2010/03/05(金) - 20:50
昨日の西谷泰治(愛三工業)のステージ優勝の余韻残るなか迎えたツール・ド・ランカウイ第5ステージ。しかし今日のステージはアヌアル・マナン(クムサン・ジンセン・アジア)がマレーシア人として初の優勝を遂げた。アジア人スプリンターの活躍が続く現地からレポートします。
世界を駆け巡った西谷のスプリント勝利のニュースから一夜、今日もまた平坦ステージのツール・ド・ランカウイ2010。ただし、翌第6ステージに超級山岳ゲンティンハイランドの控える今日は、111.5kmと距離は短め。このことがレースの展開にどう影響するか。
スタート地点の愛三工業レーシングチームは、さりとて浮き足立つこともなくスタートを待つ。でも昨日までとは選手の表情がちょっと違う。昨日の優勝は選手やスタッフにとって、ただの一勝以上に大きな意味がある。今や日本中のファンの視線が今日のステージに注がれていることに、選手は無関心でいられないだろう。
愛三工業のレースを支えるスタッフのひとりにアシスタントの渡会菜々(わたらい・なな)さんがいる。今年から正式にチームの一員に加わった菜々さんは、以前より全日本チームのアジアでのレースの通訳やコーディネートに活躍してきた。とにかく明るいキャラクターと堪能な語学力で、大会関係者、他チームの関係者とも親しい。
チームのアシスタントとは、どんな仕事なのだろう?「話し出したら夜中までかかりますよ」、と笑いながら応えてくれた。
菜々さん 「このランカウイはチームに正式に加入して初のレースなので、できるだけいい流れを作りたいな、と思っています。それと去年よりも(昨年も愛三チームに帯同した)スタッフとも選手とも近い関係を作れるように今年からやっています。選手たちの沖縄自主合宿に自主応援に行ったり。
仕事の内容ですか? なんでもですね。全スタッフのサポートと、全選手のサポート。いわばスキマ産業です(笑)。あとは海外とやりとりをしたり。ランカウイの招待状をもらうのに、いかに選手たちがこのレースに出たがっているかということを伝えるか、いろいろ考えました。招待状が出るまでは緊張しましたね。選手がそれを目標に頑張っているのを見ているだけに。
この仕事の喜びはいろいろあります。他のチームに「アイサン」って覚えてもらってきていること。昔は「アジアン」なんて言われましたから(笑)。あとは選手たちがその国とか文化とか人とかにオープンになってきて、コミュニケーションを楽しんでいる姿を見られるのは嬉しいですね。もちろん最後は、内容も含めていい結果が出ることが嬉しいですね」
流れにのるチームに、もうひとつ朗報があった。愛三工業が企画する観戦ツアーで、日本人ファンが応援に現地に駆けつけたのだ。昨日の西谷の優勝で誰もが愛三を知る今とあって、大きな日の丸を背負うその姿に現場の注目度も高い。台湾人フォトグラファーは「はるばる日本から駆けつけたのかい?すごいね!」と驚いていた。
愛三チームの脇を通りがかった福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)が西谷を見つけ、祝福する。福島自身、ランカウイのステージ優勝経験をもつだけに、その勝利がどれだけ重いものかはよくわかっている。自身は出場を断念したが、福島の新チームは目覚ましい活躍を見せている。
クムサン・ジンセン・アジア。今大会は日本・韓国・タイ・シンガポール・マレーシアの5カ国の選手で編成される。いま出場している5人全員の国籍が違うという、アジアのレースでは珍しい多国籍チームだ。そしてチームのエースを務めるのが、マレーシアの期待を一身に背負う若きスプリンター、アヌアル・マナンだ。
ランカウイ初日からスプリント賞ジャージとベストアジアンライダージャージを獲得したマナン。チームの初戦としては申し分無いデビューとなった。福島曰く、「すごく調子良くいってますね。最初から結果が出せたので、チームのスポンサーも喜んでくれています。すでに他のレースからもお声がかかってきていて、とてもいい流れですね。
