2022/02/22(火) - 14:25
ニュージーランドのバイクブランド、CHAPTER2が6作目となる「KOKO(ココ)」を発表。カムテール形状によるエアロ化、ケーブルフル内蔵、32mmタイヤクリアランスなど現在のトレンドを取り込み、シートピラーには柔軟性を調整する機構をプラス。エアロに走破性をプラスしたオールロードバイクをインプレッションした。
かつてニールプライドバイクを指揮したマイク・プライド氏が、自身の人生の”第2章”という意味を込めて2017年に創業したバイクブランドがCHAPTER2(チャプター・ツー)。新モデルのKOKO(ココ)は同ブランド6作目となるロードバイクだ。
昨夏にTOA(トア)を発表したばかりのCHAPTER2。女性首相アーダーン氏の新型コロナ対策が功を奏し、ニュージーランドのビジネスは止まっていない。CHAPTER2が立て続けにリリースする新モデル「KOKO(ココ)」は、マオリ語で「舞い上がる、飛ぶ」を意味する名のエアロロード。
KOKOの開発のベースとなったのは2作目のエアロロード「RERE」だった。フレームを構成する各チューブがブレード(刃物)形状だったREREをもとに、空力性能をさらに高めるためKOKOはダウンチューブにカムテール形状を採用し、ボトムブラケットで13.35%、ヘッドチューブで35.64%の剛性向上を図った。フレームと一体化する設計の新型MANAバーと組み合わせることでケーブルのフル内蔵も実現し、空力を向上させた。
KOKOに採用されたユニークな新機構が、コンプライアンス(縦方向の柔軟性)調整機能をもつデュアルポジション・シートクランプだ。これによりライダーの好みや道路状況に応じてシートポストのしなりを調整することで乗り心地を選択できる仕組みだ。
エラストマーを備えたデュアルポジション・シートクランプは2つの固定ポジションから選ぶことができ、シートクランプを低い位置(ポジション2)にセットすればシートポストがしなり、快適性が高められるという機構。てこの原理「カンチレバーアクション作用」により、シートポストがしなることによってコンプライアンスは最大8.5%向上するという。
シンプルかつ効果的なこの機構により、KOKOは荒れた路面でも滑らかで快適な乗り心地を維持することができる。シートピンによる固定位置が上部の「ポジション1」を選べば、シートポストのしなりは制限され、ソリッドな乗り心地となる。
カムテール形状かつ断面がDシェイプのシートポストは空気抵抗が少なく、前後方向に柔軟にしなる形状。デュアルポジション・シートクランプはサドル固定クランプとエラストマーをシャフトでつなぐような構造で、正確な位置決めと確実な組み付けができる形状になっている。フレームサイズごとにシャフトの長さは異なっている。
チャプター2のフレーム素材には日本の東レ製カーボンが100%用いられる。各サイズ毎に用意されたラテックス・マンドレルを使用することで、 カーボンプリプレグの肉厚と樹脂の流れを慎重にコントロールしながら製造しているという。ボトムブラケットとヘッドチューブには高張力カーボンを使用し、前三角のねじり剛性を高めた。この2つのプロセスの組み合わせによってフレームのパフォーマンスが総合的に向上しているという。
ボトムブラケットにはT47 BBが採用される。BBシェルにアルミスリーブを備えるため少々の重量増はあるが、剛性が高く、メンテンナンス性に優れる。音鳴り等のトラブルの少なさでも評価が高まっている方式だ。
タイヤクリアランスは最大32mmと大きく、近年ワイドリム+ワイドタイヤ化するホイール周りに対応。タイヤに沿ったフレームのカットアウト形状はRERE譲りであり、先に発表されたTOA同様に太いタイヤの性能を十分に活かすオールロード的な性格を持ち合わせたパッケージとなる。
フォークコラム周りは新型となったチャプター2オリジナルの一体型ハンドル「MANAバー」を組み合わせて使用することを前提に設計されている。ケーブルや油圧ホースを完全内装することができ、すっきりした外観と空気抵抗の削減を両立。コラム周りのスペーサーは分割式で、ケーブルはそのままでハンドルの高さを簡単に調整できる。またMANAバーを使わずに一般的なステムとハンドルセットを用いることもでき、セミ内装にするためのケーブル孔を備えた専用ヘッドキャップ等もフレームキットに含まれている。
