2022/01/06(木) - 09:52
マヴィックのレーシングホイールの中核となるCOSMIC SLR 45 Disc。2022モデルでリム素材を一新することで30gの軽量化を実現し、その走りに磨きをかけた一作をインプレッション。
世界初の完組ホイールを世に問い、ロードバイク用ホイールの歴史を語るうえで欠かすことのできない存在となったマヴィック。その後、アルミリムからカーボンリムへ、ローハイトリムからディープリムへ、そしてリムブレーキからディスクブレーキへと、変遷するトレンドに合わせて、その時々に求められるプロダクトを作り続けてきた。
マヴィックは昨年にラインアップを大幅に整理し、カーボンモデルをCOSMIC、アルミモデルをKSYLIUM、そしてグレードを上からSLR、SL、Sと呼び分けることで、ホイールごとの立ち位置や役割がより分かりやすくなった。
その際、COSMICシリーズはリムを大幅にブラッシュアップ。形状自体は前作から大幅な変更はないNACAエアロプロファイル仕様で、ハイト45㎜、内幅19㎜、外幅26mmというスペックに、マヴィック独自のFORE CARBONテクノロジーを搭載した。
FORE CARBONとは、マヴィックがアルミリムで用いていたFOREテクノロジーをカーボンリムへと応用したもの。アルミリムではリムに直接スレッドを切り、専用ニップルと合わせたものだが、FORE CARBONではインサートをリム内部に接着することで同様の構造を実現した。
このFORE CARBONの採用により、リム外周部にニップルを通すための穴を開けずに済み、リム全体の剛性低下を防ぐことが可能に。結果として、従来品よりもリムのサイドウォールの厚みも不要となるため、トータルでの軽量化も実現できるという。
更に言えば、リムベッド側にホールがないため、チューブレステープが不要となるのも一つのメリット。軽量化や気密性の向上、ランニングコストの低減などが見込めるテープレス仕様は、ロードUST規格を提唱し、ロード用チューブレスシステムの普及に一役買ったマヴィックらしさが表れた部分でもあるだろう。
マヴィックの技術の粋が集められたCOSMICのカーボンリムだが、2022モデルにおいて素材が変更されることで、さらなる性能向上を果たしたという。従来の織カーボンからUDカーボンを採用したUD²リムラミネート仕様とされ、1本あたり15g、前後セットで30gの軽量化を実現。加速の鋭さやヒルクライム性能に直結するリム重量を大きく削減することに成功した。
更に、コスメティックとしても大きな変化となっており、これまでのマヴィックホイールとは一線を画したソリッドな雰囲気に。ハイエンドモデルのCOSMIC SLRは、グレードを示す"SLR"のロゴがブラックオンブラックで配置されつつ、一条のイエローラインが引かれるというシンプルなグラフィックで、どんなバイクにも似合いそうなデザインだ。また、日本限定モデルとして、黒地にホワイトで大きくマヴィックロゴが入れられるリミテッドエディションも展開されている(今回のインプレッションホイールはこのリミテッドエディション)。
今回のモデルチェンジにあたり、リム素材以外の変更は無い。ハブには、2クロス組のスポーク同士が接触しないようなデザインと左右のスポーク長が同一となるフランジ設計などを用い、剛性、耐久性、メンテナンス性が向上したインフィニティハブに、40Tのダブル面ラチェット式のインスタンドドライブ360フリーボディが組み込まれる。
スポークはマヴィックが特許を取得したオリジナルエアロスポークを採用。前後とも24本というディスブレーキホイールではスタンダードなスポーク数で、しっかりと制動力を受け止めつつ、高い耐久性と駆動効率、エアロダイナミクスを両立する。それでは、さっそくインプレッションに移ろう。
―インプレッション
「長距離ライドにぴったりの脚残りが良いホイール」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
ホイールとしてバランスが良いですよね。カタログスペック以上の走りの軽さがあって、上り、下り、平坦、地形を選ばずに気持ちよく走れるホイールですね。チューブレスシステムと絶妙なスポークテンションが相まって、とにかく乗り心地が良い。
