ジップが誇る超軽量ロードホイール「353 NSW」と、ロングセラーの定番製品「303」がフルモデルチェンジ。内蔵式空気圧センサーによるモニタリングシステムを搭載するほか、リムとハブも刷新。軽さ、耐久性を更に向上させた「スマートホイール」に進化した。



2021年にデビューした軽量フラッグシップホイール「353 NSW」がフルモデルチェンジ。新機能を搭載し、各部のブラッシュアップが施された (c)メニーズ

ZIPP(ジップ)といえば、1988年にアメリカのインディアナポリスで生まれ、2007年にスラム傘下となってから更に勢いを増すコンポーネントブランド。いち早く「エアロ」という概念をスポーツサイクリングに持ち込み、近年では波状リムに先鞭をつけたほか、ワイドリム化やフックレス化など、スラム傘下ならではの革新性を武器に、トレンドセッターとしての役割を果たしてきた。

本日5月22日の日本時間23時、そんな同社の軽量フラッグシップホイールである「353 NSW」と、ロングセラーの定番製品「303」がフルモデルチェンジを果たす。春のクラシックレースで目撃された空気圧センサーを搭載する「スマートホイール」に進化することを筆頭に、リムとハブも総刷新してトータル性能を引き上げている。

353 NSWと404 SWに搭載されるAXSホイールセンサー。リアルタイムで空気圧のモニタリングが可能だ (c)メニーズ

スマートフォンアプリやヘッドユニットと連携可能。様々な設定や情報確認が可能になる (c)メニーズ

ガーミンかワフー、もしくはハンマーヘッドのヘッドユニットで常時空気圧を表示できるという (c)メニーズ
アプリ上では各バッテリー残量に加えてタイヤ空気圧が確認/設定可能に (c)メニーズ



両モデルに搭載される「AXSホイールセンサー」は、その名の通り、AXS(アクセス)システムと連携させてタイヤ空気圧をリアルタイムでモニタリングできるというもの。センサーにはディレイラーと同じランプが搭載され、あらかじめスマートフォンアプリで設定しておいた空気圧に対して適正かどうかを点灯状態で素早くチェックできるほか、走行中もガーミンかワフー、もしくはハンマーヘッドのユニットで常時空気圧を表示でき、理想の空気圧範囲にあるかどうかを判断可能。シフトレバーと同じくボタン電池(CR2032)で駆動するAXSホイールセンサーの重量は20gで、センサーなしのモデルはラインナップに無い。

「スローパンクをしているのか、それとも脚の調子が悪いのか、すぐに判断できることは大きなメリット」と、ジップのプロダクトマネージャーは事前に行われたウェブプレゼンで胸を張る。これまでスラムはクォークブランドで外付け式の計測ケージ「TyreWiz 2.0」をリリースしてきたが、353 NSWと303 SWは初めて内蔵式としたことがポイント。チューブレス運用することを基本としているが、センサー内に空気を送るための専用バルブを搭載した専用チューブ「ジップ Smart Tube」を使うことでクリンチャー運用も可能だ。

353 NSWの特徴的な波状リムのハイトは前作が40-45mmだったのに対し、新作は軽さを重視して35-40mmと5mmずつハイトを下げ、かつカーボン積層と設計を見直すことで耐衝撃性を16%も向上。開発陣によれば、ハイトは下がっているにも関わらず、リムデザインを工夫したことで空力性能は先代モデルを僅かに上回っているという。リム内幅は最新トレンドである25mmで変わらないが、外幅は30mmから29.5mmにナロー化している。これは後述する新規開発タイヤとのフィッティングを狙ったものだ。

353 NSWの新旧空力比較テスト結果。リムハイトは下がっているが、空力は向上している (c)メニーズ

新規開発のZR1 SLハブ。セラミックベアリングを奢り、ハブボディを削り込むことで前後30gの軽量化を図った (c)メニーズ

ハブは従来NSWシリーズに奢られていたCognition V2ではなく、新規開発のZR1 SLへと移行する。スラムのドイツオフィスで開発され、ポルトガルのファクトリーで生産される新型ハブは前後304gと非常に軽く(Cognition V2ハブから30g削減)、高耐久性のセラミックベアリングを投入していることが特徴だ。駆動システムは従来から定評を得ている6つの爪が3つごと2ペアとなって交互に噛み合う66ノッチ式を引き継いでいる。

353 NSWのペア重量は1,310gと、Jベンドのスチールスポークを使う超軽量ホイールとしては非常に軽く、センサーを投入しているのにも関わらず先代よりも僅か2g増に留めている。税込価格は785,000円と、前作から据え置かれていることも嬉しい。

名作303もフルモデルチェンジ、AXSセンサーを搭載し、リムを刷新

303はAXSホイールセンサーを搭載し、新型リムを採用した「303 SW」にモデルチェンジ (c)メニーズ

長年使われてきたネーム「FIRECREST(ファイアクレスト)」から脱却した「303 SW」は、先述した通りAXSホイールセンサーを投入すると共に、グラベル用としてデビューした「303 XPLR」からヒントを得て40mmハイトのリムデザインを一新。内幅25mm化によって30-35mmのタイヤに最適化させ、かつリムとタイヤが接する部分の空気抵抗を抑える設計だ。

