数々の名作ホイールを開発してきたマヴィックが展開するCOSMICシリーズ。カーボンリムのミドルグレードに当たるCOSMIC SL45をテストする。ワイドリム化、UDカーボンによって軽量になったホイールの実力に迫る。



マヴィック COSMIC SL45 photo:Makoto AYANO

マヴィックが誇る名作ホイールの一つ、COSMIC。エアロホイールとして登場し、数々の勝利を収めた逸品は現在、様々なリムハイト、グレードをラインアップするロードカーボンホイールシリーズとして展開されており、数多くのサイクリストがCOSMICのライドフィールを堪能している。

COSMICのグレードは、全てが究極の作りとされたUTIMATE、ハイパフォーマンスモデルのSLR、ミドルグレードのSL、カーボンホイール入門向けのSという4種類。今回はモデルチェンジを果たした SL45をピックアップして紹介しよう。

内幅23mmに拡幅したリム photo:Makoto AYANO

新型COSMIC SL45の大きな特徴の一つは、リムの内幅が23mmに設定されたこと。2025年モデルでは上位モデルのSLRも同時に23mmワイドにアップデートされており、同時に同じ仕様変更が行われたことは、マヴィックがSL45に寄せる期待の大きさを明確に示している。(SL32は21mm、SL65は19mmを維持している)

ワイドなリム内幅はトレンドの幅広タイヤとの組み合わせにピッタリ。幅広リムは、同一タイヤ幅と空気圧に設定した19mm幅のリムよりも約12%の衝撃吸収性が向上しており、レーススピードで路面の凹凸を乗り越える時にライダーへの負担を抑える。タイヤの断面形状が円に近い形状となり、横方向のグリップ力が約10%向上などコーナリング中の安定性やコントロール性も向上する。

UDカーボンへと素材が変更されて軽量に仕上がった photo:Makoto AYANO

同時にエアロダイナミクスも向上する。風洞実験を経たリムによる空気抵抗削減に加えて、リムとタイヤが段差なく繋がることで乱流の発生を抑える。またワイドリムは横風の影響を受けにくく、安定した走行フィールを得られるはずだ。

新型COSMIC SL45はリム素材が織りカーボンからUDカーボンへと変更されたことも大きなトピックだ。UDカーボンとは繊維が一方向に並ぶマテリアルで、高い強度と剛性を発揮するため効率よくパワー伝達が行われる。また織りカーボンよりも軽量となることが魅力で、薄いレイアップでも高い強度を実現する。リムがワイドになったにも関わらず、新マテリアルの採用でホイール重量が昨年の1,575gから1,555gへのダイエットに成功している。

ハブはInfinity Hub Platformが採用される photo:Makoto AYANO

エアロスポークがアセンブルされている photo:Makoto AYANO

ハブはInfinity hub Platformが用いられており、左右のスポークが同一テンションで組み上げられる。加えてInstant Drive 360の40ノッチラチェットによって優れた反応性を実現している。これらは上位グレードと同じ設計だ。

SLRと異なる点はスポーク。SLRは特許取得の独自スポークだが、SLではエアロを意識した扁平ブレードのスポークが採用されている。また、ニップルの仕様は一般的なホイールと同様とされており、リムベッドにはスポークホールが設けられている。つまりリムテープで各ホールが塞がれる設計だ。価格は242,000円(税込)。

このCOSMIC SL45をマヴィックのホイールを愛用するアルディナサイクラリーの成毛千尋店長がインプレッション。ULTIMATEを愛車にインストールする成毛店長がCOSMIC SL45の実力に迫る。



ーインプレッション

「実際に走らせてみてわかる軽さ、剛性感のある味わい深いホイール」成毛千尋(アルディナサイクラリー) photo:Kenta Onoguchi

COSMIC SL45は、COSMIC S42に乗った直後に乗り換えたのですが、その走りの印象は全く違っていて劇的ビフォーアフターと言えるほどの体験でした。 SLの後にSLRもテストしているのですが、SLの完成度が高く、SとSLの差はSLとSLRの差よりも大きく感じます。

このホイールの特徴はやはりストレートプルスポークの採用です。SはJベンドスポークでしたからね。そこにマヴィック独自のInfinity Hub Platformによってスポークテンションが左右で均一になるなどテクノロジーが効いていると思います。軽さと剛性、かかりの良さどちらも優れています。Sはエントリーグレードという立ち位置だったので、どのようなユーザーでもマッチするホイールでしたが、SLになるとレーシーな反応性や軽さが顔を出してきますね。

前作と比べると、幅も広がってより自然なタイヤのセットアップになり、今のバイクに最適化された順当なアップデートだと感じます。このモデルチェンジは待望のものでした。自転車の世界が太いタイヤの時代になってきているので、その真髄を味わうためにはアップデートが必要だったんですね。

「深いところでトルクをしっかり掴み、推進力に変えてくれる」成毛千尋(アルディナサイクラリー) photo:Kenta Onoguchi

乗り心地の特徴として、ペダリングパワーを奥で受け止めてくれる感覚があります。マヴィックのカーボンホイール全般の特徴なのですが、踏んだ瞬間からパワーがかかるというよりは、ちょっと踏んだ奥の方でしっかり掛かる感じがあります。深いところでトルクをしっかり掴み、推進力に変えてくれる感覚です。その一瞬のタメが爆発して前に進む、そんな感じを受けます。

ペダリングについては、トルクフルな踏み方でも軽いギアでハイケイデンスの回し方でも気持ちよく前に進んでくれると思います。ホイールセットの重量は目を見張るスペックではありませんが、カタログ重量から受ける印象以上に走行感に軽さがあります。乗ってみるとよく走ります。特に漕ぎ出しや、下ったところから再び登るとき、再加速するときにその軽さを感じます。

重いホイールは一歩目のペダリングから重さを感じて、二歩目のペダリングへの繋がりが悪いことがあります。COSMIC SL45は最初から綺麗に車輪が回ってくれるので、二歩目、三歩目のペダリングが軽やかに、かつリズミカルに繋がっていく印象がありました。また、剛性感が程よいので、ロングライドをしても疲れにくいです。ワイドリムになったことでエアボリュームも増え、より快適性は高まったと思います。

COSMIC SLはレースをする人でもいいと思いますし、普段から楽しく乗りたい人に勧められると思います。スペック重量を見ると少し重いかなと思うかもしれませんが、それを凌駕する走りの良さがあります。実際に走らせてみるとかなり良いんです。このCOSMIC SLについては「噛めば噛むほど味わい深い」と言えるでしょう。ぜひ一度試してみてください。

マヴィック COSMIC SL45
リム素材:100%UDカーボンファイバー
リムハイト:45mm
リム内幅:23mm
リム外幅:32mm
タイヤ規格:USTチューブレスレディ、リムテープチューブレス
重量: 1,555g(ペア)、720g(フロント)、835g(リヤ)
価格:242,000円(税込)

ホイールを実際に体験できる「MAVIC Experience Caravanが全国各地で開催中。以下のURLよりチェックしてもらいたい。

MAVIC Experience Caravan 4月:https://mavic.jp/blogs/blog/brand-68_20250307
MAVIC Experience Caravan 5月:https://mavic.jp/blogs/blog/brand-71_20250407



インプレッションライダーのプロフィール

成毛千尋(アルディナサイクラリー)
成毛千尋(アルディナサイクラリー)

東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。

アルディナサイクラリー


text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO, Kenta Onoguchi


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