2023/01/04(水) - 17:18
シマノのロードレーシングシューズ RC9をインプレッション。新たにロープロファイルレースガイドを採用し、さらなる軽量、フィット感、パワー伝達効率の向上を果たしてブラッシュアップされたフラッグシップをインプレッションした。
数多くのプロ選手が使用するシマノのロードシューズ"S-PHYRE(エスファイア)RC9"。マチュー・ファンデルプールら数多くのトッププロ選手が着用するシマノのロードシューズのフラッグシップモデルだ。
9月にモデルチェンジを受けて第4世代に進化を遂げたRC9(RC903)は、アッパーの素材と構造の見直しで更に優れたフィット性と軽量性を手に入れた。
360°サラウンドラップアッパー構造など基本設計は踏襲し、アッパー素材や配置、BOAレース(ケーブル)のルーティングといった細部をアップデートすることで、フィット性、安定性、軽量性を強化した一足となっている。
アッパーのメイン素材は薄く軽量性に優れるシンセティックレザーに変更された。表面には多くのパンチング加工が施されており、柔軟性や通気性を向上。外見からは1枚生地のように見えるが、内側ではレイヤリング(重ね)構造とされている。また、第3世代ではつま先部分に強化メッシュが配されていたが、今作ではシンセティックレザーがつま先までカバーする構造となる。
一方で、前作で親指側と小指側のアッパーが重なっていた前足部のエリアに柔軟性に富むメッシュ生地が配置された。これによってBOAレース(ケーブル)を強く締めても足へのストレスを軽減している。この柔軟性に富む素材は足首側のベルト内側にも使用されるなど、細かく素材配置を煮詰めることで剛性や耐久性を維持しつつも、快適な着用感の実現を狙っている。
アッパーで大きく変更されたポイントは、つま先のBOAワイヤーを通す樹脂パーツ「パワーゾーンレースガイド」が省略されたこと。前作ではこのパーツによってワイヤーの締めつけ具合を調整できる機能を実現していたが、今作ではそれを無くし「ロープロファイルレースガイド」に置き換えられた。軽量化とすっきりとした外観を実現し、樹脂パーツを無くしたことで圧迫感の無い履き心地と軽量化に成功。また度重なる使用における洗浄のしやすさにも寄与している。
足首をホールドするアキレス腱部分の滑り止めグリッパーを廃し、かかとに接する素材の深い形状によりホールド力を確保していることも変更点の一つ。ヒールカップのデザインも更新されているが、アンチツイストスタビライザーが捩れ剛性を高める。これらによる優れたホールド力によってペダリングパワーをロスしない性能を実現している。
スタックハイトが低くできるシームレスミッドソール構造も継続して採用。BOAダイヤルもLi2を継続採用して締め込みの微調整を可能にしつつ、軽量化と空気抵抗を低減。素早い着脱性も兼ね備えている。トップモデルらしく豊富なサイズ展開に加えてハーフサイズも充実。フィッティングに妥協しないライダーの要求に応えるハイエンドシューズだ。
-インプレッション
数年ごとにモデルチェンジし、性能を向上させ続けているS-PHYRE RC9。10月に製品版を入手し、2ヶ月使用した印象を綴ろう。
初代が2016年にデビューして以来、好評を得てきたRC9。私自身はその後改良された第2世代より使い始め、第3世代ではRC9特集記事も担当、常に細部の変化を見てきた。第3世代はかかと周辺の形状とアッパーの硬さが少し気になったこと、愛用していた第2世代RC9の状態がまだ良かったことで買い替えは待ち、1世代スキップしての導入になった。
マイナーチェンジを経て少しづつ変化してきた歴代RC9は、外観ではとても似ているように見えて、履き心地はそれぞれかなり違うものだった。
筆者の足型はかなりの幅広・甲高のためサイズは40.5のWIDEをチョイス。ちなみに自身のサイズと幅タイプ(スタンダード/ワイド)ともに今まで変更がない。各社のシューズを試しているが、長きに渡ってサイズ感の変化がないモデルは珍しい。ちなみにスタンダードワイズも試し履きしてみたが、そちらでも問題なくいけそうな感触だった。アッパーのサラウンド構造によって幅への対応域は広い。それでもよりしっくりくるワイドを選んだ。フィット感に妥協することなく選べる点はハイエンドシューズならではだ。
