2020/01/22(水) - 16:24
落車で割れた集団による登りスプリントでカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が勝利。森林火災の被災地を訪れたツアー・ダウンアンダー第2ステージを制したユアンが総合首位に立った。新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はステージ20位。
ツアー・ダウンアンダー第2ステージのスタート地点は大会初登場のウッドサイドの町。アデレードヒルズに位置するウッドサイドは年末にかけてのブッシュファイヤー(森林火災)の大きな被害を受けた地域で、周辺には真っ黒焦げの丘や倒壊した家屋があちこちにある。
南オーストラリア州における一連のブッシュファイヤーによる死者は3名で、被災家屋は195棟、496,243ヘクタールが延焼した。隣接するヴィクトリア州では5名が死亡/387棟が被災、ニューサウスウェールズ州では21名が死亡/2305棟が被災している。
そんな被災地を走るステージはコース変更が予想されたものの、レース主催者は事前の発表通りのコースでの開催にGOサインを出した。南オーストラリア州の州知事スティーブン・マーシャル氏は「ウッドサイドがスタートを迎えるにあたって、これ以上の良いタイミングが見つからない。観客たちには、南オーストラリア州を代表するワインをはじめ、被災した地域の特産品を楽しんでもらいたい」とコメント。多くのチームや選手、ブランドが積極的に寄付金を募るチャリティー活動を実施するなど、サイクリングがブッシュファイヤーに寄り添っている。
全長135.8kmのステージ後半に登場するのは、スターリングを起点とする毎年恒例の「ヒルズサーキット」。アップダウンが連続し、残り7kmから3%ほどの勾配が続く21kmの周回コースは、長年大会ディレクターを務めるマイク・ターター氏の言葉を借りると「スプリンターにもオールラウンダーにもチャンスがある、とても白熱したレースが期待できるコース」で、過去の優勝者リストにはパンチャーとスプリンターの名前が入り混じる。なお、ターター氏は2020年をもってディレクターの職を退き、2021年からはスチュアート・オグレディ氏がオーストラリア最大のステージレースの指揮を取ることが決まっている。
真っ黒に炭化した木々に覆われた1回目のKOMクアリーロード(15.5km地点)に向けてスタート直後に飛び出したのは2名。ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)が山岳賞ジャージを着るための2日連続のエスケープを試み、食らいつくサムエル・ジェナー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)を振り切って1回目のKOMクアリーロードを先頭通過する。遅れて追いついたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)とオメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・スタートアップネイション)を加えた先頭4名による逃げが始まった。
山岳ポイントを量産して山岳賞ジャージ着用を決めたロスコフら4名は、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団から3分程度のリードを得た状態でステージ後半へと入っていく。スターリングの「ヒルズサーキット」に入るとデヴリーズが独走に持ち込んだものの、最終周回を前にした残り25km地点で集団は139名の大きな塊に戻った。
ローラーコースターに形容される「ヒルズサーキット」の最終周回を、総合狙いのチームが率いるメイン集団が高速で駆け抜けた。パンクに見舞われたローハン・デニス(オーストラリア、チームイネオス)はルーク・ロウ(イギリス)のアシストを受けて集団に復帰。残り7kmを切ってフィニッシュまでの登りが始まると、EFプロサイクリングやボーラ・ハンスグローエ、チームイネオス、そしてミッチェルトン・スコットがさらにメイン集団のペースを上げた。
熾烈なポジション争いを伴うペースアップによってロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)が脱落し、はすって落車する選手や路肩に弾き出される選手が続出。ミッチェルトン・スコットの強力なペースによって人数を減らす集団前方では、残り1kmアーチを前に大きな落車が発生した。
リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ラファエル・バルス(スペイン、バーレーン・マクラーレン)ら多くの選手がこの落車に巻き込まれ、30名弱の選手が先行してスプリントへ。
トレインを組んだミッチェルトン・スコットが主導権を握り、オーストラリアチャンピオンのキャメロン・マイヤー(オーストラリア)がダリル・インピー(南アフリカ)を解き放つ。その一方で「残り200mまでは良かった。行けると思ったけど、サドルから腰を上げて加速しようと思ったら何も残っていなかった」と語るリーダージャージのサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)は好位置につけながらも失速する。
勝ちパターンに持ち込んだと思われたインピーだったが、ベネットの番手につけていたユアンの加速が他を圧倒した。肩を落とすベネットの後ろから加速し、先行したインピーを撃ち落としたユアンが勝利。多くのピュアスプリンターが脱落した集団スプリントで、ユアンの加速力は際立っていた。
「昨日の敗北を経て、1時間かけてミーティングしてスプリントの手順を確認したんだ。そして今日、チームメイトたちは完璧な仕事ぶりをしてくれた。今日のタフなステージで優勝を狙うにはチームワークが欠かせないと分かっていたので、彼らの助けが必要だった。結果、望んだ通りの完璧なポジションからスプリントできた」。3日前のシュワルベクラシックを制したユアンが今シーズン初勝利をマーク。ベネットがステージ13位に沈んだため、ユアンがリーダージャージも同時に手にした。
「スプリントになるか、それともダリル(インピー)のような選手に有利な展開になるのか計りかねるステージ。今日のリザルトを見てもらったらわかるけど、脚質が混ざり合う結果になった。パンチャーの選手と、自分のようなピュアスプリンターが競り合う、本当にエキサイティングなレイアウトだと思う」。ユアンはリーダージャージを着て第3ステージに挑むが、KOMパラコームの山頂フィニッシュでリードを守れないことは本人も認めている。
