ディスクブレーキが当たり前になったいま、あえてリムブレーキを選ぶ理由とは何だろうか。東京サンエスのブランド「OnebyESU」から登場した新作スチールロード「JFF#503」は、その問いに真正面から応える1台だ。開発を手がけた上司辰治さんに、企画の背景とこだわりを聞いた。

ワンバイエスの最新モデル、JFF#503。リムブレーキ仕様のスチールロードバイクだ photo:So Isobe
「イメージしたのは、ディスクブレーキロードに慣れた人が、初めてリムブレーキロードに乗ったときの感覚を思い起こさせるバイクです。でも1インチヘッドのような懐古主義ではなく、ちゃんと過不足なく走るもの。そういうものを作りたいと思いました」
そう語るのは、OnebyESU(ワンバイエス)新作スチールバイク「JFF#503」を手がけた東京サンエスの上司辰治(かみつかさ・たつじ)さん。ディスクブレーキ全盛の時代に、あえてスチールフレームのリムブレーキロードバイクを送り出した背景には、リッチーとの関係や東洋フレームなど名門ビルダーとのコラボレーションによって、ノウハウを蓄積してきた上司さんなりの強い思いがある。
「ワイヤーでコントロールするリムブレーキは、やっぱり必要だと思ったんです。僕らもここ数年はディスクブレーキ+フラットマウントのモデルばかり作ってきましたが、ずっと性能が磨き上げられてきたリムブレーキバイクの走りは無くしちゃいけない、残さなきゃいけないと強く感じたタイミングがあったんですよね」。

オーバーサイズヘッドとカーボンフォーク。懐古主義ではなく、現代の「走る」ロードバイクとして開発された photo:So Isobe
JFF#503でこだわり抜かれたのは、クロモリの粘りやしなりを活かした乗り味を実現すること。一見するとシンプルなホリゾンタルフレームだけれど、リアバックの曲線はとても複雑で、オーバーサイズのヘッドチューブにオフセットに拘るオリジナルカーボンフォーク、、内装可能なワイヤールーティングなど、現代のバイクに乗り慣れた人でも違和感なく「走る」と感じるように工夫されている。しかし開発の過程では、チューブ選定の段階から苦労の連続だったという。
「ディスクブレーキ化に併せてチューブ自体も硬質化しているんです。だから普通に今のチューブを使って組み上げても、リムブレーキ時代のスチールバイクとは違う乗り味になってしまう。そこでバテッド位置やベンド形状にできる限りこだわりました。例えばダウンチューブ一つとっても、何度も試作を繰り返してどんどん変えてみた。本当ならより細いパイプを使いたくても現行では種類がなく、メーカーの過去の在庫パイプは安全基準の面で難しい。限られた選択肢の中で最適解を探りました」。

リアバックのチューブ形状は見どころの一つ。創意工夫の努力がにじむ photo:So Isobe
大量生産トップブランドではないけれど、ビルダーのように一つ一つのフレームをワンオフで作ると言うわけでもない。ジオメトリは勿論、チューブのバテッドや加工は自ら設計し煮詰め、提携している海外工場にオーダーを出して製造する。ワンバイエスはユーザーの好みの色に塗ってから発送するカラーオーダーシステムを基本としているが、それを実現するためにチューブ内側まで腐食防止処理を施した状態で入荷し、オーダーが入ってから国内で塗り上げるという手間暇かけた体制を敷いているのだ。「小回りのきく小規模メーカー」という立ち位置がワンバイエスというブランドの強みでもあり、開発の難しさと面白さにも繋がっていると上司さんは言う。

「これ買います!」と仰っていたユーザーさん photo:So Isobe
筆者が上司さんに話を聞いたのは、9月13日に埼玉県の秋ヶ瀬公園で開催された東京サンエスのブランド体験試乗会。もちろんJFF#503も試乗車として用意されていて、次々とユーザーが乗りにきては「これ、すごくいい」と口を揃えていたし、「これめちゃくちゃイイ!買います!」と購入を決めた方も。
筆者も試乗させてもらったけれど、その走りは上品そのものだった。軽さを意識した自転車ではないから、出だしこそ少し力は要るけれど、踏むごとに伸びやかに加速して、流していても気持ちが良いし、速く走ろうとすればしっかり応えてくれる。ペダリングに併せてフレーム全体がウィップする感覚は今とても新鮮なものだった。

JFF#503と、開発を主導した東京サンエスの上司辰治さん photo:So Isobe
「僕らのような小規模メーカーって、ある意味イチかバチかで製品を作っているようなところもあるんですよね(笑)」と上司さんは笑う。「僕も東洋フレームや、リッチーと関わる中で長年培ってきた経験がありますから、ある程度のものができるとは想像がついていますが、このJFF#503に関しては、かなりイメージ通りのものができた感覚がある。ここまで皆にスッと受け入れられるものができるとは思いませんでした。だいぶ苦労しましたが、その甲斐があったかな、って思いますね」と、多くの人がJFF#503を取り囲む様子をみて言う。
リムブレーキの魅力を現代的にアップデートしたJFF#503は、試乗会での好反応が示すように「今リムブレーキに乗る意味」を問い直す存在でもある。まるで同じ番号を冠した定番のジーンズのように、そしてほかのJFFシリーズと同じように、時代を超えて愛され続けるスタンダードになるかもしれない。
text&photo:So Isobe

