定した転がり性能を発揮する。

シールを剥がした状態。日本製プレミアムグリスが充填されている photo:Makoto AYANO
茶色い樹脂がボールを保持するポリマーケージ(シールを剥がした状態) photo:Makoto AYANO



ベアリング内部には日本製の高品質プレミアムグリスを充填し、低摩擦特性と優れた保持力を両立するとともに内部腐食を防ぎ、長寿命化も実現。マヴィック専用シールと自社工場のクリーンルームでの組付けにより、異物や湿気の侵入を抑え、長期間にわたって高性能を保つことができる。

精度と耐久性を大きく向上させたうえ、メンテナンスは基本的に不要。マヴィックによれば「生涯潤滑・メンテナンスフリーを実現した」と謳う信頼性の高いベアリングシステムだ。

ID360搭載のInfinityハブ。CERAMICのレターが記される photo:Makoto AYANO

レースでの加速・巡航・ヒルクライムなど、あらゆる状況でホイールの伸びを体感できるマヴィック・セラミックベアリングシステムは、COSMICハイエンドシリーズのULTIMATE、SLR45、SLR32の3モデルに標準搭載される。

今回は春に入荷したばかりの中核モデル、COSMIC SLR45にフィーチャーしてインプレッション。そして現行モデルのSLR32については実際にマヴィック純正セラミックベアリングへの換装を行った模様をお届けする。

COSMIC SLR45 長期インプレッション

ユニディレクショナルカーボンリムにブラックの光沢で視認させるロゴが渋い photo:Makoto AYANO

タイヤのワイド化が進行中のロードバイクシーン。現在はリムの内幅においてロードレース用のオールラウンドモデルは23mm、ヒルクライムでの軽さや空気抵抗削減を主眼においたエアロモデルにおいては21mm前後が標準化つつある状況だ。

リム外側が膨らむエアロ形状が空気抵抗を削減する photo:Makoto AYANO

COSMIC SLR45のカーボンリムは内幅23mmに拡幅され、リム外側は最も太い部分で32mmのエアロワイド形状リムとなり、エアボリューム増加による快適性とエアロダイナミクスの向上により、さらに快適で速いホイールとなったと言えるだろう。

筆者(CW編集部・綾野 真)にとってはリムブレーキ仕様モデルのCOSMICの時代から数えると、このSLR45で通算5モデル目のCOSMICとなる。SLR32を今も使用中であり、リムハイト45mmモデルに関してはディスク仕様となって初代のCOSMIC Carbon45も愛用してきた「COSMIC好き」である。

チューブレスとの相性抜群なリムベッド形状。ウォールにはフックが備わる photo:Makoto AYANO

COCSMIC SLR45は2ヵ月使い込んだ。タイヤの進化が続く昨今において、リム内幅の23mmワイド化は待望のスペックアップ。45mmという扱いやすいミドルハイトリムにはビードフックも備わっており、さらにリムテープ不要というチューブレス用途には理想的なモデルに仕上がっている。

今回はレーシングタイヤとしてホットなピレリ P ZERO Race TLR RS 32Cをチューブレス仕様でセットアップしてテストした。

歴代COSMICでタイヤの組み付けとビード上げに苦労したことは少ないが、ピレリはビードがキツくて硬めと聞いていた通りで、素手で上げることは無理と判断してタイヤレバー1本を使って嵌め込みに成功。

ビード上げはフロアポンプで可能だったが、「バチンッ」という破裂音はせず、一切エア漏れすることなくビードを上げることができた。軽量ケーシングではなくゴムが厚めにのったトレッドだからか、気密性が良く、シーラント無しでも1日程度なら空気圧は保つ状態だった(当然シーラントは注入した)。

筑波山域を走る100km&獲得標高3,000mのライドでシェイクダウンした photo:Makoto AYANO

乗り出してすぐに感じるのはリムのワイド化による効果だ。並行して使用中のSLR32のリム内幅は21mmで、比較すると2mm拡大した内幅23mmリムの効果はすぐに感じ取れる。ワイドリムによってさらに低圧が可能になり、ライドを重ねてたどり着いた適正空気圧は前後3.4気圧だ(スラムAXSアプリで設定:体重61kg・舗装路・ファストライド想定)。

3.4気圧で乗る32Cタイヤはトレッドを指で強く押せばわずかに撓む程度で、リム幅が拡がるとタイヤサイドには「しっかり感」が増す。軽く転がり、速く進み、快適性が上がり、グリップも向上することでコーナリングはより安心できるものになる。そしてブレーキング力も向上することで、荒れた急コーナーでも不安感がなくなる。少しの重量増加と引き換えに、タイヤ性能のすべてが総じて良くなる。

