2020/09/27(日) - 15:08
キャノンデールのエアロカテゴリーを担う"SYSTEMSIX"。キャノンデールらしいユニークな発想とトータルデザインで最高のエアロ性能を追求したスピードスターをインプレッション。2021年モデルの鮮やかなカラーリングにも注目だ。
キャノンデール SYSTEMSIX Carbon Ultegra (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
BB30やAiデザイン、Leftyフォークなど、既存の規格の枠に囚われず自らが理想と掲げる自転車を実現するために様々なオリジナリティ溢れるテクノロジーを搭載したバイクを送り出してきたキャノンデール。
そんなキャノンデールだがエアロロードをラインアップに加えることに対しては、人一倍慎重な姿勢を見せてきた。デビュー以来10年以上の長きにわたり軽量オールラウンドモデルとして君臨するSUPERSIXの完成度の高さが、そのまま越えるべきハードルとなったのだろう。エアロロードであったとしてもSUPERSIX同様にあらゆるシーンで最速たる一台を生み出すべく、多くの開発期間を費やしてきた。
そうして2019モデルとして、待望のデビューを果たしたのが今回紹介する「SYSTEMSIX」。キャノンデールが考える理想であり、"Faster everywhere"のコンセプトを掲げるエアロオールラウンダー。超高速域で争うプロレーサーはもちろん、より高いスピードに魅了された全てのサイクリストを満足させる一台として送り出された。
流線型の滑らかなヘッドチューブが前方からの風を受け流し整流効果を生み出す
専用アプリで読み込んでバイクの登録や情報を確認できる六角形のバーコード
エアロ形状のストレートブレードが与えられたフロントフォーク
"SYSTEMSIX"といえば、2006年にキャノンデールのフラッグシップモデルとしてラインアップされていたフロントカーボン/リアアルミのハイブリッドバイクを思い起こす方も多いだろう。だが、もちろんフルカーボンバイクである今作のこれらモデル名が示すのは炭素の元素番号だけでなく、6つの要素をシステマチックに統合した設計思想を有しているということ。
ブランド初となるエアロロードの開発にあたり、キャノンデールはフレーム、フォーク、シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールという6つの要素にバイクを切り分けた。これらそれぞれを空力的に最適化しつつ、包括的なデザインを施すことでバイク全体として最高のエアロダイナミクスを実現。6%以下の勾配であれば、エアロ効果が優位となるためSUPERSIX EVOよりも速く走れると豪語する性能を獲得した。平坦なコースであれば、30km/hを維持した場合10%のパワーセーブを実現しているとも。
シートポストは翼型断面を採用 クランプは臼式となり空気抵抗の少ないスムースなシルエットを実現
専用のコラムスペーサーによってケーブルを内装。電動コンポーネントで組めばシフトケーブルも内装可能だ
ボリュームあるダウンチューブからそのままチェーンステイへと繋がっていく
フォーククラウンからヘッドチューブ下側へと流れるように繋がるデザイン、そしてホイールに可能な限りダウンチューブが近づけられている
最も大きなウェイトを占めるフレームの設計については、コンピュータによるCFD解析と風洞実験を元に煮詰められ、各所に翼断面形状の後端を切り落としたカムテールエアロチュービングを採用している。
ホリゾンタル基調のトップチューブやコンパクトなリアトライアングル、ホイールに沿うようなカットオフ形状、ボトル装着を前提としたワイドなダウンチューブデザインなど、エアロロードのトレンドを全て網羅するような先進的デザインが与えられている。
昨今標準となりつつあるケーブルインテグレーションシステムをいち早く採用した点も大きな特徴。ケーブル完全内装化のため、ケーブル配線用のスペースを設けたユニークなヘッドチューブデザインを採用。ハンドル内部からステム下部、専用コラムスペーサーを経由して専用スペースへと導かれ、ケーブルが一切露出しないスマートなルックス、そしてなによりもエアロダイナミクスの向上を実現した。
ステム下側からブレーキホースがフレームへと導かれている
コンパクトなリアトライアングルはエアロロードのトレンドだ
フレームに加え、フロントフォークもディスクブレーキ専用となることで、リムブレーキでは実現不可能だったエアロデザインが与えられた。フォーククラウンを限界まで薄くし、ダウンチューブへ流れるように繋がるデザインを採用することで高い整流効果を実現した。
残る要素であるシートポスト、ステム、ハンドルバーにはKNØT(ノット)というSYSTEMSIX専用パーツとして新開発されている。ケーブルフル内装化にも貢献するカーボンハンドルバーとアルミステムは、まるで一体型ハンドルのような滑らかなデザインでありながらも、2ピース構造とすることでフィッティング自由度の高いシステムとなっている。
