2016/02/29(月) - 19:14
ローカルライダーにコースを任せ、SLATEをお供に日本各地を走るシリーズ第一弾の舞台は内房。そう、文字通り千葉県房総半島の内側だ。集合場所の富津公園駐車場の上空では、羽田空港に向けてアプローチする航空機がひっきりなしに旋回する。
シリーズ第一弾の案内役を買って出たのは、この内房で生まれ育ったシクロワイアード編集部の磯部総だった。おそらく日本で最もSLATEに乗っているであろうキャノンデールジャパンの”カズ”山本和弘さんと自分の計3人でライドに出かける。
体重に合わせてタイヤの空気圧を手早くセットし、SLATEに乗って漕ぎ出した。昨年カリフォルニアでのSLATEキャンプでグループライドは経験していたし、すでにトレイルを含めて1,000kmほど乗っているものの、日本で同じ条件のバイクで揃ってライドするシチュエーションは珍しく、自然とワクワクする。特に意味がないのに路肩の段差に飛び乗ってみたりして。
ローカルライダーである磯部に連れられるまま駐車場を出るとすぐ、対岸に横浜を望む砂浜に入っていく。大小様々な貝殻が一面に散らばった砂浜に、シャリシャリという今まで味わったことのない音を響かせて進むと、目をこらすと遠くには富士山の白い頂きも見える。風は冬を感じさせる冷たさだったが、太陽の光は春のそれだった。
脚を回し続けなければすぐにスピードが落ちて、一旦落ちたスピードをどうあがいても戻せないことは、シクロクロスの経験から心得ている。それほど砂の上でバイクを走ることは難しい。でも幅の広いタイヤは砂に埋まりにくく、スリックパターンが砂を掻き出すことなくグリップしてくれる。逆に、一見グリップしそうなブロックパターンだとノブが砂を掻き出してしまって思うように進まない。砂のコースを走る世界トップのシクロクロッサーたちがセミスリックをセレクトするのが頷ける。よく言われる「タイヤの面で路面を捉える」という感覚は新しい発見だった。
磯の匂いに包まれた砂浜を離れ、整地されたシングルトラックを快調に飛ばし、階段を押し上がるとそこに砲台跡が現れた。ここは旧日本軍によって使われていた試射・観測所で、戦後まで情報統制のために岬ごと地図から抹消されていたんだとか。秘密基地のような穴に入ってみれば、いつの間にか童心に帰って探検しているような気持ちになる。
この砲台を形作るのは近くの石切り場から削り出された房州石だ。なんでもこの辺りは昭和時代まで石材の産地として有名だったそう。今回のライドでは訪れなかったが、素掘りの隧道(トンネル)があちこちに存在するのも地質の良さを象徴するものだ。
さて、その砲台跡から眺める景色の先に見える白い東京湾観音をこれから目指すという。足早に舗装路を駆け抜け、「ここ??」と突っ込んでしまいそうな、絶対にローカルの案内がなければ行かない鬱蒼とした茂みを進むと、もうしばらく車両なんか通っていないジープロードが現れる。やがて道の脇の草の勢いは増し、ライダーを覆い始め、バイクがやっと通れるシングルトラックに。降りるところは降りてバイクを押して頂上に着くとそこからはダウンヒル。なんてカバー範囲の広い、懐の深い探検バイクなんだろうと感心しながら2人に着いていった。
自然と溢れる笑いを浮かべてトレイルを抜けて、舗装路に出て、しばらく走って次のトレイルに向かう。途中ですれ違うロードバイクはこちらの様子を物珍しそうに見てくるが、逆にあちらのタイヤの細さと包容力の小ささが目についてしまう。バイクに泥や砂が付いていれば付いているほど優越感と背徳感が入り混じった気持ちになるのは何故だろう。
都内から1時間というアクセスにもかかわらず、ポジティブな意味でコンビニが少なく、交通量も少ない。舗装路を進んで「フレッシュマート三平」に立ち寄って、勧められるままに名物の肉団子を頬張った。肉汁を感じながら目に飛び込んできたのは、たっぷり煙を吸って茶色くなった壁に踊るステーキの文字。地元のラーメン屋に駆け込む予定だったのに「ステーキ」というフレーズにやられて急遽予定を変更し、フライパンで豪快に焼かれた肉厚ステーキを茶碗にこんもり盛られた白ご飯と一緒に堪能した。こちらでは仕事を終えた漁師のために、朝から肉料理やお酒も出しているんだとか。
お腹を満たした後は、ゆっくりSLATEにまたがって海に進路をとり、カフェ「GROVE」を目指す。海風によってすこし傾いた森の中に、溶け込むように佇むカフェの前にSLATEを3台並べる。自身もサイクリストであるオーナーの淹れるコーヒーをいただきながら、ここまで通ってきたトレイルの情報を共有する。
カフェを出て左に曲がると数秒で太平洋が見えてきた。キラキラした水平線が見え、そこに繋がる砂の轍が見えるとつい加速してしまう癖がついている。
知らない土地を走る探検は自転車の魅力の一つ。SLATEがその幅を広げてくれる。砂浜ではしゃぐ2人を眺めながら、そんなことを頭に浮かべる温かな初春の1日だった。
