メリダを代表するエアロレーサー、REACTOをインプレッション。2021年の登場以来、その卓越した性能でワールドツアーの最前線を戦い続ける名車の魅力を徹底解剖。



メリダ REACTO TEAM  

2013年よりランプレ・メリダへの機材供給を皮切りにワールドチームへのサポートを開始したメリダ。それ以前はMTB、特にXCの世界において確固たるプレゼンスを示してきた同社であったが、このパートナーシップによって、ロードバイクブランドとしてのメリダの地位を確立した。日本においては、新城幸也が長きにわたって愛用してきたバイクでもあり、国内リーグにおいても宇都宮ブリッツェンやレバンテ富士静岡といった強豪のチームバイクとして、馴染み深い存在でもある。

そのロードラインアップにおいて、軽量オールラウンダーのSCULTURAとともに双璧を成すのがエアロロードのREACTOだ。2011年にデビューした初代REACTOは、ランプレ・メリダへのサポートを開始した2013年に第2世代へモデルチェンジ。そして新たにバーレーン・メリダへのサポートを開始した2018年にREACTOは第3世代へと進化し、ディスクブレーキモデルも展開するように。

エアロロードらしくコンパクトなリアトライアングルデザインを採用
エアロ形状のブレードを採用したフロントフォーク
フロント周りはシンプルな設計だ



そして、2021年に現行モデルとなる第4世代へとフルモデルチェンジを果たす。前作で既に高いエアロ性能を発揮し一定の評価を得ていたREACTOだが、メリダはそこに満足することなく、更なるアップデートを施している。

メリダが第4世代REACTOにおいて目指したのは、ただ単にエアロな自転車ではなく、あらゆる条件下で速いバイクであること。空力だけでなく、剛性、重量、そして快適性といったあらゆる要素をおろそかにすることなく、オールラウンドパフォーマンスバイクとして開発された。

シートクランプはもちろん埋め込み型で空力性能を向上させる  
チームモデルはサポートするバーレーン・ヴィクトリアスのロゴも入る  



REACTOの特徴の一つでもあるディスクブレーキヒートシンク
リア側にもヒートシンクは設置される  



第3世代との最もわかりやすい違いとなるのが、ケーブルフル内装化だ。緊密な関係を築くFSAのACRシステムを採用することで、ブレーキ、シフト共にケーブル露出をゼロに。クリーンなルックス、そして空気抵抗の大幅な削減を達成している。

空力に大きな影響を与えるチューブ形状については、メリダ独自のNACAファストバックプロファイルを採用。徹底的なCFD解析によって各部の形状を最適化したフレームは、ドイツのツアーマガジンでの風洞実験において、2021年当時最も速いロードバイクの1台と評価を受けている。

重量面においても、大幅な進化を果たしている。先進的な炭素繊維素材を用い、精密かつ複雑なレイアップ工程を経て成型されるCF5グレードのカーボンフレームは、先代からフレームセットで85gの軽量化を実現し、登坂や加速時のレスポンスを更に鋭いものとした。

ボリュームのあるボトムブラケット。プロの走りを受け止める剛性を確保した  
ボリューミーなダウンチューブがペダリング効率とエアロ性能を両立  



現代のロードレーサーとして必須となるワイドタイヤへの対応も済ませている。現在主流となる28Cはもちろん、30Cまで対応するワイドなタイヤクリアランスを確保しており、より優れた快適やグリップを提供可能だ。

快適性という側面では、エアロ形状でありながらヤグラ下部分を絞り、その空間に衝撃吸収素材をインサートしたS-FLEXシートポストの採用や、非常に細身のシートステーによって、路面からの突き上げを効果的に緩和するよう設計されている。

ワイドなタイヤクリアランスを確保した
オリジナルのシートポストはエラストマーを挿入することでエアロかつ快適性に優れた逸品
リアホイールに沿うような形状のシートチューブ



また、メリダ独自のディスクブレーキ放熱システムであるディスククーラーは第4世代にも受け継がれている。フロントフォークおよびシートステーのキャリパー取り付け部に設置されたアルミニウム製の放熱フィンにより、放熱性能を35%向上。フラットなデザインへと改められ、整流効果も発揮するように進化した。

今回、インプレッションするのは、バーレーン・ヴィクトリアスが使用するチームモデル、REACTO TEAM。シマノ DURA-ACE DI2にヴィジョン METRON 60 SL を装備したフラッグシップだ。価格は1,705,000円(税込)。それではインプレッションに移ろう。