チームの目標はマナンで区間優勝すること。五十嵐はチームのキャプテンとしてまとめ役を任せています。僕がいないことでかえって責任を感じながら走っているので、彼にとってもいい経験になるはずです」
マナンはここまでの3つの集団スプリントで4位、4位、6位。安定して集団スプリントの前方にこそ顔を見せるが、あと一歩のところで勝利に届かない。取れる中間スプリントポイントを積極的に狙って行く走りが功を奏して、昨日までポイント賞とアジア人最高賞のダブルタイトルを維持して来たが、ゴールでポイントを稼ぐマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)にとうとうスプリントジャージを奪取されてしまった。
今大会、マレーシア国民の声援は大部分がマナンに向けられているように聞こえる。昨年は目立った成績が上げられなかったマナンにとって、母国開催でシーズン初戦のこのビッグレースは最大の目標だ。
今日は愛三の観戦ツアーの皆さんにご一緒。といっても、距離が短くフィードゾーンの設定されない平坦ステージ、スタートを出てからはひたすらにゴールに向かう道中だ。応援に駆けつけた中根賢二ジェネラルマネージャーに、愛三工業レーシングチームの今を聞く。
中根賢二GM 「チームで走っているのは6人だけど、その裏にはたくさんのスタッフやサポーター、ファンのみなさんがいて愛三がある。そういういろんな人たちの支えが、昨日のステージの結果につながったと思います。ナショナルチームとしてランカウイに参戦した選手はいますが、今回、愛三がチームとして出場したことはとても重要なことです。今後のビジョンである、アジアを代表するチーム、アジアで愛されるチームになるという目標の第一歩が踏み出せました」
自転車ロードレースの観戦ツアーというのは、ツール・ド・フランス以外にはなかなか日本ではお目にかかれないのが現状だ。ステージレースは思いのほか移動が多く、選手を見るチャンスを得ることはなかなか難しいのだ。ただ日本のチームが出場するレースとなれば、観戦へ行きたくなるのは当然だ。
ゴール地点で選手の到着を待つツアー参加者の中から、夫妻でやってきた谷口夫妻にツアー参加のいきさつを聞くと、「twitterで別府匠選手とフミ(別府史之)のやりとりを見てたら、『HISもいいツアーをやるね』っていうのがあって、それを見てすぐにHISに電話しました(笑)」と奥さま。
「我々は今名古屋にいて、愛三のお膝元だしこれは応援するしかない、と。ランカウイ島には何回も行ったことがあるので、またマレーシアには行きたいと思っていたところでこのツアー。いろいろいい偶然が重なって、行くことを決めました」と旦那さま。
愛三サポーターが見守る中、いよいよ集団がゴールに迫ってくる。平坦ステージの華、今大会4度目の集団スプリント。西谷の白いジャージを再び来ることを、少しの緊張を持って待ち構える。
だが今日のスプリントの主役は、もう一人のアジア人スプリンターだった。迷わず集団のど真ん中を選択し、そのまま力で押し切るスプリント。アジア人最高位の青いジャージが手を上げる。マレーシアが待望したマナンの勝利だ。
ゴールの瞬間、カメラマンエリアのマレーシア人フォトグラファーたちからは「やった!」「よっしゃ!」というような歓声が上がった。僕が昨日味わった喜びを、今日は会場中が味わっているようだ。
今日の愛三は、ゴール前で進路を断たれてしまったようだ。悔しいが、レースはいつだって難しく、容易に勝てるものではない。だからこそ誰もが勝利の味に酔うのだが。
リードアウトマン、盛一大に今日のスプリントを振り返ってもらう。
盛 「今日は、完璧ではないですが昨日よりもうまくラインが取れたんですけど、発射のタイミングが、集団の流れに埋まってつかめずに不発、というところです。ただ全員でちゃんと形がつくれたので、逆にラインが空いていればいい感じで行けたと思います。展開とタイミングだけの問題なので、今日の問題をうまく生かして次につなげます」
結果こそ出なかったが、愛三のスプリント列車は機能している。昨日の勝利の流れが、今日の順位だけで切れてしまったと判断するのは早計だ。ランカウイの舞台で集団スプリントが見られる機会は最終ステージだけとなってしまったが、テクニカルなクリテリウムで愛三の列車と西谷のスプリントが見られるのが今から楽しみだ。
そして昨日、西谷が開けた扉に続いたマナン。アジア人スプリンターの可能性を充分に感じさせたこの2日間だ。連日のアジア人の勝者に、これからのサイクルロードレースシーンの将来を見ることは早計ではあるまい。
マナンは語る。「とても幸せだ。いつでも応援してくれたマレーシアの人々に感謝したい。マレーシアの自転車チームにとっても、そして僕のために力を尽くしてくれたチームメイトのために僕は勝たなきゃいけなかったんだ。(ポイント賞の)グリーンジャージを守りたい。(マイケル・)マシューズはとても強いスプリンターだから注意が必要だけど。結果の出なかった2009年の反省から、かなりトレーニングを積んでこのランカウイに臨んだ。チームも良いし、マネージャーも良くなった。レースの戦略というものを学んだし、昨年より向上していると思う」
明日のレースは文字通り、山場となる。超級山岳ゲンティンハイランド。ここまで火花散るスプリンターの競演の影に隠れていた総合狙いのクライマーがレースの最前線にデビューする。ここまでチームのために走り消耗もひとしおであろうが、日本の誇るクライマー、別府匠の活躍に期待したい。
昨日のステージ終了時に、感極まった日本人メディアは涙を流したという。それを見たフランス人ジャーナリストがからかい半分に、僕らのクルマのマレーシア人ドライバーに「彼は昨日泣いたんだよ。自分の国の選手が勝ったから。でも君はマナンが勝ったって泣きはしないだろう?」と聞くと、彼は、
「いや、マナンの勝利を聞いて他のスタッフと抱き合って喜んでたら、涙が出たよ」と大真面目な顔で語るのだった。
ロードレースはいつだってエモーショナルなものだ。
愛三工業レーシングチームのホームページ内にツール・ド・ランカウイ2010特集サイトが特設されています。愛三の選手の戦いぶりはこちらでもご覧ください。
text&photo:Yufta Omata
世界を駆け巡った西谷のスプリント勝利のニュースから一夜、今日もまた平坦ステージのツール・ド・ランカウイ2010。ただし、翌第6ステージに超級山岳ゲンティンハイランドの控える今日は、111.5kmと距離は短め。このことがレースの展開にどう影響するか。
スタート地点の愛三工業レーシングチームは、さりとて浮き足立つこともなくスタートを待つ。でも昨日までとは選手の表情がちょっと違う。昨日の優勝は選手やスタッフにとって、ただの一勝以上に大きな意味がある。今や日本中のファンの視線が今日のステージに注がれていることに、選手は無関心でいられないだろう。
愛三工業のレースを支えるスタッフのひとりにアシスタントの渡会菜々(わたらい・なな)さんがいる。今年から正式にチームの一員に加わった菜々さんは、以前より全日本チームのアジアでのレースの通訳やコーディネートに活躍してきた。とにかく明るいキャラクターと堪能な語学力で、大会関係者、他チームの関係者とも親しい。
チームのアシスタントとは、どんな仕事なのだろう?「話し出したら夜中までかかりますよ」、と笑いながら応えてくれた。
菜々さん 「このランカウイはチームに正式に加入して初のレースなので、できるだけいい流れを作りたいな、と思っています。それと去年よりも(昨年も愛三チームに帯同した)スタッフとも選手とも近い関係を作れるように今年からやっています。選手たちの沖縄自主合宿に自主応援に行ったり。
仕事の内容ですか? なんでもですね。全スタッフのサポートと、全選手のサポート。いわばスキマ産業です(笑)。あとは海外とやりとりをしたり。ランカウイの招待状をもらうのに、いかに選手たちがこのレースに出たがっているかということを伝えるか、いろいろ考えました。招待状が出るまでは緊張しましたね。選手がそれを目標に頑張っているのを見ているだけに。
