2026年2月に開催される「杉浦佳子杯・第1回インクルーシブ自転車レース成田下総」に関連したZwiftライドイベント「Zwift 杉浦佳子インクルーシブ・グループライド」が11月13日(木)に開催された。ライドイベントの様子を主催者のレポートより紹介していく。



Zwiftアカウントのライド紹介画面。イベントが設定されるとライド内容などがチェック出来て、事前に参加表明するとリマインダー機能も使える

先日、11月13日の夜8時スタートとなった「Zwift 杉浦佳子インクルーシブ・グループライド(Keiko Sugiura Inclusive Group Ride on JAPAN)」をおこない、多くの方々に参加いただいた。その内容をレポート。

今では杉浦佳子選手をはじめ、パラサイクリストの活躍を通じて、様々な障がいを持つアスリートが自転車にも果敢にチャレンジし、好成績を残していることは知られているが、少し前は知る機会が乏しく、得られる情報も僅かであった。

日本で初めて実施なので、日本をイメージしたマクリ島のネオ京というセクションにある「キャッスル・クリット(Castle Crit)」コースを選択

11月15日から26日にわたり、聴覚に障がいを持つアスリートが世界中から集まって「東京 2025 デフリンピック(TOKYO 2025 DEAFLYMPICS)」が開催されることもあり、様々な状況を背負ったアスリートが健闘することを知る機会が増えてくるなかで、自転車レースでも更なるチャレンジの機会を増やすとともに、活躍するパラサイクリストと一緒に走れる場を作る機会“場を作る機会”を設けたいと考え、パラリンピック金メダリストである杉浦佳子氏とともに「インクルーシブ自転車レース」の企画を立ち上げることとなった。

パラサイクリストの多くもトレーニングに利用しているバーチャルトレーニングシステム「Zwift」を使ったライドイベントを実施することとした。企画立案には Zwift Japan にもご協力いただき、初めてのライドイベントに力が入り、あれもこれも!といろいろリクエストがあった内容を整理してもらって、杉浦氏も納得のグループライドイメージを完成することが出来た。

パラリンピック金メダリストの杉浦佳子選手が初めてZwiftライドのリーダーを務める

2000年シクロクロス全日本選手権チャンピオン須藤むつみがスイーパー Photo:Hiroyo Okubo

インクルーシブ自転車レース関連イベントということで、来年2月21日開催のリアルレースに向けたイメージを活かしたコース、かつ日本で初めて実施なので、日本をイメージしたマクリ島のネオ京というセクションにある「キャッスル・クリット(Castle Crit)」コースをチョイス。これを7周回して、約60分に収まるように設定。ライドを誘導するリーダー役は杉浦佳子選手(総合メディカル/TEAM EMMA Cycling)に務め、ライドの集団の後方をまとめながら走行するスイーパー役を、女子エリートとしてシクロクロスに参戦する須藤むつみ(Ready Go JAPAN 女子シクロクロスチーム)が務めることとした。

この準備を進めるなかで、アメリカ・バージニア在住の TMR タムロリエ選手から連絡があり、このライドに参加してくれるだけでなく有難いことに YouTube 配信も実施してくれることに!タムロ氏は今年の夏に女性だけの Zwift レースシリーズ「Japan Women’s Racing Series by TMR」を企画・実施し、熱い闘いを Zwift でも繰り広げ、女性ライダー達の活躍を更に広げてくれた貢献者。私も1戦のみ参加したが、各クラス別のレースは設定に工夫を凝らしたうえ非常にレベルが高く、全4戦おこなわれた各レースで約30名、延べ120名を超える女性ライダーが参戦するという結果を残している。このように普段からTMRというZwiftチームを軸にワイワイと楽しむライドや、本気でガチのレースなど様々な企画を実施。経験豊富なタムロ氏が配信を担当することが急遽決定し、これで当日はZwiftアカウントを持っていない方もライドを観ることが出来るだけでなく、後日にアーカイブ配信もチェックすることが出来る。心強い援軍も付いて、ライドスタートの夜を迎えることとなった。

以前にYouTube配信をしながらZwiftライドやレースの中継と実況は担当したことはあるものの、走りながらの解説は初めての経験。杉浦選手とスタート前にコンタクトを取りながら、ウォーミングアップをしつつ参加人数を確認すると 100 名を越えている!インクルーシブを銘打つ初めてのZwiftライド企画にも関わらず、沢山のライダーに参加いただいていることに、杉浦選手の人気の高さとともに、このインクルーシブ自転車レース企画に興味を持っていただけている方が少なからずいるということに改めて気が引き締まる。

人気チャンネルであるTMRタムロリエ YouTubeチャンネル、今回の配信時オープニング画面。「アメリカはバージニアからお送りします!」で軽快に始まる配信は、なんと614回目!

