2022/06/29(水) - 18:54
近年注目のトップ女性サイクリストを紹介していく連載の第一弾は、現在アルカンシェルを着る世界チャンピオン、エリーザ・バルサモ(イタリア)。トラック出身のテクニックを持つ、新進気鋭のスプリンターだ。7月24日に開幕する女子ツール・ド・フランスに向けて、活躍必須の選手たちのプロフィールとここまでの歩みを紹介していこう。
アルカンシェルに袖を通したエリーザ・バルサモ(イタリア) photo:CorVos
エリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)
現世界チャンピオン
タイプ:スプリンター
主な戦績: 世界選手権2021、ヘント・ウェベルヘム2022、トロフェオ・アルフレッド・ビンダ2022、エクステリオークラシック・ブリュッヘ・デパンネ2022
Instagram : @elisa.balsamo Twitter : @Elisa_balsamo
始まったばかりのシンデレラストーリー
23歳のイタリア人、エリーザ・バルサモがベルギー・ルーヴェンの表彰台でアルカンシェルに袖を通した瞬間、ウィメンズサイクリング新時代の到来が高らかに告げられたのだった。
ジロやツールでも通過する街、イタリアのクーネオに生まれたバルサモは、まずトラックレーサーとして名を馳せた。ジュニアカテゴリーでスクラッチ、オムニアム、チームパシュートの世界チャンピオンに輝くと、2016年にはロード世界選手権でも優勝。2017年にはヴァルカーPBM(現ヴァルカー・トラベル&サービス)でプロデビュー。
ロード世界選手権2016のジュニア女子で優勝したエリーザ・バルサモ(イタリア) photo:CorVos
19歳でプロのプロトンと渡り合うのに当初は苦労したが、徐々に適応。2018年にはウィメンズワールドツアーレース、ライドロンドンクラシックで3位入賞。オランダのクリステン・ウィルト、マリアンヌ・フォスといった超一級のスプリンターに続いての表彰台に関係者の注目を集めた。
飛躍の年となったのは2020年。ヨーロッパ選手権U23で優勝すると、ラ・ブエルタの女子レースであるセラティジット・チャレンジ第3ステージで優勝。コンチネンタルチームながら格上のワールドツアー選手を抑えての勝利に、スプリンターとしての立ち位置を強めていく。
並行してトラックスペシャリストとしてイタリア女子の代表の常連に。マディソンやチームパシュートでは世界選手権で銅メダルを獲得している。東京五輪ではトラックレースに出場したが、落車が重なりチームパシュートでの6位にとどまっている。
トラック競技でもイタリア代表として活躍。2020年はオムニアムでヨーロッパチャンピオンに輝いている photo:CorVos
しかしこの2021年、ベルギー・フランドル地方が舞台となったロード世界選手権でバルサモの名は世界に知られることになる。大会4連覇中のオランダ勢の攻撃を耐え抜き、集団スプリントではオランダのエース、マリアンヌ・フォスとの一騎打ちに。力と力のぶつかり合いとなったスプリントを制したバルサモが世界チャンピオンに輝いた。
相手が「オールタイムグレート」なフォスだっただけに、この勝利が意味するところは大きい。新世代の世界チャンピオンは、改革進むウィメンズサイクリングを象徴するアイコンとなる。
ロード世界選手権2021でスプリントを制したエリーザ・バルサモ(イタリア) photo:CorVos
バルサモの2022年シーズンここまで
世界選手権前に発表されていたとおり、トレック・セガフレードへと移籍し、ワールドツアー選手となったバルサモ。これまで格下チームながらワールドツアーチームと互角以上に渡り合ってきた彼女にとって、トレックの強力なチーム力は鬼に金棒。トラックで身につけた位置取りの巧みさと優れたリードアウトを得て、2022年シーズンは常勝街道を突き進んでいる。
シーズン初戦となったスペインのステージレースではいきなり第1ステージで勝利すると、北のクラシックの幕開けを告げるオンループ・ヘットニースブラッドで4位。3月上旬のワールドツアーレース第2戦ロンド・ファン・ドレンテで2位に入ると、快進撃が始まった。
2022年シーズンの初戦で優勝。その強さを知らしめたシーズンインとなった photo:CorVos
3月20日、トロフェオ・アルフレッド・ビンダで優勝。3月24日、エクステリオークラシック・ブリュッヘ・デパンネで優勝。そして3月27日、ヘント・ウェベルヘムで優勝。なんと1週間で3つのワールドツアーレースを連勝するという離れ業を成し遂げてしまった。起伏あるビンダから石畳のヘントまで、マルチな対応力を持つスプリンターであることを証明している。
ヘント・ウェヴェルヘム2022を制したエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
ただし、北のモニュメントでは辛酸も嘗めている。期待されたロンド・ファンフランデーレンでは28位に沈み、優勝候補に挙げられていたパリ〜ルーベ・ファムでは「スティッキーボトル」で失格処分に終わるなど、レースを取りこぼしている。
トラックレースへの出場を経て、6月に行われたツール・ド・スイス・ウィメンでは第3ステージで勝利。勝てる足を見せつつ、このあとのジロ・ローザそしてツール・ド・フランス・ファムへと向かう。母国最大のレースと、世界最大のレース。世界チャンピオンに熱い視線が注がれる中、彼女には「最低限」どちらのレースでもステージ優勝が求められるだろう。
脚質はピュアスプリンター。同じくスプリンターで当代随一のスピードを持つロレーナ・ウィーベス(オランダ、DSM)には純粋なスピードで及ばない場面も見られるが、登坂ではバルサモのほうが上を行く。しかしバルサモ自身も、登りでは苦しむ場面も多い。アムステルゴールドレース8位という結果に将来を見ることができるが、まずはジロとツールでどこまでセレクションに残れるかに注目だ。小集団のスプリントになれば、アルカンシェルが悠々と両手を上げることだろう。
エリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
ウェーブがかった黒髪と、意志の強さを見せる大きな瞳、そして時折見せる柔和な表情。世界チャンピオンはこれからのウィメンズサイクリングを背負って立つスター性を充分に兼ね備えている。