この仕事の喜びはいろいろあります。他のチームに「アイサン」って覚えてもらってきていること。昔は「アジアン」なんて言われましたから(笑)。あとは選手たちがその国とか文化とか人とかにオープンになってきて、コミュニケーションを楽しんでいる姿を見られるのは嬉しいですね。もちろん最後は、内容も含めていい結果が出ることが嬉しいですね」
流れにのるチームに、もうひとつ朗報があった。愛三工業が企画する観戦ツアーで、日本人ファンが応援に現地に駆けつけたのだ。昨日の西谷の優勝で誰もが愛三を知る今とあって、大きな日の丸を背負うその姿に現場の注目度も高い。台湾人フォトグラファーは「はるばる日本から駆けつけたのかい?すごいね!」と驚いていた。
愛三チームの脇を通りがかった福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)が西谷を見つけ、祝福する。福島自身、ランカウイのステージ優勝経験をもつだけに、その勝利がどれだけ重いものかはよくわかっている。自身は出場を断念したが、福島の新チームは目覚ましい活躍を見せている。
クムサン・ジンセン・アジア。今大会は日本・韓国・タイ・シンガポール・マレーシアの5カ国の選手で編成される。いま出場している5人全員の国籍が違うという、アジアのレースでは珍しい多国籍チームだ。そしてチームのエースを務めるのが、マレーシアの期待を一身に背負う若きスプリンター、アヌアル・マナンだ。
ランカウイ初日からスプリント賞ジャージとベストアジアンライダージャージを獲得したマナン。チームの初戦としては申し分無いデビューとなった。福島曰く、「すごく調子良くいってますね。最初から結果が出せたので、チームのスポンサーも喜んでくれています。すでに他のレースからもお声がかかってきていて、とてもいい流れですね。
チームの目標はマナンで区間優勝すること。五十嵐はチームのキャプテンとしてまとめ役を任せています。僕がいないことでかえって責任を感じながら走っているので、彼にとってもいい経験になるはずです」
マナンはここまでの3つの集団スプリントで4位、4位、6位。安定して集団スプリントの前方にこそ顔を見せるが、あと一歩のところで勝利に届かない。取れる中間スプリントポイントを積極的に狙って行く走りが功を奏して、昨日までポイント賞とアジア人最高賞のダブルタイトルを維持して来たが、ゴールでポイントを稼ぐマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)にとうとうスプリントジャージを奪取されてしまった。
今大会、マレーシア国民の声援は大部分がマナンに向けられているように聞こえる。昨年は目立った成績が上げられなかったマナンにとって、母国開催でシーズン初戦のこのビッグレースは最大の目標だ。
今日は愛三の観戦ツアーの皆さんにご一緒。といっても、距離が短くフィードゾーンの設定されない平坦ステージ、スタートを出てからはひたすらにゴールに向かう道中だ。応援に駆けつけた中根賢二ジェネラルマネージャーに、愛三工業レーシングチームの今を聞く。
中根賢二GM 「チームで走っているのは6人だけど、その裏にはたくさんのスタッフやサポーター、ファンのみなさんがいて愛三がある。そういういろんな人たちの支えが、昨日のステージの結果につながったと思います。ナショナルチームとしてランカウイに参戦した選手はいますが、今回、愛三がチームとして出場したことはとても重要なことです。今後のビジョンである、アジアを代表するチーム、アジアで愛されるチームになるという目標の第一歩が踏み出せました」
自転車ロードレースの観戦ツアーというのは、ツール・ド・フランス以外にはなかなか日本ではお目にかかれないのが現状だ。ステージレースは思いのほか移動が多く、選手を見るチャンスを得ることはなかなか難しいのだ。ただ日本のチームが出場するレースとなれば、観戦へ行きたくなるのは当然だ。
ゴール地点で選手の到着を待つツアー参加者の中から、夫妻でやってきた谷口夫妻にツアー参加のいきさつを聞くと、「twitterで別府匠選手とフミ(別府史之)のやりとりを見てたら、『HISもいいツアーをやるね』っていうのがあって、それを見てすぐにHISに電話しました(笑)」と奥さま。
