2009/12/15(火) - 18:27
女子は豊岡英子(パナソニックレディース)と森田正美(チームブリヂストン・アンカー)の一騎打ち。今までの戦歴とマッドコンディションで、森田に分があると見る向きも多かった。しかし結果は2分以上の大差で豊岡が圧勝した。明暗を分けたものとは?
豊岡は前だけを見て自分の得意場面で差をつけて走り続けた。森田はスタート後の草地の突っ込みでまさかの転倒。そしてピット直後の段差でパンク。重なるアクシデントに焦り、マシン交換後も差を詰めることができなかった。
スタート10分で森田を2度のアクシデントが襲う
女子のスタートはたった12人だが、上位強豪陣が参加し、日本チャンピオンを決めるに相応しいメンバーと言えた。コースは前日までの雨で見事にマッドコンディション。上りはもちろん、下りや平坦でさえも乗車の難しい部分が多い。
注目は4連覇中の豊岡と、それ以前の2年連続チャンピオンの森田の戦いだ。
スタートは豊岡が先行。舗装部分で一度森田が先頭に立つがすぐに豊岡が抜き返して草地へ入る。ここで2番手の森田が転倒してしまう。しかし森田はすぐに立て直して前を追う。
今大会はダブルピットになっており、第2ピットと第1ピットの間が長く、1周2.5kmの2/3ほどある。
2番手に上がった森田だが、この第2ピット直後の段差で後輪をパンクしてしまう。
2/3周をパンクした後輪で走らなければならない森田。先頭で快調に走る豊岡とは対照的に、森田は厳しい表情と激しい息遣いで追うが、泥に脚を取られ、マシンコントロールも乱れる。明らかにいつもの森田ではない。
ゴール後に「アクシデントで焦っていた...」と言う森田。残酷なことに、スタート後10分で勝負がついてしまった。
落ち着いて走った豊岡が5連覇達成
パンクでペースの落ちた森田を、第1ピット手前で中村真清が抜き去る。中村は一昨年の全日本で2位になった選手だ。
バイク交換した森田は追い上げ、その後に中村を抜き、2番手に上がる。しかし中村も食い下がる。4番手には今季好調だった志村みち子(エキップあづみの)が続く。
先頭の豊岡は前だけをしっかりと見据え、前傾姿勢で走る。調子のいいときの豊岡の走りだ。森田も全力で追うが、激しい息遣いと厳しい表情は変わらない。そしてその差は縮まるどころか無情にも開いていく。
そして豊岡がフィニッシュラインへ向かう。ライン手前から思わず泣き出す。涙を見せながら、両手を挙げてゴール。
その2分後、森田もゴール。両者健闘を称えあうが、その直後に森田は知人を見つけると号泣する。この1戦に賭けた両者の思いが詰まったゴールエリアだった。
3位には「一年間、この全日本のために賭けてきた」という中村が入った。試走や前のレースを見て、スタート後の草地の突っ込みでのライン取りをあらかじめ頭に思い描いていたと言う。それはちょうど森田が転倒した場所だった。
ベテランの読みと根性で、優勝には届かなかったものの、見事3位に入賞した。
豊岡英子のコメント
「コースのあちこちでみんなに応援いただいて、嬉しかったです。今年は春先のニュージーランドでの怪我(脱臼や100針以上縫う傷)などもあり、いつも以上にプレッシャーも大きくて、苦しかった。
今シーズンのクロスは森田さんに2敗していた。このコースは泥と重い芝が特徴。体調は良かったので、負けるとしたらミスだけだと思っていた。テクニカルな場面では森田さんが得意だけど、下りと平坦は自分が得意。そこで離そうと考えたので、落ち着けて全く焦りはなかったです」
森田正美のコメント
「悔しいです。1周目の転倒やパンクは自分の余裕の無さからきたのだと思います。泥は自分との戦いだけれども、人(豊岡選手)との戦いでも焦ってしまった私が負けです」
勝たなければいけないというプレッシャーが森田に大きくのしかかった。なつかしいはずの5年ぶりの会場も、彼女にとってはアウェーに感じられたのかもしれない。
今年の世界戦はチェコ開催
今年の世界選手権は1月31日にチェコのターボルで行われる。日本代表選手メンバーは、日本シクロクロス競技主催者協会(AJOCC)が今までのセレクションシリーズならびにこの全日本選手権の成績などを考慮して日本自転車競技連盟(JCF)へ推薦、JCFが決定・発表する。
例年は年明け前後に公表される。この全日本の各クラス(エリート男子、エリート女子、U23男子、ジュニア女子)上位者中心になる見込みだ。
結果 女子 4周 10.4km
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)42分05秒
2位 森田正美(チームブリヂストン・アンカー)+2分03秒
3位 中村真清 +3分26秒
4位 志村みち子(エキップあづみの)+5分10秒
5位 福本千佳(Ready Go JAPAN)ジュニア +6分08秒
6位 中島織七(スワコレーシングチーム)+6分46秒
photo&text:高木秀彰
豊岡は前だけを見て自分の得意場面で差をつけて走り続けた。森田はスタート後の草地の突っ込みでまさかの転倒。そしてピット直後の段差でパンク。重なるアクシデントに焦り、マシン交換後も差を詰めることができなかった。
スタート10分で森田を2度のアクシデントが襲う
女子のスタートはたった12人だが、上位強豪陣が参加し、日本チャンピオンを決めるに相応しいメンバーと言えた。コースは前日までの雨で見事にマッドコンディション。上りはもちろん、下りや平坦でさえも乗車の難しい部分が多い。
注目は4連覇中の豊岡と、それ以前の2年連続チャンピオンの森田の戦いだ。
スタートは豊岡が先行。舗装部分で一度森田が先頭に立つがすぐに豊岡が抜き返して草地へ入る。ここで2番手の森田が転倒してしまう。しかし森田はすぐに立て直して前を追う。
今大会はダブルピットになっており、第2ピットと第1ピットの間が長く、1周2.5kmの2/3ほどある。
2番手に上がった森田だが、この第2ピット直後の段差で後輪をパンクしてしまう。
2/3周をパンクした後輪で走らなければならない森田。先頭で快調に走る豊岡とは対照的に、森田は厳しい表情と激しい息遣いで追うが、泥に脚を取られ、マシンコントロールも乱れる。明らかにいつもの森田ではない。
ゴール後に「アクシデントで焦っていた...」と言う森田。残酷なことに、スタート後10分で勝負がついてしまった。
落ち着いて走った豊岡が5連覇達成
パンクでペースの落ちた森田を、第1ピット手前で中村真清が抜き去る。中村は一昨年の全日本で2位になった選手だ。
バイク交換した森田は追い上げ、その後に中村を抜き、2番手に上がる。しかし中村も食い下がる。4番手には今季好調だった志村みち子(エキップあづみの)が続く。
先頭の豊岡は前だけをしっかりと見据え、前傾姿勢で走る。調子のいいときの豊岡の走りだ。森田も全力で追うが、激しい息遣いと厳しい表情は変わらない。そしてその差は縮まるどころか無情にも開いていく。
そして豊岡がフィニッシュラインへ向かう。ライン手前から思わず泣き出す。涙を見せながら、両手を挙げてゴール。
その2分後、森田もゴール。両者健闘を称えあうが、その直後に森田は知人を見つけると号泣する。この1戦に賭けた両者の思いが詰まったゴールエリアだった。
3位には「一年間、この全日本のために賭けてきた」という中村が入った。試走や前のレースを見て、スタート後の草地の突っ込みでのライン取りをあらかじめ頭に思い描いていたと言う。それはちょうど森田が転倒した場所だった。
ベテランの読みと根性で、優勝には届かなかったものの、見事3位に入賞した。
豊岡英子のコメント
「コースのあちこちでみんなに応援いただいて、嬉しかったです。今年は春先のニュージーランドでの怪我(脱臼や100針以上縫う傷)などもあり、いつも以上にプレッシャーも大きくて、苦しかった。
今シーズンのクロスは森田さんに2敗していた。このコースは泥と重い芝が特徴。体調は良かったので、負けるとしたらミスだけだと思っていた。テクニカルな場面では森田さんが得意だけど、下りと平坦は自分が得意。そこで離そうと考えたので、落ち着けて全く焦りはなかったです」
森田正美のコメント
「悔しいです。1周目の転倒やパンクは自分の余裕の無さからきたのだと思います。泥は自分との戦いだけれども、人(豊岡選手)との戦いでも焦ってしまった私が負けです」
勝たなければいけないというプレッシャーが森田に大きくのしかかった。なつかしいはずの5年ぶりの会場も、彼女にとってはアウェーに感じられたのかもしれない。
今年の世界戦はチェコ開催
今年の世界選手権は1月31日にチェコのターボルで行われる。日本代表選手メンバーは、日本シクロクロス競技主催者協会(AJOCC)が今までのセレクションシリーズならびにこの全日本選手権の成績などを考慮して日本自転車競技連盟(JCF)へ推薦、JCFが決定・発表する。
例年は年明け前後に公表される。この全日本の各クラス(エリート男子、エリート女子、U23男子、ジュニア女子)上位者中心になる見込みだ。
結果 女子 4周 10.4km
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)42分05秒
2位 森田正美(チームブリヂストン・アンカー)+2分03秒
3位 中村真清 +3分26秒
4位 志村みち子(エキップあづみの)+5分10秒
5位 福本千佳(Ready Go JAPAN)ジュニア +6分08秒
6位 中島織七(スワコレーシングチーム)+6分46秒
photo&text:高木秀彰
フォトギャラリー