シートステーの付け根は一旦横へせり出してからリアエンドへと伸びていく
ボトルケージは上下2ポジションから選べるようになっている
後輪に沿うような造形とされたシートチューブ。脚でかき回された空気を整える空力的にも重要な部位だ
また、片側のエンドにスリットを設けたスピードリリース機構を搭載し、スルーアクスルを採用しつつもスムーズなホイールの着脱を実現。エアロだけでなく、レースの現場で必要とされる速さに真正面から向き合うキャノンデールらしい設定だ。
今回のインプレッションバイクは、リーズナブルな価格を実現したCarbonグレードのアルテグラ完成車。機械式コンポーネントのため、変速ケーブルはフル内装されないものの、SYSTEMSIXの高性能を身近に体感できる一台だ。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「高速巡航を得意としつつ、あらゆる面でソツのないエアロロード」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
もう見た目からして完全なエアロロード!という感じですが、思った以上に扱いやすい素直さが魅力的ですね。エアロロードって、どうしても踏んだ感じとかハンドリングの癖が強いものが多いですが、このバイクはそんなことが全然無い。見た目の押し出しが強い分、ギャップに驚かされるくらい。
というと、オールラウンドバイク的な乗り味を想像してしまうかもしれないですが、走り自体は純然たるエアロロードのもので、端的にいえば「速い」の一言。とにかくスピードを乗せてしまえばどこまでも落ちずに走りつづけていけるような、高速巡航性能が最大の魅力ですね。
「高速巡航を得意としつつ、あらゆる面でソツのないエアロロード」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
フレームもフォークもホイールも、車体の全てが風を切っているようなイメージで、エアロ効果に懐疑的な人もこのバイクに乗れば体感できるような空力性能を持っています。一方で、登りとか激しい加減速といったシチュエーションは得意分野ではないですね。
このバイクが最も得意とするのは、じんわりとスピードを上げて淡々とハイペースを刻むような走り方ですね。コーナーの立ち上がりのように低速からの急激な加速はあまり得意ではないですが、スプリントのように高速域から更に加速するようなシチュエーションでは素晴らしい伸びを見せてくれます。
「フレームもフォークもホイールも、車体の全てが風を切っているようなイメージ」成毛千尋(アルディナサイクラリー) 登りに関しては、やはり重量が効いている感覚があります。ある程度の斜度、キャノンデールは6%と言っていますが、そのあたりからはやはり重さを感じますね。とはいえ、例えばホイールをより軽いものにすれば登りの性能は改善できると思いますし、パーツアセンブルでチューニングできる範囲は広いと思います。
フレームのボリューム感に比して、剛性面で過剰と感じることは無かったですね。とはいえ、ダンシングで撓らせながら進ませるというイメージではなく、シッティングで一定のトルクを掛け続けるようなスタイルがしっくりくるとは思います。
今回のバイクはHi-Modではないセカンドグレードということでしたが、正直なところHi-Modと言われていたら納得してしまうほどの性能があったと思います。Hi-Modでは更に軽くなってキレが増すのかと思うと、かなり興味がそそられますね。
一点だけ難点を挙げるとすればハンドルの切れ角に制限があることでしょうか。もちろん内装のケーブルを守るために必要であることは理解しているのですが、梱包しづらいのはデメリットですね。おきなわやニセコなど、このバイクを持っていきたいレースは大体飛行機で運ぶ必要があるので、その点は残念です。
そこに目をつぶれば、優れたエアロ性能をもちつつ、ある程度登りもこなせ、ハンドリングもクセが無く快適性も悪くないという、非常にバランスの取れたレーシングバイクです。E1などで、上位を目指す人であればHi-Modを選ぶべきだと思いますが、一般的なホビーレーサーであればこのグレードでも十分武器になると思います。レースを目標にしてもいいですし、高速巡航能力を活かしたハイスピードクルーザーとしてロングライドの供にしても良いでしょう。
「エアロを体感するならこの一台。スピードを求めるベテラン向けのマシン」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
「エアロを体感するならこの一台。スピードを求めるベテラン向けのマシン」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
明らかにスピード域が速いですね。ホイールとフレーム、両方の影響があると思うけれど、速度の伸び方がこのバイクは圧倒的にスムーズですね。平坦ではどんどんスピードが上がっていって、エアロ効果の恩恵をこれでもかというくらいに体験できます。