インソールには長く愛用しているソールスター(SOLESTAR)Kontrolを使用。このグレードのシューズを履く人の多くはこうした専用インソールを使用していると思うが、ソールスターはカーボン製インソールのためかなり硬めで形状の自由度が少ない。それでも浮いたりせず、とても収まりが良い。それはシューズのソール形状に癖がないことと、ソールが直接アッパーと接着される成形方法になっていることもあるのだろう。通常あるシューズ内部の底材が無く、そのぶんスタックハイトも低いため、インソールを入れるにしてもスムーズで、かつ足裏がペダル軸に近い。つまりダイレクトなペダリングが可能だ。
足型にあったインソールをセットするとRC9は完璧と言っていいほどにフィットする。BOAダイヤルを強く締め上げる必要はなく、軽く締めるだけで足をぴったり包み込むようにフィットする。このフィット感は世代が進むごとに向上していると感じる。包み込むようで、ブレが少なく、圧迫を感じない絶妙なフィット感でしっかりと足をホールドしてくれる。
新作を長く履いて気づいたのは、長時間ライドしてもダイアルを増し締めしたり、緩めたりすることを全くしなくなったこと。以前のモデルでは長い時間乗るとレースが緩んだような気がして締め込んだり、窮屈さを感じて緩めたりを時々していたが、今作はまったくと言っていいほどそれをしなくなった。フィット感の高さを感じたまま、その状態で終日過ごせるのだ。それがフィット感の高さの何よりの裏付けだ。
もっとも目立った変更点である「ロープロファイルレースガイド」は、今までの樹脂パーツが省かれ、布状のループにBOAレース(ケーブル)を通す、一見すると靴紐にも似た構造の新システム。それによりつま先部にあったパーツが無くなり、軽くなっただけでなく、締りも良くなった印象だ。と言うより、この構造により緩みが出なくなったのだろう。「異物感」は以前の樹脂パーツの頃にも感じはしなかったが、よりフィット感の高さを感じる。強く締め上げてもスムーズにレースが引き上げられている印象だ。おそらく樹脂パーツがあった構造より、スムーズに強く締め込める。かつ、きつく締め上げてもつま先部にシワは発生しない。
かかとのヒールカップ内部はふかふかのレザー素材に置き換えられた。以前は滑り止めのグリッパーが装着されていたが、それを廃し、踵を包み込む深い形状でホールドする方式に。これが個人的には非常にフィット感が高くて気に入った部分だ。
踵の大きさや形状には個人差がある。第3世代RC9のヒールカップが踵の骨に少し当たる感触があったため着用をためらっていたのだが、第4世代のこの構造はソフトで肌当たりが良く、どんな踵の形状に対しても適応しそうだ。心地よいクッション材で包み込んでくれるため痛くなることもなさそうで、摩擦力の強いグリッパーとの擦れでソックス表面が毛羽立ってしまうようなこともない。
ソール裏面のガイド目盛りによりクリートを正確に取り付けられ、当然ながらSPD-SLクリートとの相性は最高。かつクリート取り付け位置の調整域が広く、かつ赤いビットを着脱することでクリート前後位置をさらにスライドすることができる。筆者の場合は足の指が短いことでクリートをなるべく前にセットして拇指球位置にペダル軸を一致させるが、それが可能なシューズが市場に少ないため、この前後の調整幅の広さもRC9を愛用している理由だ。
今回もアッパーのカラーはホワイトを選んだが、やや汚れは目立ちやすいものの眩しい白が足元を軽く見せてくれる。洗浄がしやすく、素材がほぼ保水しないのですぐに乾いてくれること、洗うことによってアッパーが型くずれしないこともRC9が扱いやすいと感じる点だ。
シマノ S-PHYRE RC9 (RC903)
アッパー:Function specific zones+360°サラウンドラップアッパー
アッパー素材:マイクロファイバーシンセティックレザー+メッシュ
ソール素材:カーボンファイバーコンポジット
クロージャー:2BOA(Li2)+ロープロファイルレースガイド
カラー:ホワイト、ブラック、ブルー
サイズ ワイド:36、 37、38、39~43(ハーフサイズあり)、44、45、46、47、48
サイズ スタンダード: 36、 37、38、39~43(ハーフサイズあり)、44、45、46、47、48
価格:54,450円(税込)
数多くのプロ選手が使用するシマノのロードシューズ"S-PHYRE(エスファイア)RC9"。マチュー・ファンデルプールら数多くのトッププロ選手が着用するシマノのロードシューズのフラッグシップモデルだ。
9月にモデルチェンジを受けて第4世代に進化を遂げたRC9(RC903)は、アッパーの素材と構造の見直しで更に優れたフィット性と軽量性を手に入れた。
360°サラウンドラップアッパー構造など基本設計は踏襲し、アッパー素材や配置、BOAレース(ケーブル)のルーティングといった細部をアップデートすることで、フィット性、安定性、軽量性を強化した一足となっている。
アッパーのメイン素材は薄く軽量性に優れるシンセティックレザーに変更された。表面には多くのパンチング加工が施されており、柔軟性や通気性を向上。外見からは1枚生地のように見えるが、内側ではレイヤリング(重ね)構造とされている。また、第3世代ではつま先部分に強化メッシュが配されていたが、今作ではシンセティックレザーがつま先までカバーする構造となる。
一方で、前作で親指側と小指側のアッパーが重なっていた前足部のエリアに柔軟性に富むメッシュ生地が配置された。これによってBOAレース(ケーブル)を強く締めても足へのストレスを軽減している。この柔軟性に富む素材は足首側のベルト内側にも使用されるなど、細かく素材配置を煮詰めることで剛性や耐久性を維持しつつも、快適な着用感の実現を狙っている。
アッパーで大きく変更されたポイントは、つま先のBOAワイヤーを通す樹脂パーツ「パワーゾーンレースガイド」が省略されたこと。前作ではこのパーツによってワイヤーの締めつけ具合を調整できる機能を実現していたが、今作ではそれを無くし「ロープロファイルレースガイド」に置き換えられた。軽量化とすっきりとした外観を実現し、樹脂パーツを無くしたことで圧迫感の無い履き心地と軽量化に成功。また度重なる使用における洗浄のしやすさにも寄与している。
足首をホールドするアキレス腱部分の滑り止めグリッパーを廃し、かかとに接する素材の深い形状によりホールド力を確保していることも変更点の一つ。ヒールカップのデザインも更新されているが、アンチツイストスタビライザーが捩れ剛性を高める。これらによる優れたホールド力によってペダリングパワーをロスしない性能を実現している。
スタックハイトが低くできるシームレスミッドソール構造も継続して採用。BOAダイヤルもLi2を継続採用して締め込みの微調整を可能にしつつ、軽量化と空気抵抗を低減。素早い着脱性も兼ね備えている。トップモデルらしく豊富なサイズ展開に加えてハーフサイズも充実。フィッティングに妥協しないライダーの要求に応えるハイエンドシューズだ。
-インプレッション
数年ごとにモデルチェンジし、性能を向上させ続けているS-PHYRE RC9。10月に製品版を入手し、2ヶ月使用した印象を綴ろう。
初代が2016年にデビューして以来、好評を得てきたRC9。私自身はその後改良された第2世代より使い始め、第3世代ではRC9特集記事も担当、常に細部の変化を見てきた。第3世代はかかと周辺の形状とアッパーの硬さが少し気になったこと、愛用していた第2世代RC9の状態がまだ良かったことで買い替えは待ち、1世代スキップしての導入になった。
マイナーチェンジを経て少しづつ変化してきた歴代RC9は、外観ではとても似ているように見えて、履き心地はそれぞれかなり違うものだった。
筆者の足型はかなりの幅広・甲高のためサイズは40.5のWIDEをチョイス。ちなみに自身のサイズと幅タイプ(スタンダード/ワイド)ともに今まで変更がない。各社のシューズを試しているが、長きに渡ってサイズ感の変化がないモデルは珍しい。ちなみにスタンダードワイズも試し履きしてみたが、そちらでも問題なくいけそうな感触だった。アッパーのサラウンド構造によって幅への対応域は広い。それでもよりしっくりくるワイドを選んだ。フィット感に妥協することなく選べる点はハイエンドシューズならではだ。
インソールには長く愛用しているソールスター(SOLESTAR)Kontrolを使用。このグレードのシューズを履く人の多くはこうした専用インソールを使用していると思うが、ソールスターはカーボン製インソールのためかなり硬めで形状の自由度が少ない。それでも浮いたりせず、とても収まりが良い。それはシューズのソール形状に癖がないことと、ソールが直接アッパーと接着される成形方法になっていることもあるのだろう。通常あるシューズ内部の底材が無く、そのぶんスタックハイトも低いため、インソールを入れるにしてもスムーズで、かつ足裏がペダル軸に近い。つまりダイレクトなペダリングが可能だ。
足型にあったインソールをセットするとRC9は完璧と言っていいほどにフィットする。BOAダイヤルを強く締め上げる必要はなく、軽く締めるだけで足をぴったり包み込むようにフィットする。このフィット感は世代が進むごとに向上していると感じる。包み込むようで、ブレが少なく、圧迫を感じない絶妙なフィット感でしっかりと足をホールドしてくれる。
新作を長く履いて気づいたのは、長時間ライドしてもダイアルを増し締めしたり、緩めたりすることを全くしなくなったこと。以前のモデルでは長い時間乗るとレースが緩んだような気がして締め込んだり、窮屈さを感じて緩めたりを時々していたが、今作はまったくと言っていいほどそれをしなくなった。フィット感の高さを感じたまま、その状態で終日過ごせるのだ。それがフィット感の高さの何よりの裏付けだ。
もっとも目立った変更点である「ロープロファイルレースガイド」は、今までの樹脂パーツが省かれ、布状のループにBOAレース(ケーブル)を通す、一見すると靴紐にも似た構造の新システム。それによりつま先部にあったパーツが無くなり、軽くなっただけでなく、締りも良くなった印象だ。と言うより、この構造により緩みが出なくなったのだろう。「異物感」は以前の樹脂パーツの頃にも感じはしなかったが、よりフィット感の高さを感じる。強く締め上げてもスムーズにレースが引き上げられている印象だ。おそらく樹脂パーツがあった構造より、スムーズに強く締め込める。かつ、きつく締め上げてもつま先部にシワは発生しない。
かかとのヒールカップ内部はふかふかのレザー素材に置き換えられた。以前は滑り止めのグリッパーが装着されていたが、それを廃し、踵を包み込む深い形状でホールドする方式に。これが個人的には非常にフィット感が高くて気に入った部分だ。
踵の大きさや形状には個人差がある。第3世代RC9のヒールカップが踵の骨に少し当たる感触があったため着用をためらっていたのだが、第4世代のこの構造はソフトで肌当たりが良く、どんな踵の形状に対しても適応しそうだ。心地よいクッション材で包み込んでくれるため痛くなることもなさそうで、摩擦力の強いグリッパーとの擦れでソックス表面が毛羽立ってしまうようなこともない。
ソール裏面のガイド目盛りによりクリートを正確に取り付けられ、当然ながらSPD-SLクリートとの相性は最高。かつクリート取り付け位置の調整域が広く、かつ赤いビットを着脱することでクリート前後位置をさらにスライドすることができる。筆者の場合は足の指が短いことでクリートをなるべく前にセットして拇指球位置にペダル軸を一致させるが、それが可能なシューズが市場に少ないため、この前後の調整幅の広さもRC9を愛用している理由だ。
今回もアッパーのカラーはホワイトを選んだが、やや汚れは目立ちやすいものの眩しい白が足元を軽く見せてくれる。洗浄がしやすく、素材がほぼ保水しないのですぐに乾いてくれること、洗うことによってアッパーが型くずれしないこともRC9が扱いやすいと感じる点だ。
シマノ S-PHYRE RC9 (RC903)
アッパー:Function specific zones+360°サラウンドラップアッパー
アッパー素材:マイクロファイバーシンセティックレザー+メッシュ
ソール素材:カーボンファイバーコンポジット
クロージャー:2BOA(Li2)+ロープロファイルレースガイド
カラー:ホワイト、ブラック、ブルー
サイズ ワイド:36、 37、38、39~43(ハーフサイズあり)、44、45、46、47、48
サイズ スタンダード: 36、 37、38、39~43(ハーフサイズあり)、44、45、46、47、48
価格:54,450円(税込)
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