以上は小田原でのメディアプレゼンテーションで発表された内容をまとめたものになるが、その発表の3日前に特別に試乗バイクを借り受け、インプレッションを行った。つまり上記の発表された内容を事前に知らされないままのテストライドとなる。スポーツバイクファクトリースズキの鈴木卓史さんと、チャプター2バイクの過去モデルすべてに乗ってきたCW編集長・綾野が担当する。
インプレッション
「軽快にして快適。ルックスに反してオールラウンドに乗れる新たなエアロバイク」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
まず乗り心地がいいですね。シートポストの根本に仕込まれたエラストマーでポストが動いているのが良くわかる。荒れた路面でペダリングをしていても、ノイズやインフォメーションを感じにくい。その分ライドに集中できる。BB周りが硬いけれど、フレームの上部がしなやかで、進むけどフレームの硬さを感じない。ダンシングをしているときは硬さを感じるけど、シッティングで漕ぐとしなやか。硬さをうまく逃してくれる感じ。フレームのそれぞれのパートが剛性や快適性の役割を表現している感じですね。
シッティングでのペダリングで腰が上下するから進ませやすい。エラストマーによってシートポストがよく動くから漕ぎやすいようです。しかしBBはしっかりしているから漕ぎやすい。下りの荒れたところでも衝撃を感じにくくて、衝撃が過ぎ去っていく感じ。空気圧の低いタイヤの影響もあるけど、バイク全体の色んな面で振動を吸収している。でもエラストマーの働きは確かに感じることができる。
BB周りはしっかりしていて、剛性が高い。レーシーなロードバイクとしての硬さを持っています。エアロバイクは硬くなりがちで、薄いフレームだと横には撓むんだけど、KOKOは快適でもそうしたネガティブは感じにくいです。エアロバイクのネガなところを、エラストマーで上手くバランスを取って消し去っている。これはエアロバイクの新たな方向性ですね。
エアロバイクはガンガン加速していくイメージがあるけど、すぐに疲れてしまうからこうした快適性は効いてくる。バイクとして上手くバランスが取れている感じですね。
重いギアで踏んでいくのが良いのか、軽いギアで回したほうが良いのか? そのどちらに偏ることもなく、BB周辺は硬いから重いギアでも受け止めてくれるし、軽いギアでも力が逃げる感覚は無いです。
フォルムだけを見るとバリバリのエアロバイクっぽいルックスだけど、乗り心地も良いし、疲れにくいし、総合的にとても良いと思う。オールラウンドに使えるバイクですね。過激な点が無い、扱いやすいバイクです。
オーソドックスなロードバイクで例えると、スペシャライズドのTARMAC的な感じがある。エアロとオールラウンドの間の子のような性能。そしてちょっとだけエアロな方向に振ってあることで、いい個性が出ている。
オリジナルの一体型ハンドルもリーチが短いし、ドロップの曲げ方も結構日本人好みなんじゃないかな。小柄な人にはとても良いと思う。ドロップ部も握りやすいし、形状も良く考えて設計されている。別売りの設定ですがMANAバーはぜひ使いたいですね。
ヘッド周りの剛性感は高すぎることもなく、ハンドリングもクイックすぎない感じでした。バイクを倒してコーナーを曲がる感じのバイクで安定感があって個人的には好きです。バイクによっては結構軽いものもあるけど、不安感がなかった。チャプター2のバイクは全体的にクイックでなく、落ち着いたハンドリングなんです。過激すぎない、乗りやすいのがブランドらしさです。
エアロバイクは見た目で重いと思いがちですが、軽く、むしろ軽快。実際に車重を測っていないからわからないけど、普通のロードバイクとして使える感じ。だから普通より個性のあるロードバイクが欲しいとか、カッコ良さで選んでも良いと思う。ロングライドに適したツーリングバイクを買うような感覚でも大丈夫。エアロな見た目が気に入れば、TARMAC系とかSUPERSIX系のロードと同列に検討しても良いと思います。エアロバイクに見えて振動も吸収してくれる快適バイクです。
