2018/03/12(月) - 11:26
1年前に事故死したミケーレ・スカルポーニが住んでいたフィロットラーノにフィニッシュするティレーノ〜アドリアティコ第5ステージ。最大勾配16%の急坂で集団からアタックしたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が独走で「スカルポーニ追悼ステージ」を制した。
2017年4月22日にトレーニング中の事故で命を落としたミケーレ・スカルポーニ(イタリア)に捧げるティレーノ〜アドリアティコ第5ステージ。フィニッシュ地点のフィロットラーノは、2009年大会総合優勝者のスカルポーニが長年住み、実際に事故が発生した街だ。レースは終盤にかけてフィロットラーノを中心にした16.2kmの周回コースを3周する(事故現場は避けている)。残り3km地点でピークを迎える最大勾配16%のGPMムーロ・ディ・フィロットラーノをこなし、短い下り区間を挟んでフィロットラーノの旧市街に向かう6%前後の坂を駆け上がる。
逃げグループを形成して178kmの丘陵コースに挑んだのはスティーヴ・モラビト(スイス、グルパマFDJ)、クリスティアン・コレン(スロベニア、バーレーン・メリダ)、イーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)、イゴール・ボエフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)というUCIワールドチーム所属選手を中心にした5名。6分40秒まで広がったタイム差を詰める役目をBMCレーシングとボーラ・ハンスグローエが担当した。
この日は序盤から落車が多発した。133km地点で発生した落車には総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)が巻き込まれてしまう。ケルデルマンは20分15秒遅れのグルペット内で完走したが、プレートで固定していた右鎖骨を再び骨折していることがフィニッシュ後のX線検査で判明している。また、145km地点で落車したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)は右手首を骨折。顔面に深い傷を負ったが命に別状はなく、自身のTwitterで翌日に顔面の整復手術を受けることを明らかにしている。
残り50kmを切り、フィロットラーノの周回コースに入るとタイム差の縮小は加速した。リーダージャージのダミアーノ・カルーゾ(イタリア)擁するBMCレーシングがメンバー6名でメイン集団を牽引して逃げを追い詰めていく。2015年から2年4ヶ月間スカルポーニのチームメイトとして走ったカタルドが独走で最終周回に入ったが、BMCレーシングとチームスカイ、ミッチェルトン・スコット率いるメイン集団によって残り11km地点で吸収。4つのGPMを先頭通過して20ポイントを獲得したカタルドは山岳賞2位に浮上している。
最終周回のGPMムーロ・ディ・フィロットラーノに向けて、ミッチェルトン・スコットやモビスターが集団スプリントさながらのリードアウトバトルを繰り広げながら先頭へ。熾烈なポジション争いが繰り広げられる中、フィニッシュ6km手前でパンクしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は戦線を離脱している。
GPMムーロ・ディ・フィロットラーノに突入後、徐々に勾配が増した残り4km地点でイェーツがアタックを仕掛けると、付き位置のゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が反応できずに離れていく。ダンシングで最大勾配16%の急勾配区間を踏み抜いたイェーツが独走を開始。18秒のリードを得てGPMをクリアしたイェーツが独走で残り3kmを切った。
ペテル・サガン(スロバキア)の勝利を狙うボーラ・ハンスグローエが3名(マイカ、オス、フォルモロ)を揃えてメイン集団を牽引したものの、先頭イェーツとのタイム差が縮まらない。カウンターアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)も届かないまま、残り1kmを切ってからイェーツ先頭でフィニッシュに至る登りに突入する。
フィロットラーノ旧市街のメイン通りを駆け上がり、メイン集団に7秒のタイム差をつけてフィニッシュにやってきたイェーツ。アスタナカラーの水色と黄色の風船が舞う中、イェーツが独走フィニッシュを決めた。トーマスのリードアウトから始まった集団スプリントで、サガンがミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)を下している。
「第3ステージのトレヴィの激坂で調子の良さを感じたので、今日こそチャンスだと思ってステージ優勝を狙うことにした。チームメイトのおかげで好位置をキープしたまま登りを開始してそこからアタック。スプリントではペテル・サガンに勝てないので、早めに仕掛ける必要があったんだ」と、ステージ優勝を飾ったイェーツ。この日の活躍により総合6位に浮上している。
同じ日に行われたパリ〜ニース最終ステージで首位を明け渡したサイモン・イェーツは双子の兄弟。イギリス生まれの25歳の兄弟は2014年に揃ってオリカ・グリーンエッジでプロ入りし、それぞれオールラウンダーとして成長を続けている。サイモンは2015年クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合5位&ヤングライダー賞、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ1勝&総合6位、2017年のツール・ド・ロマンディ総合2位、ツール・ド・フランス総合7位&ヤングライダー賞。そして今回ティレーノ〜アドリアティコでステージ優勝を飾ったアダムは2014年ツアー・オブ・ターキー総合優勝、2015年のクラシカ・サンセバスティアン優勝、2016年ツール・ド・フランス総合4位&ヤングライダー賞、2017年ジロ・デ・イタリア総合9位という成績を残している。
「ミケーレ・スカルポーニとは面識がなかったけど、とてもエモーショナルで特別なステージであることは集団内の雰囲気でわかった。毎日トレーニングに出かける自分たちが、100%安全に帰宅できるかどうか分からない。レース中も同様に何が起こるかわからない。自分たちにできるのは、何も悪いことが起こらないことを祈りながら走りに集中することだけだ」とレース後の記者会見でイェーツは語っている。