シリーズ第一弾の案内役を買って出たのは、この内房で生まれ育ったシクロワイアード編集部の磯部総だった。おそらく日本で最もSLATEに乗っているであろうキャノンデールジャパンの”カズ”山本和弘さんと自分の計3人でライドに出かける。
体重に合わせてタイヤの空気圧を手早くセットし、SLATEに乗って漕ぎ出した。昨年カリフォルニアでのSLATEキャンプでグループライドは経験していたし、すでにトレイルを含めて1,000kmほど乗っているものの、日本で同じ条件のバイクで揃ってライドするシチュエーションは珍しく、自然とワクワクする。特に意味がないのに路肩の段差に飛び乗ってみたりして。
ローカルライダーである磯部に連れられるまま駐車場を出るとすぐ、対岸に横浜を望む砂浜に入っていく。大小様々な貝殻が一面に散らばった砂浜に、シャリシャリという今まで味わったことのない音を響かせて進むと、目をこらすと遠くには富士山の白い頂きも見える。風は冬を感じさせる冷たさだったが、太陽の光は春のそれだった。
脚を回し続けなければすぐにスピードが落ちて、一旦落ちたスピードをどうあがいても戻せないことは、シクロクロスの経験から心得ている。それほど砂の上でバイクを走ることは難しい。でも幅の広いタイヤは砂に埋まりにくく、スリックパターンが砂を掻き出すことなくグリップしてくれる。逆に、一見グリップしそうなブロックパターンだとノブが砂を掻き出してしまって思うように進まない。砂のコースを走る世界トップのシクロクロッサーたちがセミスリックをセレクトするのが頷ける。よく言われる「タイヤの面で路面を捉える」という感覚は新しい発見だった。
磯の匂いに包まれた砂浜を離れ、整地されたシングルトラックを快調に飛ばし、階段を押し上がるとそこに砲台跡が現れた。ここは旧日本軍によって使われていた試射・観測所で、戦後まで情報統制のために岬ごと地図から抹消されていたんだとか。秘密基地のような穴に入ってみれば、いつの間にか童心に帰って探検しているような気持ちになる。
この砲台を形作るのは近くの石切り場から削り出された房州石だ。なんでもこの辺りは昭和時代まで石材の産地として有名だったそう。今回のライドでは訪れなかったが、素掘りの隧道(トンネル)があちこちに存在するのも地質の良さを象徴するものだ。
さて、その砲台跡から眺める景色の先に見える白い東京湾観音をこれから目指すという。足早に舗装路を駆け抜け、「ここ??」と突っ込んでしまいそうな、絶対にローカルの案内がなければ行かない鬱蒼とした茂みを進むと、もうしばらく車両なんか通っていないジープロードが現れる。やがて道の脇の草の勢いは増し、ライダーを覆い始め、バイクがやっと通れるシングルトラックに。降りるところは降りてバイクを押して頂上に着くとそこからはダウンヒル。なんてカバー範囲の広い、懐の深い探検バイクなんだろうと感心しながら2人に着いていった。
自然と溢れる笑いを浮かべてトレイルを抜けて、舗装路に出て、しばらく走って次のトレイルに向かう。途中ですれ違うロードバイクはこちらの様子を物珍しそうに見てくるが、逆にあちらのタイヤの細さと包容力の小ささが目についてしまう。バイクに泥や砂が付いていれば付いているほど優越感と背徳感が入り混じった気持ちになるのは何故だろう。
都内から1時間というアクセスにもかかわらず、ポジティブな意味でコンビニが少なく、交通量も少ない。舗装路を進んで「フレッシュマート三平」に立ち寄って、勧められるままに名物の肉団子を頬張った。肉汁を感じながら目に飛び込んできたのは、たっぷり煙を吸って茶色くなった壁に踊るステーキの文字。地元のラーメン屋に駆け込む予定だったのに「ステーキ」というフレーズにやられて急遽予定を変更し、フライパンで豪快に焼かれた肉厚ステーキを茶碗にこんもり盛られた白ご飯と一緒に堪能した。こちらでは仕事を終えた漁師のために、朝から肉料理やお酒も出しているんだとか。
お腹を満たした後は、ゆっくりSLATEにまたがって海に進路をとり、カフェ「GROVE」を目指す。海風によってすこし傾いた森の中に、溶け込むように佇むカフェの前にSLATEを3台並べる。自身もサイクリストであるオーナーの淹れるコーヒーをいただきながら、ここまで通ってきたトレイルの情報を共有する。
カフェを出て左に曲がると数秒で太平洋が見えてきた。キラキラした水平線が見え、そこに繋がる砂の轍が見えるとつい加速してしまう癖がついている。
知らない土地を走る探検は自転車の魅力の一つ。SLATEがその幅を広げてくれる。砂浜ではしゃぐ2人を眺めながら、そんなことを頭に浮かべる温かな初春の1日だった。
今回の「路面」:砂浜の貝殻絨毯
提供:キャノンデール・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部 text&photo:Kei.Tsuji