2022/01/01(土) - 12:36
カンパニョーロがリリースしたフラッグシップホイールBORA ULTRA WTO 45をインプレッション。技術の粋を結集したハイエンドモデルの真価に迫ろう。
1994年の登場以来プロ選手はもちろんアマチュアレーサーから絶大な支持を集めたカンパニョーロのBORA。最高峰のレーシングホイールはありとあらゆるレースで勝利を挙げたロード用レースモデルの金字塔だ。
BORAのラインアップには、エアロダイナミクス研究を反映したWTOシリーズが用意されたが、USBベアリングを搭載したモデルのみの展開で、最高峰グレードにあたるULTRAの座は3年間空いたままだった。
2021年、カンパニョーロは3年の開発を行ったULTRAグレードをついに発表した。リムハイト別に33、45、60という3種類を一気に揃え、ディスクブレーキ用レーシングホイールにカンパニョーロの存在感をアピールする。
WTOシリーズはWind Tunnel Optimizedという言葉の略通りエアロダイナミクスを考慮したリムシェイプが採用されていることが特徴。今作ではニップルが外側に露出しないAero Mo-Magテクノロジーを用いてエアロダイナミクスを向上させている。
Aero Mo-Magは付属の専用工具を使用すれば、タイヤを装着した状態でもテンション調整可能。エアロを追求するばかりではなく、ユーザビリティにも配慮しているのはありがたい仕様だ。
また、カンパニョーロのMo-Magはリムベッドにニップルホールを開ける必要がなく、リムの強度向上にも貢献。リムとニップルの間にガラス強化ポリマーを挟み込むことでも耐久性を向上させている。リムテープレスでチューブレスタイヤを運用できるのもユーザーフレンドリーな作りだろう。
リムとフロントハブのカーボン表面はC-LUXという鏡面仕上げが施されている。ラッカーを使用しないため軽量化に貢献するとともに、表面が滑らかになることでチューブレスタイヤの装着を容易にしているという。
ULTRAグレードは、セラミックボールとクロニテクトと呼ばれる硬質なステンレス・クロム・スチールをレース素材に採用したCULTベアリングなど究極のパーツが奢られていることも特徴だ。
スポークはエアロを意識した楕円断面のダブルバテッド・ストレートプル仕様で、前後G3スポーキングで組み上げる。フリーボディはカンパニョーロのN3W、シマノのHG、スラムのXDR。
今回インプレッションするのは45mmハイトのモデル。アルディナサイクラリーの成毛千尋とワイズロード お茶の水の小西真澄は、カンパニョーロのフラッグシップモデルをどう評価するのか。インプレッションにうつろう。
―インプレッション
「全ての性能が高い次元でバランスした高性能ホイール」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
すべての性能が高い次元でバランスしている万能レーシングホイールです。軽量性やエアロダイナミクスなど特別な何かが際立つことはないのですが、秀でた転がりの軽さのおかげであらゆる場面で性能を発揮してくれます。
乗る前までは前後G3スポーキングを訝しげに思っていましたが、乗ってみると全く違和感がなくホイールとして完成されていました。今までのBORAシリーズをブラッシュアップした正当進化を遂げたホイールというイメージがあります。
幾つかラインアップがある中で45mmハイトのモデルを試しましたが、このハイトは非常に扱いやすいと思います。上りでは軽快ですし、平坦ではエアロが効き、横風の影響も受けにくい。一本だけ持つならばこのホイールでしょう。
今回のテストは風が強い中で行いましたけど、実際に横風で危うい思いはしませんでしたね。上り坂でもがいても加速していくし、足を止めてもスピードが落ちにくく、優等生であると実感しましたし、文句の付け所がありません。
フランジまでカーボンのハブや特殊なニップルなど徹底的に作り込んでいることがうかがえますね。
リムテープレスの構造も好感がもてます。テープ由来のエア漏れなどは実際に起こりうることで、その可能性が無くなるだけでもサイクリストが自分で作業するハードルは低くなるでしょう。完成形とは言えないチューブレスタイヤを運用していく上で、テープレスというのは計り知れないメリットがあると思います。
最近のホイールの場合、フックレスが採用されることもありますが、ビードフックが採用されたオーソドックスな作りというのは、タイヤの選択肢が広いことなども含めてユーザーフレンドリーですよね。万人におすすめできるホイールだと思います。
「すべてが軽い、感動できるホイール」