「今日は中間スプリントを狙わずにフィニッシュに集中することにした」と語るインピーがステージ2位に入ってボーナスタイム6秒を獲得。第1ステージの中間スプリントで3秒を稼いでいるインピーはライバルたちから9秒のリードを得ている状態。「今日のボーナスタイム6秒は大きい。例年以上に調子の良い選手が揃っている印象の今年の大会で、クライマーたちから9秒のリードはナイスだ。でも明日はクイーンステージでは9秒以上のタイムを失うこともあり得る」。大会3連覇に向けて調子の良さを見せたがインピーだが、その一方で残り1km手前の落車に巻き込まれたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が左膝を負傷するという悪いニュースも入っている。
先頭集団の後方でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はステージ20位。新城は「ラファ(バルス)のタイムの扱いがどうなるか。登りフィニッシュなので(3kmルール適用されて)救済されるかどうかわからない」と、自身のステージ成績ではなく落車の影響で大きく遅れたエースの成績について気を揉んでいたが、残り3kmルールの適用によってバルスには同タイムが与えられている。
「ペースが上がったのは最終周回だけ。ものすごく速くてスピードを見ることもできなかった」という新城の言葉通り、最終周回のラップタイムは例年より1〜2分早く、平均スピードは2km/hほど速かった。2016年の最終周回のラップタイムが29分50秒(平均スピード43.0km/h)、2018年は29分11秒(平均44.0km/h)だったのに対し、2020年のラップタイムは27分49秒(平均スピード46.1km/h)だった。
ツアー・ダウンアンダー第2ステージのスタート地点は大会初登場のウッドサイドの町。アデレードヒルズに位置するウッドサイドは年末にかけてのブッシュファイヤー(森林火災)の大きな被害を受けた地域で、周辺には真っ黒焦げの丘や倒壊した家屋があちこちにある。
南オーストラリア州における一連のブッシュファイヤーによる死者は3名で、被災家屋は195棟、496,243ヘクタールが延焼した。隣接するヴィクトリア州では5名が死亡/387棟が被災、ニューサウスウェールズ州では21名が死亡/2305棟が被災している。
そんな被災地を走るステージはコース変更が予想されたものの、レース主催者は事前の発表通りのコースでの開催にGOサインを出した。南オーストラリア州の州知事スティーブン・マーシャル氏は「ウッドサイドがスタートを迎えるにあたって、これ以上の良いタイミングが見つからない。観客たちには、南オーストラリア州を代表するワインをはじめ、被災した地域の特産品を楽しんでもらいたい」とコメント。多くのチームや選手、ブランドが積極的に寄付金を募るチャリティー活動を実施するなど、サイクリングがブッシュファイヤーに寄り添っている。
全長135.8kmのステージ後半に登場するのは、スターリングを起点とする毎年恒例の「ヒルズサーキット」。アップダウンが連続し、残り7kmから3%ほどの勾配が続く21kmの周回コースは、長年大会ディレクターを務めるマイク・ターター氏の言葉を借りると「スプリンターにもオールラウンダーにもチャンスがある、とても白熱したレースが期待できるコース」で、過去の優勝者リストにはパンチャーとスプリンターの名前が入り混じる。なお、ターター氏は2020年をもってディレクターの職を退き、2021年からはスチュアート・オグレディ氏がオーストラリア最大のステージレースの指揮を取ることが決まっている。
真っ黒に炭化した木々に覆われた1回目のKOMクアリーロード(15.5km地点)に向けてスタート直後に飛び出したのは2名。ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)が山岳賞ジャージを着るための2日連続のエスケープを試み、食らいつくサムエル・ジェナー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)を振り切って1回目のKOMクアリーロードを先頭通過する。遅れて追いついたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)とオメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・スタートアップネイション)を加えた先頭4名による逃げが始まった。
山岳ポイントを量産して山岳賞ジャージ着用を決めたロスコフら4名は、ドゥクーニンク・クイックステップ率いるメイン集団から3分程度のリードを得た状態でステージ後半へと入っていく。スターリングの「ヒルズサーキット」に入るとデヴリーズが独走に持ち込んだものの、最終周回を前にした残り25km地点で集団は139名の大きな塊に戻った。
ローラーコースターに形容される「ヒルズサーキット」の最終周回を、総合狙いのチームが率いるメイン集団が高速で駆け抜けた。パンクに見舞われたローハン・デニス(オーストラリア、チームイネオス)はルーク・ロウ(イギリス)のアシストを受けて集団に復帰。残り7kmを切ってフィニッシュまでの登りが始まると、EFプロサイクリングやボーラ・ハンスグローエ、チームイネオス、そしてミッチェルトン・スコットがさらにメイン集団のペースを上げた。
熾烈なポジション争いを伴うペースアップによってロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)が脱落し、はすって落車する選手や路肩に弾き出される選手が続出。ミッチェルトン・スコットの強力なペースによって人数を減らす集団前方では、残り1kmアーチを前に大きな落車が発生した。
リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ラファエル・バルス(スペイン、バーレーン・マクラーレン)ら多くの選手がこの落車に巻き込まれ、30名弱の選手が先行してスプリントへ。
トレインを組んだミッチェルトン・スコットが主導権を握り、オーストラリアチャンピオンのキャメロン・マイヤー(オーストラリア)がダリル・インピー(南アフリカ)を解き放つ。その一方で「残り200mまでは良かった。行けると思ったけど、サドルから腰を上げて加速しようと思ったら何も残っていなかった」と語るリーダージャージのサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)は好位置につけながらも失速する。
勝ちパターンに持ち込んだと思われたインピーだったが、ベネットの番手につけていたユアンの加速が他を圧倒した。肩を落とすベネットの後ろから加速し、先行したインピーを撃ち落としたユアンが勝利。多くのピュアスプリンターが脱落した集団スプリントで、ユアンの加速力は際立っていた。