21モデルからリムが変わって30g軽くなったということですが、ホイールの基本的な性格は変わっていません。踏み込みに対しては、いったんタメてからグンっと加速するようなフィーリングなので、非常に脚に優しいんです。
激しい加減速があるクリテリウムなどであればもっと瞬発的な反応を示すホイールが向いているでしょうが、おきなわやニセコのような長距離レースをはじめ、ロングライドやエンデューロといったイベントやブルべにこそぴったりの性格といえるでしょう。
軽くなったというリムについては、劇的に加速が良くなったとか登りが軽くなった、という変化は感じられませんでした。ただ、マヴィックがやや苦手としていた重量面にもしっかりアプローチしているという姿勢は好印象ですね。また、ユニディレクショナルとなったせいか、ヨレに強くなった気はします。そして、ある意味これが最大の変化でもありますが、マヴィックホイールでUDカーボンのルックスは非常に新鮮です。
最近は低価格なカーボンホイールも増えてきていて、COSMIC SLRはそれらと比べると高く感じるかもしれませんが、やっぱり造りが良いんですよね。
それはFORE CARBONを採用したテープレスのリムだったり、スポークとスポークが擦れないように考えられたハブのデザインだったり。マヴィックならではのこだわりが随所にあって、性能面はもちろんのこと所有欲も満たしてくれます。
また、チューブレスタイヤを運用するうえで、リムテープが不要なことや精度の高いリムプロファイルもうれしいポイントですね。どのタイヤブランドと組み合わせてもビードも上がりやすいし、エア漏れも少ない。チューブレスに興味はあるけれども一歩踏み出せない、という人にとってもオススメできる一本です。
「マヴィックらしい走りの軽さが特徴的なオールラウンドホイール」
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
素晴らしい乗り味のホイールですね。重量やリムハイトといったスペックだけ見るとそこまで突出したものはないのですが、そこは「走りが軽いマヴィック」と謳うだけあって、走ってみると非常に良い。
加速、スピードの伸び、反応性、全ての面で文句をつけづらいですね。この出来の良さの根源となっているのは、カーボンリムの素性の良さでしょう。もともとリムメーカーという出自を持つマヴィックらしい、かなりしっかりとした剛性感のリムに仕上がっています。
一方で、初心者の方だと速いけど疲れてしまう、という感じるかもしれません。高い剛性のリムに太めのエアロスポークを組み合わせているので、ある程度パワーがないと少し硬く感じることもあると思います。
それはダンシング時のフィーリングにも表れていて、自転車を一直線に倒すよりも、少し蛇行させるように振るほうがよどみなく進んでいきます。自分の脚力であれば35km/h前後での巡航が気持ち良くて、そこから踏んでいった時の伸びも素晴らしい。スプリントでの掛かりもいいので、レーサーも満足できると思います。
リムの硬さはコーナーでも効いていて、ぐっと倒しこんでもホイールがヨレないので、ラインがビシッと安定するんですよ。安定感という面では、横風にも強いですね。風が強く吹き付ける堤防上のコースでも気を遣わず走れましたから。
チューブレステープ不要というのもうれしいですよね。加えてタイヤを外さなくてもスポークを交換できるという点も、メカニック目線では有難いです。スポークの長さも統一されているということで、補修やメンテナンスという意味でも良く考えられたホイールだと思いますね。
カーボンホイールとしては、ちょうどド真ん中な価格帯ですし、一般的なユーザーからすればこれ以上のホイールはほぼ必要ないとも思います。一本でどこでも走りたいという方にはピッタリでしょうね。
マヴィック COSMIC SLR 45 DISC
リム:UD²リムラミネート
リムハイト:45mm
リム内幅:19mm
リム外幅:26mm
ハブ:インフィニティハブプラットフォーム
フリーボディ:ID360
スポーク:特許取得済みの楕円形エアロスポーク
重量:1440g
価格:286,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto AYANO