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
久々に感動できるホイールに出会えました。まず何よりも軽い。重量もそうですし、走行感も軽快です。剛性感は高めですが脚に馴染みやすく、前後G3スポーキングのバランスの高さが表れていると感じます。
前後G3を初めて見た時は不安感がありましたけど、走ってみればそんなことは無いですし、BORA WTOシリーズが出てから2~3年経過してからULTRAが出ましたが、その間も研究が進んでいると感じられるほどバランスが取れています。
性能は登っていても楽しめるんですけど、BORA ULTRA WTO 45で感動するのは下りで脚を止めている時。ホイールによってはスピードが伸びないこともあるのですが、これは加速を続けてくれる印象があり、ホイールが前へ前へと進もうとしてくれるのが気持ち良いです。
巡航で最も気持ちよく走れるのは40km/hほどでしょう。サーキットエンデューロとかで更に高速域を伸ばしたい時はラインアップにある60mmハイトなどを選びたい。贅沢ですが週末のサイクリングに連れ出してもその性能を堪能できるはずです。
もし自分に最も良いホイールは何かとアドバイスを求められた時は、様々なスペックや設計を考えてもBORA ULTRA WTO 45をお勧めするかな。現代のスペックを抑えていて、なおかつ性能を追求したホイールとして位置づけても良いホイールだと思います。
カンパニョーロ BORA ULTRA WTO 45
リム素材:H.U.L.C UD high-strength carbon fibre, C-LUX finish
タイヤ適合性:2-Way Fit - Tubeless, tubeless-ready, clincher
リムハイト:45mm
内幅:19mm
外側:26.1mm
フロントハブ:Carbon body with integrated radial flange
リアハブ:Aluminium body, 36 tooth ratchet freehub、CULT™ ceramic, cup and cone
重量:1425g
価格:481,800円(税込、N3W)、482,900円(税込、HG、XDR)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
1994年の登場以来プロ選手はもちろんアマチュアレーサーから絶大な支持を集めたカンパニョーロのBORA。最高峰のレーシングホイールはありとあらゆるレースで勝利を挙げたロード用レースモデルの金字塔だ。
BORAのラインアップには、エアロダイナミクス研究を反映したWTOシリーズが用意されたが、USBベアリングを搭載したモデルのみの展開で、最高峰グレードにあたるULTRAの座は3年間空いたままだった。
2021年、カンパニョーロは3年の開発を行ったULTRAグレードをついに発表した。リムハイト別に33、45、60という3種類を一気に揃え、ディスクブレーキ用レーシングホイールにカンパニョーロの存在感をアピールする。
WTOシリーズはWind Tunnel Optimizedという言葉の略通りエアロダイナミクスを考慮したリムシェイプが採用されていることが特徴。今作ではニップルが外側に露出しないAero Mo-Magテクノロジーを用いてエアロダイナミクスを向上させている。
Aero Mo-Magは付属の専用工具を使用すれば、タイヤを装着した状態でもテンション調整可能。エアロを追求するばかりではなく、ユーザビリティにも配慮しているのはありがたい仕様だ。
また、カンパニョーロのMo-Magはリムベッドにニップルホールを開ける必要がなく、リムの強度向上にも貢献。リムとニップルの間にガラス強化ポリマーを挟み込むことでも耐久性を向上させている。リムテープレスでチューブレスタイヤを運用できるのもユーザーフレンドリーな作りだろう。
リムとフロントハブのカーボン表面はC-LUXという鏡面仕上げが施されている。ラッカーを使用しないため軽量化に貢献するとともに、表面が滑らかになることでチューブレスタイヤの装着を容易にしているという。
ULTRAグレードは、セラミックボールとクロニテクトと呼ばれる硬質なステンレス・クロム・スチールをレース素材に採用したCULTベアリングなど究極のパーツが奢られていることも特徴だ。
スポークはエアロを意識した楕円断面のダブルバテッド・ストレートプル仕様で、前後G3スポーキングで組み上げる。フリーボディはカンパニョーロのN3W、シマノのHG、スラムのXDR。