ナイフのように鋭い特許取得のストレートプルエアロスポーク。空気抵抗が少なく鋭い走りを実現する photo:Makoto AYANO

乗り心地は快適そのものだが、ホイール全体の剛性が極めて高く、どんな動きにもホイールが撓んだりもたついたりしない。どんな乗り手・乗り方にも対応するが、とくにロードレース用ホイールとして素晴らしい。弱点がどこにも見当たらないのは歴代COSMICに共通する特長と言える。

スポーク数はフロント&リアともに24本。本数を減らさず、ナイフのように薄くて鋭いエアロブレード形状オリジナルスポークは強靭で空気抵抗が少なく、45mmハイトであっても50mmディープリムに匹敵するエアロ効果を感じる。それでいて平地からアップダウン、ヒルクライム、そしてクリテリウム的な走りに対応できるオールラウンド性能はミドルハイトならではだ。

リムハイト32mmのSLR32と比べれば、SLR45はより剛性が高く、巡航性も高い。重量が軽いSLR32と踏み出し加速の鋭さがそれほど変わらないのはホイールの剛性の高さよるものだろう。

32CタイヤをセットしたCOSMIC SLR45はどこでも走れる万能さ photo:Yasuo Yamashita

COSMICシリーズ下位グレードのSL、Sと比べると、SLRの剛性は際立って高く、もっともシャッキリした乗り心地のレース向けホイールと言える。レース派なら剛性に不満はないが、ビギナーにはやや硬すぎる面もあるのでフレームとのマッチも考えたい。ただしSLR45のペア重量1,480gという軽さは誰にとってもメリットが大きいだろう。

SLR45は強度を示すASTMカテゴリー2に分類されるため、シクロクロスやグラベルライドにも対応可能だ。リム内幅23mmはグラベルなら40C程度のタイヤをセットするのに最適。そしてシクロクロスで使うには32CまでのタイヤをセットすればUCI規定のタイヤ幅33mmをほぼ超えない状態で公式レースに使用することができる(リム内幅25mmの場合は33mm規定を超えてしまう)

バレット形状のニップルは強靭かつメンテナンス性に優れる photo:Makoto AYANO

外出し式のバレット形状ニップルはスポーク交換や振れ取りメンテナンスも簡単だ。フリーボディに関しては使用状況に応じて走行1,000kmごとのチェックが推奨されている。とくに雨のなか走ったり水洗車をした場合はスプロケットごと外して水分を乾燥させ、ラチェット周りのグリスの状態を確認したい。以上は工具無しでできる作業であり、ブラックボックス化されていないぶんメンテナンスが簡単であることがメリットだ。

セラミックベアリングの効果は体感できるか?

登りが厳しい林道ライドも軽やかかつ堅牢タフな信頼感が安心だ photo:Yasuo Yamashita
今回はタイヤも初めて使用するモデルと太さで、10回以上ロングライドを乗り込んだ。ダウンヒルで高速域になるほどスピードが伸びていく感じがする。実際、定番コースで距離の長いダウンヒルの下りタイムを測ると確実に速くなっている。

もともとチューブレス仕様のマヴィックホイールはどれも転がりが軽いので、セラミックベアリング自体の回転の軽さをはっきりとは体感しにくい。回転性能が向上していることは確かだが、ハブやフリーボディが新品になったことによるコンディションの良さも関係するだろうし、はっきりと「セラミックベアリングだから速い」と言える確証はもてない。しかしクランクを激しく回して急に止めても”バックラッシュ(チェーン暴れ)”が起きないことから、フリーボディ周辺も軽く正確に回転していることが分かる。

ホイールにおけるセラミックベアリングの効果は「マージナルゲイン」として捉えたほうが良さそうだが、確実にメリットは有るようだ。

SLR45は細部までみても脆い点が見当たらず、十分な剛性と強度、耐久性が保たれていると感心する。中国ブランドの低価格で重量が軽いホイールが人気の昨今だが、進化に対して慎重なマヴィックは一歩遅れながらも検証に検証を重ねたうえでスペックを向上させてくる。セラミックベアリングもそのひとつで、そこには安全に対する意識の高さと長きに渡って高性能を発揮することへのこだわりが溢れている。

マヴィック純正セラミックベアリングに交換

新型COSMICシリーズがセラミックベアリング標準搭載になったことで、補修パーツとしての純正セラミックベアリングキットの供給も始まっている。マヴィックホイール共通のInfinityハブであれば一部のモデルを除き打ち替えアップデートができるため、現行ホイールを使用しているユーザーにはオーバーホールのタイミングで交換することをおすすめしたい。

マヴィック純正ハブ用セラミックベアリングキット photo:Makoto AYANO

Infinityハブは製造時にアルミ合金のインゴット(塊)から削り出されるため、その精度の高さはベアリング専業メーカーからお墨付きがつくほど。セラミックベアリングはそれ自体の精度が高いため、ハブ側にも精度の高さ・嵌め合い公差の小ささが求められるのだ。

