2023/05/26(金) - 20:17
5月13-14日に開催されたワールドトライアスロンシリーズ横浜大会に強豪トライアスリートが集結、世界クラスの走りを披露した。なかでも話題はクリスティアン・ブルメンフェルトとグスタヴ・イデンの、ともに世界タイトルをもつ2人のノルウェー人の参戦。ここでは2人の駆ったジャイアントPROPELにフォーカスを当てる。
ノルウェーの2人の巨人が駆ったジャイアントPROPEL
クリスティアン・ブルメンフェルト。トライアスロンに詳しくなくともその名を耳にした読者は多いだろう。東京五輪の金メダリストであるほか、アイアンマン世界最速記録のレコードホルダーであり、トライアスロン界に数々の偉業を打ち立てた2020年代最強アスリートの一人だ。そしてノルウェーが輩出したもう一人のプロトライアスリートがグスタヴ・イデンだ。2022年アイアンマン世界選手権を制覇し、快進撃を続ける。2人はトレーニングメイトでありライバルだ。
彼らがレースで駆るバイクはともにジャイアントのエアロロード PROPEL ADVANCED SLだ。それに50mmハイトのオールラウンドエアロホイール CADEX 50 ULTRAをセットする。
クリテリウムとプロトライアスロンレースの近似性
前提知識として、WTCS横浜大会はスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの3種目を競う、いわゆるスタンダード・ディスタンスだ。バイクパートではロードバイクのみ使用可能で、DHバー装着は2023 年より禁止となった(エイジグループは引き続き使用可能)。横浜大会のバイクコースはフラットなストレートとコーナーの連続するテクニカルかつ高速なレイアウト。すなわち国内各地で開催される都市型ロードレースやクリテリウムに近いプロフィールとなっている。レース中はドラフティングが認められ、選手が密集して走る光景はクリテリウムと重なる。
アスリートは最終ランへ脚を温存するために戦略的なペースコントロールを強いられ、激しい位置取り争いと高強度インターバルに晒される。近年のレースではバイクパートで大逃げが生まれることはほぼ無く、最終ランでスパートを掛けて差がつく展開が多い。その様相はロードレースでスプリンターが脚を温存しつつ好位置を巡って争い、残り数百mで最大ワットを叩き出す展開に通ずるものがある。自分の脚は温存し、ライバルの脚は削る。その二律背反を満たすためには、空気抵抗を極力抑えた機材セレクトが欠かせないことは明白だ。
DHバー無し。エアロロードにエアロホイールの組み合わせは、限りなくフレッシュな脚でランへと繋ぎたい選手のニーズを満たすベストマッチングと言えるだろう。つまりトライアスロンとロードレースは競技は違えど機材の選択基準はほぼ変わりないという状況を示している。
スペシャルカラーを纏うブルメンフェルトとイデンのPROPEL
大会後、ブルメンフェルトとイデンのレースバイクを間近に観察する機会に恵まれた。前述の通り2人はジャイアントのPROPEL ADVANCED SLとCADEX ULTRA 50を組み合わせて使用。それぞれ意匠を凝らしたスペシャルペイントを纏い、コンポーネントやコンタクトポイントに違いを見て取れる。
金メダリストを意味するゴールドを驕ったブルメンフェルトの PROPEL には、数々の偉業を讃えるエンブレムとスローガンが入る。スラムRED ETAP AXSのクランクはロゴ入りのプロ供給品で、52/39T フロントダブルを用い、スプロケットはワイドレシオ。
ステムは120mmのプロペル専用品だが、アルミ版のCONTACT SL AEROを装着するのは信頼性重視ゆえか。サドルは穴あき仕様かつグリッパーを備えたGIANTロゴ入りのもので、TTに最適化されたプロトタイプと思われる。特徴的なのはREDのクランクとGARMINペダルとの組み合わせで、2つのパワーメーターを同時に運用しているようだ。タイヤはコンチネンタルのグランプリ5000S TR。
イデンのバイクは右側に台湾、左側にノルウェーへの郷土愛を表現したアシンメトリーペイントを纏う。コンポーネントはペダルとパワーメーターまで含めR9200デュラエースで、チェーンリングは 54/40T。サドルはショートノーズかつフルカーボンベースのCADEX BOOSTを使用し、前寄りのセッティング。ステムは140mmのフルカーボンステム CONTACT SLR AEROを使用し、ブラケットは僅かに前下がりの位置に取り付けている。タイヤはブルメンフェルトと同じグランプリ5000S TR だが、CADEX 50 ULTRAの前輪のみ白デカールとしている。
余談にはなるがエリートレース当日は雨で路面は常にウェットだった。ブルメンフェルトは悪天候の多いベルゲン出身で、雨天にバイクトレーニングすることは日常だという。独力で追走パックからジャンプアップを果たし、長時間第一パックで先頭を牽き、ハイスピードでコーナーに切り込むアグレッシブな走りは観客の視線を集めた。集団にプレッシャーをかけ続けるスピード、そして優れたバイクコントロールというブルメンフェルトの二面性は、プロペルの素直なハンドリングと直進安定性、ディスクブレーキとフックレスワイドリム + チューブレスのメリットに支えられているものと推察できる。
2022年のツール・ド・フランスでセンセーショナルなデビューウィンを果たしたエアロロード、ジャイアントPROPEL。そして2019 年のブランド発足から4年でハイエンドコンポーネントとして確固たる地位を確立したCADEX。ジャイアントがブランドの威信をかけて世界最高峰のレースシーンに送り出したこの最速ペアは、ロードレースシーンのみならずトライアスロンの世界においてもその存在感を増している。
photo&text:Ryota Nakatani
ノルウェーの2人の巨人が駆ったジャイアントPROPEL
クリスティアン・ブルメンフェルト。トライアスロンに詳しくなくともその名を耳にした読者は多いだろう。東京五輪の金メダリストであるほか、アイアンマン世界最速記録のレコードホルダーであり、トライアスロン界に数々の偉業を打ち立てた2020年代最強アスリートの一人だ。そしてノルウェーが輩出したもう一人のプロトライアスリートがグスタヴ・イデンだ。2022年アイアンマン世界選手権を制覇し、快進撃を続ける。2人はトレーニングメイトでありライバルだ。
彼らがレースで駆るバイクはともにジャイアントのエアロロード PROPEL ADVANCED SLだ。それに50mmハイトのオールラウンドエアロホイール CADEX 50 ULTRAをセットする。
クリテリウムとプロトライアスロンレースの近似性
前提知識として、WTCS横浜大会はスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの3種目を競う、いわゆるスタンダード・ディスタンスだ。バイクパートではロードバイクのみ使用可能で、DHバー装着は2023 年より禁止となった(エイジグループは引き続き使用可能)。横浜大会のバイクコースはフラットなストレートとコーナーの連続するテクニカルかつ高速なレイアウト。すなわち国内各地で開催される都市型ロードレースやクリテリウムに近いプロフィールとなっている。レース中はドラフティングが認められ、選手が密集して走る光景はクリテリウムと重なる。
アスリートは最終ランへ脚を温存するために戦略的なペースコントロールを強いられ、激しい位置取り争いと高強度インターバルに晒される。近年のレースではバイクパートで大逃げが生まれることはほぼ無く、最終ランでスパートを掛けて差がつく展開が多い。その様相はロードレースでスプリンターが脚を温存しつつ好位置を巡って争い、残り数百mで最大ワットを叩き出す展開に通ずるものがある。自分の脚は温存し、ライバルの脚は削る。その二律背反を満たすためには、空気抵抗を極力抑えた機材セレクトが欠かせないことは明白だ。
DHバー無し。エアロロードにエアロホイールの組み合わせは、限りなくフレッシュな脚でランへと繋ぎたい選手のニーズを満たすベストマッチングと言えるだろう。つまりトライアスロンとロードレースは競技は違えど機材の選択基準はほぼ変わりないという状況を示している。
スペシャルカラーを纏うブルメンフェルトとイデンのPROPEL
大会後、ブルメンフェルトとイデンのレースバイクを間近に観察する機会に恵まれた。前述の通り2人はジャイアントのPROPEL ADVANCED SLとCADEX ULTRA 50を組み合わせて使用。それぞれ意匠を凝らしたスペシャルペイントを纏い、コンポーネントやコンタクトポイントに違いを見て取れる。
金メダリストを意味するゴールドを驕ったブルメンフェルトの PROPEL には、数々の偉業を讃えるエンブレムとスローガンが入る。スラムRED ETAP AXSのクランクはロゴ入りのプロ供給品で、52/39T フロントダブルを用い、スプロケットはワイドレシオ。
ステムは120mmのプロペル専用品だが、アルミ版のCONTACT SL AEROを装着するのは信頼性重視ゆえか。サドルは穴あき仕様かつグリッパーを備えたGIANTロゴ入りのもので、TTに最適化されたプロトタイプと思われる。特徴的なのはREDのクランクとGARMINペダルとの組み合わせで、2つのパワーメーターを同時に運用しているようだ。タイヤはコンチネンタルのグランプリ5000S TR。
イデンのバイクは右側に台湾、左側にノルウェーへの郷土愛を表現したアシンメトリーペイントを纏う。コンポーネントはペダルとパワーメーターまで含めR9200デュラエースで、チェーンリングは 54/40T。サドルはショートノーズかつフルカーボンベースのCADEX BOOSTを使用し、前寄りのセッティング。ステムは140mmのフルカーボンステム CONTACT SLR AEROを使用し、ブラケットは僅かに前下がりの位置に取り付けている。タイヤはブルメンフェルトと同じグランプリ5000S TR だが、CADEX 50 ULTRAの前輪のみ白デカールとしている。
余談にはなるがエリートレース当日は雨で路面は常にウェットだった。ブルメンフェルトは悪天候の多いベルゲン出身で、雨天にバイクトレーニングすることは日常だという。独力で追走パックからジャンプアップを果たし、長時間第一パックで先頭を牽き、ハイスピードでコーナーに切り込むアグレッシブな走りは観客の視線を集めた。集団にプレッシャーをかけ続けるスピード、そして優れたバイクコントロールというブルメンフェルトの二面性は、プロペルの素直なハンドリングと直進安定性、ディスクブレーキとフックレスワイドリム + チューブレスのメリットに支えられているものと推察できる。
2022年のツール・ド・フランスでセンセーショナルなデビューウィンを果たしたエアロロード、ジャイアントPROPEL。そして2019 年のブランド発足から4年でハイエンドコンポーネントとして確固たる地位を確立したCADEX。ジャイアントがブランドの威信をかけて世界最高峰のレースシーンに送り出したこの最速ペアは、ロードレースシーンのみならずトライアスロンの世界においてもその存在感を増している。
photo&text:Ryota Nakatani
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