353 NSWとは異なりグラベルユースも踏まえているため、カーボン積層を工夫することで軽さはそのままに対衝撃性を約10%引き上げる配慮も。ハブは定評あるZR1(スチールベアリング)で、ペア重量は1,440g。春のクラシックレース、特に石畳や未舗装路が登場するレースでは353 NSWではなくこの303 SWが投入されていたことからも、単純なセカンドグレードではない走りを秘めていることが分かる。税込価格は387,200円。

454 NSWと858 NSWにもZR1 SLハブを搭載

454 NSWはハブを新規開発のZR1 SLに変更。30gの軽量化が図られた (c)メニーズ
858 NSWもハブをZR1 SLにアップデート。30gの軽量化を図った (c)メニーズ



また、NSWシリーズの中核を担う「454 NSW」と、トライアスロン/タイムトライアル用のスーパーディープリムである「858 NSW」にも新型のZR1 SLハブが搭載されアップデートが図られた。こちらはリムは従来モデルと同様で内幅は23mmとなる。404 FIRECRESTと808 FIRECRESTはアップデートなしで従来同様だ。

353 NSWと303 SWのリムに最適化したタイヤもデビュー

また、グッドイヤーと共同開発を行うタイヤにも新ロードモデルが2種類追加されている。

「Eagle F1R Z29 Aero」は、モデルチェンジした353 NSWと404 SWのリム形状に合わせたハイスペックレースタイヤで、リム装着時に実測29mmとなるように設計されたことがポイント。内幅25mmリムに対するETRTO規格とISO規格、さらにはUCI規定にも則る最低幅の29mmとなることで、安全性はもちろん最低限の重量になるよう配慮されている。グリップ力と低い転がり抵抗を維持しつつ、353 NSWと404 SWに組み合わせて運用した際、1ワットを削減するとされている。

新型タイヤ「Eagle F1R Z29 Aero」。353 NSWと404 SWのリム形状にフィットする29mmレースモデルだ (c)メニーズ
303 XPLRホイール用の40mmロードタイヤ「VectorR XPLR」 (c)メニーズ



もう一つのニュータイヤ「Vector R XPLR」は、その名の通りグラベルライン「XPLR」に分類される40mmのロード用スリックタイヤ。内幅33mmの303 XPLR用に開発され、荒れた舗装路や石畳、フラットグラベルをハイスピードで駆け抜ける使い方を想定した、いかにもアメリカンブランドらしいユニークな製品と言えるだろう。

さらにグラベルタイヤ「XPLR Slick」には既存の40mmに加えて45mmが追加され、「XPLR Inter」には既存の45mmに加えて50mmが追加された。どちらも高速化を遂げるグラベルレースからのニーズに対応したものだが、ファットタイヤならではの乗り味はグラベルライドに安心感をもたらしてくれるはずだ。

フルモデルチェンジを果たしたフラッグシップ軽量ホイール「353 NSW」。近日中にインプレッションをお届け予定です (c)メニーズ

シクロワイアードでは、近日中に新型ホイールのインプレッションを実施予定。お楽しみに。
ジップ 新型ホイール&タイヤ価格
商品名 セット名 税込価格
ZIPP 303 SW Tubeless Disc Front 183,200円
ZIPP 303 SW Tubeless Disc Rear SRAM/SHIMANO 11s、XDR 200,000円
ZIPP 353 NSW Tubeless Disc Front 353,800円
ZIPP 353 NSW Tubeless Disc Rear SRAM/SHIMANO 11s、XDR 431,200円
ZIPP 454 NSW Tubeless Disc Front 353,800円
ZIPP 454 NSW Tubeless Disc Rear SRAM/SHIMANO 11s、XDR 431,200円
ZIPP 858 NSW Tubeless Disc Front 372,400円
ZIPP 858 NSW Tubeless Disc Rear SRAM/SHIMANO 11s、XDR 445,700円
ZIPP x Goodyear XPLR INTER TLRタイヤ、700x50c 12,880円
ZIPP x Goodyear XPLR SLICK TLRタイヤ、700x45c 12,880円
ZIPP x Goodyear Eagle F1 R Z29 Aero TLRタイヤ、700x29c 12,500円
ZIPP x Goodyear VectorR XPLR TLRタイヤ、700x40c 12,500円
ZIPP AXS Smart TPU Tube 700x28-35c、700x35-50c 6,600円
ZIPP ZR1 SL Hub Front 24H 12x100 46,190円
ZIPP ZR1 SL Hub Rear 24H 12x142 XDR、SRAM/Shimano 11s HG 78,240円
ZIPP ZR1 SL Hub Front 28H 12x100 46,190円
ZIPP ZR1 SL Hub Rear 28H 12x142 XDR、SRAM/Shimano 11s HG 78,240円
ZIPP Valve Assembly for ZIPP Air Sensor 60mm 5,070円
ZIPP Sealant Injector ZIPP Sealant Injector 3,380円
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