イメージとしては30km/hくらいから、他のバイクに比べて明らかに楽が出来ている実感がありますね。ノーマルバイクに比べると2~3km/hくらい高い速度域を維持できるような感覚というと言い過ぎかもしれないですが、とにかく高速巡航に関しては素晴らしい性能を持ったバイクですね。
これだけエアロバイク然としたデザインだと癖が強い剛性感になっているんじゃないか、と思っていたのですが、いざ乗ってみると至って普通に乗りこなせます。特に縦に踏むことを意識するとか、回転を重視するとかそういった意識をせずともスムーズに前へと進んでくれますね。
「1台で何でもできるバイクというよりも明確な方向性を持つ尖ったバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 一方で、ハンドリングに関してはやや倒しづらさは感じました。フレーム自体はニュートラルな設計なので、ホイールの影響が大きいですね。60mmハイトもあるディープリムで、ジャイロ効果も強いので、どうしても真っすぐ進もうとする印象です。あと、横風には強くないので、そのあたりはある程度のスキルが必要だと思います。初心者の1台目というよりも、何台か持っているベテラン向けの乗り味ですね。
また、ボリュームのある見た目に反して乗り心地が良いのは驚きでしたね。もちろんエアロロードとしては、という但し書きは着きますが、しっかりと突き上げをいなしてくれるので体への負担も少なく抑えられています。
惜しむらくはハンドルの切れ角ですね。普通に乗っている分には問題ないですが、スタンディングなどでは気をつけたほうが良いでしょうし、輪行もちょっと難しい。そういった意味でも、1台で何でもできるバイクというよりも明確な方向性を持つ尖ったバイクですから、既に複数台を所有していて平坦に特化したバイクが欲しいというような方にこそピッタリだと思います。
登りも遅くは無いのですが、ヒルクライムであれば別の選択肢がありますし、このバイクが輝くのはハイペースの巡航シーンだと思います。ホイールベースが長めなので、高速コーナーでの安定感はピカイチですから、サーキットエンデューロなどは得意中の得意でしょう。平坦なつくばサーキットや、長い登りを一本耐えてしまえばあとは下りと平坦なツインリンクもてぎなどはSYSTEMSIXにもってこいですね。
あとは、ショートのトライアスロンなどにも良いと思います。DHバーを着けるだけで、あとは完成車ままのアセンブルでかなり良い走りが出来るでしょう。と、細かいことを話してきましたがルックスだけでも十分な決め手になると思います。塗装も高級感がありますし、造形面においても唯一無二なシルエットですから。
キャノンデール SYSTEMSIX Carbon Ultegra (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
鮮やかなキャンディレッドにペイントされた2021年モデルのSYSTEMSIXとSUPERSIX EVO
キャノンデール SYSTEMSIX Carbon Ultegra
フレーム:BallisTec Carbon
フォーク:BallisTec Carbon
ハンドル・ステム:Cannondale KNØT SystemBar
クランク:HollowGram, BB30a, OPI SpideRing, 52/36
ホイール:Vision SC55, carbon clincher disc, tubeless ready
タイヤ:Vittoria Rubino Pro Bright Black, 700 x 25c, reflective strip
サイズ:47, 51, 54, 56
価格:550,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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BB30やAiデザイン、Leftyフォークなど、既存の規格の枠に囚われず自らが理想と掲げる自転車を実現するために様々なオリジナリティ溢れるテクノロジーを搭載したバイクを送り出してきたキャノンデール。
そんなキャノンデールだがエアロロードをラインアップに加えることに対しては、人一倍慎重な姿勢を見せてきた。デビュー以来10年以上の長きにわたり軽量オールラウンドモデルとして君臨するSUPERSIXの完成度の高さが、そのまま越えるべきハードルとなったのだろう。エアロロードであったとしてもSUPERSIX同様にあらゆるシーンで最速たる一台を生み出すべく、多くの開発期間を費やしてきた。
そうして2019モデルとして、待望のデビューを果たしたのが今回紹介する「SYSTEMSIX」。キャノンデールが考える理想であり、"Faster everywhere"のコンセプトを掲げるエアロオールラウンダー。超高速域で争うプロレーサーはもちろん、より高いスピードに魅了された全てのサイクリストを満足させる一台として送り出された。
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"SYSTEMSIX"といえば、2006年にキャノンデールのフラッグシップモデルとしてラインアップされていたフロントカーボン/リアアルミのハイブリッドバイクを思い起こす方も多いだろう。だが、もちろんフルカーボンバイクである今作のこれらモデル名が示すのは炭素の元素番号だけでなく、6つの要素をシステマチックに統合した設計思想を有しているということ。
ブランド初となるエアロロードの開発にあたり、キャノンデールはフレーム、フォーク、シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールという6つの要素にバイクを切り分けた。これらそれぞれを空力的に最適化しつつ、包括的なデザインを施すことでバイク全体として最高のエアロダイナミクスを実現。6%以下の勾配であれば、エアロ効果が優位となるためSUPERSIX EVOよりも速く走れると豪語する性能を獲得した。平坦なコースであれば、30km/hを維持した場合10%のパワーセーブを実現しているとも。
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最も大きなウェイトを占めるフレームの設計については、コンピュータによるCFD解析と風洞実験を元に煮詰められ、各所に翼断面形状の後端を切り落としたカムテールエアロチュービングを採用している。
ホリゾンタル基調のトップチューブやコンパクトなリアトライアングル、ホイールに沿うようなカットオフ形状、ボトル装着を前提としたワイドなダウンチューブデザインなど、エアロロードのトレンドを全て網羅するような先進的デザインが与えられている。
昨今標準となりつつあるケーブルインテグレーションシステムをいち早く採用した点も大きな特徴。ケーブル完全内装化のため、ケーブル配線用のスペースを設けたユニークなヘッドチューブデザインを採用。ハンドル内部からステム下部、専用コラムスペーサーを経由して専用スペースへと導かれ、ケーブルが一切露出しないスマートなルックス、そしてなによりもエアロダイナミクスの向上を実現した。
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残る要素であるシートポスト、ステム、ハンドルバーにはKNØT(ノット)というSYSTEMSIX専用パーツとして新開発されている。ケーブルフル内装化にも貢献するカーボンハンドルバーとアルミステムは、まるで一体型ハンドルのような滑らかなデザインでありながらも、2ピース構造とすることでフィッティング自由度の高いシステムとなっている。
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今回のインプレッションバイクは、リーズナブルな価格を実現したCarbonグレードのアルテグラ完成車。機械式コンポーネントのため、変速ケーブルはフル内装されないものの、SYSTEMSIXの高性能を身近に体感できる一台だ。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「高速巡航を得意としつつ、あらゆる面でソツのないエアロロード」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
もう見た目からして完全なエアロロード!という感じですが、思った以上に扱いやすい素直さが魅力的ですね。エアロロードって、どうしても踏んだ感じとかハンドリングの癖が強いものが多いですが、このバイクはそんなことが全然無い。見た目の押し出しが強い分、ギャップに驚かされるくらい。
というと、オールラウンドバイク的な乗り味を想像してしまうかもしれないですが、走り自体は純然たるエアロロードのもので、端的にいえば「速い」の一言。とにかくスピードを乗せてしまえばどこまでも落ちずに走りつづけていけるような、高速巡航性能が最大の魅力ですね。
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フレームもフォークもホイールも、車体の全てが風を切っているようなイメージで、エアロ効果に懐疑的な人もこのバイクに乗れば体感できるような空力性能を持っています。一方で、登りとか激しい加減速といったシチュエーションは得意分野ではないですね。
このバイクが最も得意とするのは、じんわりとスピードを上げて淡々とハイペースを刻むような走り方ですね。コーナーの立ち上がりのように低速からの急激な加速はあまり得意ではないですが、スプリントのように高速域から更に加速するようなシチュエーションでは素晴らしい伸びを見せてくれます。
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フレームのボリューム感に比して、剛性面で過剰と感じることは無かったですね。とはいえ、ダンシングで撓らせながら進ませるというイメージではなく、シッティングで一定のトルクを掛け続けるようなスタイルがしっくりくるとは思います。
今回のバイクはHi-Modではないセカンドグレードということでしたが、正直なところHi-Modと言われていたら納得してしまうほどの性能があったと思います。Hi-Modでは更に軽くなってキレが増すのかと思うと、かなり興味がそそられますね。
