将来を嘱望される若手が台頭した2025年シーズンだった一方で、現役生活に終止符を打った選手たちもいる。かつてツール・ド・フランスを沸かせたゲラント・トーマスやアレクサンダー・クリストフ、ロマン・バルデ、女子ではエレン・ファンダイクなどがバイクを降りた。



引退の花道を歩いたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

日本人選手では全日本選手権を連覇した直後、突然引退を発表した小林海(JCLチーム右京)や元日本王者の入部正太朗(シマノレーシング)、小野寺玲(Astemo宇都宮ブリッツェン)が現役を退いた2025年シーズン。世界でも多くのトップ選手たちが現役生活に別れを告げた。

2025年2月、シーズン開幕直後にラストイヤーであることを宣言したのは、2018年のツール・ド・フランス総合優勝者、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)だった。「まさか19年もプロとして走るとは思わなかった」と語る39歳のトーマスは、自身14回目のツールに出場後、9月のツアー・オブ・ブリテンでラストラン。すでに現場のトップ職であるレーシングディレクターに就任し、早くも指揮を取っている。

今年引退する選手で最も勝ち星を飾ったのは、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)だ。今年8月の母国レース、アークティック・レース・オブ・ノルウェーでプロ98勝目を飾り、最終レースとなるツール・ド・ランカウイでプロ99勝、そして100勝を目指したが最高2位と逃した。それでも笑顔での引退となった。

現役ラストの母国レースで勝利したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:CorVos

カレブ・ユアン(オーストラリア) photo:CorVos
ロマン・バルデ(フランス) photo:A.S.O.


シーズン途中での引退となったのはカレブ・ユアン(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)。1月末に突如イネオスに加入し、そこから2勝を挙げたものの、「勝利の喜びが薄れた」と5月に突然の引退を発表。一方、ロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)は宣言通り6月のクリテリウム・デュ・ドーフィネで引退。その後はグラベル選手として引き続き走り、8月のイタリア、9月のフランスで行われたUCIグラベルワールドシリーズでともに優勝するなど、2016年にツール総合2位に入り、過去4度の区間優勝を飾った力はいまだ健在だ。

スプリンターでは一時代を築き、共にプロ通算90勝以上を挙げたアルノー・デマール(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ロット)が引退。ヴィヴィアーニは5月のツアー・オブ・ターキーでの勝利が現役ラストとなったものの、10月のトラック世界選手権に出場し、男子エリミネーションで金メダルを獲得。アルカンシエル姿で引退という偉業で16年のキャリアを締めくくった。

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ロット) photo:CorVos

またジロ・デ・イタリアで2度(2015、16年)のマリアチクラミーノ(ポイント賞)を獲得したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、Q36.5プロサイクリング)も引退。平坦区間で集団を牽引するルーラーで、”トラクター”という異名を持つティム・デクレルク(ベルギー、リドル・トレック)も長かった現役生活に別れを告げている。

グランツールで活躍した選手としては、ツール区間3勝よりも総合エースのアシストとしての印象が強いラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)も36歳でバイクを降りた。また2023年に念願のツール区間優勝を飾り、今年のツールでも何度も逃げて見せ場を作ったマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)も引退。9月に母国カナダで行われるグランプリ・シクリスト・ド・ケベックとモンレアルで現役を締めくくる予定だったものの、ヘルニアを発症したため結果的にツールが現役ラストレースとなった。

2013年に世界王者に輝き、2023年はジャパンカップで日本人ファンの前で勝利を飾ったルイ・コスタ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト)も引退している。

3度のTT世界王者に輝いたエレン・ファンダイク(オランダ) photo:CorVos

2021年に初代パリ〜ルーベ・ファム王者に輝いたエリザベス・ダイグナン(イギリス) photo:CorVos
マルタ・カヴァッリ(イタリア) photo:CorVos


女子では3度の世界選手権タイムトライアルを制した38歳のエレン・ファンダイク(オランダ、リドル・トレック)が引退。2006年からプロとして活動し、積み上げた勝利数は71勝。ここ数年はアシストを務めることが多かったものの、TT力は健在で、今年はブエルタ・ア・エクストレマドゥーラ・フェメニーナの個人TTで区間優勝。現役最終レースとなったTTのワンデーレース「クロノ・デ・ナシオン」でも勝利し、有終の美を飾っている。

同じリドル所属のエリザベス・ダイグナン(イギリス)も引退する名選手の1人。2015年にロード世界王者に輝き、2021年のパリ〜ルーベ・ファム初代王者に輝いた37歳。2018年の第1子出産後も衰えを見せず、2020年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ・ファムを制覇。2022年に第2子を出産後、2023年にレース復帰し、3シーズンを走り抜いた。

また2017年のロード世界王者シャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス・プロタイム)や、2022年にアムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌで優勝したマルタ・カヴァッリ(イタリア、ピクニック・ポストNL)も、27歳にして引退を選んでいる。
2025年限りで引退した主要選手一覧
男子
ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
カレブ・ユアン(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
ロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)
アルノー・デマール(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ロット)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、Q36.5プロサイクリング)
ティム・デクレルク(ベルギー、リドル・トレック)
ラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)
マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
ルイ・コスタ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト)
エステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)
女子
エレン・ファンダイク(オランダ、リドル・トレック)
エリザベス・ダイグナン(イギリス、リドル・トレック)
シャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス・プロタイム)
マルタ・カヴァッリ(イタリア、ピクニック・ポストNL)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos