2022/07/04(月) - 16:34
近年注目のトップ女性サイクリストを紹介していく連載の第二弾は、歴史上でも最強の呼び声高いマリアンヌ・フォス。開催中のジロ・ドンネでも活躍中だ。私たちは、彼女がツール・ド・フランスを走るのを目の当たりにできる幸運を生きている。
マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボヴィスマ)
現シクロクロス世界チャンピオン
タイプ:パンチャー・スプリンター
主な戦績:記載するだけでページが埋まってしまうので割愛。プロで実に239勝!
Instagram : @mariannevosofficial Twitter : @marianne_vos
現在進行系の史上最強選手、フォス
ウィメンズワールドツアーや女子レースに馴染みの無い方でも、その名前を聞いたことはあるだろう。マリアンヌ・フォスは自転車界の歴史に残る名選手であり、その伝説は現在進行形である。過去から現在までの最強選手はエディ・メルクスであることに異論の余地はないだろうが、女子選手に限ればそれはマリアンヌ・フォスであることにも異論は無いはずだ。それだけの選手である。
天才のデビューは早かった。彼女が国際舞台で名を上げたのは2006年の世界選手権。若干19歳ながら小集団のスプリントを制して世界チャンピオンに輝いた。すでにオランダチャンピオンを獲得し、まさに彗星のごとく現れた才能。女子ロードレース界は、一見するに華奢な、マリアンヌの時代を経験することになる。
2000年代後半、最も華やかな女子ワンデイレースのひとつだったフレッシュ・ワロンヌを4度(08-09-11-13)制し、世界選手権では12年、13年と連覇を達成。この頃には敵なしの強さを誇り、2012年のロンドンオリンピックでも金メダル獲得。その破竹の勝ちっぷりは、今のエヴェネプールとポガチャルとファンアールトを足して3で割ったくらい……といってもけして大袈裟ではないほど。
切れ味の鋭い登りでの加速と、集団スプリントを悠々と制する瞬発力。パンチャーでありスプリンターであり、そしてクライマーでもある究極のオールラウンダーは、シクロクロスでも大活躍。途中ブランクもあったものの、2022年には自身8度目(!)の世界チャンピオンに輝いている。
1987年生まれ。デビュー時は誰よりも年少だった彼女は、ここまでウィメンズサイクリングの進展とともにキャリアを歩んできた。いまやれっきとしたベテラン。多くの若手選手がフォスの活躍を見てプロ選手を志したと発言しているように、その影響力は多大だ。
同時に少しずつ往年の切れ味に陰りも出てきているのも事実。厳しい登り坂では遅れるシーンも増えてきた。それでもレース感はもちろん一級品で、上位に絡みながら今でも勝利を獲得している。今も世界のTOP10に入る選手であることは疑いがないが、昨年の世界選手権でエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)に力勝負で敗れたことや、第1回のパリ〜ルーベ・ファムでリジー・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)を逃してしまっての2位など、重要レースを取りこぼした印象が強い。敗北の印象が強いのは、彼女だからこそと言えるが、それでもロンド・ファンフラーンデレンを戦歴にもち、シクロクロススペシャリストであるフォスがパリ〜ルーベを欲していることは明らかだ。
2021年、ジロ・ローザでステージ通算30勝(!)を飾った際には、マーク・カヴェンディッシュが「彼女はあらゆるレベルで、何年もインスピレーションを与えてくれる。絶対的なGOATだ」と賛辞を送っている。G.O.A.Tとはグレイテスト・オブ・オール・タイム、史上最高という意味だ。プロのキャリア期間をほぼ同じくするカヴ自身も、ツール34勝を打ち立てたことは記憶に新しいところ。
フォスの2022年シーズンここまで
アメリカでシクロクロス世界チャンピオンに輝いた後、ロードのシーズンインとなったストラーデ・ビアンケでは7位とまずまずの結果を残し、ヘント・ウェベルヘムではバルサモに集団スプリントで敗れ2位。世界選からバルサモに及ばないシーンが目立つ。そして優勝候補の筆頭として期待されたパリ〜ルーベ・ファムでは、レース直前にコロナ陽性で未出走。涙を飲んだ。オランダ国内選手権をチームメイトのリアネ・マークスに勝たせると、相性のよいジロ・ローザに乗り込んだ。
しかしここでもバルサモが立ちはだかる。第2ステージは集団スプリントでバルサモに及ばず2位。しかし同様に集団スプリントとなった翌第3ステージでは、今度はフォスがバルサモを制してステージ優勝。意地と実力を見せ、必然的に7月のツール・ド・フランス・ファムへの期待が高まる。
パリ〜ルーベ以外にフォスがそのキャリアでどうしても欲しい物がある。マイヨ・ジョーヌだ。史上最強の女子選手がついぞ果たせていない数少ない栄光に、この黄色いジャージがある。それはフォスの実力云々ではなく、単純にツール・ド・フランスというレースが開催されてこなかったからである。
2022年、円熟味を増したG.O.A.Tマリアンヌ・フォスが黄色いジャージに袖を通す瞬間が訪れたなら、それは女子ロードレース界に永遠に記憶されるアイコンとなるだろう。
マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボヴィスマ)
現シクロクロス世界チャンピオン
タイプ:パンチャー・スプリンター
主な戦績:記載するだけでページが埋まってしまうので割愛。プロで実に239勝!
