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2人が口を揃えたのは、新型バイクの走りの軽さと、滑らかさへの驚き。BMCのレーシングバイクを駆り、国内外のトップレースを戦うのがヴィクトワール広島だ。キャプテンの柴田雅之とエーススプリンターを務める孫崎大樹に、新型Teammachine SLR01をテストしてもらい、その印象を聞いた。

BMCで戦うヴィクトワール広島

BMCのバイクを駆り、国内外のレースを戦うヴィクトワール広島 photo:Satoru Kato

BMCのレーシングバイクを駆り、国内と海外の舞台を戦うUCIコンチネンタルチームがヴィクトワール広島だ。2015年に中四国初の地元密着型プロチームとして誕生し、今年は記念すべき創設10周年。孫崎大樹やエリオット・シュルツなど新戦力4名を加入させ、西村大輝監督のもと、より高い士気をもってプロレースを戦っている。

BMCとヴィクトワール広島のコラボレーションは今年で3年目。選手たちはエアロモデルのTeammachine R01と軽量モデルのTeammachine SLR01を乗り分けてきたが、高速化するロードレースに対応するべく、近年はTeammachine R01の使用比重が高まっている。今回はBMCの輸入販売を行うフタバの協力のもと、発表されたばかりの新型Teammachine SLR01の印象を、ヴィクトワール広島の選手たちに聞くことができた。

新型Teammachine SLR01をヴィクトワール広島の選手がインプレッション photo:So Isobe

チーム拠点がある広島市郊外の山岳コースで真新しいTeammachine SLR01に乗り、印象を話してくれたのは、エーススプリンターでありながら獲得標高5,000m越えという2025年の全日本選手権で6位に入った孫崎大樹と、2022年から4シーズンに渡って所属し、うち2シーズンはキャプテンとしてチームを引っ張った柴田雅之。ほぼ初乗りだった2人が口を揃えたのは、新型バイクの走りの軽さと、滑らかさへの驚きだった。

インプレッションライダー

ヴィクトワール広島の孫崎大樹(左)と柴田雅之(右) photo:So Isobe

柴田雅之(しばた まさゆき)
2022年からチームに所属し、うち2年間はキャプテンを務めた登坂型ルーラー。海外レース経験も豊富で、2023年のトルコUCIレース(Grand prix Soganli)では8位入賞。堅実な走りでチームの勝利を支える頼れるベテランとして人望も厚い。先日開催された南魚沼ロードレースが現役最終レースとなった。

孫崎大樹(まごさき だいき)
2024年にチーム加入。持ち前のスプリント力を武器に活躍し、上りにも対応するバランス型の脚質を活かしてチームの主軸を務める。6月の全日本選手権ロードでは獲得標高5,000m超のコースで6位入賞を果たすなど成長著しい。今後数年間のうちに全日本タイトルを獲ることが最大の目標。

ヴィクトワール広島 公式HP

気持ちよくスーッと前に出る─柴田のファーストインプレ

「乗りやすいのにダルくない。スーッと気持ちよくスピードが乗る(柴田雅之)」 photo:So Isobe

柴田:「僕は前作のTeammachine SLRを3年間乗っていました。サイズは一つ小さかったのですが、それでもすぐに違いを感じました。ゴツゴツした硬さがマイルドになっていて、距離を伸ばしやすいなって思ったんです。

CW:「マイルド」という表現は、乗りやすくなる一方でダルさを感じる要因にもなりますが、その点は?

柴田:そこがすごく不思議だったんですけど、ダルさは全然ない。トルクをかけなくてもスーッと前に出てくれる感じがあって、とにかく「進む」感覚が強い。荒れた路面でも挙動が素直だし、ストレスがないバイクだと感じました。

自分はトルクをかけて乗るタイプですが、新型はペダリングのリズムが掴みやすい。挙動が素直で、踏み込んだ側にスッと傾いてくれる。特にシッティングで上りをこなしている時にその傾向は強く感じましたね。登りでリズムを取りやすいな、と。

エアロと対極。でも、ただの軽量バイクじゃない─孫崎の視点

「踏み味がスムーズで、振りが軽い。乗るほど魅力が出てくるバイク」(孫崎大樹) photo:So Isobe

孫崎:僕は4月まで旧SLR01を乗っていて、今はエアロモデルのR01でレースを走り、6月の全日本選手権で使ったのもR01です。今回のSLR01はR01と対極のキャラクターで、“軽いバイクらしい軽さ”がある。でも、ただ軽いだけじゃないんですよね。振ったときの軽快さと加速のスムーズさがあって、平坦だってぐんぐん進む。車体の振り、特にダンシングでの振りが軽いのが魅力で、乗れば乗るほど魅力が出てくる非常に楽しいバイクでした。

R01は“壁を蹴って進む”感覚があるバイクで、必要なトルクもしっかり要求してきます。剛性がある分、踏み抜くのにちょっとひ引っ掛かりがあるというか。少し重さを感じる部分があるんです。一番気持ち良いのが200-300ワットぐらいで、スーッと40km/h巡行できてしまう。良くも悪くも分かりやすくて踏みどころがあるんです。でもSLR01は、その壁がない。どのワット域でも軽く気持ちよく踏めるんです。低出力で流している時もいいし、踏み味が軽いからトルクがかからないというわけでもなく、軽量らしさがあるのにかかりがいい。硬さを感じることなく踏めるバイクだな、と。全域で踏みやすいってのが特徴ですね。

「このバイクが活きるシーンは...」

「修善寺の繋ぎ区間を楽に越えられそう。脚を残せるバイクです」 photo:So Isobe

CW:このバイク、どういうレースで活きると思いますか?

