「ホビーユーザーのためのプレミアムバイク」を提唱し、衝撃を走らせたスペシャライズドのAethosがフルモデルチェンジ。超軽量デザインはそのままに、大幅なジオメトリー刷新によって、究極のライドをより多くのライダーに届ける一台に進化した。日本国内で行われた発表会からレポートする。

S-Works Aethos 2 (54サイズ) photo:So Isobe
「Break the Rules」。4年前に登場した初代Aethosは、その言葉通りロードバイクの常識を打ち壊した。エアロや重量制限といった「レースバイクのしきたり」から脱却した、「ホビーユーザーのためのプレミアムモデル」という価値観。シンプルな美しさと世界最軽量レベルのフレーム。そんな新しい在り方を提唱したAethosは、純粋にライドを楽しむための存在としてホビーユーザーの心を掴み、受け入れられてきた。
そして2025年秋、第2世代となる「Aethos 2」が登場。「究極のライドを、より多くのライダーへ」を掲げ、ジオメトリー刷新と35mmタイヤ対応で快適性と汎用性を拡大。世界最軽量の称号を守りつつ、誰もが「フローステート(心と身体がひとつになる境地)」を体感できる一台を目指して仕上げられた。

Aethosらしい、シンプルなフォルムは継続。ただしジオメトリーは大幅に変更されている photo:So Isobe

ヘッドチューブは微妙な形状変更が行われた photo:So Isobe 
ヘッドチューブアングルを0.5度寝かせた。安定した走りを演出する photo:So Isobe
クラシカルでシンプルなフレームデザインは先代共通だが、最大の進化はジオメトリーを「スラック」なものに見直したこと。スタックハイトは多くのサイズで15mm増加(49サイズで+8mm、52サイズで+11mm)し、よりアップライトで快適なポジションを実現。さらにBBハイトを3mm下げ、ヘッドチューブアングルを0.5度寝かせ、ホイールベースも7mm延長。これにより下りの安定性やコーナリングの安心感が増し、長距離ライドでの疲労軽減にもつながっているとスペシャライズドは自負する。
このジオメトリー変更は、スペシャライズドが保有する10万件以上のRetülフィッティングデータから導き出されたもの。Tarmacと共通のジオメトリー(=レーシングジオメトリー)を採用していた従来モデルでは多くのライダーがスペーサーを積んでいた実態が浮かび上がっており、それを踏まえた刷新となっている。
さらにAethos 2はタイヤクリアランスを拡大し、最大35mmまで対応する。これにより滑らかな舗装路はもちろん、荒れた林道や長距離ライドにも柔軟に対応できるようになった。ホビーユーザーが求める「自由な走り」を後押しする進化でありながら、元々の軽いフィーリングを維持するべく何度もプロトタイプを制作してテストライドを繰り返したという。

安定感を高めるためにホイールベースは7mm延長された photo:So Isobe

華奢だが、堅牢なボトムブラケット周り。BBハイトは3mm下げられている photo:So Isobe 
チューブ集合部のデザインも僅かに改善。具体的にはシートチューブの「出しろ」を抑えたという photo:So Isobe
フレーム重量は56サイズのS-WORKSモデルで595g。ジオメトリーの刷新によってフレーム表面積が増えているが、スペシャライズド開発陣のノウハウをフル投入した結果僅か10g増に抑えている。さらに各部、例を挙げればシートクランプで-9g、BBカップで-6g、スラムと共同開発したというUDHハンガーで-2gなど徹底的に軽さを突き詰めた。完成車重量はスラムREDのS-Worksモデルで5.9kg台を実現する。軽さは目的ではなく結果だという思想は、初代から変わらない。一方で、重量増なしで実現可能だったフォークのブレード形状にはわずかなエアロ要素を導入したりと、所有欲を高める工夫も第2世代にて初めて取り入れられた。
Flow State Design──心と身体を一つにする設計
新型で掲げられたもう一つのキーワードが「Flow State Design(フローステートデザイン)」だ。これはライダーが「ゾーン」に入り、バイクの存在を忘れて浮遊(フロー)するように走る没入感覚を設計思想に落とし込んだものだ。
テスト施設でフレームの挙動を調べていた際に、エンジニアたちは荷重がかかったときにフレームが呼吸するように変形する部分を発見し、これを抑えるべく工夫を凝らしたという。スペシャライズドのホワイトペーパーには、以下の通り説明されている。
「数十年にわたる実際のテストで集めた世界最大規模の測定データとともに、このプロンプトをスーパーコンピュータに入力。結果、視覚的には控えめながら、構造的には大胆に変化した、ラウンド形状に到達しました。それは、見た目の美しさだけでなく、構造全体にエネルギーがスムーズに伝わるよう緻密に設計された、彫刻的なフォルムです。(中略)素材を重ねて剛性を増すや代わりに形状を最適化することで、従来のカーボン素材の補強レイヤーは不要に。こうして、ライドクオリティーと剛性が高まり、パフォーマンスが向上した、より軽量なフレームが出来上がりました」。
従来別工程で分けられていたスーパーコンピュータによる構造解析とカーボンレイアップを同時進行で最適化し、結果としてラウンド形状をベースにしたフレームは視覚的にクラシカルでありながら、内部構造は徹底的に刷新。フレームの強度は業界基準を大きく超え、2,377ワットで10万回以上のペダリング試験にも耐える堅牢さを確保。軽さと耐久性、そしてライドフィールを高次元で両立したという。