今回はジップ303 Firecrestホイールがセットされていましたが、相性が抜群でしたね。フックレスリムでチューブレスだから空気圧が肝で、丁度良い空気圧を見つけられると、フックレスの良さを生かすことができる。チューブレスのディープリムで45㎜や50㎜ハイトがフレーム的にはベストバランスだと思います。
ケーブルもフル内装になっているし、見た目もスッキリしていて良いと思います。トレンドを生かしつつ、エラストマー内蔵シートポストで快適性という個性を出しつつ、デザインやカラーリング、挿し色にもこだわりがあってオシャレ。他のブランドにはない雰囲気ですよね。KOKOというモデル名も南国のエスニックなテイストを感じます。販売情報が(試乗時点で)まだ無いので値段が気になりますが、所有欲も満たしてくれるバイクだと思います。
「滑るように走る快適なエアロロード。しかし激坂登りも得意なオールラウンドさを持ち合わせる」
綾野 真(シクロワイアード編集部)
すごく快適なエアロロードという第一印象で、走り出してすぐに「これは進むな」と分かりました。すごくスムーズで快適性が高く、スルスルと進みます。荒れた路面での漕ぎ出しだけで快適性の高さが分かる。滑らかに走るのが凄いな、と思いました。
快適性にはホイールとタイヤの果たす役割の割合が高いけれど、フレームやシートポストのしなりが微振動を吸収してくれて、相乗効果で良く進むと感じます。そして速度を上げればエアロ効果の高さを明らかに感じます。低速・高速どの速度域も得意なエアロバイクだな、と思いました。
このバイクはおそらくREREのアップデート版だと思うんですが、今風のカムテール構造を取り入れて、ワイドなタイヤやリムに対応しつつ、振動吸収性を高めている。かつ、ステアリング周りはケーブルフル内装でインテグレートされていて、トレンドを上手く取り入れている。
一般的にはエアロロードというとスムーズさが損なわれがち。扁平チューブで面積をだすと、縦に強くて横に撓む性質が出やすいけれど、振動吸収性と快適さを出すことができているKOKOはエアロロードとしては異色の乗り味だと思います。元々REREがライアンアップの中で一番乗りやすいバイクだったので、元々のベースも良かったんだろうと思います。それに今の規格を取り入れ、変える必要がある部分を変えてきたんだな、と想像します。
REREは典型的なエアロフレームで、薄くてカムテールではないブレード形状を使ったバイクでした。ブレード形状であったがために左右の撓みがあって、脚に優しくてエアロ効果もあった。しかしその頃のホイールの基準はタイヤが23C、リム内幅17C程度で、今はその頃の基準とは違ってきているので、そこに合わせて造り変えてきたのではないか、と。
ディスクブレーキが標準化して、ワイドリム&ワイドタイヤのエアロホイールが定番になり、太くなってもエアロ効果も高まっている。そんなホイールに合わせてフレーム形状も造り変える必要があったんだと思う。
今セットされているホイールはジップの303firecrestだから、内幅25mmという超ワイドリムのホイールで、28Cのチューブレスタイヤは実測で31mmにもなる。それでもフレーム側のクリアランスに余裕があった。REREのシートチューブはタイヤに沿ってキチキチに作ってあったけど、ここに余裕をもたせ、32C以上のタイヤも使えると思うほど。マイク・プライドがチューブレス化したワイドリムのホイールを気に入って、オールロード的な要素をエアロバイクに取り入れたんだな、と思います。
先に発表されたTOAはワイドリムのホイールでオールラウンドに使えるオールロードとして登場しました。それにエアロの要素を取り入れて乗り心地も良くしたのがKOKO。TOAは山道を走るのが得意なバイクなのに対し、KOKOは一人で高速で走るのが得意なバイクで、TOAに近いバイク。シートポストはTOAと外見的にはたぶん共通に見えます(編集部注:形状は共通)。