柴田:真っ先に浮かんだのは修善寺です。あそこって短い登りが連続してるんですけど、今回のSLR01なら、踏み出しの軽さでスピードを殺さずに越えていけそう。“つなぎの区間”を楽に処理できるのは大きなアドバンテージです。

孫崎:僕は富士クリテリウムですね。最後が2〜3%の登りスプリントなんですが、意外と早駆けしすぎてタレる選手が多くて。でも、そういう局面でSLR01の軽さと反応の良さが活きるでしょう。高速のまま突入するようなスプリントはR01が向いてるけど、牽制状態からのスパン!っていう立ち上がりはSLR01が強い。特に日本のクリテリウムは低速で曲がるコーナーが多いのでこの加速の軽さは武器になります。

柴田:強く感じたのが「引きずられている感」がないことです。乗り心地も良く、わざと荒れた道を走っても身体への衝撃は少ないですし、でもヤワいというわけじゃないからコーナーでも狙ったラインを通しやすい。これまで乗ってきた前作は結構硬さが目立つバイクだったんですが、ちょっと対照的です。

孫崎:そうそう、剛性感がちゃんとあるのに振動吸収能力に優れている。それは走りながら柴田さんと話していたことです。剛性感と快適性のバランスが絶妙なんですよね。操作感がナチュラルで、反応も自然。硬すぎず、でも芯がある。ただ、僕はコーナーに関してはR01の方が安定感があって好きです。フォークのワイドスタンスと車体の重さが効いている気がして。SLR01は軽い分、風の影響とかではやや振られやすさもあるかもしれません。

エアロマシンのR01に乗る孫崎だが、今回Teammachine SLR01の走りの向上ぶりに驚いたという photo:So Isobe

CW:レースに使うとしたらR01とSLR01、どちらを選びますか?

柴田:僕はSLR01ですね。平坦でも乗る前のイメージより遥かに進むし、扱いやすさが段違い。昔の軽量バイクってピーキーで、乗り方を選んだんですけど、今のSLR01は誰がどう乗っても“良く走る”。僕はR01よりもコーナリングに癖がなくて走りやすいと感じましたし。

孫崎:スプリンターとしてはR01が基本になるんですが……SLR01、かなりいいです。今日みたいにちょっと乗っただけでも「これでレースしてみたい」って思わせてくれる。コースによっては間違いなく武器になりますね。

プロの太鼓判──「一般ユーザーにこそ乗ってほしい」

「レースバイク=疲れる」というイメージを持っている人にこそ乗ってほしい、と二人は声を揃える。長距離ライドでも走りは活きる、とも photo:So Isobe

孫崎:それに、選手目線だけじゃなくて、一般ライダーに本当にオススメできるバイクです。だって、軽くてよく進み、ストレスがないんですから。R01はある程度の脚がないと乗りこなすのが難しいけど、SLR01は違う。誰が乗っても“楽しい”って感じられるバイクです。

「シートポストのクランプ方式が変わったのは歓迎すべきこと」と柴田は言う photo:So Isobe

柴田:その通りですね。例えばブルベみたいに長距離を淡々と走る人にも合うし、“レース機材=尖ってる”ってイメージがある人ほど、この乗りやすさに驚くはず。それに、シートポストの留め方が変更されたのはかなり大きいと思いました。チーム内では、先代SLR01で今まで数回シートポストが落ちてしまったことがあるんです。でも新型はボルト2本留めになりましたよね。この構造ってR01が先に取り入れてたんですが、チーム内でRのポストが落ちたことって一回もないんですよ。だからすごく良い改善だな、って。

孫崎:このSLR01は「誰でも乗れて、誰でも楽しめるバイク」ですね。軽量だけどかかりも良くて、乗りづらさがないから飽きない。そんなバイクって、実はなかなか無いと思うんですよ。

柴田:BMCって、やっぱりものづくりが丁寧なんですよね。フレームの強度も高いし、信頼できる。僕なんて落車2回しても割れてない(笑)。レース強度でもトラブルがないっていうのは、すごく大事です。

ハイエンドバイクの軽さと加速感を、誰もが味わえる。Teammachine SLR01はマルチユースできる、万能軽量マシンだ photo:So Isobe

高い剛性と軽量性、快適性、そしてクセのなさ。Teammachine SLR01は、ただの“軽量バイク”ではない。プロレーサーの足元を支えるバイクでありながら、日々のライドにも寄り添ってくれる──そんな「懐の広さ」を感じるインプレッションだった。

輸入と国内販売を行うフタバによれば、Teammachine SLR01は発表以降、モデルチェンジを心待ちにしていたファンをはじめ、多くのファンからのオーダーが届いているという。フレームセット価格877,800円(税込)、シマノULTEGRA完成車「Teammachine SLR 01 FOUR」で1,446,500円(税込)というハイエンドモデルだが、価格以上の価値と魅力を秘めた魅力的なモデルと言えるだろう。
提供:フタバ | text:So Isobe