セラミック仕様のフリーボディ2種。右はULTIMATEにも採用される軽量タイプ(+1,000円)
右のフリーボディはULTIMATEにも採用される軽量タイプ



マヴィック正規ディーラーなら確実にベアリング交換作業が可能で、同時にホイールの状態に合わせたアドバイスをもらえるだろう。マヴィック純正セラミックベアリングはベアリング専業メーカー品に比べて価格が手頃なのが嬉しい。そして純正ベアリングなら問題が生じないのも安心だ。ちなみにULTIMATEに採用されているものと同じセラミックベアリング搭載の軽量フリーボディも用意される。

カートリッジベアリング専用の脱着工具で交換作業を行う photo:Makoto AYANO

価格はハブ用のセラミックベアリングキットが¥22,000(税込)、セラミックベアリング搭載のフリーハブボディ(ULTIMATE用軽量モデル)が¥17,600(税込)で、これに作業工賃が別途かかる。

今回、SLR32ホイールのベアリング換装は東京のマヴィック・ジャパン本社においてレクチャーを受けつつメカニックさんに作業してもらった。専用の脱着工具を用いた作業は30分ほどで終わるため、プロメカニックにとって特別難しい作業ではない。

セラミックベアリング単体を転がしてみる。グリスが封入されているため回転の軽さは感じ取れない photo:Makoto AYANO
窒化ケイ素(Si₃N₄)ブラックセラミックボール採用のベアリング(グリスを除去した状態) photo:Makoto AYANO



ベアリング現物も確認してみた。ベアリング単体を指で回して軽いことには意味がなく、乗車状態の負荷がかかった状態で回転が軽いことが肝要とされる。マヴィック純正のセラミックベアリングはグリスが充填されているため、指で回しての回転はとくに軽くない。ハブ軸を回しての回転についても同様だ。

今回は特別に純正ベアリングのシールを剥がし、中を確認してみた。内部にはプレミアムグリスが充填され、シールも接触する構造なので指で回して抵抗があることは納得。オイルレス&シール非接触構造をとるメーカーもあるなかで、耐久性や長期に渡る性能維持を前提とした構造であることが分かる。セラミックボールを保持するポリマーケージも特殊なもので、その素材と形状が技術開発の肝だそうだ。

セラミックベアリングへの換装を終えリフレッシュしたCOSMIC SLR32 とマヴィックジャパンの村上氏 photo:Makoto AYANO

マヴィックジャパンの村上さんは「マヴィック本社からの情報開示は少ないのですが、今回のセラミックベアリング開発はマヴィックとして保証できる十分な性能を出すまでに長い時間がかかったと聞いています。技術者は回転性能以上に耐久性、長い期間同じ性能を発揮し続けられることを求めており、そのための研究開発に時間がかかったとのことです」と話す。

ちなみにセラミックベアリングへの交換作業とともにホイール各部の点検もしてもらったが、ロードライド&シクロクロスに4年間以上に渡り酷使してきたSLR32ホイールは、すべてのスポークのテンションが正常で、振れもまったく出ていなかったことには驚かされた。

水洗い洗車が流行した一時期に自己流で洗車してハブ内部を錆びさせる症例が出たリアハブのID360システムだが、その後メンテナンス作業の簡単さはそのままに、ゴムシールが防水性の高い対策品になっている。そうした点もチェック項目だ。

今回マヴィック公式Youtubeにアップされた下記の動画では、セラミックベアリングへの交換作業とともにID360ハブのグリスアップやメンテナンス作業について解説されているので、ぜひ参考にしてほしい。



マヴィック COSMIC SLR 45 Disc スペック
リム

素材:100%UDカーボンファイバー
高さ:45mm
リム内幅:23mm
ドリリング:FORE CARBON Technology
チューブレス:テープレスチューブレス
ホール数:F:24H / R:24H
ブレーキタイプ:ディスクブレーキ専用
ETRTO:622x23TC
タイヤ対応:USTチューブレスレディ
スポーク
材質:スチール
形状:ストレートプルエアロスポーク(特許取得)
組み方:前後クロス2、コンタクトレス
ニップル:FORE CARBON
本数:24本
ハブ
ハブボディ:アルミニウム
プラットフォーム:Infinity
アクスル:アルミニウム
Instant Drive 360 フリーホイール
フロント:12×100(9×100:別売)
リア:12×142(9×135:別売)
ベアリング:Mavic Ceramic(2026 New)
重量
ペア:1,480g
フロント:675g
リア:805g
ペア価格:¥385,000(税込)


text&photo:Makoto AYANO

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