「イメージしたのは、ディスクブレーキロードに慣れた人が、初めてリムブレーキロードに乗ったときの感覚を思い起こさせるバイクです。でも1インチヘッドのような懐古主義ではなく、ちゃんと過不足なく走るもの。そういうものを作りたいと思いました」
そう語るのは、OnebyESU(ワンバイエス)新作スチールバイク「JFF#503」を手がけた東京サンエスの上司辰治(かみつかさ・たつじ)さん。ディスクブレーキ全盛の時代に、あえてスチールフレームのリムブレーキロードバイクを送り出した背景には、リッチーとの関係や東洋フレームなど名門ビルダーとのコラボレーションによって、ノウハウを蓄積してきた上司さんなりの強い思いがある。
「ワイヤーでコントロールするリムブレーキは、やっぱり必要だと思ったんです。僕らもここ数年はディスクブレーキ+フラットマウントのモデルばかり作ってきましたが、ずっと性能が磨き上げられてきたリムブレーキバイクの走りは無くしちゃいけない、残さなきゃいけないと強く感じたタイミングがあったんですよね」。

JFF#503でこだわり抜かれたのは、クロモリの粘りやしなりを活かした乗り味を実現すること。一見するとシンプルなホリゾンタルフレームだけれど、リアバックの曲線はとても複雑で、オーバーサイズのヘッドチューブにオフセットに拘るオリジナルカーボンフォーク、、内装可能なワイヤールーティングなど、現代のバイクに乗り慣れた人でも違和感なく「走る」と感じるように工夫されている。しかし開発の過程では、チューブ選定の段階から苦労の連続だったという。
「ディスクブレーキ化に併せてチューブ自体も硬質化しているんです。だから普通に今のチューブを使って組み上げても、リムブレーキ時代のスチールバイクとは違う乗り味になってしまう。そこでバテッド位置やベンド形状にできる限りこだわりました。例えばダウンチューブ一つとっても、何度も試作を繰り返してどんどん変えてみた。本当ならより細いパイプを使いたくても現行では種類がなく、メーカーの過去の在庫パイプは安全基準の面で難しい。限られた選択肢の中で最適解を探りました」。

大量生産トップブランドではないけれど、ビルダーのように一つ一つのフレームをワンオフで作ると言うわけでもない。ジオメトリは勿論、チューブのバテッドや加工は自ら設計し煮詰め、提携している海外工場にオーダーを出して製造する。ワンバイエスはユーザーの好みの色に塗ってから発送するカラーオーダーシステムを基本としているが、それを実現するためにチューブ内側まで腐食防止処理を施した状態で入荷し、オーダーが入ってから国内で塗り上げるという手間暇かけた体制を敷いているのだ。「小回りのきく小規模メーカー」という立ち位置がワンバイエスというブランドの強みでもあり、開発の難しさと面白さにも繋がっていると上司さんは言う。

筆者が上司さんに話を聞いたのは、9月13日に埼玉県の秋ヶ瀬公園で開催された東京サンエスのブランド体験試乗会。もちろんJFF#503も試乗車として用意されていて、次々とユーザーが乗りにきては「これ、すごくいい」と口を揃えていたし、「これめちゃくちゃイイ!買います!」と購入を決めた方も。
筆者も試乗させてもらったけれど、その走りは上品そのものだった。軽さを意識した自転車ではないから、出だしこそ少し力は要るけれど、踏むごとに伸びやかに加速して、流していても気持ちが良いし、速く走ろうとすればしっかり応えてくれる。ペダリングに併せてフレーム全体がウィップする感覚は今とても新鮮なものだった。

「僕らのような小規模メーカーって、ある意味イチかバチかで製品を作っているようなところもあるんですよね(笑)」と上司さんは笑う。「僕も東洋フレームや、リッチーと関わる中で長年培ってきた経験がありますから、ある程度のものができるとは想像がついていますが、このJFF#503に関しては、かなりイメージ通りのものができた感覚がある。ここまで皆にスッと受け入れられるものができるとは思いませんでした。だいぶ苦労しましたが、その甲斐があったかな、って思いますね」と、多くの人がJFF#503を取り囲む様子をみて言う。
リムブレーキの魅力を現代的にアップデートしたJFF#503は、試乗会での好反応が示すように「今リムブレーキに乗る意味」を問い直す存在でもある。まるで同じ番号を冠した定番のジーンズのように、そしてほかのJFFシリーズと同じように、時代を超えて愛され続けるスタンダードになるかもしれない。
text&photo:So Isobe
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