9月2日、インカレのロードレースが長野県の大町市で行われ、男子は明治大学の野本空が2年ぶり2度目の優勝。女子は鹿屋体育大学の中井彩子が初優勝した。総合優勝は、男子は日本大学、女子は日本体育大学が昨年に続き連覇を達成した。



美麻地区の集落の中を一列で進む集団美麻地区の集落の中を一列で進む集団 photo:Satoru Kato
コース沿いにはそばの花が咲き乱れるコース沿いにはそばの花が咲き乱れる photo:Satoru Kato新たに組み込まれたコースにある180°ヘアピンターン新たに組み込まれたコースにある180°ヘアピンターン photo:Satoru Kato

トラックから2週間のインターバルを挟んでの開催となったインカレロード。舞台は「大町美麻ロードレース」でおなじみの、長野県大町市の公道コース。元々アップダウンに富むレイアウトだったが、今年は一部変更があり、急斜度の登り区間と180度ターン、さらに集団を縦に引き伸ばす幅の狭い区間が設定され、1周13.4kmとなった。

大会直前、「高木秀彰賞」が設定されることが発表された。昨年10月に急逝したフォトジャーナリスト、故・高木秀彰氏のご家族の申出により、インカレロードの男女優勝者を擁する大学自転車部に、活動資金としての賞金10万円が贈られる。この賞は今後10年間に渡り授与されるもので、大学生の自転車競技を伝え続けた故人の遺志と、ご家族の希望によるものだ。

当日の天気は曇り。朝方は20℃を下回る気温で寒さを感じるほどだったが、日中は雲間から太陽がのぞくこともあった。それでも大町市の最高気温は24℃と、長袖が必要な気候だ。



U23ロード女王の中井彩子がインカレ初優勝でロード2冠達成

22名が出走した女子ロードレース22名が出走した女子ロードレース photo:Satoru Kato
序盤、集団前方でレースをする下山美寿々(早稲田大学)序盤、集団前方でレースをする下山美寿々(早稲田大学) photo:Satoru Kato古山稀絵(日本体育大学)を先頭に行く9人の先頭集団古山稀絵(日本体育大学)を先頭に行く9人の先頭集団 photo:Satoru Kato

女子のレースは5周67km。朝7時45分にスタートしたレースは、1周目を終えた時点で9人が先頭集団に残る。2周目、3周目と、登り区間で中井彩子(鹿屋体育大学)がふるいにかけるアタックを繰り返す。4周目に入ると、吉田鈴(同志社大学)が登りでペースをつくり、人数が絞られていく。  

女子U23日本チャンピオンジャージを着る中井彩子(鹿屋体育大学)がアタックを繰り返す女子U23日本チャンピオンジャージを着る中井彩子(鹿屋体育大学)がアタックを繰り返す photo:Satoru Katoレース後半、吉田鈴(同志社大学)が登り区間でペースをつくるレース後半、吉田鈴(同志社大学)が登り区間でペースをつくる photo:Satoru Kato

最終周回、先行する菅原朱音(八戸学院大学)と中井彩子(鹿屋体育大学)を吉田鈴(同志社大学)が追う最終周回、先行する菅原朱音(八戸学院大学)と中井彩子(鹿屋体育大学)を吉田鈴(同志社大学)が追う photo:Satoru Kato

残り1km、吉田鈴(同志社大学)が先行していた2人に追いつく残り1km、吉田鈴(同志社大学)が先行していた2人に追いつく photo:Satoru Kato最終周回までに残ったのは、中井、吉田、中冨尚子(京都産業大学)、菅原朱音(八戸学院大学)の4人。新たにコースに加わった急斜度の登りで中井がアタックすると、反応出来たのは菅原のみ。少し遅れて吉田が追いつき、中冨は遅れる。さらに中井がペースアップすると吉田が遅れるものの、残り1kmで再度追いつき、3人での勝負へ。

中井彩子(鹿屋体育大学)がインカレ女子ロード優勝中井彩子(鹿屋体育大学)がインカレ女子ロード優勝 photo:Satoru Kato
健闘した吉田鈴(同志社大学)は3位健闘した吉田鈴(同志社大学)は3位 photo:Satoru Kato女子表彰式 左から2位菅原朱音(八戸学院大学)、1位中井彩子(鹿屋体育大学)、3位吉田鈴(同志社大学)女子表彰式 左から2位菅原朱音(八戸学院大学)、1位中井彩子(鹿屋体育大学)、3位吉田鈴(同志社大学) photo:Satoru Kato