スタート10分前には TMR タムロリエ YouTube 配信が開始され、いつもの軽快な実況とともにスタート前の皆さんへ呼びかけ。まもなくリーダー杉浦選手も画面に登場し、パラサイクリスト界のレジェンドでもある彼女の登場にチャットも沸く!そして、いよいよ日本時間の夜8時からのライドイベントがスタートした。

今ライドイベントは特別にメッセージが無い限り基本、リーダーと一緒の集団でペースをキープ。1.5から2.0w/kgぐらいでウォーミングアップした後に、2周回目ぐらいを目安に2.2から 2.5w/kgでグループライド。

最後の7周回目ではスプリントにチャレンジ!という手順。出だしでリーダー杉浦選手が1.5w/kg を目安にすることを几帳面に守ってしまい、最初の登坂になるキャッスル KOM(Castle KOM)でかなり後ろに下がってしまう。一方で、リエ選手からの紹介でコメントを開始していた私は話すことに夢中になって力が入り、逆に集団を飛び越して先行。集団が縦に伸びてペースが上がってしまう(笑)。そこに参加ライダーの皆さんがペースをコントロールして集団を戻してくれて、リーダー杉浦選手は無事に集団に追いつき、私も下がって集団の後ろに付くことが出来た。

2周目に入り、皆さんの協力もあって集団がまとまった頃

リーダー杉浦選手からのアドバイスがメッセージされた様子

TMR タムロリエ YouTube配信のキャプチャー画面より。左は2周目に入り、皆さんの協力もあって集団がまとまった頃。右はリーダー杉浦選手からのアドバイスがメッセージされた様子。画面の左下で実際にライドしている様子をアメリカから中継し、日本にいる私が音声コメント。Zwift ライド画面や YouTube 配信から、それぞれ観戦者からのメッセージも流れており、バーチャルライドならでは!のマルチタスクで楽しめる

2周回目からは少しペースを上げられる状況となったこともあり、2.5w/kg 前後で杉浦選手が見事にリーディング。皆さんのチャットを通じたメッセージのやり取りも上手く機能して、登坂でも順調にペースを刻んで周回を重ね、そのおかげで私からもインクルーシブ自転車レースについていろいろと配信でお話することが出来た。

TMRのYouTubeチャンネル名物、決定的瞬間のリプレイ配信!今回のライドで一番のハイライトとなった

そのなかで、タムロ選手の住むアメリカでのパラサイクリストおよびパラアスリートの実状を伺えた。アメリカにおいてスポーツ報道のなかでは、パラアスリートは特に特別な扱いではなく、大会やレース結果が報道されている。さらに普段の生活のなかでも障がいを持つ・持たないに関わらず、自然と手を差し伸べる文化が根付いているそうだ。よく杉浦選手が口にする「見ただけでは分からない障がい者」についても見た目で判断するわけでなく、何よりも困っているのかな?具合が悪かったりして助けが欲しいのかな?という判断に敏感で、適格に対応してくれるとタムロ選手は話してくれた。

このような行動は、普段から様々な現状の方々との関わりがあるから判断も出来るし、即座に対応が出来るのでは、とタムロ選手は言う。確かに何か違いがあることで、細分化して分けてしまえば楽なのかもしれないが、違いを尊重し一緒に過ごす機会を増やすことで出来ることや出来ないこともお互いに理解できるし、更にお互いに出来ないことをフォローし合うことも、これからは必要なことである。

今、健やかに過ごしている人であっても怪我やアクシデントで一時的に障がいを負うこともあるし、急に具合が悪くなり身体の自由が利かなくこともあるだろう。そんなとき、さりげなく自然に手を貸して支え合える世界が自転車レースを通じて、もっと広げられたら!という夢も語らせてもらった。

スプリント合戦が終わってクールダウンをしながら、ご参加いただいた皆さんとチャットを通じ楽しかったライドを労った

杉浦選手からもトップアスリートとしてだけでなく、現役薬剤師としてのアドバイスも交えたチャットで「ペースは2.2倍で走りましょう」「速く走りたい人は最終周のために温存して」「ラストのスプリントは出し切りましょう!」と参加ライダー達が最後までライドを達成できるように導いてくれた。そして、いよいよ最終周回のビレッジ・スプリント(Village Sprint)でスプリント合戦!チーム TMRが誇るスプリント番⻑でもあるタムロ選手も果敢にチャレンジしたが、僅かに及ばず女子タイムの2番手に。そして女子トップタイムを叩き出したのはリーダー杉浦選手、なんと10秒を切る9秒92をマークした。

スプリントセグメントの後や、ゴール後5分間のクールダウンでは、チャットや YouTube 配信のコメントで労いの言葉が飛び交い、温かな雰囲気のなかフィナーレを迎えた。ライドスタート後のレイトジョインも可能にしていたので、最終的には143名の参加を集められ、ライダー皆さんのサポートで楽しくワイワイと走ることが出来た。改めて厚く御礼申し上げます。

バーチャルトレーニングシステム「Zwift」の新たな可能性を皆さんで目の当たりにした今回のライド。これをキッカケにインクルーシブ・ライドイベントを定期的に開催したい。インクルーシブとは、年齢、性別、障がい、国籍などに関係なく、すべての人が共に参加し尊重される社会を目指す考え方。今後も年齢や性別、国籍、障がいに関わらず、楽しく走れる企画を実施するので又、皆さんに参加をお願いしたい。