今回インプレッションするのは45mmハイトのモデル。アルディナサイクラリーの成毛千尋とワイズロード お茶の水の小西真澄は、カンパニョーロのフラッグシップモデルをどう評価するのか。インプレッションにうつろう。
―インプレッション
「全ての性能が高い次元でバランスした高性能ホイール」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
すべての性能が高い次元でバランスしている万能レーシングホイールです。軽量性やエアロダイナミクスなど特別な何かが際立つことはないのですが、秀でた転がりの軽さのおかげであらゆる場面で性能を発揮してくれます。
乗る前までは前後G3スポーキングを訝しげに思っていましたが、乗ってみると全く違和感がなくホイールとして完成されていました。今までのBORAシリーズをブラッシュアップした正当進化を遂げたホイールというイメージがあります。
幾つかラインアップがある中で45mmハイトのモデルを試しましたが、このハイトは非常に扱いやすいと思います。上りでは軽快ですし、平坦ではエアロが効き、横風の影響も受けにくい。一本だけ持つならばこのホイールでしょう。
今回のテストは風が強い中で行いましたけど、実際に横風で危うい思いはしませんでしたね。上り坂でもがいても加速していくし、足を止めてもスピードが落ちにくく、優等生であると実感しましたし、文句の付け所がありません。
フランジまでカーボンのハブや特殊なニップルなど徹底的に作り込んでいることがうかがえますね。
リムテープレスの構造も好感がもてます。テープ由来のエア漏れなどは実際に起こりうることで、その可能性が無くなるだけでもサイクリストが自分で作業するハードルは低くなるでしょう。完成形とは言えないチューブレスタイヤを運用していく上で、テープレスというのは計り知れないメリットがあると思います。
最近のホイールの場合、フックレスが採用されることもありますが、ビードフックが採用されたオーソドックスな作りというのは、タイヤの選択肢が広いことなども含めてユーザーフレンドリーですよね。万人におすすめできるホイールだと思います。
「すべてが軽い、感動できるホイール」
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
久々に感動できるホイールに出会えました。まず何よりも軽い。重量もそうですし、走行感も軽快です。剛性感は高めですが脚に馴染みやすく、前後G3スポーキングのバランスの高さが表れていると感じます。
前後G3を初めて見た時は不安感がありましたけど、走ってみればそんなことは無いですし、BORA WTOシリーズが出てから2~3年経過してからULTRAが出ましたが、その間も研究が進んでいると感じられるほどバランスが取れています。
性能は登っていても楽しめるんですけど、BORA ULTRA WTO 45で感動するのは下りで脚を止めている時。ホイールによってはスピードが伸びないこともあるのですが、これは加速を続けてくれる印象があり、ホイールが前へ前へと進もうとしてくれるのが気持ち良いです。
巡航で最も気持ちよく走れるのは40km/hほどでしょう。サーキットエンデューロとかで更に高速域を伸ばしたい時はラインアップにある60mmハイトなどを選びたい。贅沢ですが週末のサイクリングに連れ出してもその性能を堪能できるはずです。
もし自分に最も良いホイールは何かとアドバイスを求められた時は、様々なスペックや設計を考えてもBORA ULTRA WTO 45をお勧めするかな。現代のスペックを抑えていて、なおかつ性能を追求したホイールとして位置づけても良いホイールだと思います。
カンパニョーロ BORA ULTRA WTO 45
リム素材:H.U.L.C UD high-strength carbon fibre, C-LUX finish
タイヤ適合性:2-Way Fit - Tubeless, tubeless-ready, clincher
リムハイト:45mm
内幅:19mm
外側:26.1mm
フロントハブ:Carbon body with integrated radial flange
リアハブ:Aluminium body, 36 tooth ratchet freehub、CULT™ ceramic, cup and cone
重量:1425g
価格:481,800円(税込、N3W)、482,900円(税込、HG、XDR)
インプレッションライダーのプロフィール
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
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