フィニッシュまで残り50mの登りに先頭で姿を表したのは、女子U23の全日本チャンピオンジャージを着た中井。追いすがる菅原が届かないことを確認すると、ガッツポーズを決めてフィニッシュラインを超えた。

黒川監督に祝福される中井彩子(鹿屋体育大学)黒川監督に祝福される中井彩子(鹿屋体育大学) photo:Satoru Kato「登りでしかけて菅原さんと2人になったけれど、ラスト1kmで吉田さんが1人で合流してきたので、あぁしまったなと思いました。でも焦らずに4年間大学で学んだことを活かし、チームのみんなの支えもあって走りました。最後は菅原さんと2人の勝負になりましたが、ナショナルチームの強化合宿などで一緒に走っているのでどのような走りをするかは知っていたので、スプリントになれば自分が優位だとは思っていました。何度かアタックして引き離そうとは思いましたが、集団が優位と考えてしまったところは今後の課題です。」と、反省を交えてレースを振り返る中井。

「昨年ここで高木さんに『強くなったね』と声をかけてもらって、その一言で救われたことも何度もあったので、今回高木秀彰賞を獲れて本当に良かったです」と語った。

菅原朱音(八戸学院大学)は2位菅原朱音(八戸学院大学)は2位 photo:Satoru Kato一方、2位の菅原は「中井さんが何度もアタックしてキツいなと思いながらもついて行きましたが、一度アタックに反応しきれなくて遅れてしまいました。なんとか追いつきましたが、同志社の吉田さんが登りが強くて、ちぎられないようについて行きました。2位という結果は悔しいですが、自信になったので、来年に向けてもっと練習して頑張りたいです。」と語った。





インカレ2勝目をかけた勝負は野本空に軍配

1周目は大きな集団のまま進行1周目は大きな集団のまま進行 photo:Satoru Kato
スタート直後から有力校が集団前方で動くスタート直後から有力校が集団前方で動く photo:Satoru Kato中井唯晶(京都産業大学)を先頭に行く9人の逃げ集団中井唯晶(京都産業大学)を先頭に行く9人の逃げ集団 photo:Satoru Kato

男子は13周174.2kmのレースに167名が出走した。

アタックと吸収を何度か繰り返した後、2周目後半に9人の逃げ集団が形成される。メンバーは、中井唯晶(京都産業大学)、小野寛斗(早稲田大学)、重光丈(鹿屋体育大学)、渡邉翔悟(日本体育大学)、梅本泰生(明治大学)、小口達矢(日本大学)、渡部翔太(法政大学)、嶋田祥(立命館大学)、和田樹(朝日大学)。メイン集団との差は最大で4分近くまで広がる。

7周目、逃げ集団からアタックする中井唯晶(京都産業大学)7周目、逃げ集団からアタックする中井唯晶(京都産業大学) photo:Satoru Katoレース終盤、日本大学勢が集団のペースアップを図るレース終盤、日本大学勢が集団のペースアップを図る photo:Satoru Kato

レースが後半に入ると、メイン集団がペースアップ。逃げ集団との差を2分30秒前後まで縮める。8周目、梅本、渡部、嶋田が遅れて6人となった逃げ集団から中井がアタック。1分30秒前後の差をつけて単独で9周目に入っていく。一方メイン集団からは、昨年のインカレロード勝者の武山晃輔(日本大学)、一昨年優勝の野本空(明治大学)、孫崎大樹(早稲田大学)らを含む20名ほどの追走集団が形成され、逃げる中井との差を詰める。2周を逃げた中井は、残り3周となる11周目に入ったところで追走集団が吸収。そこからは武山を含む4人を残した日本大学が中心となってペースアップしていく。

最終周回、独走する野本空(明治大学)最終周回、独走する野本空(明治大学) photo:Satoru Kato
後ろから迫る武山晃輔(日本大学)を、コースサイドからチームメイトが教える後ろから迫る武山晃輔(日本大学)を、コースサイドからチームメイトが教える photo:Satoru Kato残り1kmを切り、先行する野本空(明治大学)の後ろに武山晃輔(日本大学)が迫る残り1kmを切り、先行する野本空(明治大学)の後ろに武山晃輔(日本大学)が迫る photo:Satoru Kato

残り2周の終盤、依田翔大(日本大学)がアタック。これを野本が追走して抜き去り、単独先行して最終周回に入っていく。後続に20秒前後の差をつけて逃げる野本を、残り7km過ぎから武山が単独追走。残り1km付近では野本の背後まで迫ったが捉えることは出来ず、野本が逃げ切って2年ぶりにインカレロードを制した。