世界初の完組ホイールを世に問い、ロードバイク用ホイールの歴史を語るうえで欠かすことのできない存在となったマヴィック。その後、アルミリムからカーボンリムへ、ローハイトリムからディープリムへ、そしてリムブレーキからディスクブレーキへと、変遷するトレンドに合わせて、その時々に求められるプロダクトを作り続けてきた。
マヴィックは昨年にラインアップを大幅に整理し、カーボンモデルをCOSMIC、アルミモデルをKSYLIUM、そしてグレードを上からSLR、SL、Sと呼び分けることで、ホイールごとの立ち位置や役割がより分かりやすくなった。
その際、COSMICシリーズはリムを大幅にブラッシュアップ。形状自体は前作から大幅な変更はないNACAエアロプロファイル仕様で、ハイト45㎜、内幅19㎜、外幅26mmというスペックに、マヴィック独自のFORE CARBONテクノロジーを搭載した。
FORE CARBONとは、マヴィックがアルミリムで用いていたFOREテクノロジーをカーボンリムへと応用したもの。アルミリムではリムに直接スレッドを切り、専用ニップルと合わせたものだが、FORE CARBONではインサートをリム内部に接着することで同様の構造を実現した。
このFORE CARBONの採用により、リム外周部にニップルを通すための穴を開けずに済み、リム全体の剛性低下を防ぐことが可能に。結果として、従来品よりもリムのサイドウォールの厚みも不要となるため、トータルでの軽量化も実現できるという。
更に言えば、リムベッド側にホールがないため、チューブレステープが不要となるのも一つのメリット。軽量化や気密性の向上、ランニングコストの低減などが見込めるテープレス仕様は、ロードUST規格を提唱し、ロード用チューブレスシステムの普及に一役買ったマヴィックらしさが表れた部分でもあるだろう。
マヴィックの技術の粋が集められたCOSMICのカーボンリムだが、2022モデルにおいて素材が変更されることで、さらなる性能向上を果たしたという。従来の織カーボンからUDカーボンを採用したUD²リムラミネート仕様とされ、1本あたり15g、前後セットで30gの軽量化を実現。加速の鋭さやヒルクライム性能に直結するリム重量を大きく削減することに成功した。
更に、コスメティックとしても大きな変化となっており、これまでのマヴィックホイールとは一線を画したソリッドな雰囲気に。ハイエンドモデルのCOSMIC SLRは、グレードを示す"SLR"のロゴがブラックオンブラックで配置されつつ、一条のイエローラインが引かれるというシンプルなグラフィックで、どんなバイクにも似合いそうなデザインだ。また、日本限定モデルとして、黒地にホワイトで大きくマヴィックロゴが入れられるリミテッドエディションも展開されている(今回のインプレッションホイールはこのリミテッドエディション)。
今回のモデルチェンジにあたり、リム素材以外の変更は無い。ハブには、2クロス組のスポーク同士が接触しないようなデザインと左右のスポーク長が同一となるフランジ設計などを用い、剛性、耐久性、メンテナンス性が向上したインフィニティハブに、40Tのダブル面ラチェット式のインスタンドドライブ360フリーボディが組み込まれる。
スポークはマヴィックが特許を取得したオリジナルエアロスポークを採用。前後とも24本というディスブレーキホイールではスタンダードなスポーク数で、しっかりと制動力を受け止めつつ、高い耐久性と駆動効率、エアロダイナミクスを両立する。それでは、さっそくインプレッションに移ろう。
―インプレッション
「長距離ライドにぴったりの脚残りが良いホイール」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
ホイールとしてバランスが良いですよね。カタログスペック以上の走りの軽さがあって、上り、下り、平坦、地形を選ばずに気持ちよく走れるホイールですね。チューブレスシステムと絶妙なスポークテンションが相まって、とにかく乗り心地が良い。
21モデルからリムが変わって30g軽くなったということですが、ホイールの基本的な性格は変わっていません。踏み込みに対しては、いったんタメてからグンっと加速するようなフィーリングなので、非常に脚に優しいんです。