「昨日の敗北を経て、1時間かけてミーティングしてスプリントの手順を確認したんだ。そして今日、チームメイトたちは完璧な仕事ぶりをしてくれた。今日のタフなステージで優勝を狙うにはチームワークが欠かせないと分かっていたので、彼らの助けが必要だった。結果、望んだ通りの完璧なポジションからスプリントできた」。3日前のシュワルベクラシックを制したユアンが今シーズン初勝利をマーク。ベネットがステージ13位に沈んだため、ユアンがリーダージャージも同時に手にした。
「スプリントになるか、それともダリル(インピー)のような選手に有利な展開になるのか計りかねるステージ。今日のリザルトを見てもらったらわかるけど、脚質が混ざり合う結果になった。パンチャーの選手と、自分のようなピュアスプリンターが競り合う、本当にエキサイティングなレイアウトだと思う」。ユアンはリーダージャージを着て第3ステージに挑むが、KOMパラコームの山頂フィニッシュでリードを守れないことは本人も認めている。
「今日は中間スプリントを狙わずにフィニッシュに集中することにした」と語るインピーがステージ2位に入ってボーナスタイム6秒を獲得。第1ステージの中間スプリントで3秒を稼いでいるインピーはライバルたちから9秒のリードを得ている状態。「今日のボーナスタイム6秒は大きい。例年以上に調子の良い選手が揃っている印象の今年の大会で、クライマーたちから9秒のリードはナイスだ。でも明日はクイーンステージでは9秒以上のタイムを失うこともあり得る」。大会3連覇に向けて調子の良さを見せたがインピーだが、その一方で残り1km手前の落車に巻き込まれたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が左膝を負傷するという悪いニュースも入っている。
先頭集団の後方でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はステージ20位。新城は「ラファ(バルス)のタイムの扱いがどうなるか。登りフィニッシュなので(3kmルール適用されて)救済されるかどうかわからない」と、自身のステージ成績ではなく落車の影響で大きく遅れたエースの成績について気を揉んでいたが、残り3kmルールの適用によってバルスには同タイムが与えられている。
「ペースが上がったのは最終周回だけ。ものすごく速くてスピードを見ることもできなかった」という新城の言葉通り、最終周回のラップタイムは例年より1〜2分早く、平均スピードは2km/hほど速かった。2016年の最終周回のラップタイムが29分50秒(平均スピード43.0km/h)、2018年は29分11秒(平均44.0km/h)だったのに対し、2020年のラップタイムは27分49秒(平均スピード46.1km/h)だった。
ツアー・ダウンアンダー2020第2ステージ結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 3:27:31 |
2位 | ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) | |
3位 | ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス) | |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | ファビオ・フェリーネ(イタリア、アスタナ) | |
6位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール) | |
7位 | ティモ・ルーセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
8位 | ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) | |
9位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ) | |
13位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
20位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) |
個人総合成績
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 6:56:15 |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:01 |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | 0:00:04 |
5位 | ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス) | 0:00:05 |
6位 | ジャラッド・ドリズナーズ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) | 0:00:07 |
7位 | ディラン・サンダーランド(オーストラリア、NTTプロサイクリング) | 0:00:08 |
8位 | クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) | |
9位 | ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ) | 0:00:10 |
29位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) |
その他の特別賞
ポイント賞 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) |
山岳賞 | ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム) |
ヤングライダー賞 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) |
チーム総合成績 | UAEチームエミレーツ |
ステージ敢闘賞 | ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) |
text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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