TMR タムロリエさんの YouTube 配信もご覧いただきありがとうございます。こちらは引き続き以下でアーカイブをご覧いただけます。



インクルーシブ自転車レース関連イベントなどの告知>

杉浦佳子氏の講演会テーマ「パラリンピックから見えたインクルーシブの未来」

杉浦佳子氏:講演会 テーマ「パラリンピックから見えたインクルーシブの未来」
「インクルーシブ」とは年齢、性別、障がい、国籍などに関係なく全ての人が共に参加し尊重される社会を目指す考え方です。パラリンピック金メダルを目指し実現した経験を通じて、障碍者と健常者が、お互いの理解や交流のために今、何をすべきか?を語ります。

■開催要項
開催日:2025(令和7)年12月27日(土)
開場:午後1時30分 開演:午後2時30分
※講演は60分ぐらいを目安。その後にパラリンピック金メダルを実際にご覧いただいたり、記念撮影やサイン会をおこなう予定です。
会場:もりんぴあこうづ(公津の杜コミュニティーセンター)
MORI×MORI ホール・多目的ホール
https://morinpiakozu.jp/

最寄り駅は成田駅の1つ手前にある「公津の杜」駅です。
講演会テーマ(表題):パラリンピックから見えたインクルーシブの未来
入場料:無料
定員:200名(席は先着順) 事前申込みを優先、当日参加可能
※事前申込みは、こちらのGoogleフォームから受付ます
https://forms.gle/Y8KaAV9Ce12ixTFZA
主催:NPO法人サイクリスト国際交流協会(J-BRAIN)
共催:QNリーグ実行委員会
後援:成田市、成田市教育委員会

杉浦佳子杯・第 1 回インクルーシブ自転車レース成田下総

■開催趣旨
今大会では、東京そしてパリでのパラリンピック自転車ロードレースにおいて金メダルを獲得した杉浦 佳子選手の功績を称え、その活躍を広く知ってもらうため「障碍者」と「健常者」が共に同じ大会で闘い交流を深めるレースを開催します。これにより成⻑途上にあるキッズやジュニア、また自転車レースにチャレンジを志す初心者にも気軽にレース参加できる企画を実現します。またシーズン6年目となる女子リーグ「クイーンリーグ(通称Qリーグ)」および中学生リーグ「ニュー・エイジ・リーグ(通称Nリーグ)」の「Q・Nリーグ 2025-2026 シリーズ戦・第12戦」も併催します。

主催:インクルーシブ自転車レース実行委員会
後援:Q リーグ・N リーグ実行委員会、成田市、成田市教育委員会、ほか
協力:NPO 法人サイクリスト国際交流協会、Flecha
協賛:※現在募集中です。お気軽にお問い合わせください。
開催日:2026年2月21日(土)
開催地:千葉県成田市高岡 下総運動公園(フレンドリーパーク)・サイクリングコース(1 周=1.5km)

■レース種目
1.個人タイムトライアル(個人 TT)
15〜20秒間隔の単独スタートし、全員必ず1回ずつ走ります。
この個人TTで記録したタイムで下記「2.個人ロードレース」のクラスAからDの4つに分けます。
※ポイント:当日になるまで分けられるタイム基準やクラスが判らないので、年齢や性別など関わらず
平等にクラス分けが出来ます。
*個人 TT 特別ルール:
・スタートして200m以内で事故・トラブルが起こった場合は、自己申告により再発走を認めます。

2.個人ロードレース
Aクラス・30km=20周、Bクラス・15km=10周、Cクラス・9km=6周、Dクラス・6km=4周
小学校低学年・3km=2周、未就学児・1.5km=1周
※Dクラスより上相当のタイムを出した小学校低学年もしくは未就学児がいた場合は、本人の希望によりタイム相当のクラスに出走できます。
*ロードレース特別ルール:
・DNF は成績なし
・周回遅れも完走扱いとし順位を着ける(ただしトップがゴールしたら新たな周回には入れない)
・個人 TTのタイムとロードレースの合算タイムで表彰する。もっともタイムが少ない選手が優勝。
3.Qリーグ・Nリーグ 2025-2026 シリーズレース(現在リーグ登録していない選手も参加可能)

・Qリーグ(高校生以上の女子)・Nリーグ中学生女子 NW ロードレース(15km=10周)
※同時出走、Qリーグと Nリーグ中学生女子でリザルトは分けます。
Qリーグ:対象は高校生以上の女子、Nリーグ中学生女子 NW:対象は中学生女子
・Nリーグ中学生男子 N ロードレース(30km=20周)
Nリーグ中学生男子 N:対象は中学生男子
その他については現在調整中です。近日レース公式ホームページを開設し発表しますので、お楽しみに!

■お問い合わせ先
NPO法人サイクリスト国際交流協会・事務局の須藤までメールでお願いします。
メールアドレス: m-sudou@jbrain.or.jp

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