一点だけ難点を挙げるとすればハンドルの切れ角に制限があることでしょうか。もちろん内装のケーブルを守るために必要であることは理解しているのですが、梱包しづらいのはデメリットですね。おきなわやニセコなど、このバイクを持っていきたいレースは大体飛行機で運ぶ必要があるので、その点は残念です。
そこに目をつぶれば、優れたエアロ性能をもちつつ、ある程度登りもこなせ、ハンドリングもクセが無く快適性も悪くないという、非常にバランスの取れたレーシングバイクです。E1などで、上位を目指す人であればHi-Modを選ぶべきだと思いますが、一般的なホビーレーサーであればこのグレードでも十分武器になると思います。レースを目標にしてもいいですし、高速巡航能力を活かしたハイスピードクルーザーとしてロングライドの供にしても良いでしょう。
「エアロを体感するならこの一台。スピードを求めるベテラン向けのマシン」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
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イメージとしては30km/hくらいから、他のバイクに比べて明らかに楽が出来ている実感がありますね。ノーマルバイクに比べると2~3km/hくらい高い速度域を維持できるような感覚というと言い過ぎかもしれないですが、とにかく高速巡航に関しては素晴らしい性能を持ったバイクですね。
これだけエアロバイク然としたデザインだと癖が強い剛性感になっているんじゃないか、と思っていたのですが、いざ乗ってみると至って普通に乗りこなせます。特に縦に踏むことを意識するとか、回転を重視するとかそういった意識をせずともスムーズに前へと進んでくれますね。
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また、ボリュームのある見た目に反して乗り心地が良いのは驚きでしたね。もちろんエアロロードとしては、という但し書きは着きますが、しっかりと突き上げをいなしてくれるので体への負担も少なく抑えられています。
惜しむらくはハンドルの切れ角ですね。普通に乗っている分には問題ないですが、スタンディングなどでは気をつけたほうが良いでしょうし、輪行もちょっと難しい。そういった意味でも、1台で何でもできるバイクというよりも明確な方向性を持つ尖ったバイクですから、既に複数台を所有していて平坦に特化したバイクが欲しいというような方にこそピッタリだと思います。
登りも遅くは無いのですが、ヒルクライムであれば別の選択肢がありますし、このバイクが輝くのはハイペースの巡航シーンだと思います。ホイールベースが長めなので、高速コーナーでの安定感はピカイチですから、サーキットエンデューロなどは得意中の得意でしょう。平坦なつくばサーキットや、長い登りを一本耐えてしまえばあとは下りと平坦なツインリンクもてぎなどはSYSTEMSIXにもってこいですね。
あとは、ショートのトライアスロンなどにも良いと思います。DHバーを着けるだけで、あとは完成車ままのアセンブルでかなり良い走りが出来るでしょう。と、細かいことを話してきましたがルックスだけでも十分な決め手になると思います。塗装も高級感がありますし、造形面においても唯一無二なシルエットですから。
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キャノンデール SYSTEMSIX Carbon Ultegra
フレーム:BallisTec Carbon
フォーク:BallisTec Carbon
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クランク:HollowGram, BB30a, OPI SpideRing, 52/36
ホイール:Vision SC55, carbon clincher disc, tubeless ready
タイヤ:Vittoria Rubino Pro Bright Black, 700 x 25c, reflective strip
サイズ:47, 51, 54, 56
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インプレッションライダーのプロフィール
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埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
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東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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