オランダのホイールブランド、スコープサイクリングから、独創的なカーボンホイール"ARTECH(アーテック)"が発表された。バイオミメティクスとトポロジー最適化が生み出したハイテクプロダクトとして、注目集まる一本だ。



スコープ ARTECH photo:So Isobe

2013年にオランダの中部に位置するアイントホーフェンで創業したホイールブランド、スコープサイクリング。「NO EXCUSE(言い訳はしない)」をモットーに掲げ、最高のパフォーマンスを発揮するために妥協のない開発を進めているブランドだ。

昨年のパリ~ルーベではチームDSMと協業し、レース中に空気圧をコントロールできる"ATMOZ"システムを投入するなど、独創的なアイディアとそれを実現する開発力を有した気鋭のホイールメーカーとして、注目を集めてきた。

そんなスコープサイクリングが次なる一手として打ち出したのがARTECHだ。ARTとTECHの融合を示すモデル名を戴くこのホイールは、彼らの理想を追求し、最高の性能を発揮する"NO EXCUSE"なプロダクトとしてこだわり抜かれた一品だ。

ARTECHの最大の特徴となるのは、リム表面のデザインだろう。"Aeroscales"と名付けられたこのデザインは、その名の通り魚の鱗(SCALE)に着想を得たもの。水中での抵抗を減らす役割を持つ魚の鱗の効果を、リムの表面構造に応用することで、大きく空気抵抗を削減することに成功した。

リム表面に異なる速度で流れる空気の帯を生成することで、気流を安定させ、ドラッグを低減する (c)日直商会

この鱗状の構造は、リム表面に異なる速度で流れる空気の帯を生成することで気流を安定させ、ドラッグを低減することに貢献するという。

スコープは、このリム形状を決定するためにそれまで利用してきた開発アルゴリズムを進化させ、二次元ベースから三次元ベースへ置き換えた。この最新版のAEA(アルゴリズム強化エアロダイナミクス)テクノロジーによるデザインと多くの風洞実験、更には開発パートナーであるアイントホーフェン工科大学、デルフト工科大学、シュワルベ、SKF 、チームDSMの協力を得たテストを繰り返し、最適なリム形状が導きだされた。

鱗状の表面構造が特徴的なAeroscales (c)日直商会

一方、ホイールの心臓部とも呼ばれるハブについても、非常に独創的な設計が与えられている。ハブにおいてスコープが実現しようとしたのは、徹底的な軽量化だ。スコープは、ここでもリムと同様にアルゴリズムの導きを得たデザインを施した。

まるで生物の骨を彷彿とさせる形状のハブシェルは、トポロジー最適化によって導き出されたもの。最小限の部材で、必要な個所に必要なだけの強度を持たせるアルゴリズムから生み出された形状を実際のプロダクトとして形にしたのが3Dプリント技術だ。

3Dプリントによって製作されたスカルマロイ合金製のハブシェル (c)日直商会

スコープ ARTECH photo:So Isobe
ハブセットで206gをマークする photo:So Isobe



従来の金属加工技術では量産不可能だったであろう複雑な形状を、スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムの高性能合金材料であり、ピナレロのトラックバイクにも用いられるほど強度に優れた3Dプリント材料として知られるスカルマロイ合金を用いた3Dプリントによって製作することで実現。チタンラチェットの採用と合わせ、前後セットで199グラムという市場最高レベルの軽量性と高い強度を持つ唯一無二のハブが完成した。

独創性あふれるリムとハブを繋ぐスポークに至るまで、スコープの情熱は注がれている。このARTECHのために開発されたCarbonlite Aerospokesは、軽量なUDカーボン製のスポークで、重量を増すことなくエアロダイナミクスを最適化。

軽量なUDカーボン製のCarbonlite Aerospokes (c)日直商会

2:1のスポークパターンを採用することで、テンションの均一化とワイドフランジ化を実現。インターナルニップル仕様とされているだけでなく、スポークホールの周辺を局所的に強化することで必要な強度を確保しつつリム全体の重量を抑えている。

最先端のテクノロジーが盛り込まれたARTECHシリーズは、4つのカテゴリー(ROAD/ALL ROAD/GRAVEL/TRIATHLON)で展開予定。今回、ROADとALL ROADが先行発表となり、GRAVELとTRIATHLONの詳細については後日発表されるという。

スコープ ARTECH ROAD (c)日直商会

ROADとALL ROADは、それぞれリムハイトの異なる3モデル(22mm、45mm、65mm)が展開される。ARTECH ROADは剛性、耐久性、安全性を損なうことなく、舗装路用に開発された最速かつ最軽量のホイールとして位置づけられている。

一方のALL ROADはロード用ホイールとしてのエアロ性能からグラベルユースとしても対応するポテンシャルを持つカテゴリーのホイールで、ROADよりもリムの内幅が2mm広く設計されていることが特徴だ。

スコープ ARTECH ALL ROAD (c)日直商会

価格は全モデル統一されており、768,000円(税込)となる。なお、ハブベアリングをセラミックスピードへとアップグレードすることも可能となっており、その場合は854,700円(税込)となる。



スコープ ARTECH ROAD
ARTECH 2
重量:965g リムハイト:22mm リム内幅:23mm 空力的にベストなタイヤ幅:28mm
ARTECH 4
重量:1,120g リムハイト:45mm リム内幅:23mm 空力的にベストなタイヤ幅:28mm
ARTECH 6
重量:1,244g リムハイト:65mm リム内幅:23mm 空力的にベストなタイヤ幅:28mm

スコープ ARTECH ALL ROAD
ARTECH 2.A
重量:990g リムハイト:22mm リム内幅:25mm 空力的にベストなタイヤ幅:30mm
ARTECH4.A
重量:1,200g リムハイト:45mm リム内幅:25mm 空力的にベストなタイヤ幅:30mm
ARTECH 6.A
重量:1,319g リムハイト:65mm リム内幅:25mm 空力的にベストなタイヤ幅:30mm

共通スペック
対応タイヤ:チューブレス・クリンチャー対応
フリーボディ:シマノ・カンパニョーロ・SRAM XD・シマノマイクロスプライン・カンパニョーロN3W対応
ロゴカラー:WHITE・BLACK
オプション:セラミックスピードベアリング仕様選択可能
全モデル:NO Excuse
価格:768,900円(税込)、 セラミックスピード仕様:854,700円(税込)


最新ニュース(全ジャンル)