ロヴァールのAlpinist II コックピット(270g) photo:So Isobe
新たに登場したロヴァールのAlpinist II コックピット(270g)は人間工学を重視し、ハンドルトップの楕円形状や4度のフレアで快適性を向上。アリス社のカーボンスポークを採用したAlpinist CLX III ホイール(1,131g)は超軽量ながら剛性と耐久性を両立し、完成車セットアップにした際の軽量化と走行性能を高めている。
開発を率いたのは、かつてデンク・エンジニアリングで腕を磨いたセバスチャン・サーベット氏だ。ピーター・デンク氏は既にスペシャライズドを去ったが、そのDNAを受け継ぎながら「ライダーの感性に訴えるプロダクトデザイン」を追求した。彼は「シンプルさをデザインすることこそ最も難しい挑戦」と語り、Aethos 2の細部まで磨き上げた。

アリス社のカーボンスポークを採用したAlpinist CLX III ホイール(1,131g) photo:So Isobe
Aethos 2はFACT 12rカーボンを使ったS-Worksモデルと、FACT 10rカーボンを使った弟分モデルの2種類が用意され、それぞれが完成車とフレームセットで展開される。
S-Worksモデルの完成車はシマノDura-AceとスラムREDの2パターンで、どちらもロヴァールのAlpinist II コックピットとAlpinist CLX III ホイールが付属して税込176万円。(フレームセットは税込77万円)。
FACT 10rカーボンの完成車は上級の「PRO」グレードがシマノUltegraとスラムFORCE AXSの2パターンで、どちらもAlpinist II コックピットとAlpinist CL IIホイールが付属して税込110万円、コンポーネントはPROと同じ2パターンながら、別体式のステム/ハンドルとロヴァールのC38ホイールをセットして価格を抑えた「EXPERT」グレードは税込79.2万円、さらにフレームセットが税込47.3万円という分かりやすいパッケージで発売される。
さらにロヴァールのAlpinist II コックピットとAlpinist CLX III ホイールの単品発売も同時スタート。Alpinist II コックピットは税込85,800円、Alpinist CLX III ホイールはフロントが税込180,400円、リアが税込270,600円、つまり税込451,000円という、どちらも比較的リーズナブルなプライス設定が嬉しい。
S-Works Aethos 2 ファーストインプレ by CW編集部、磯部
試乗を担当したのは、先代Aethosを現在まで所有し、そのコンセプトを気に入って、別に所有するエアロロードと並んで乗っているシクロワイアード編集部のわたくし、磯部。

筆者、CW編集部の磯部とS-Works Aethos 2 photo:So Isobe
超軽量マシンらしい軽快な挙動を持ちながら、しなやかでテンポの早いダンシングがAethos最大の魅力。山岳ライドで映えるAethosを気に入って所有しているからこそ、進化ぶりには強い関心を抱いていた。見た目はほとんど同じだけれど、どれだけ走りが変わっているんだろう?乗る前までは疑問に思っていたが、走り出せばすぐにわかるほど、大きな変化に驚かされた。
一歩踏み込んだ瞬間に感じ取れたのは、走りが劇的に滑らかになっていることだった。Aethosらしい軽いフィーリングはそのままで、よりシャープになっていることも感じるが、それ以上に新しいジオメトリーが効いていて、一切ギクシャク感が無いことに驚かされた。従来なら加減速の際に僅かにあった前後方向の「谷」が消え、走りのリズムが途切れない。バイクが乗り手の雑な動作をつなげてくれるかのような滑らかさがある。