激しい加減速があるクリテリウムなどであればもっと瞬発的な反応を示すホイールが向いているでしょうが、おきなわやニセコのような長距離レースをはじめ、ロングライドやエンデューロといったイベントやブルべにこそぴったりの性格といえるでしょう。
軽くなったというリムについては、劇的に加速が良くなったとか登りが軽くなった、という変化は感じられませんでした。ただ、マヴィックがやや苦手としていた重量面にもしっかりアプローチしているという姿勢は好印象ですね。また、ユニディレクショナルとなったせいか、ヨレに強くなった気はします。そして、ある意味これが最大の変化でもありますが、マヴィックホイールでUDカーボンのルックスは非常に新鮮です。
最近は低価格なカーボンホイールも増えてきていて、COSMIC SLRはそれらと比べると高く感じるかもしれませんが、やっぱり造りが良いんですよね。
それはFORE CARBONを採用したテープレスのリムだったり、スポークとスポークが擦れないように考えられたハブのデザインだったり。マヴィックならではのこだわりが随所にあって、性能面はもちろんのこと所有欲も満たしてくれます。
また、チューブレスタイヤを運用するうえで、リムテープが不要なことや精度の高いリムプロファイルもうれしいポイントですね。どのタイヤブランドと組み合わせてもビードも上がりやすいし、エア漏れも少ない。チューブレスに興味はあるけれども一歩踏み出せない、という人にとってもオススメできる一本です。
「マヴィックらしい走りの軽さが特徴的なオールラウンドホイール」
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
素晴らしい乗り味のホイールですね。重量やリムハイトといったスペックだけ見るとそこまで突出したものはないのですが、そこは「走りが軽いマヴィック」と謳うだけあって、走ってみると非常に良い。
加速、スピードの伸び、反応性、全ての面で文句をつけづらいですね。この出来の良さの根源となっているのは、カーボンリムの素性の良さでしょう。もともとリムメーカーという出自を持つマヴィックらしい、かなりしっかりとした剛性感のリムに仕上がっています。
一方で、初心者の方だと速いけど疲れてしまう、という感じるかもしれません。高い剛性のリムに太めのエアロスポークを組み合わせているので、ある程度パワーがないと少し硬く感じることもあると思います。
それはダンシング時のフィーリングにも表れていて、自転車を一直線に倒すよりも、少し蛇行させるように振るほうがよどみなく進んでいきます。自分の脚力であれば35km/h前後での巡航が気持ち良くて、そこから踏んでいった時の伸びも素晴らしい。スプリントでの掛かりもいいので、レーサーも満足できると思います。
リムの硬さはコーナーでも効いていて、ぐっと倒しこんでもホイールがヨレないので、ラインがビシッと安定するんですよ。安定感という面では、横風にも強いですね。風が強く吹き付ける堤防上のコースでも気を遣わず走れましたから。
チューブレステープ不要というのもうれしいですよね。加えてタイヤを外さなくてもスポークを交換できるという点も、メカニック目線では有難いです。スポークの長さも統一されているということで、補修やメンテナンスという意味でも良く考えられたホイールだと思いますね。
カーボンホイールとしては、ちょうどド真ん中な価格帯ですし、一般的なユーザーからすればこれ以上のホイールはほぼ必要ないとも思います。一本でどこでも走りたいという方にはピッタリでしょうね。
マヴィック COSMIC SLR 45 DISC
リム:UD²リムラミネート
リムハイト:45mm
リム内幅:19mm
リム外幅:26mm
ハブ:インフィニティハブプラットフォーム
フリーボディ:ID360
スポーク:特許取得済みの楕円形エアロスポーク
重量:1440g
価格:286,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
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text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto AYANO
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