― インプレッション

「レーシングバイクとして非常に高い完成度を誇る一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)
「とにかく高速域、端的に言えばスプリントを掛けた時の加速感が素晴らしい」高木三千成(シクロワイアード編集部)  


めっちゃ好きです、このバイク。いかにもレーシングバイクという乗り味で、踏み出しの挙動、旋回性、そして倒していけばどこまでも倒していける、手足のように自由に動かせる感覚が最高です。

とにかく高速域、端的に言えばスプリントを掛けた時の加速感が素晴らしい。ブーストが掛かって、まるでターボチャージャーが作動した車のように押し出されるような加速感がありました。ここまで進むバイクはあまりないですね。

空力の良さはもちろん、フレームの剛性バランスが非常に高いレベルで取れているというのが大きいと感じますね。ハンドルとヘッド周りは一際しっかりしているのですが、それ以外がしなやかな味付けで、しっかりトレーニングしているライダーであれば踏み負けるようなことは無いでしょう。

適度にしなってくれるのですが、そのリズムが非常に速いのでどんなタイミングからでも加速できる。思い描いたタイミング通りにアタックを仕掛けられますし、逆にアタックをかけられたとしても間髪入れずに対応できます。タイムラグを感じさせない、即応性が魅力です。

「ピュアなエアロロードという外見ですが登坂でも足を引っ張るような感覚はゼロ」高木三千成(シクロワイアード編集部)  

加速が鋭いという面では、SCLTURAも似た印象がありましたが、比較するとREACTはエアロロードならではの扁平なチュービングの影響もあってか、もう少しマイルドながら体へのダメージを抑えてくれるような味付けです。足りないところを補ってくれて、何度もアタックをかけられるのがREACTの美点ですね。

一方で、ペダリングスキルはある程度求められます。ガチャ踏みでも進むのですが、綺麗に360度パワーを掛けるようなペダリングが出来れば、更に優れたパフォーマンスを発揮してくれます。

これは瞬間的にどうこうという話では無くて、ライド全体を見た際のパフォーマンスについての評価です。ジワーッと踏んでいけるというのは、言い方を変えれば省エネなんですね。そういったペダリングでも、REACTはしっかり加速してくれるし速度を維持してくれる。そこで溜めた力で、いざという時に踏み込んでいくわけです。レースでこうあってほしいという性能をしっかり具現化してくれていますね。

「レーシングバイクとして非常に高い完成度を誇る一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)  

ぱっと見た印象だと、ピュアなエアロロードという外見ですが登坂でも足を引っ張るような感覚はゼロでした。しかも60mmハイトのホイールを履いていたので、より軽量なホイールであれば山がちなコースでも気後れすることなく連れ出せるでしょうね。

ハンドリングも印象的なフィーリングでした。基本的にはニュートラルで、倒しこんでいっただけしっかりと曲がってくれるというイメージなのですが、低速域になるとグッと入っていくクイックな挙動を見せてくれるんです。

具体的なシチュエーションで言うと、クリテリウムで180度ターンするようなタイミングで大きなアドバンテージになるでしょう。普通のサイクリングでも河川敷のサイクリングロードで土手の上と下を繋ぐところにスイッチバックがあったりしますよね。そういったポイントをリズミカルにクリアできるのはこのバイクならではです。

最初に述べたとおり、レーシングバイクとして非常に高い完成度を誇る一台です。クイックさを活かしてクリテリウムに使うのも良し、空力とペダリング効率からくる省エネ性能を武器に長距離のロードレースに起用するのも良し。純粋なヒルクライムは例外となりますが、レースと名の付くものであれば、このバイクより適したモデルはなかなか見当たらないのではないでしょうか

メリダ REACTO TEAM  

メリダ REACTO TEAM
フレーム:REACTO CF5 IV
フォーク:REACTO CF5 IV DISC
コンポーネント:シマノ Dura-Ace 160mm
ホイール:ヴィジョン METRON 60 SL Clincher carbon チューブレス対応
タイヤ:コンチネンタル Grand Prix 5000S TR 700x28C fold tubeless ready
ハンドルバー:ヴィジョン METRON 5D ACR EVO MAT carbon L:380mm (3S/XXS/XS/S) L:400mm (M)
サドル:プロロゴ Nago R4 PAS Nack
付属品:ベル、ロック、リフレクター
重量:7.5kg(S)
価格:1,705,000円(税込)


インプレッションライダーのプロフィール
高木三千成(シクロワイアード編集部)
高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。現在も東京の稲城FIETSクラスアクトに所属し、Jプロツアーで全国のレースに参戦している。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位でUCIポイントを獲得した。


text&photo:Naoki Yasuoka
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