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エリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)
現世界チャンピオン
タイプ:スプリンター
主な戦績: 世界選手権2021、ヘント・ウェベルヘム2022、トロフェオ・アルフレッド・ビンダ2022、エクステリオークラシック・ブリュッヘ・デパンネ2022
Instagram : @elisa.balsamo Twitter : @Elisa_balsamo
始まったばかりのシンデレラストーリー
23歳のイタリア人、エリーザ・バルサモがベルギー・ルーヴェンの表彰台でアルカンシェルに袖を通した瞬間、ウィメンズサイクリング新時代の到来が高らかに告げられたのだった。
ジロやツールでも通過する街、イタリアのクーネオに生まれたバルサモは、まずトラックレーサーとして名を馳せた。ジュニアカテゴリーでスクラッチ、オムニアム、チームパシュートの世界チャンピオンに輝くと、2016年にはロード世界選手権でも優勝。2017年にはヴァルカーPBM(現ヴァルカー・トラベル&サービス)でプロデビュー。
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19歳でプロのプロトンと渡り合うのに当初は苦労したが、徐々に適応。2018年にはウィメンズワールドツアーレース、ライドロンドンクラシックで3位入賞。オランダのクリステン・ウィルト、マリアンヌ・フォスといった超一級のスプリンターに続いての表彰台に関係者の注目を集めた。
飛躍の年となったのは2020年。ヨーロッパ選手権U23で優勝すると、ラ・ブエルタの女子レースであるセラティジット・チャレンジ第3ステージで優勝。コンチネンタルチームながら格上のワールドツアー選手を抑えての勝利に、スプリンターとしての立ち位置を強めていく。
並行してトラックスペシャリストとしてイタリア女子の代表の常連に。マディソンやチームパシュートでは世界選手権で銅メダルを獲得している。東京五輪ではトラックレースに出場したが、落車が重なりチームパシュートでの6位にとどまっている。
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しかしこの2021年、ベルギー・フランドル地方が舞台となったロード世界選手権でバルサモの名は世界に知られることになる。大会4連覇中のオランダ勢の攻撃を耐え抜き、集団スプリントではオランダのエース、マリアンヌ・フォスとの一騎打ちに。力と力のぶつかり合いとなったスプリントを制したバルサモが世界チャンピオンに輝いた。
相手が「オールタイムグレート」なフォスだっただけに、この勝利が意味するところは大きい。新世代の世界チャンピオンは、改革進むウィメンズサイクリングを象徴するアイコンとなる。
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バルサモの2022年シーズンここまで
世界選手権前に発表されていたとおり、トレック・セガフレードへと移籍し、ワールドツアー選手となったバルサモ。これまで格下チームながらワールドツアーチームと互角以上に渡り合ってきた彼女にとって、トレックの強力なチーム力は鬼に金棒。トラックで身につけた位置取りの巧みさと優れたリードアウトを得て、2022年シーズンは常勝街道を突き進んでいる。
シーズン初戦となったスペインのステージレースではいきなり第1ステージで勝利すると、北のクラシックの幕開けを告げるオンループ・ヘットニースブラッドで4位。3月上旬のワールドツアーレース第2戦ロンド・ファン・ドレンテで2位に入ると、快進撃が始まった。
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3月20日、トロフェオ・アルフレッド・ビンダで優勝。3月24日、エクステリオークラシック・ブリュッヘ・デパンネで優勝。そして3月27日、ヘント・ウェベルヘムで優勝。なんと1週間で3つのワールドツアーレースを連勝するという離れ業を成し遂げてしまった。起伏あるビンダから石畳のヘントまで、マルチな対応力を持つスプリンターであることを証明している。
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ただし、北のモニュメントでは辛酸も嘗めている。期待されたロンド・ファンフランデーレンでは28位に沈み、優勝候補に挙げられていたパリ〜ルーベ・ファムでは「スティッキーボトル」で失格処分に終わるなど、レースを取りこぼしている。
トラックレースへの出場を経て、6月に行われたツール・ド・スイス・ウィメンでは第3ステージで勝利。勝てる足を見せつつ、このあとのジロ・ローザそしてツール・ド・フランス・ファムへと向かう。母国最大のレースと、世界最大のレース。世界チャンピオンに熱い視線が注がれる中、彼女には「最低限」どちらのレースでもステージ優勝が求められるだろう。
脚質はピュアスプリンター。同じくスプリンターで当代随一のスピードを持つロレーナ・ウィーベス(オランダ、DSM)には純粋なスピードで及ばない場面も見られるが、登坂ではバルサモのほうが上を行く。しかしバルサモ自身も、登りでは苦しむ場面も多い。アムステルゴールドレース8位という結果に将来を見ることができるが、まずはジロとツールでどこまでセレクションに残れるかに注目だ。小集団のスプリントになれば、アルカンシェルが悠々と両手を上げることだろう。
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ウェーブがかった黒髪と、意志の強さを見せる大きな瞳、そして時折見せる柔和な表情。世界チャンピオンはこれからのウィメンズサイクリングを背負って立つスター性を充分に兼ね備えている。
エリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)
タイプ | 主な戦績 |
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スプリンター | 世界選手権2021 |
ヘント・ウェベルヘム2022 | |
トロフェオ・アルフレッド・ビンダ2022 | |
エクステリオークラシック・ブリュッヘ・デパンネ2022 |
text:Yufta Omata
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