エアロバイクらしく腰を押し付けてグイグイ踏み込むように乗ると、撓るシートポストが生きてくる。振動を吸収してくれるし、激坂をよじ登るようにも走ってみたけど、シートピラーがよく撓ってくれて、トラクションの掛かり方も良かった。エアロバイクなので平坦が良かったけど、登りも良かったので万能なエアロバイクに仕上がっている。これから流行する要素を取り入れた欲張りなバイクに仕上がっていると思います。
とくに高めのスピードレンジで一人で走る場面でメリットが活かせると思います。TOAは山や坂をアグレッシブに走れるバイクでした。KOKOは平坦を淡々と走ることができるので、自分のお気に入りエリアがなだらかな地形の人に向くでしょう。ディープリムを履けば距離を伸ばす走り方ができる、ブルベやロングライド向けに味付けされたバイク。でも厳しい登りもいけるからルックス以上にオールラウンドです。
カテゴライズするとTOAはグランフォンドレースバイク。KOKOはエアロバイクだけど、TOAと被るところもある。TOAは獲得標高を得ることで喜びを感じるバイクであるのに対して、KOKOは距離を伸ばせる味付けがされている。どちらも道を選ばないオールロード的バイクなので、これからの可能性を広げてくれるバイクです。
エアロバイクであって欠点を感じないのもいいですね。例えば縦に硬いとか、横に撓むとか、横風を受けてふらつくとかのデメリットが出にくい。
マイク・プライドは最新の流行に敏感で、すぐにインスピレーションを受けてバイクを設計してしまうような人なので、最近のホイールやタイヤが切り拓いた新しい乗り味を使いこなすような設計がされているのだと想像しています。
これからのロードバイクは、KOKOのようにワイドリムとワイドタイヤによるホイールを使う前提で設計するという考えが出てくると思います。しかし例えばワールドツアーチームに供給されるようなレースバイクだと、一般ユーザーが好むようなワイド化はできないと思う。そこは25mmチューブラータイヤが基準になるプロレーサーが使うバイクとは設計が違ってくるでしょう。
KOKOはアマチュアサイクリストがデイリーライドで乗りやすいオールロードバイクだと思います。とはいえ「大は小を兼ねる」ので、25Cタイヤでレースに使うこともできるでしょう。太いタイヤへのキャパシティはあっても、走りの良さを備えているからレース的な走りにも十分使えると思います。
チャプター2 KOKO
フレームサイズ:XXS・XS・S・M・L・XL
フォーク(2サイズ):XXS・XS・S (53 offset) 、M・L・XL (43 offset)
フレーム重量:1,139g +/- 3%(Mサイズ )
フォーク重量:420g +/- 3%(カット前)
シートポスト重量:135g +/- 3%(Mサイズ)
ハンドル/ステム(MANA):395g (100-420mm) +/- 3%(別売)
ヘッドセット:1.5” C2 Integrated System
推奨変速方式:機械式シフト、電動シフト、各社のグループセットを選択可能
タイヤクリアランス:32mm
ブレーキタイプ:ディスクのみ
ボトムブラケット:インターナル T47 (86.5)
スルーアクスル:FR 12x100mm、RR 12x142mm E-Thru M12x1.5mm
安全基準:EN ISO 4210:2014
UCI認定:UCI認証取得済
セット内容:フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト、スルーアクスル、クイックフィット・スペーサー
税込価格:¥415,580(Black)、¥427,350(Cobalt + Green)
MANAハンドルバー:税込価格:¥78,870
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
綾野 真(シクロワイアード編集部)
ロード、マウンテンバイク、シクロクロス、グラベル、ツーリングと多くのジャンルのサイクリングスポーツを趣味でも楽しむCW編集長。現在は山岳系ロングライドに傾倒し、グラベルとバイクパッキングを融合させたライドの計画に余念がない。チャプター2代表マイク・プライド氏とはニールプライド時代からの友人で、タイのステージレース「ツアー・オブ・フレンドシップ」を一緒に走った仲。過去すべてのバイクのインプレを担当し、最近グラベルバイクのチャプター2 AOを購入した。