2年ぶり2度目のインカレロードを制した野本空(明治大学)2年ぶり2度目のインカレロードを制した野本空(明治大学) photo:Satoru Kato
男子表彰式 左から2位武山晃輔(日本大学)、1位野本空(明治大学)、3位奥村十夢(中央大学)男子表彰式 左から2位武山晃輔(日本大学)、1位野本空(明治大学)、3位奥村十夢(中央大学) photo:Satoru Kato高木秀彰賞を受賞した明治大学の野本空高木秀彰賞を受賞した明治大学の野本空 photo:Satoru Kato

「前回インカレロードで優勝した時はマークが薄くてまぐれで勝てたところもありましたが、今回は実力でもぎ取ったので価値のある優勝だと思います」と言う野本。「同期が強いと思っていたので、京産大の中井選手、鹿屋の富尾(大地)選手、日大の草場(啓吾)選手、早稲田の孫崎選手の動きはマークしました。中井選手が序盤から逃げに乗っていたのでちょっとドキドキしましたが、このコースは3分、5分と開いても最後は詰まるので落ち着いて対応しました。最後は独走で決めたいと思っていたのですが、武山選手が迫って来たのは怖かったです。この後はツール・ド・北海道と国体でしっかり良い走りをしたいです」と語った。

チームメイトをねぎらう武山晃輔(日本大学)チームメイトをねぎらう武山晃輔(日本大学) photo:Satoru Kato一方、連覇まであと少しに迫った武山は「単独で追走して最初は姿が見えなかったけれど、サポートからタイム差を聞いて縮まっているのはわかっていました。追いつけるかギリギリのところで、最後は見えるところまで行きましたが、足が足りませんでした。連覇は意識していましたし、(トラックの)マディソンとの2冠も意識して勝ちたいと思っていましたが、守りに行き過ぎたのがこの結果だと思います」とレースを振り返った。「次はチーム右京でツール・ド・北海道を走ります。学生として出場するのとは違うプレッシャーと環境の違いがあると思うけれど、しっかりとこなしたいです」と、次の目標を語った。



インカレ総合連覇の日本大学インカレ総合連覇の日本大学 photo:Satoru Kato女子総合連覇の日本体育大学女子総合連覇の日本体育大学 photo:Satoru Kato

総合優勝は、男子は日本大学、女子は日本体育大学。男女共に昨年に続く連覇を達成した。

日本大学はアジア大会で沢田桂太郎を欠いたものの、トラックで3冠を達成した貝原涼太の活躍もあって2位の明治大学に大きく差をつけた。ロードでも最終局面で4人を残したが、その中心は2年生と3年生。他校の監督も認める選手層の厚さが連覇の原動力となったと言えるだろう。来年のインカレは3連覇がかかるが、今回の点差ほどの差はないような印象も受ける。これからまた、次のインカレに向けての1年が始まる。

インカレ恒例、出場校4年生の記念撮影インカレ恒例、出場校4年生の記念撮影 photo:Satoru Kato
男子個人ロードレース 結果(168.8km)
1位 野本 空(明治大学) 4時間26分19秒
2位 武山晃輔(日本大学) +24秒
3位 奥村十夢(中央大学) +46秒
4位 福原周治(京都大学) +55秒
5位 尾形尚彦(中央大学) +1分3秒
6位 中村魁斗(日本体育大学) +1分4秒
7位 栗原 悠(日本大学) +1分6秒
8位 孫崎大樹(早稲田大学) +1分10秒
9位 直井駿太(中央大学) +1分12秒
10位 依田翔大(日本大学) +1分16秒
女子個人ロードレース 結果(60km)
1位 中井彩子(鹿屋体育大学) 1時間51分47秒
2位 菅原朱音(八戸学院大学) +1秒
3位 吉田 鈴(同志社大学) +20秒
4位 中冨尚子(京都産業大学) +1分17秒
5位 小口加奈絵(日本体育大学) +4分48秒
6位 伊藤真生(日本体育大学) +5分18秒
ロードレース総合成績
男子 女子
1位 中央大学 22p 鹿屋体育大学 10p
2位 日本大学 21p 八戸学院大学 8p
3位 明治大学 14p 日本体育大学 7p
総合成績
男子 女子
1位 日本大学 96p 日本体育大学 51p
2位 明治大学 70p 鹿屋体育大学 49p
3位 早稲田大学 58p 八戸学院大学 22p
4位 中央大学 55p 早稲田大学 20p
5位 法政大学 46p 順天堂大学 20p
6位 日本体育大学 44p 同志社大学 6p
text&photo:Satoru Kato

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