2023/01/04(水) - 13:57
レーシングホイールブランドとして名声をほしいままにするフルクラム。そのラインアップに新たに加わったローハイトモデル"SPEED25"をインプレッション。"PEAK CONQUERING WHEELS"として、頂きを征するため生み出された1,285gの軽量モデルの実力に迫る。
イタリアのホイールブランドとして、2004年に産声を上げて以来、名だたるレースで栄光を築き上げてきたフルクラム。現在、そのラインアップの頂点に君臨するのがプロユースのカーボンリムモデルである"SPEED"シリーズだ。過去のフルクラムの名作エアロホイール、Racing Speedからその名を受け継いだという経緯もあり、これまでSPEEDシリーズには40mmと55mmというディープリムモデルのみが用意されてきた。
一方、過去にRacing Speedと双璧を成していた軽量ローハイトモデル"Racing Light"の系譜は、ここしばらく途絶えていた。ローハイトモデルはアルミリムの展開のみで、ヒルクライムを主眼とした超軽量なカーボンホイールは長らくラインアップされてこなかった。
しかし、いつの時代もヒルクライムに魅せられるサイクリストは後を絶たない。信頼あるフルクラムが手掛けるクライミングホイールを待ち望む声は多かったのだろう。そして、その期待に応えるように発表されたのが"SPEED25"だ。
最高のヒルクライム性能を実現するという明確な目的を掲げ、フルクラムの有する技術を総動員したSPEED25は、ディスクブレーキホイールかつ2WAY-fit(チューブレス対応)でありながら、前後ペアで1,285gという軽量性を実現した。
リム内幅21mm、リムハイト26mmというロープロファイルリムは、特殊な樹脂を使用することで余計な塗料等を必要としないダイレクトインモールドマットフィニッシュによって仕上げられており、極限まで重量を削減。
もちろん、フルクラムの誇るMo-Magテクノロジーを採用し、リムベッドからニップルホールを排除している。カーボン繊維をひと繋ぎのまま用いることが可能となるこの技術により、高い剛性と強度、そして安定したチューブレスタイヤの運用を可能としている。
また、フロントリムとリアリムはそれぞれ異なるプロファイルを与えられていることも特徴だ。フロントは左右対称、ドライブトレインのあるリアは左右非対称とされ、スポークテンションの均一化に貢献。
更にディスクブレーキ仕様のSPEEDシリーズ初となるエアロスポークを採用。ローハイトリムでありながら、いや、ローハイトリムであるからこそ空力を改善できるポイントを逃さないのだろう。リムに設けられたニップルホールの角度を厳密にコントロールすることで、ニップルとスポークのアライメントを一致させ、最高のパワー伝達効率を達成した。さらに、スポーク同士が接触することが無いように組み上げられており、走行中に異音が発生するリスクも抑えられている。
スポーク本数はフロント、リアともに24本。フロントはフルクラムの誇る2to1テクノロジーを採用する一方、リアは左右同数とされている。とはいえ、単純に左右同数とするのではなく、ドライブトレイン側を3クロス相当、ブレーキローター側を2クロス相当のスポーク角を付けることで、駆動力と制動力をしっかりリムに伝えつつ、左右のテンション差を是正するスポ―キングとなっている。
ホイールの心臓部とも言えるハブもSPEED25のための専用品だ。シンプルかつミニマルなデザインのハブは、最適化された構造によって重量を削減するだけでなく、優れた空力特性とねじれ剛性を実現した信頼性の高いハブとされた。ベアリングにはセラミック球を使用したUSBベアリングを採用。一般的なベアリングに対し、約半分の転がり抵抗を実現しているという。
ロードのみならずグラベルやMTBなど、あらゆる分野のホイール開発で培ってきたフルクラムのホイールテクノロジーを結集し、生み出されたSPEED25。KOMを狙うクライマーにとって、これ以上ない武器となるだろう一本をインプレッションしていこう。
–インプレッション
とにかく軽いですね、持って軽いし乗っても軽い。25mm高というローハイトのカーボンホイールって、今のメインストリームではないじゃないですか。でも、だからこそ、このホイールの存在価値が際立ってくると思います。自然体でバイクを扱える、その感覚が素晴らしい。
決して軽いだけのホイールではなく、総合的にとてもバランスのいいホイールでもあります。横剛性もしっかりしていて、高速コーナーで倒しこんでもビシッとラインが決まりますから、下りでも気持ちいい。リムの軽さも相まって掛かりが良いですから、スプリントやアタックといったシーンでも武器になります。ローハイトリムなので乗り心地も良く、ロングライドにも使えるでしょう。
でも、やはりどこで使いたいかと言われれば、やはりヒルクライムでしょう。もう、登りでは笑っちゃうくらいの軽快感。ヒルクライマーには手放しでオススメできますが、逆に登りに苦手意識がある人でも、SPEED25を使えばちょっと登りが好きになるかもしれないと思ってしまうくらい、楽しく登れます。
1,280gという重量、そしてリムの軽さがその走りに大きく影響しているのはもちろんですが、ハブの回転も素晴らしいです。(フルクラムの最上位モデルに採用される)CULTベアリングではなくて、USBベアリングとのことですが、とにかく転がりますね。スポークもエアロ形状で、空力に関しても配慮されていますよね。
こういった軽量ホイールに対して、軽すぎるが故のスカスカとした踏み味で、ペダリングが繋がらない、ギクシャクする、といったイメージを持っている方もいると思います。実際、リムが軽いと加速しやすい一方で速度も落ちやすく、綺麗なペダリングじゃないと滑らかに進んでいかないといった傾向があるのは事実です。
ですが、SPEED25に関して言えば、その欠点はかなり感じづらいと思います。右脚を踏み込んで、下死点を通過している間も速度を保ってくれるので次の左脚の踏み込みが間に合います。ペダリングがしっかりと繋がっていくので、軽いのにスムーズに走れるんです。
もちろん40km/h以上の高速域で巡航したいとか、平坦基調のロードレースで逃げたいとか、そういった用途であればもっとリムハイトの高いモデルが良いでしょう。ですが、平均的な日本人の出力バンドで、登りを軸に気持ちよく、速く走りたいとなればこのホイールは筆頭候補とするにふさわしい一本だと思います。
また、乗りやすさという観点以外の総合的な扱いやすさも嬉しいポイントですね。例えばスポークが交差していないので異音も出づらいですし、ニップルも外出しで振取作業も行いやすい。更に、リムテープレスでチューブレスタイヤを運用可能なリムも好印象です。たとえエア漏れしたとしても、疑う必要のある原因が一つ減りますし、チューブレステープ分のコストが浮くのも嬉しいですよね。
ここまで褒めてばかりなので、あえて悪い点を挙げるとすると、ローターのロックリングの形状がもう少しスリムでも良いのかな、と。かなり苦し紛れのダメ出しですが(笑)、そのくらい総合力に優れたホイールに仕上げられていますね。
フルクラム SPEED25
リム:フルカーボン、DIMF
ハイト:26mm
リム形状:シンメトリック(フロント)、アシンメトリック(リア)
リム幅:24.6mm
インナーリム幅:21mm
タイヤタイプ:2-WAY FIT
重量:1,285g
スポーク:ダブルバテッド・ステンレス・エアロ・ストレートプル F/24 R/24
ハブ:アルミニウム
ベアリング:USBセラミック
アクスル:HH12-100(F)、HH12-142(R)
価格:380,600円(税込) ※XDR仕様のみ381,700円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
イタリアのホイールブランドとして、2004年に産声を上げて以来、名だたるレースで栄光を築き上げてきたフルクラム。現在、そのラインアップの頂点に君臨するのがプロユースのカーボンリムモデルである"SPEED"シリーズだ。過去のフルクラムの名作エアロホイール、Racing Speedからその名を受け継いだという経緯もあり、これまでSPEEDシリーズには40mmと55mmというディープリムモデルのみが用意されてきた。
一方、過去にRacing Speedと双璧を成していた軽量ローハイトモデル"Racing Light"の系譜は、ここしばらく途絶えていた。ローハイトモデルはアルミリムの展開のみで、ヒルクライムを主眼とした超軽量なカーボンホイールは長らくラインアップされてこなかった。
しかし、いつの時代もヒルクライムに魅せられるサイクリストは後を絶たない。信頼あるフルクラムが手掛けるクライミングホイールを待ち望む声は多かったのだろう。そして、その期待に応えるように発表されたのが"SPEED25"だ。
最高のヒルクライム性能を実現するという明確な目的を掲げ、フルクラムの有する技術を総動員したSPEED25は、ディスクブレーキホイールかつ2WAY-fit(チューブレス対応)でありながら、前後ペアで1,285gという軽量性を実現した。
リム内幅21mm、リムハイト26mmというロープロファイルリムは、特殊な樹脂を使用することで余計な塗料等を必要としないダイレクトインモールドマットフィニッシュによって仕上げられており、極限まで重量を削減。
もちろん、フルクラムの誇るMo-Magテクノロジーを採用し、リムベッドからニップルホールを排除している。カーボン繊維をひと繋ぎのまま用いることが可能となるこの技術により、高い剛性と強度、そして安定したチューブレスタイヤの運用を可能としている。
また、フロントリムとリアリムはそれぞれ異なるプロファイルを与えられていることも特徴だ。フロントは左右対称、ドライブトレインのあるリアは左右非対称とされ、スポークテンションの均一化に貢献。
更にディスクブレーキ仕様のSPEEDシリーズ初となるエアロスポークを採用。ローハイトリムでありながら、いや、ローハイトリムであるからこそ空力を改善できるポイントを逃さないのだろう。リムに設けられたニップルホールの角度を厳密にコントロールすることで、ニップルとスポークのアライメントを一致させ、最高のパワー伝達効率を達成した。さらに、スポーク同士が接触することが無いように組み上げられており、走行中に異音が発生するリスクも抑えられている。
スポーク本数はフロント、リアともに24本。フロントはフルクラムの誇る2to1テクノロジーを採用する一方、リアは左右同数とされている。とはいえ、単純に左右同数とするのではなく、ドライブトレイン側を3クロス相当、ブレーキローター側を2クロス相当のスポーク角を付けることで、駆動力と制動力をしっかりリムに伝えつつ、左右のテンション差を是正するスポ―キングとなっている。
ホイールの心臓部とも言えるハブもSPEED25のための専用品だ。シンプルかつミニマルなデザインのハブは、最適化された構造によって重量を削減するだけでなく、優れた空力特性とねじれ剛性を実現した信頼性の高いハブとされた。ベアリングにはセラミック球を使用したUSBベアリングを採用。一般的なベアリングに対し、約半分の転がり抵抗を実現しているという。
ロードのみならずグラベルやMTBなど、あらゆる分野のホイール開発で培ってきたフルクラムのホイールテクノロジーを結集し、生み出されたSPEED25。KOMを狙うクライマーにとって、これ以上ない武器となるだろう一本をインプレッションしていこう。
–インプレッション
とにかく軽いですね、持って軽いし乗っても軽い。25mm高というローハイトのカーボンホイールって、今のメインストリームではないじゃないですか。でも、だからこそ、このホイールの存在価値が際立ってくると思います。自然体でバイクを扱える、その感覚が素晴らしい。
決して軽いだけのホイールではなく、総合的にとてもバランスのいいホイールでもあります。横剛性もしっかりしていて、高速コーナーで倒しこんでもビシッとラインが決まりますから、下りでも気持ちいい。リムの軽さも相まって掛かりが良いですから、スプリントやアタックといったシーンでも武器になります。ローハイトリムなので乗り心地も良く、ロングライドにも使えるでしょう。
でも、やはりどこで使いたいかと言われれば、やはりヒルクライムでしょう。もう、登りでは笑っちゃうくらいの軽快感。ヒルクライマーには手放しでオススメできますが、逆に登りに苦手意識がある人でも、SPEED25を使えばちょっと登りが好きになるかもしれないと思ってしまうくらい、楽しく登れます。
1,280gという重量、そしてリムの軽さがその走りに大きく影響しているのはもちろんですが、ハブの回転も素晴らしいです。(フルクラムの最上位モデルに採用される)CULTベアリングではなくて、USBベアリングとのことですが、とにかく転がりますね。スポークもエアロ形状で、空力に関しても配慮されていますよね。
こういった軽量ホイールに対して、軽すぎるが故のスカスカとした踏み味で、ペダリングが繋がらない、ギクシャクする、といったイメージを持っている方もいると思います。実際、リムが軽いと加速しやすい一方で速度も落ちやすく、綺麗なペダリングじゃないと滑らかに進んでいかないといった傾向があるのは事実です。
ですが、SPEED25に関して言えば、その欠点はかなり感じづらいと思います。右脚を踏み込んで、下死点を通過している間も速度を保ってくれるので次の左脚の踏み込みが間に合います。ペダリングがしっかりと繋がっていくので、軽いのにスムーズに走れるんです。
もちろん40km/h以上の高速域で巡航したいとか、平坦基調のロードレースで逃げたいとか、そういった用途であればもっとリムハイトの高いモデルが良いでしょう。ですが、平均的な日本人の出力バンドで、登りを軸に気持ちよく、速く走りたいとなればこのホイールは筆頭候補とするにふさわしい一本だと思います。
また、乗りやすさという観点以外の総合的な扱いやすさも嬉しいポイントですね。例えばスポークが交差していないので異音も出づらいですし、ニップルも外出しで振取作業も行いやすい。更に、リムテープレスでチューブレスタイヤを運用可能なリムも好印象です。たとえエア漏れしたとしても、疑う必要のある原因が一つ減りますし、チューブレステープ分のコストが浮くのも嬉しいですよね。
ここまで褒めてばかりなので、あえて悪い点を挙げるとすると、ローターのロックリングの形状がもう少しスリムでも良いのかな、と。かなり苦し紛れのダメ出しですが(笑)、そのくらい総合力に優れたホイールに仕上げられていますね。
フルクラム SPEED25
リム:フルカーボン、DIMF
ハイト:26mm
リム形状:シンメトリック(フロント)、アシンメトリック(リア)
リム幅:24.6mm
インナーリム幅:21mm
タイヤタイプ:2-WAY FIT
重量:1,285g
スポーク:ダブルバテッド・ステンレス・エアロ・ストレートプル F/24 R/24
ハブ:アルミニウム
ベアリング:USBセラミック
アクスル:HH12-100(F)、HH12-142(R)
価格:380,600円(税込) ※XDR仕様のみ381,700円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
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