2021/03/12(金) - 08:23
トスカーナの丘を走るティレーノ〜アドリアティコ第2ステージは終盤にかけてベルナルやアルメイダがアタックする刺激的な展開に。ファンデルプールとファンアールトを力で下したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がシーズン初勝利を飾った。
ティレーノ〜アドリアティコの一行は、ティレニア海に近いカマイオーレからトスカーナ州の内陸部へと舵を取る。大会2日目に目指すのは、5日前にストラーデビアンケの舞台となったシエナ近郊の丘陵地帯。未舗装区間は登場しないものの、高低差300mほどのアップダウンが連続するジェットコースターのようなレイアウトであり、距離202km/獲得標高差2400mのロングステージはキウズディーノの登りフィニッシュで締めくくられる。
標高522mのキウズディーノの町まで、残り7.7kmから平均3.6%の緩斜面が続き、残り1kmから先は平均5.4%。スプリンター向きでもなく、クライマー向きでもない丘陵ステージは、終盤にかけて総合争いの思惑も入り乱れる熱い展開を見せた。
2日連続逃げとなったマリアヴェルデのヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)と山岳賞3位のシモーネ・ヴェラスコ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ)を含む6名逃げは最大5分のリードを得たものの、ステージ後半のアップダウン区間に入るとタイム差は1分に。本来であれば「サガン向き」とされるステージだが、シーズン初戦でまだ調子が上がりきっていないペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は早々に脱落してしまう。第1ステージの集団スプリントでは11位に入ったサガンだったが、クラシックシーズンに向けて黄色信号が灯っている。
脱落した選手を置き去りにするためにユンボ・ヴィスマがハイペース牽引を継続すると、KOMポッジオ・アッラ・クローチェ(全長5.3km・平均6.5%)の登りで逃げは早くも吸収される。山岳ポイントを1ポイントも稼ぐことができないままアルバネーゼやヴェラスコがメイン集団に引き戻されるとすぐ、イネオス・グレナディアーズによる早めの攻撃が始まった。
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)のペースアップから飛び出したのは総合優勝候補の一角エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)だった。フィニッシュまで34kmも残したこの動きにはカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)とジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)だけが付いていく。
落ち着かないメイン集団からはマルク・ソレル(スペイン、モビスター)やセルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らが矢継ぎ早に飛び出し、先行していたベルナルらが引き戻されると今度はパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)がカウンターアタック。ここにディフェンディングチャンピオンのサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が追いついた。
各チームのエース&サブエース4名による先行。一方のメイン集団は2019年ツール・ド・ラヴニール覇者のトビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)とティモ・ルーセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)に牽引されたが、タイム差は15秒、20秒、30秒と広がりを見せて残り15km。ボーナスタイムが設定されたスプリントポイントはシヴァコフ、イェーツ、ランダ、アルメイダの順番で通過している。
タイム差20秒でフィニッシュ地点キウズディーノに向かう登り区間に入ると、ユンボ・ヴィスマに代わってようやくUAEチームエミレーツが集団牽引を開始した。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)、ラファウ・マイカ(ポーランド)、ヤン・ポランツ(スロベニア)の捨て身の引きで先行者4名との間合いを詰めていく。
タイム差10秒まで縮まった残り2kmで先頭からイェーツが遅れると、シヴァコフのアタックにカウンターを仕掛ける形でアルメイダが独走状態に。2020年ジロ・デ・イタリアで15日間マリアローザを着用し、総合4位に入った22歳のアルメイダが残り1kmアーチを切ってなおも独走。ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の強力な牽引を受けたメイン集団は、最終ストレートでアルメイダを射程圏内に捕らえた。
登りスプリントで一気に加速したのは、チームメイトのアルメイダが捕らえられると判断したアラフィリップだった。アルメイダを追い抜いたアラフィリップには、スリップストリームに入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)も、猛烈な勢いで迫りくるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)も届かない。早めに勝利を確信したため、あわやファンデルプールに差し切られる「アラフィリップらしさ」を見せながらも、世界チャンピオンが堂々の走りで登りフィニッシュを制した。
「サスペンスに満ちた、強度の高いフィナーレだった。チームとしてはジョアン・アルメイダが先行する理想的な展開で、ゲラント・トーマスが加速した時に『これは自分が行くタイミングだ』と判断したんだ」。チームメイトのチャンスを奪うとともに共倒れになりかねない難しい局面でも、アラフィリップは的確な判断で勝利を手にした。アラフィリップは今シーズン初勝利。ティレーノ〜アドリアティコでは2019年大会の2勝に続くステージ3勝目。
「レインボージャージを獲得したイタリアで、レインボージャージを着て勝利するのは格別だ。このジャージを着て勝利する難しさを身に染みているから、余計に今日の勝利は嬉しい。ミラノ〜サンレモも今日と同じような選手の戦いになるかもしれないけど、また別の話。今はまだ考えないようにしている」。2019年のミラノ〜サンレモ覇者は春の大一番に向けて順調な仕上がりを見せている。
アラフィリップとファンデルプールに先行されながらも、ステージ3位でボーナスタイムを獲得したファンアールトが海色の総合リーダージャージをキープ。「登りでアタックがかかる展開だったけど、何も心配していなかった。チームメイトたちに『できるだけ速く』メイン集団を引くように頼んで、確かにタイム差の縮まりは鈍かったけど、大きく先行されることもなかった。ジョアン・アルメイダが先頭で粘り続けたのでハードなスプリントになった」。ファンアールトは残り7.7kmからフィニッシュまでの平均3.6%の緩斜面を平均スピード35km/hで走破。残り1kmアーチから先、1分41秒間にわたって平均655W・最大1305Wを出力している。勾配5%ほどの登りスプリントの最高速は50km/hに達している。
ファンアールトの目標はティレーノ〜アドリアティコ総合優勝。「1週間程度のステージレースで総合の可能性を探りたい」と語っていたファンアールトは最終日まで総合リーダーの座を守りたい考えだ。「明日以降もコントロールが難しいレースが続くけど、(第5ステージの)短くて急な登りは自分向き。土曜日(第4ステージ)の長い登りはどうなるかわからない。UAEチームエミレーツやイネオス・グレナディアーズが山岳トレインを走らせると思うけど、今日のハードなステージをこなすことができたので、自信を持って挑みたい」。
イタリア半島を大きく横断する第3ステージは平坦基調。緩斜面の登りフィニッシュが設定されているが、難易度が低いためピュアスプリンターたちも勝負に絡んでくると予想される。
ティレーノ〜アドリアティコの一行は、ティレニア海に近いカマイオーレからトスカーナ州の内陸部へと舵を取る。大会2日目に目指すのは、5日前にストラーデビアンケの舞台となったシエナ近郊の丘陵地帯。未舗装区間は登場しないものの、高低差300mほどのアップダウンが連続するジェットコースターのようなレイアウトであり、距離202km/獲得標高差2400mのロングステージはキウズディーノの登りフィニッシュで締めくくられる。
標高522mのキウズディーノの町まで、残り7.7kmから平均3.6%の緩斜面が続き、残り1kmから先は平均5.4%。スプリンター向きでもなく、クライマー向きでもない丘陵ステージは、終盤にかけて総合争いの思惑も入り乱れる熱い展開を見せた。
2日連続逃げとなったマリアヴェルデのヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)と山岳賞3位のシモーネ・ヴェラスコ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ)を含む6名逃げは最大5分のリードを得たものの、ステージ後半のアップダウン区間に入るとタイム差は1分に。本来であれば「サガン向き」とされるステージだが、シーズン初戦でまだ調子が上がりきっていないペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は早々に脱落してしまう。第1ステージの集団スプリントでは11位に入ったサガンだったが、クラシックシーズンに向けて黄色信号が灯っている。
脱落した選手を置き去りにするためにユンボ・ヴィスマがハイペース牽引を継続すると、KOMポッジオ・アッラ・クローチェ(全長5.3km・平均6.5%)の登りで逃げは早くも吸収される。山岳ポイントを1ポイントも稼ぐことができないままアルバネーゼやヴェラスコがメイン集団に引き戻されるとすぐ、イネオス・グレナディアーズによる早めの攻撃が始まった。
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)のペースアップから飛び出したのは総合優勝候補の一角エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)だった。フィニッシュまで34kmも残したこの動きにはカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)とジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)だけが付いていく。
落ち着かないメイン集団からはマルク・ソレル(スペイン、モビスター)やセルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らが矢継ぎ早に飛び出し、先行していたベルナルらが引き戻されると今度はパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)がカウンターアタック。ここにディフェンディングチャンピオンのサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が追いついた。
各チームのエース&サブエース4名による先行。一方のメイン集団は2019年ツール・ド・ラヴニール覇者のトビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)とティモ・ルーセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)に牽引されたが、タイム差は15秒、20秒、30秒と広がりを見せて残り15km。ボーナスタイムが設定されたスプリントポイントはシヴァコフ、イェーツ、ランダ、アルメイダの順番で通過している。
タイム差20秒でフィニッシュ地点キウズディーノに向かう登り区間に入ると、ユンボ・ヴィスマに代わってようやくUAEチームエミレーツが集団牽引を開始した。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)、ラファウ・マイカ(ポーランド)、ヤン・ポランツ(スロベニア)の捨て身の引きで先行者4名との間合いを詰めていく。
タイム差10秒まで縮まった残り2kmで先頭からイェーツが遅れると、シヴァコフのアタックにカウンターを仕掛ける形でアルメイダが独走状態に。2020年ジロ・デ・イタリアで15日間マリアローザを着用し、総合4位に入った22歳のアルメイダが残り1kmアーチを切ってなおも独走。ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の強力な牽引を受けたメイン集団は、最終ストレートでアルメイダを射程圏内に捕らえた。
登りスプリントで一気に加速したのは、チームメイトのアルメイダが捕らえられると判断したアラフィリップだった。アルメイダを追い抜いたアラフィリップには、スリップストリームに入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)も、猛烈な勢いで迫りくるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)も届かない。早めに勝利を確信したため、あわやファンデルプールに差し切られる「アラフィリップらしさ」を見せながらも、世界チャンピオンが堂々の走りで登りフィニッシュを制した。
「サスペンスに満ちた、強度の高いフィナーレだった。チームとしてはジョアン・アルメイダが先行する理想的な展開で、ゲラント・トーマスが加速した時に『これは自分が行くタイミングだ』と判断したんだ」。チームメイトのチャンスを奪うとともに共倒れになりかねない難しい局面でも、アラフィリップは的確な判断で勝利を手にした。アラフィリップは今シーズン初勝利。ティレーノ〜アドリアティコでは2019年大会の2勝に続くステージ3勝目。
「レインボージャージを獲得したイタリアで、レインボージャージを着て勝利するのは格別だ。このジャージを着て勝利する難しさを身に染みているから、余計に今日の勝利は嬉しい。ミラノ〜サンレモも今日と同じような選手の戦いになるかもしれないけど、また別の話。今はまだ考えないようにしている」。2019年のミラノ〜サンレモ覇者は春の大一番に向けて順調な仕上がりを見せている。
アラフィリップとファンデルプールに先行されながらも、ステージ3位でボーナスタイムを獲得したファンアールトが海色の総合リーダージャージをキープ。「登りでアタックがかかる展開だったけど、何も心配していなかった。チームメイトたちに『できるだけ速く』メイン集団を引くように頼んで、確かにタイム差の縮まりは鈍かったけど、大きく先行されることもなかった。ジョアン・アルメイダが先頭で粘り続けたのでハードなスプリントになった」。ファンアールトは残り7.7kmからフィニッシュまでの平均3.6%の緩斜面を平均スピード35km/hで走破。残り1kmアーチから先、1分41秒間にわたって平均655W・最大1305Wを出力している。勾配5%ほどの登りスプリントの最高速は50km/hに達している。
ファンアールトの目標はティレーノ〜アドリアティコ総合優勝。「1週間程度のステージレースで総合の可能性を探りたい」と語っていたファンアールトは最終日まで総合リーダーの座を守りたい考えだ。「明日以降もコントロールが難しいレースが続くけど、(第5ステージの)短くて急な登りは自分向き。土曜日(第4ステージ)の長い登りはどうなるかわからない。UAEチームエミレーツやイネオス・グレナディアーズが山岳トレインを走らせると思うけど、今日のハードなステージをこなすことができたので、自信を持って挑みたい」。
イタリア半島を大きく横断する第3ステージは平坦基調。緩斜面の登りフィニッシュが設定されているが、難易度が低いためピュアスプリンターたちも勝負に絡んでくると予想される。
ティレーノ〜アドリアティコ2021第2ステージ結果
個人総合成績
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 8:37:35 |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:04 |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 0:00:08 |
4位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:11 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:13 |
6位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:00:14 |
7位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
9位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | アレクサンデル・アランブル(スペイン、アスタナ・プレミアテック) |
ポイント賞
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 20pts |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 12pts |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 10pts |
山岳賞
1位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 13pts |
2位 | ヤン・バークランツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 11pts |
3位 | シモーネ・ベラスコ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ) | 6pts |
ヤングライダー賞
1位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ) | 8:37:46 |
2位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 0:00:03 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
チーム総合成績
1位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 25:53:27 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | |
3位 | アスタナ・プレミアテック |
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse, CorVos
photo:LaPresse, CorVos
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