かつてニールプライドバイクを指揮したマイク・プライド氏が、自身の人生の”第2章”という意味を込めて2017年に創業したバイクブランドがCHAPTER2(チャプター・ツー)。新モデルのKOKO(ココ)は同ブランド6作目となるロードバイクだ。
昨夏にTOA(トア)を発表したばかりのCHAPTER2。女性首相アーダーン氏の新型コロナ対策が功を奏し、ニュージーランドのビジネスは止まっていない。CHAPTER2が立て続けにリリースする新モデル「KOKO(ココ)」は、マオリ語で「舞い上がる、飛ぶ」を意味する名のエアロロード。
KOKOの開発のベースとなったのは2作目のエアロロード「RERE」だった。フレームを構成する各チューブがブレード(刃物)形状だったREREをもとに、空力性能をさらに高めるためKOKOはダウンチューブにカムテール形状を採用し、ボトムブラケットで13.35%、ヘッドチューブで35.64%の剛性向上を図った。フレームと一体化する設計の新型MANAバーと組み合わせることでケーブルのフル内蔵も実現し、空力を向上させた。
KOKOに採用されたユニークな新機構が、コンプライアンス(縦方向の柔軟性)調整機能をもつデュアルポジション・シートクランプだ。これによりライダーの好みや道路状況に応じてシートポストのしなりを調整することで乗り心地を選択できる仕組みだ。
エラストマーを備えたデュアルポジション・シートクランプは2つの固定ポジションから選ぶことができ、シートクランプを低い位置(ポジション2)にセットすればシートポストがしなり、快適性が高められるという機構。てこの原理「カンチレバーアクション作用」により、シートポストがしなることによってコンプライアンスは最大8.5%向上するという。
シンプルかつ効果的なこの機構により、KOKOは荒れた路面でも滑らかで快適な乗り心地を維持することができる。シートピンによる固定位置が上部の「ポジション1」を選べば、シートポストのしなりは制限され、ソリッドな乗り心地となる。
カムテール形状かつ断面がDシェイプのシートポストは空気抵抗が少なく、前後方向に柔軟にしなる形状。デュアルポジション・シートクランプはサドル固定クランプとエラストマーをシャフトでつなぐような構造で、正確な位置決めと確実な組み付けができる形状になっている。フレームサイズごとにシャフトの長さは異なっている。
チャプター2のフレーム素材には日本の東レ製カーボンが100%用いられる。各サイズ毎に用意されたラテックス・マンドレルを使用することで、 カーボンプリプレグの肉厚と樹脂の流れを慎重にコントロールしながら製造しているという。ボトムブラケットとヘッドチューブには高張力カーボンを使用し、前三角のねじり剛性を高めた。この2つのプロセスの組み合わせによってフレームのパフォーマンスが総合的に向上しているという。
ボトムブラケットにはT47 BBが採用される。BBシェルにアルミスリーブを備えるため少々の重量増はあるが、剛性が高く、メンテンナンス性に優れる。音鳴り等のトラブルの少なさでも評価が高まっている方式だ。
タイヤクリアランスは最大32mmと大きく、近年ワイドリム+ワイドタイヤ化するホイール周りに対応。タイヤに沿ったフレームのカットアウト形状はRERE譲りであり、先に発表されたTOA同様に太いタイヤの性能を十分に活かすオールロード的な性格を持ち合わせたパッケージとなる。
フォークコラム周りは新型となったチャプター2オリジナルの一体型ハンドル「MANAバー」を組み合わせて使用することを前提に設計されている。ケーブルや油圧ホースを完全内装することができ、すっきりした外観と空気抵抗の削減を両立。コラム周りのスペーサーは分割式で、ケーブルはそのままでハンドルの高さを簡単に調整できる。またMANAバーを使わずに一般的なステムとハンドルセットを用いることもでき、セミ内装にするためのケーブル孔を備えた専用ヘッドキャップ等もフレームキットに含まれている。
