スイスのホイールブランド、DTスイスより、超軽量ディスクブレーキホイール"PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseral"をピックアップ。前後セット1,266gとDTスイスのラインアップ中最軽量のクライミングホイールをインプレッションしていく。



DTスイス PRC 1100 DICUT 24 Mon ChasseralDTスイス PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseral
リムやハブ、スポークといったホイール周りの製品を一手に手掛けるDTスイス。スイスに拠点を置くメーカーらしい、高精度、高品質なものづくりで知られ、多くのホイールブランドの供給元として世界中から厚い信頼を寄せられている。

その技術力を活かしたDTスイスのコンプリートホイールラインアップは、オンロードからオフロード、レーシングモデルからデイリーユース向けまで、非常に幅広い範囲をカバーしている。そんな中でも、際立った存在感を放つのが今回紹介する"PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseral"だ。

リム、ハブ、スポーク。全てDTスイスの手によるものだ。リム、ハブ、スポーク。全てDTスイスの手によるものだ。
24mmハイトのロープロファイルカーボンリム24mmハイトのロープロファイルカーボンリム 内幅18mmと昨今のホイールとしては細めの設定だ内幅18mmと昨今のホイールとしては細めの設定だ


DTスイスの本社工場からも近い、ジュラ山脈のシャセラル山からその名を取られたホイールは、DTスイスのロードバイク用ホイールの中で、オールラウンドモデルとされる"P"シリーズの頂点に立つ一本。エアロダイナミクスが重視される昨今珍しい、24mmハイトのロープロファイルカーボンリムを採用したクライミングホイールだ。

シンプルなカーボンリムは、もちろんチューブレスに対応。リムハイトだけでなく、内幅も18mmと、細めの造りで重量を最小限に抑えることに注力していることが窺える設計だ。また、左右のスポークテンションを均一にするため、フロントとリア共にオフセットリムとされている。

DTスイス 180をベースとした専用ハブ。リアハブは軽量かつ高効率なRatchet EXPフリーボディを採用するDTスイス 180をベースとした専用ハブ。リアハブは軽量かつ高効率なRatchet EXPフリーボディを採用する
このリムに組み合わせられるのは、DTスイス 180をベースとした専用ハブ。無駄を削ぎ落したハブボディは、ロープロファイルリムでありながら必要な横剛性を確保するワイドフランジデザインとされている。フリーボディには、同社が誇る面ラチェットであるスターラチェット機構を更に洗練し、軽量かつ高効率なシステムとして完成させたRatchet EXPを採用する。

スポークはフロント/リア共に24本。回転しづらいT字型のスポークヘッドを有したDTのエアロスポーク"Aerolite"と"Aerocomp"が適材適所に配置され、軽量性とエアロダイナミクス、そして左右のテンションバランスの均一化に貢献している。

DTスイス PRC 1100 DICUT 24 Mon ChasseralDTスイス PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseral
これらの造りにより、PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseralは、フロント578g、リア688g、セット重量1,266gと、ディスクブレーキホイールとしては破格の重量を実現した。登りはもちろんのこと、DTスイス曰く、「最高の加速を実現するホイール」でもある。同シリーズのPRC 1100 DICUT 35と比較しても、0~30km/hの加速に必要な出力を15%近く低減することが出来るのだという。

そんな超軽量モデルの秘めた実力はいかなるものか。二人のライダーがインプレッションを行った。



−インプレッション

「登りに照準を合わせるクライマーにはこれ以上無い一本」「登りに照準を合わせるクライマーにはこれ以上無い一本」
もう、見た目からもわかる通り、軽さが際立つホイールですね。本当に想像通りで、誰が乗ってもこの軽さというのは体感できると思いますよ。ヒルクライムに特化したスペシャルホイールというポジションで、登りに照準を合わせるクライマーにはこれ以上無い一本でしょうね。

超軽量なロープロファイルリムなので、スピードの維持は苦手な印象です。常に加速することでスピードを保つようなイメージでしょうか。裏返して言えば、常に加速し続ける必要のあるヒルクライムでは、デメリットを感じさせず最高に輝きますね。

剛性感も結構高く、硬めの乗り味ですね。踏んだだけ、前に出てくれる掛かりの良さを感じます。スポークテンションも高そうですし、ナローなリム形状というのも相まってかなりスパルタンな性格のホイールだと言えます。

「ホイールのリズムが速いので、コンパクトに走るほうがフィットする」「ホイールのリズムが速いので、コンパクトに走るほうがフィットする」
軽く、硬めなので、全体的な挙動もかなり機敏になります。例えばダンシング。車体を左右に振った際にも倒れる速度がかなり速いので、タイミングがかなりシビアになりますね。ペダリングのスイートスポットはすこし狭い印象で、シッティングで綺麗に回していくほうがスムーズに自転車を進められるはずです。

ホイールのリズムが速いので、ダンシングでも自転車を大きく左右に振るような乗り方よりも、コンパクトに走るほうがフィットするかと思います。イメージとしては、コンタドールよりフルームのような乗り方が似合うホイールです(笑)。

その性格はコーナーリングにも現れています。非常に鋭いターンを決めつつ、しっかりと横剛性があるので、バイクを倒し込んだ状態の安定感もあり、コーナー途中でラインがぶれたりするような違和感はありません。

ディスクブレーキロードが主流になってから機材もオールラウンド化が進み、軽量モデルでもエアロであったりエアロモデルでもある程度軽かったりしますよね。扱いやすくて、間口の広い機材が多くなっています。そういった流れの中で、完全に登りに特化したこのホイールは非常に貴重な存在だと言えるでしょう。

「登りに特化したこのホイールは非常に貴重な存在」「登りに特化したこのホイールは非常に貴重な存在」
ナロータイプのリムで23~25mm幅のタイヤにもマッチングが良いというのもユニークなポイントです。乗り心地や転がり抵抗といった要素を抜きにして、あくまで軽量性を追求した設計というのが伝わってくる仕様です。

合わせるフレームとしては、やはり軽量なバイクが良いですね。今回はスぺシャライズドのAETHOSと組合せましたが、乗り味だけでなく、見た目や雰囲気のマッチングという意味でもとても良かったと思います。

もちろん、最近のトレンドであるエアロをプラスしたオールラウンドレーサーと組み合わせても、その性能をしっかり引き出せるポテンシャルを持っています。特に、登りのレースではこの上ない武器となるでしょう。国内でのレースであれば、やはり乗鞍のような安定して厳しめの斜度が続くヒルクライムイベントがピッタリでしょう。斜度が厳しければ厳しいほど輝くホイールです。

近年少なくなってきた、尖った性格のホイールなので、ぜひこの車輪を使いこなしてやるぜ!といった気概に溢れた方にこそ、試してみてほしい一本ですね。

インプレッションライダーのプロフィール

成毛千尋(アルディナサイクラリー)成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)

東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。

アルディナサイクラリー




DTスイス PRC 1100 DICUT 24 Mon Chasseral
リム:カーボン
リムハイト:24mm
リム内幅;18mm
ハブ:DTスイス ダイカット、180ベース、セラミックベアリング
スポーク:DTスイス エアロコンプ
フロント重量:578g
リア重量:688g
フロント価格:214,500円(税込)
リア価格:261,800円(税込)

text:Naoki Yasuoka
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