Instagram : @mariannevosofficial Twitter : @marianne_vos
現在進行系の史上最強選手、フォス
ウィメンズワールドツアーや女子レースに馴染みの無い方でも、その名前を聞いたことはあるだろう。マリアンヌ・フォスは自転車界の歴史に残る名選手であり、その伝説は現在進行形である。過去から現在までの最強選手はエディ・メルクスであることに異論の余地はないだろうが、女子選手に限ればそれはマリアンヌ・フォスであることにも異論は無いはずだ。それだけの選手である。
天才のデビューは早かった。彼女が国際舞台で名を上げたのは2006年の世界選手権。若干19歳ながら小集団のスプリントを制して世界チャンピオンに輝いた。すでにオランダチャンピオンを獲得し、まさに彗星のごとく現れた才能。女子ロードレース界は、一見するに華奢な、マリアンヌの時代を経験することになる。
2000年代後半、最も華やかな女子ワンデイレースのひとつだったフレッシュ・ワロンヌを4度(08-09-11-13)制し、世界選手権では12年、13年と連覇を達成。この頃には敵なしの強さを誇り、2012年のロンドンオリンピックでも金メダル獲得。その破竹の勝ちっぷりは、今のエヴェネプールとポガチャルとファンアールトを足して3で割ったくらい……といってもけして大袈裟ではないほど。
切れ味の鋭い登りでの加速と、集団スプリントを悠々と制する瞬発力。パンチャーでありスプリンターであり、そしてクライマーでもある究極のオールラウンダーは、シクロクロスでも大活躍。途中ブランクもあったものの、2022年には自身8度目(!)の世界チャンピオンに輝いている。
1987年生まれ。デビュー時は誰よりも年少だった彼女は、ここまでウィメンズサイクリングの進展とともにキャリアを歩んできた。いまやれっきとしたベテラン。多くの若手選手がフォスの活躍を見てプロ選手を志したと発言しているように、その影響力は多大だ。
同時に少しずつ往年の切れ味に陰りも出てきているのも事実。厳しい登り坂では遅れるシーンも増えてきた。それでもレース感はもちろん一級品で、上位に絡みながら今でも勝利を獲得している。今も世界のTOP10に入る選手であることは疑いがないが、昨年の世界選手権でエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)に力勝負で敗れたことや、第1回のパリ〜ルーベ・ファムでリジー・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)を逃してしまっての2位など、重要レースを取りこぼした印象が強い。敗北の印象が強いのは、彼女だからこそと言えるが、それでもロンド・ファンフラーンデレンを戦歴にもち、シクロクロススペシャリストであるフォスがパリ〜ルーベを欲していることは明らかだ。
2021年、ジロ・ローザでステージ通算30勝(!)を飾った際には、マーク・カヴェンディッシュが「彼女はあらゆるレベルで、何年もインスピレーションを与えてくれる。絶対的なGOATだ」と賛辞を送っている。G.O.A.Tとはグレイテスト・オブ・オール・タイム、史上最高という意味だ。プロのキャリア期間をほぼ同じくするカヴ自身も、ツール34勝を打ち立てたことは記憶に新しいところ。
フォスの2022年シーズンここまで
アメリカでシクロクロス世界チャンピオンに輝いた後、ロードのシーズンインとなったストラーデ・ビアンケでは7位とまずまずの結果を残し、ヘント・ウェベルヘムではバルサモに集団スプリントで敗れ2位。世界選からバルサモに及ばないシーンが目立つ。そして優勝候補の筆頭として期待されたパリ〜ルーベ・ファムでは、レース直前にコロナ陽性で未出走。涙を飲んだ。オランダ国内選手権をチームメイトのリアネ・マークスに勝たせると、相性のよいジロ・ローザに乗り込んだ。
しかしここでもバルサモが立ちはだかる。第2ステージは集団スプリントでバルサモに及ばず2位。しかし同様に集団スプリントとなった翌第3ステージでは、今度はフォスがバルサモを制してステージ優勝。意地と実力を見せ、必然的に7月のツール・ド・フランス・ファムへの期待が高まる。
パリ〜ルーベ以外にフォスがそのキャリアでどうしても欲しい物がある。マイヨ・ジョーヌだ。史上最強の女子選手がついぞ果たせていない数少ない栄光に、この黄色いジャージがある。それはフォスの実力云々ではなく、単純にツール・ド・フランスというレースが開催されてこなかったからである。
2022年、円熟味を増したG.O.A.Tマリアンヌ・フォスが黄色いジャージに袖を通す瞬間が訪れたなら、それは女子ロードレース界に永遠に記憶されるアイコンとなるだろう。
マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボヴィスマ)
text:Yufta Omata
photo:CorVos
photo:CorVos
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