「我々は今名古屋にいて、愛三のお膝元だしこれは応援するしかない、と。ランカウイ島には何回も行ったことがあるので、またマレーシアには行きたいと思っていたところでこのツアー。いろいろいい偶然が重なって、行くことを決めました」と旦那さま。
愛三サポーターが見守る中、いよいよ集団がゴールに迫ってくる。平坦ステージの華、今大会4度目の集団スプリント。西谷の白いジャージを再び来ることを、少しの緊張を持って待ち構える。
だが今日のスプリントの主役は、もう一人のアジア人スプリンターだった。迷わず集団のど真ん中を選択し、そのまま力で押し切るスプリント。アジア人最高位の青いジャージが手を上げる。マレーシアが待望したマナンの勝利だ。
ゴールの瞬間、カメラマンエリアのマレーシア人フォトグラファーたちからは「やった!」「よっしゃ!」というような歓声が上がった。僕が昨日味わった喜びを、今日は会場中が味わっているようだ。
今日の愛三は、ゴール前で進路を断たれてしまったようだ。悔しいが、レースはいつだって難しく、容易に勝てるものではない。だからこそ誰もが勝利の味に酔うのだが。
リードアウトマン、盛一大に今日のスプリントを振り返ってもらう。
盛 「今日は、完璧ではないですが昨日よりもうまくラインが取れたんですけど、発射のタイミングが、集団の流れに埋まってつかめずに不発、というところです。ただ全員でちゃんと形がつくれたので、逆にラインが空いていればいい感じで行けたと思います。展開とタイミングだけの問題なので、今日の問題をうまく生かして次につなげます」
結果こそ出なかったが、愛三のスプリント列車は機能している。昨日の勝利の流れが、今日の順位だけで切れてしまったと判断するのは早計だ。ランカウイの舞台で集団スプリントが見られる機会は最終ステージだけとなってしまったが、テクニカルなクリテリウムで愛三の列車と西谷のスプリントが見られるのが今から楽しみだ。
そして昨日、西谷が開けた扉に続いたマナン。アジア人スプリンターの可能性を充分に感じさせたこの2日間だ。連日のアジア人の勝者に、これからのサイクルロードレースシーンの将来を見ることは早計ではあるまい。
マナンは語る。「とても幸せだ。いつでも応援してくれたマレーシアの人々に感謝したい。マレーシアの自転車チームにとっても、そして僕のために力を尽くしてくれたチームメイトのために僕は勝たなきゃいけなかったんだ。(ポイント賞の)グリーンジャージを守りたい。(マイケル・)マシューズはとても強いスプリンターだから注意が必要だけど。結果の出なかった2009年の反省から、かなりトレーニングを積んでこのランカウイに臨んだ。チームも良いし、マネージャーも良くなった。レースの戦略というものを学んだし、昨年より向上していると思う」
明日のレースは文字通り、山場となる。超級山岳ゲンティンハイランド。ここまで火花散るスプリンターの競演の影に隠れていた総合狙いのクライマーがレースの最前線にデビューする。ここまでチームのために走り消耗もひとしおであろうが、日本の誇るクライマー、別府匠の活躍に期待したい。
昨日のステージ終了時に、感極まった日本人メディアは涙を流したという。それを見たフランス人ジャーナリストがからかい半分に、僕らのクルマのマレーシア人ドライバーに「彼は昨日泣いたんだよ。自分の国の選手が勝ったから。でも君はマナンが勝ったって泣きはしないだろう?」と聞くと、彼は、
「いや、マナンの勝利を聞いて他のスタッフと抱き合って喜んでたら、涙が出たよ」と大真面目な顔で語るのだった。
ロードレースはいつだってエモーショナルなものだ。
愛三工業レーシングチームのホームページ内にツール・ド・ランカウイ2010特集サイトが特設されています。愛三の選手の戦いぶりはこちらでもご覧ください。
text&photo:Yufta Omata
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