スタート前に「今日はステージ優勝をミケーレ・スカルポーニに捧げたい」と語っていたサガンがステージ2位。そしてステージ3位のクウィアトコウスキーがボーナスタイムによって総合首位に立った。「ペテル・サガン向きのステージだったので、ボーラ・ハンスグローエが必ずレースをコントロールすると思っていた。彼らをマークすることでステージ優勝を飾るチャンスだと思っていたんだ。サガンとのスプリントで競り負けたものの、貴重なボーナスタイム3秒を獲得。昨日のゲラント・トーマスに起こったこと(チェーントラブル)のような不運がこれ以上起こらないよう願いながら、最終日までリーダージャージを守り抜きたい。本来クラシックレースの準備レースとして出場しているのでコンディションのピークとは言えないけど、総合優勝のチャンスがあるからには全力で狙っていくよ」と新リーダーは語っている。
2017年4月22日にトレーニング中の事故で命を落としたミケーレ・スカルポーニ(イタリア)に捧げるティレーノ〜アドリアティコ第5ステージ。フィニッシュ地点のフィロットラーノは、2009年大会総合優勝者のスカルポーニが長年住み、実際に事故が発生した街だ。レースは終盤にかけてフィロットラーノを中心にした16.2kmの周回コースを3周する(事故現場は避けている)。残り3km地点でピークを迎える最大勾配16%のGPMムーロ・ディ・フィロットラーノをこなし、短い下り区間を挟んでフィロットラーノの旧市街に向かう6%前後の坂を駆け上がる。
逃げグループを形成して178kmの丘陵コースに挑んだのはスティーヴ・モラビト(スイス、グルパマFDJ)、クリスティアン・コレン(スロベニア、バーレーン・メリダ)、イーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)、イゴール・ボエフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)というUCIワールドチーム所属選手を中心にした5名。6分40秒まで広がったタイム差を詰める役目をBMCレーシングとボーラ・ハンスグローエが担当した。
この日は序盤から落車が多発した。133km地点で発生した落車には総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)が巻き込まれてしまう。ケルデルマンは20分15秒遅れのグルペット内で完走したが、プレートで固定していた右鎖骨を再び骨折していることがフィニッシュ後のX線検査で判明している。また、145km地点で落車したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)は右手首を骨折。顔面に深い傷を負ったが命に別状はなく、自身のTwitterで翌日に顔面の整復手術を受けることを明らかにしている。
残り50kmを切り、フィロットラーノの周回コースに入るとタイム差の縮小は加速した。リーダージャージのダミアーノ・カルーゾ(イタリア)擁するBMCレーシングがメンバー6名でメイン集団を牽引して逃げを追い詰めていく。2015年から2年4ヶ月間スカルポーニのチームメイトとして走ったカタルドが独走で最終周回に入ったが、BMCレーシングとチームスカイ、ミッチェルトン・スコット率いるメイン集団によって残り11km地点で吸収。4つのGPMを先頭通過して20ポイントを獲得したカタルドは山岳賞2位に浮上している。
最終周回のGPMムーロ・ディ・フィロットラーノに向けて、ミッチェルトン・スコットやモビスターが集団スプリントさながらのリードアウトバトルを繰り広げながら先頭へ。熾烈なポジション争いが繰り広げられる中、フィニッシュ6km手前でパンクしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は戦線を離脱している。
GPMムーロ・ディ・フィロットラーノに突入後、徐々に勾配が増した残り4km地点でイェーツがアタックを仕掛けると、付き位置のゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が反応できずに離れていく。ダンシングで最大勾配16%の急勾配区間を踏み抜いたイェーツが独走を開始。18秒のリードを得てGPMをクリアしたイェーツが独走で残り3kmを切った。
ペテル・サガン(スロバキア)の勝利を狙うボーラ・ハンスグローエが3名(マイカ、オス、フォルモロ)を揃えてメイン集団を牽引したものの、先頭イェーツとのタイム差が縮まらない。カウンターアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)も届かないまま、残り1kmを切ってからイェーツ先頭でフィニッシュに至る登りに突入する。
フィロットラーノ旧市街のメイン通りを駆け上がり、メイン集団に7秒のタイム差をつけてフィニッシュにやってきたイェーツ。アスタナカラーの水色と黄色の風船が舞う中、イェーツが独走フィニッシュを決めた。トーマスのリードアウトから始まった集団スプリントで、サガンがミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)を下している。
「第3ステージのトレヴィの激坂で調子の良さを感じたので、今日こそチャンスだと思ってステージ優勝を狙うことにした。チームメイトのおかげで好位置をキープしたまま登りを開始してそこからアタック。スプリントではペテル・サガンに勝てないので、早めに仕掛ける必要があったんだ」と、ステージ優勝を飾ったイェーツ。この日の活躍により総合6位に浮上している。
同じ日に行われたパリ〜ニース最終ステージで首位を明け渡したサイモン・イェーツは双子の兄弟。イギリス生まれの25歳の兄弟は2014年に揃ってオリカ・グリーンエッジでプロ入りし、それぞれオールラウンダーとして成長を続けている。サイモンは2015年クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合5位&ヤングライダー賞、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ1勝&総合6位、2017年のツール・ド・ロマンディ総合2位、ツール・ド・フランス総合7位&ヤングライダー賞。そして今回ティレーノ〜アドリアティコでステージ優勝を飾ったアダムは2014年ツアー・オブ・ターキー総合優勝、2015年のクラシカ・サンセバスティアン優勝、2016年ツール・ド・フランス総合4位&ヤングライダー賞、2017年ジロ・デ・イタリア総合9位という成績を残している。
「ミケーレ・スカルポーニとは面識がなかったけど、とてもエモーショナルで特別なステージであることは集団内の雰囲気でわかった。毎日トレーニングに出かける自分たちが、100%安全に帰宅できるかどうか分からない。レース中も同様に何が起こるかわからない。自分たちにできるのは、何も悪いことが起こらないことを祈りながら走りに集中することだけだ」とレース後の記者会見でイェーツは語っている。
スタート前に「今日はステージ優勝をミケーレ・スカルポーニに捧げたい」と語っていたサガンがステージ2位。そしてステージ3位のクウィアトコウスキーがボーナスタイムによって総合首位に立った。「ペテル・サガン向きのステージだったので、ボーラ・ハンスグローエが必ずレースをコントロールすると思っていた。彼らをマークすることでステージ優勝を飾るチャンスだと思っていたんだ。サガンとのスプリントで競り負けたものの、貴重なボーナスタイム3秒を獲得。昨日のゲラント・トーマスに起こったこと(チェーントラブル)のような不運がこれ以上起こらないよう願いながら、最終日までリーダージャージを守り抜きたい。本来クラシックレースの準備レースとして出場しているのでコンディションのピークとは言えないけど、総合優勝のチャンスがあるからには全力で狙っていくよ」と新リーダーは語っている。
ティレーノ〜アドリアティコ2018第5ステージ
1位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 4:16:35 |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:07 |
3位 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) | |
4位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) | |
5位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | |
6位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
8位 | ハイメ・ロソン(スペイン、モビスター) | |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
10位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) | |
135位 | 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) | 0:20:15 |
個人総合成績
1位 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) | 21:31:28 |
2位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) | 0:00:03 |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:00:23 |
4位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | 0:00:29 |
5位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:00:34 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:36 |
7位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:37 |
8位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:39 |
9位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) | 0:00:41 |
10位 | ハイメ・ロソン(スペイン、モビスター) | 0:00:47 |
ポイント賞
1位 | ジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) | 28pts |
2位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 24pts |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 21pts |
山岳賞
1位 | ニコラ・バジョーリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) | 35pts |
2位 | ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ) | 20pts |
3位 | ジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) | 18pts |
ヤングライダー賞
1位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) | 21:32:07 |
2位 | ハイメ・ロソン(スペイン、モビスター) | 0:00:08 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:02:03 |
チーム総合成績
1位 | アスタナ | 63:56:12 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:00:10 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:01:41 |
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
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