以上は小田原でのメディアプレゼンテーションで発表された内容をまとめたものになるが、その発表の3日前に特別に試乗バイクを借り受け、インプレッションを行った。つまり上記の発表された内容を事前に知らされないままのテストライドとなる。スポーツバイクファクトリースズキの鈴木卓史さんと、チャプター2バイクの過去モデルすべてに乗ってきたCW編集長・綾野が担当する。
インプレッション
「軽快にして快適。ルックスに反してオールラウンドに乗れる新たなエアロバイク」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
まず乗り心地がいいですね。シートポストの根本に仕込まれたエラストマーでポストが動いているのが良くわかる。荒れた路面でペダリングをしていても、ノイズやインフォメーションを感じにくい。その分ライドに集中できる。BB周りが硬いけれど、フレームの上部がしなやかで、進むけどフレームの硬さを感じない。ダンシングをしているときは硬さを感じるけど、シッティングで漕ぐとしなやか。硬さをうまく逃してくれる感じ。フレームのそれぞれのパートが剛性や快適性の役割を表現している感じですね。
シッティングでのペダリングで腰が上下するから進ませやすい。エラストマーによってシートポストがよく動くから漕ぎやすいようです。しかしBBはしっかりしているから漕ぎやすい。下りの荒れたところでも衝撃を感じにくくて、衝撃が過ぎ去っていく感じ。空気圧の低いタイヤの影響もあるけど、バイク全体の色んな面で振動を吸収している。でもエラストマーの働きは確かに感じることができる。
BB周りはしっかりしていて、剛性が高い。レーシーなロードバイクとしての硬さを持っています。エアロバイクは硬くなりがちで、薄いフレームだと横には撓むんだけど、KOKOは快適でもそうしたネガティブは感じにくいです。エアロバイクのネガなところを、エラストマーで上手くバランスを取って消し去っている。これはエアロバイクの新たな方向性ですね。
エアロバイクはガンガン加速していくイメージがあるけど、すぐに疲れてしまうからこうした快適性は効いてくる。バイクとして上手くバランスが取れている感じですね。
重いギアで踏んでいくのが良いのか、軽いギアで回したほうが良いのか? そのどちらに偏ることもなく、BB周辺は硬いから重いギアでも受け止めてくれるし、軽いギアでも力が逃げる感覚は無いです。
フォルムだけを見るとバリバリのエアロバイクっぽいルックスだけど、乗り心地も良いし、疲れにくいし、総合的にとても良いと思う。オールラウンドに使えるバイクですね。過激な点が無い、扱いやすいバイクです。
オーソドックスなロードバイクで例えると、スペシャライズドのTARMAC的な感じがある。エアロとオールラウンドの間の子のような性能。そしてちょっとだけエアロな方向に振ってあることで、いい個性が出ている。
オリジナルの一体型ハンドルもリーチが短いし、ドロップの曲げ方も結構日本人好みなんじゃないかな。小柄な人にはとても良いと思う。ドロップ部も握りやすいし、形状も良く考えて設計されている。別売りの設定ですがMANAバーはぜひ使いたいですね。
ヘッド周りの剛性感は高すぎることもなく、ハンドリングもクイックすぎない感じでした。バイクを倒してコーナーを曲がる感じのバイクで安定感があって個人的には好きです。バイクによっては結構軽いものもあるけど、不安感がなかった。チャプター2のバイクは全体的にクイックでなく、落ち着いたハンドリングなんです。過激すぎない、乗りやすいのがブランドらしさです。
エアロバイクは見た目で重いと思いがちですが、軽く、むしろ軽快。実際に車重を測っていないからわからないけど、普通のロードバイクとして使える感じ。だから普通より個性のあるロードバイクが欲しいとか、カッコ良さで選んでも良いと思う。ロングライドに適したツーリングバイクを買うような感覚でも大丈夫。エアロな見た目が気に入れば、TARMAC系とかSUPERSIX系のロードと同列に検討しても良いと思います。エアロバイクに見えて振動も吸収してくれる快適バイクです。