各メディアを招いて行われた試乗会。短時間だったがアップダウンコースでAethos 2に乗る機会を得た photo:So Isobe 
用意されたS-Works試乗車たち photo:So Isobe
ジオメトリーの見直しによってフロントフォークは僅かに寝て、ホイールベースが延び、BBドロップも深くなった。先代Aethosを見慣れている人なら「車体の姿勢が変わったな」と思えるほどの変化(特にヘッドチューブ周辺)が付いているが、乗った時の差は見た目よりもずっと大きい。安定性が増しているのはもちろんのこと、それでいて倒し込みの軽さは失われず、コーナー出口での踏み直しも極めてスムーズ。試乗ではダム湖周辺の曲がりくねった林道を走ったが、軽量バイク特有のヒラヒラ感に安心感が加わり、流れを切らさずに走れることが実に心地良い。ハンドルを下げて自分のポジションにできたら、さぞかし気持ちが良いんだろうなと思わされた。
先代モデルの挙動も、軽量バイクらしい楽しい個性として受け入れられる範疇だったけれど、いざAethos 2に乗ってみると、扱いやすいのは断然新型だ。滑らかさの度合いがまったく違うのだ。この安定感と俊敏さのバランスが、Aethos 2のキャラクターを決定づけている。「究極のライドを、より多くのライダーへ」というモットーの通りに成熟した印象だ。

FORCEもしくはアルテグラで組まれたEXPERT完成車。79.2万円のプライスタグをつける photo:So Isobe

各部スモールパーツ類も煮詰められている。写真は新旧のコラムパーツ。手間の新型はグッと小型化されている photo:So Isobe 
開発を主導したセバスチャン・サーベット氏と繋ぎ、インタビューを行った photo:So Isobe
新しいRoval Alpinist II コックピットは握りやすく、振動吸収性にも優れたもの。ロングライドでも腕や肩の負担を減らしてくれるだろう。組み合わされたAlpinist ホイールはカキン!と硬くて軽く、Aethos 2の走りを引き立てる。もちろん巡航性能を引き上げるために、もっとハイトの高いホイールを組み合わせても面白いはずだ。
中〜高速域からの伸び、早いタイミングからトルクが立ち上がる踏み応え、瞬間的な加速力など、レースで求められる性能が欲しいならTarmacだが、マイペースで気持ちを切らさずに登り切れる、走りきれるのはAethosだ。今回のモデルチェンジによって、2つのロードモデルのキャラクター間の違いが際立ったように思う。スペシャライズドだからこそ成し得た、「ホビーユーザーのためのプレミアムバイク」が、さらに奥深い進化を遂げて再デビューを果たした。

「Break the Rules」。4年前に登場した初代Aethosは、その言葉通りロードバイクの常識を打ち壊した。エアロや重量制限といった「レースバイクのしきたり」から脱却した、「ホビーユーザーのためのプレミアムモデル」という価値観。シンプルな美しさと世界最軽量レベルのフレーム。そんな新しい在り方を提唱したAethosは、純粋にライドを楽しむための存在としてホビーユーザーの心を掴み、受け入れられてきた。
そして2025年秋、第2世代となる「Aethos 2」が登場。「究極のライドを、より多くのライダーへ」を掲げ、ジオメトリー刷新と35mmタイヤ対応で快適性と汎用性を拡大。世界最軽量の称号を守りつつ、誰もが「フローステート(心と身体がひとつになる境地)」を体感できる一台を目指して仕上げられた。



クラシカルでシンプルなフレームデザインは先代共通だが、最大の進化はジオメトリーを「スラック」なものに見直したこと。スタックハイトは多くのサイズで15mm増加(49サイズで+8mm、52サイズで+11mm)し、よりアップライトで快適なポジションを実現。さらにBBハイトを3mm下げ、ヘッドチューブアングルを0.5度寝かせ、ホイールベースも7mm延長。これにより下りの安定性やコーナリングの安心感が増し、長距離ライドでの疲労軽減にもつながっているとスペシャライズドは自負する。
このジオメトリー変更は、スペシャライズドが保有する10万件以上のRetülフィッティングデータから導き出されたもの。Tarmacと共通のジオメトリー(=レーシングジオメトリー)を採用していた従来モデルでは多くのライダーがスペーサーを積んでいた実態が浮かび上がっており、それを踏まえた刷新となっている。
さらにAethos 2はタイヤクリアランスを拡大し、最大35mmまで対応する。これにより滑らかな舗装路はもちろん、荒れた林道や長距離ライドにも柔軟に対応できるようになった。ホビーユーザーが求める「自由な走り」を後押しする進化でありながら、元々の軽いフィーリングを維持するべく何度もプロトタイプを制作してテストライドを繰り返したという。



フレーム重量は56サイズのS-WORKSモデルで595g。ジオメトリーの刷新によってフレーム表面積が増えているが、スペシャライズド開発陣のノウハウをフル投入した結果僅か10g増に抑えている。さらに各部、例を挙げればシートクランプで-9g、BBカップで-6g、スラムと共同開発したというUDHハンガーで-2gなど徹底的に軽さを突き詰めた。完成車重量はスラムREDのS-Worksモデルで5.9kg台を実現する。軽さは目的ではなく結果だという思想は、初代から変わらない。一方で、重量増なしで実現可能だったフォークのブレード形状にはわずかなエアロ要素を導入したりと、所有欲を高める工夫も第2世代にて初めて取り入れられた。
Flow State Design──心と身体を一つにする設計
新型で掲げられたもう一つのキーワードが「Flow State Design(フローステートデザイン)」だ。これはライダーが「ゾーン」に入り、バイクの存在を忘れて浮遊(フロー)するように走る没入感覚を設計思想に落とし込んだものだ。
テスト施設でフレームの挙動を調べていた際に、エンジニアたちは荷重がかかったときにフレームが呼吸するように変形する部分を発見し、これを抑えるべく工夫を凝らしたという。スペシャライズドのホワイトペーパーには、以下の通り説明されている。
「数十年にわたる実際のテストで集めた世界最大規模の測定データとともに、このプロンプトをスーパーコンピュータに入力。結果、視覚的には控えめながら、構造的には大胆に変化した、ラウンド形状に到達しました。それは、見た目の美しさだけでなく、構造全体にエネルギーがスムーズに伝わるよう緻密に設計された、彫刻的なフォルムです。(中略)素材を重ねて剛性を増すや代わりに形状を最適化することで、従来のカーボン素材の補強レイヤーは不要に。こうして、ライドクオリティーと剛性が高まり、パフォーマンスが向上した、より軽量なフレームが出来上がりました」。
従来別工程で分けられていたスーパーコンピュータによる構造解析とカーボンレイアップを同時進行で最適化し、結果としてラウンド形状をベースにしたフレームは視覚的にクラシカルでありながら、内部構造は徹底的に刷新。フレームの強度は業界基準を大きく超え、2,377ワットで10万回以上のペダリング試験にも耐える堅牢さを確保。軽さと耐久性、そしてライドフィールを高次元で両立したという。

新たに登場したロヴァールのAlpinist II コックピット(270g)は人間工学を重視し、ハンドルトップの楕円形状や4度のフレアで快適性を向上。アリス社のカーボンスポークを採用したAlpinist CLX III ホイール(1,131g)は超軽量ながら剛性と耐久性を両立し、完成車セットアップにした際の軽量化と走行性能を高めている。
開発を率いたのは、かつてデンク・エンジニアリングで腕を磨いたセバスチャン・サーベット氏だ。ピーター・デンク氏は既にスペシャライズドを去ったが、そのDNAを受け継ぎながら「ライダーの感性に訴えるプロダクトデザイン」を追求した。彼は「シンプルさをデザインすることこそ最も難しい挑戦」と語り、Aethos 2の細部まで磨き上げた。

Aethos 2はFACT 12rカーボンを使ったS-Worksモデルと、FACT 10rカーボンを使った弟分モデルの2種類が用意され、それぞれが完成車とフレームセットで展開される。
S-Worksモデルの完成車はシマノDura-AceとスラムREDの2パターンで、どちらもロヴァールのAlpinist II コックピットとAlpinist CLX III ホイールが付属して税込176万円。(フレームセットは税込77万円)。
FACT 10rカーボンの完成車は上級の「PRO」グレードがシマノUltegraとスラムFORCE AXSの2パターンで、どちらもAlpinist II コックピットとAlpinist CL IIホイールが付属して税込110万円、コンポーネントはPROと同じ2パターンながら、別体式のステム/ハンドルとロヴァールのC38ホイールをセットして価格を抑えた「EXPERT」グレードは税込79.2万円、さらにフレームセットが税込47.3万円という分かりやすいパッケージで発売される。
さらにロヴァールのAlpinist II コックピットとAlpinist CLX III ホイールの単品発売も同時スタート。Alpinist II コックピットは税込85,800円、Alpinist CLX III ホイールはフロントが税込180,400円、リアが税込270,600円、つまり税込451,000円という、どちらも比較的リーズナブルなプライス設定が嬉しい。
S-Works Aethos 2 ファーストインプレ by CW編集部、磯部
試乗を担当したのは、先代Aethosを現在まで所有し、そのコンセプトを気に入って、別に所有するエアロロードと並んで乗っているシクロワイアード編集部のわたくし、磯部。

超軽量マシンらしい軽快な挙動を持ちながら、しなやかでテンポの早いダンシングがAethos最大の魅力。山岳ライドで映えるAethosを気に入って所有しているからこそ、進化ぶりには強い関心を抱いていた。見た目はほとんど同じだけれど、どれだけ走りが変わっているんだろう?乗る前までは疑問に思っていたが、走り出せばすぐにわかるほど、大きな変化に驚かされた。
一歩踏み込んだ瞬間に感じ取れたのは、走りが劇的に滑らかになっていることだった。Aethosらしい軽いフィーリングはそのままで、よりシャープになっていることも感じるが、それ以上に新しいジオメトリーが効いていて、一切ギクシャク感が無いことに驚かされた。従来なら加減速の際に僅かにあった前後方向の「谷」が消え、走りのリズムが途切れない。バイクが乗り手の雑な動作をつなげてくれるかのような滑らかさがある。


ジオメトリーの見直しによってフロントフォークは僅かに寝て、ホイールベースが延び、BBドロップも深くなった。先代Aethosを見慣れている人なら「車体の姿勢が変わったな」と思えるほどの変化(特にヘッドチューブ周辺)が付いているが、乗った時の差は見た目よりもずっと大きい。安定性が増しているのはもちろんのこと、それでいて倒し込みの軽さは失われず、コーナー出口での踏み直しも極めてスムーズ。試乗ではダム湖周辺の曲がりくねった林道を走ったが、軽量バイク特有のヒラヒラ感に安心感が加わり、流れを切らさずに走れることが実に心地良い。ハンドルを下げて自分のポジションにできたら、さぞかし気持ちが良いんだろうなと思わされた。
先代モデルの挙動も、軽量バイクらしい楽しい個性として受け入れられる範疇だったけれど、いざAethos 2に乗ってみると、扱いやすいのは断然新型だ。滑らかさの度合いがまったく違うのだ。この安定感と俊敏さのバランスが、Aethos 2のキャラクターを決定づけている。「究極のライドを、より多くのライダーへ」というモットーの通りに成熟した印象だ。



新しいRoval Alpinist II コックピットは握りやすく、振動吸収性にも優れたもの。ロングライドでも腕や肩の負担を減らしてくれるだろう。組み合わされたAlpinist ホイールはカキン!と硬くて軽く、Aethos 2の走りを引き立てる。もちろん巡航性能を引き上げるために、もっとハイトの高いホイールを組み合わせても面白いはずだ。
中〜高速域からの伸び、早いタイミングからトルクが立ち上がる踏み応え、瞬間的な加速力など、レースで求められる性能が欲しいならTarmacだが、マイペースで気持ちを切らさずに登り切れる、走りきれるのはAethosだ。今回のモデルチェンジによって、2つのロードモデルのキャラクター間の違いが際立ったように思う。スペシャライズドだからこそ成し得た、「ホビーユーザーのためのプレミアムバイク」が、さらに奥深い進化を遂げて再デビューを果たした。
グレード | カーボン | 仕様 | 税込価格 |
---|---|---|---|
S-Works 完成車 | FACT 12r | シマノ Dura-Ace Di2 | 176万円 |
S-Works 完成車 | FACT 12r | スラム RED AXS | 176万円 |
S-Works フレームセット | FACT 12r | 77万円 | |
PRO 完成車 | FACT 10r | シマノ Ultegra Di2 | 110万円 |
PRO 完成車 | FACT 10r | スラム FORCE AXS | 110万円 |
EXPERT 完成車 | FACT 10r | シマノ Ultegra Di2 | 79.2万円 |
EXPERT 完成車 | FACT 10r | スラム FORCE AXS | 79.2万円 |
フレームセット | FACT 10r | 47.3万円 |
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