今回はジップ303 Firecrestホイールがセットされていましたが、相性が抜群でしたね。フックレスリムでチューブレスだから空気圧が肝で、丁度良い空気圧を見つけられると、フックレスの良さを生かすことができる。チューブレスのディープリムで45㎜や50㎜ハイトがフレーム的にはベストバランスだと思います。
ケーブルもフル内装になっているし、見た目もスッキリしていて良いと思います。トレンドを生かしつつ、エラストマー内蔵シートポストで快適性という個性を出しつつ、デザインやカラーリング、挿し色にもこだわりがあってオシャレ。他のブランドにはない雰囲気ですよね。KOKOというモデル名も南国のエスニックなテイストを感じます。販売情報が(試乗時点で)まだ無いので値段が気になりますが、所有欲も満たしてくれるバイクだと思います。
「滑るように走る快適なエアロロード。しかし激坂登りも得意なオールラウンドさを持ち合わせる」
綾野 真(シクロワイアード編集部)
すごく快適なエアロロードという第一印象で、走り出してすぐに「これは進むな」と分かりました。すごくスムーズで快適性が高く、スルスルと進みます。荒れた路面での漕ぎ出しだけで快適性の高さが分かる。滑らかに走るのが凄いな、と思いました。
快適性にはホイールとタイヤの果たす役割の割合が高いけれど、フレームやシートポストのしなりが微振動を吸収してくれて、相乗効果で良く進むと感じます。そして速度を上げればエアロ効果の高さを明らかに感じます。低速・高速どの速度域も得意なエアロバイクだな、と思いました。
このバイクはおそらくREREのアップデート版だと思うんですが、今風のカムテール構造を取り入れて、ワイドなタイヤやリムに対応しつつ、振動吸収性を高めている。かつ、ステアリング周りはケーブルフル内装でインテグレートされていて、トレンドを上手く取り入れている。
一般的にはエアロロードというとスムーズさが損なわれがち。扁平チューブで面積をだすと、縦に強くて横に撓む性質が出やすいけれど、振動吸収性と快適さを出すことができているKOKOはエアロロードとしては異色の乗り味だと思います。元々REREがライアンアップの中で一番乗りやすいバイクだったので、元々のベースも良かったんだろうと思います。それに今の規格を取り入れ、変える必要がある部分を変えてきたんだな、と想像します。
REREは典型的なエアロフレームで、薄くてカムテールではないブレード形状を使ったバイクでした。ブレード形状であったがために左右の撓みがあって、脚に優しくてエアロ効果もあった。しかしその頃のホイールの基準はタイヤが23C、リム内幅17C程度で、今はその頃の基準とは違ってきているので、そこに合わせて造り変えてきたのではないか、と。
ディスクブレーキが標準化して、ワイドリム&ワイドタイヤのエアロホイールが定番になり、太くなってもエアロ効果も高まっている。そんなホイールに合わせてフレーム形状も造り変える必要があったんだと思う。
今セットされているホイールはジップの303firecrestだから、内幅25mmという超ワイドリムのホイールで、28Cのチューブレスタイヤは実測で31mmにもなる。それでもフレーム側のクリアランスに余裕があった。REREのシートチューブはタイヤに沿ってキチキチに作ってあったけど、ここに余裕をもたせ、32C以上のタイヤも使えると思うほど。マイク・プライドがチューブレス化したワイドリムのホイールを気に入って、オールロード的な要素をエアロバイクに取り入れたんだな、と思います。
先に発表されたTOAはワイドリムのホイールでオールラウンドに使えるオールロードとして登場しました。それにエアロの要素を取り入れて乗り心地も良くしたのがKOKO。TOAは山道を走るのが得意なバイクなのに対し、KOKOは一人で高速で走るのが得意なバイクで、TOAに近いバイク。シートポストはTOAと外見的にはたぶん共通に見えます(編集部注:形状は共通)。
エアロバイクらしく腰を押し付けてグイグイ踏み込むように乗ると、撓るシートポストが生きてくる。振動を吸収してくれるし、激坂をよじ登るようにも走ってみたけど、シートピラーがよく撓ってくれて、トラクションの掛かり方も良かった。エアロバイクなので平坦が良かったけど、登りも良かったので万能なエアロバイクに仕上がっている。これから流行する要素を取り入れた欲張りなバイクに仕上がっていると思います。
とくに高めのスピードレンジで一人で走る場面でメリットが活かせると思います。TOAは山や坂をアグレッシブに走れるバイクでした。KOKOは平坦を淡々と走ることができるので、自分のお気に入りエリアがなだらかな地形の人に向くでしょう。ディープリムを履けば距離を伸ばす走り方ができる、ブルベやロングライド向けに味付けされたバイク。でも厳しい登りもいけるからルックス以上にオールラウンドです。
カテゴライズするとTOAはグランフォンドレースバイク。KOKOはエアロバイクだけど、TOAと被るところもある。TOAは獲得標高を得ることで喜びを感じるバイクであるのに対して、KOKOは距離を伸ばせる味付けがされている。どちらも道を選ばないオールロード的バイクなので、これからの可能性を広げてくれるバイクです。
エアロバイクであって欠点を感じないのもいいですね。例えば縦に硬いとか、横に撓むとか、横風を受けてふらつくとかのデメリットが出にくい。
マイク・プライドは最新の流行に敏感で、すぐにインスピレーションを受けてバイクを設計してしまうような人なので、最近のホイールやタイヤが切り拓いた新しい乗り味を使いこなすような設計がされているのだと想像しています。
これからのロードバイクは、KOKOのようにワイドリムとワイドタイヤによるホイールを使う前提で設計するという考えが出てくると思います。しかし例えばワールドツアーチームに供給されるようなレースバイクだと、一般ユーザーが好むようなワイド化はできないと思う。そこは25mmチューブラータイヤが基準になるプロレーサーが使うバイクとは設計が違ってくるでしょう。
KOKOはアマチュアサイクリストがデイリーライドで乗りやすいオールロードバイクだと思います。とはいえ「大は小を兼ねる」ので、25Cタイヤでレースに使うこともできるでしょう。太いタイヤへのキャパシティはあっても、走りの良さを備えているからレース的な走りにも十分使えると思います。
チャプター2 KOKO
フレームサイズ:XXS・XS・S・M・L・XL
フォーク(2サイズ):XXS・XS・S (53 offset) 、M・L・XL (43 offset)
フレーム重量:1,139g +/- 3%(Mサイズ )
フォーク重量:420g +/- 3%(カット前)
シートポスト重量:135g +/- 3%(Mサイズ)
ハンドル/ステム(MANA):395g (100-420mm) +/- 3%(別売)
ヘッドセット:1.5” C2 Integrated System
推奨変速方式:機械式シフト、電動シフト、各社のグループセットを選択可能
タイヤクリアランス:32mm
ブレーキタイプ:ディスクのみ
ボトムブラケット:インターナル T47 (86.5)
スルーアクスル:FR 12x100mm、RR 12x142mm E-Thru M12x1.5mm
安全基準:EN ISO 4210:2014
UCI認定:UCI認証取得済
セット内容:フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト、スルーアクスル、クイックフィット・スペーサー
税込価格:¥415,580(Black)、¥427,350(Cobalt + Green)
MANAハンドルバー:税込価格:¥78,870
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
綾野 真(シクロワイアード編集部)
ロード、マウンテンバイク、シクロクロス、グラベル、ツーリングと多くのジャンルのサイクリングスポーツを趣味でも楽しむCW編集長。現在は山岳系ロングライドに傾倒し、グラベルとバイクパッキングを融合させたライドの計画に余念がない。チャプター2代表マイク・プライド氏とはニールプライド時代からの友人で、タイのステージレース「ツアー・オブ・フレンドシップ」を一緒に走った仲。過去すべてのバイクのインプレを担当し、最近グラベルバイクのチャプター2 AOを購入した。
リンク
Amazon.co.jp