2014/05/29(木) - 15:09
雪のクイーンステージを終えて晴れやかな空が広がったと思いきや、監督たちの表情は全く晴れない。ステルヴィオ峠の下りに関してスタート地点で話し合いの場がもたれたが、プロトンは着地点を見つけられないままだ。
スタート地点の隅っこで、チーム監督やチームマネージャーが輪になって会議が行なわれていた。その理由はもちろん前日のステルヴィオ峠の下りについてだ。ステルヴィオ峠で何が起こったかは第16ステージの現地レポートをご覧下さい。
道端での会議はあまりにも人目につくため、近くに止まっていたティンコフ・サクソのチームバスに一部の監督が閉じこもって会議は続いた(追い出された選手たちは早めに出走サインに向かった)。
一時はチームがストライキするとの噂も流れたが、予定通り第17ステージのスタートは切られた。かと言って一件が解決されたわけではない。主催者RCSスポルトのマネジメントに不満をもっているのは全チーム共通だが、ステルヴィオ峠でのアクションについてプロトンの考えは大きく二つに分かれている。
一つは、ステルヴィオ峠の下りはニュートラル扱いで、アタックすべきではなかったと主張するチーム(オメガファーマなど)。もう一つは、ステルヴィオ峠の下りはニュートラル扱いではなく、アタック可能な状態だったと主張するチーム(モビスターなど)。
例えニュートラル扱いではなくとも、ラジオコルサ(競技無線)は「赤旗をもつモーターサイクルを追い越さないように」指示を出していた。しかし実際にはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らが追い越すシーンが映像や写真に残っている。
もちろんマリアローザを失う結果となったオメガファーマ・クイックステップはここに噛み付いた。「キンタナが下りで飛び出していなかったら、ウランはマリアローザを守っていた。(大会ディレクターの)マウロ・ヴェーニは辞めるべきだ」と、パトリック・ルフェーヴルGMはカンカンだ。
「ニュートラル派」はキンタナやピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)、ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らが下りで稼ぎ出したタイム差(1分39秒と言われている)を、総合タイムから差し引くニュートラル措置を要求。これをAIGCP(国際自転車プロ選手協会)の正式な見解としてUCI(国際自転車競技連合)に提出した。
すぐさまUCIはプレスリリースを出してこれを棄却。ステージ成績に変更は加えないと発表している。
仮にステルヴィオ峠の下りで飛び出していなくてもキンタナがステージ優勝していたとの見方が強いが、総合争いに大きく関わる結果となっただけに、とにかく後味が悪い。プロトンは真っ二つに分かれている。
いつも表彰台でステージ優勝者とマリアローザ着用者が派手に振り回す(香ばしいフォトグラファーを生み出す)スプマンテは大会スポンサーである「アストリア」のもの。具体的には9.5コールドワイン・ピンクがそれだ。
第17ステージはそんな「アストリア」の産地を訪れる。波打つように葡萄畑が広がるトレヴィーゾ北方の丘陵地帯を蛇行しながらヴィットリオヴェネトのフィニッシュへ。選手たちが通り過ぎた畑の葡萄が、9.5コールドワイン・ピンクに姿を変えるかも知れない(プレスセンターで一人一本ずつ配られていたのでしっかり紹介しておきます)。
ステージ優勝したステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)のガッツポーズは、イタリアでは大変よろしくないとされるジェスチャー。長年「ピラッツィは勝てない」と言われ続けたことへの反逆心から反射的に出たのだと思われる。
しかし相手を侮辱するポーズであるとして、記者会見でピラッツィは謝罪した。ピラッツィはステージ優勝したと勘違いしたユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ.fr)のお手本のようなガッツポーズを参考にすべきだ。
ジロではここ数年インパクトのある走りを見せていたピラッツィだが、ずっと勝てていなかった。沿道には「TUTTI PAZZI PER PIRAZZI(トゥッティ・パッツィ・ペル・ピラッツィ=みんなピラッツィにぞっこん)」という文字が踊った。
この第17ステージは日本人選手にとって悔しさの残るものとなった。逃げる最後のチャンスに懸けて別府史之(トレックファクトリーレーシング)はリムハイトの高いカーボンホイールで挑んだが、アタックの末に逃げには乗れなかった。ラストチャンスを逃しただけに別府は心底悔しそうな様子。
一方、レインジャケットを運ぶ仕事をこなしていた新城幸也(ユーロップカー)は、急減速した他チームのチームカーと接触して落車。これまでの2度の落車で痛めている箇所をもう一度打ちつけている。無事にフィニッシュしているが、山岳3連戦を前にそのダメージが心配される。
裏では熱い討論がなされたものの、表向きには平穏な一日を過ごした総合上位陣。ジロは残すところパナロッタ山頂フィニッシュ、モンテグラッパ山岳TT、ゾンコラン山頂フィニッシュ、そしてトリエステ平坦レースの4ステージ。紆余曲折ありながらも、長い長いジロがクライマックスを迎える。
text&photo:Kei Tsuji in Vittorio Veneto, Italy
スタート地点の隅っこで、チーム監督やチームマネージャーが輪になって会議が行なわれていた。その理由はもちろん前日のステルヴィオ峠の下りについてだ。ステルヴィオ峠で何が起こったかは第16ステージの現地レポートをご覧下さい。
道端での会議はあまりにも人目につくため、近くに止まっていたティンコフ・サクソのチームバスに一部の監督が閉じこもって会議は続いた(追い出された選手たちは早めに出走サインに向かった)。
一時はチームがストライキするとの噂も流れたが、予定通り第17ステージのスタートは切られた。かと言って一件が解決されたわけではない。主催者RCSスポルトのマネジメントに不満をもっているのは全チーム共通だが、ステルヴィオ峠でのアクションについてプロトンの考えは大きく二つに分かれている。
一つは、ステルヴィオ峠の下りはニュートラル扱いで、アタックすべきではなかったと主張するチーム(オメガファーマなど)。もう一つは、ステルヴィオ峠の下りはニュートラル扱いではなく、アタック可能な状態だったと主張するチーム(モビスターなど)。
例えニュートラル扱いではなくとも、ラジオコルサ(競技無線)は「赤旗をもつモーターサイクルを追い越さないように」指示を出していた。しかし実際にはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らが追い越すシーンが映像や写真に残っている。
もちろんマリアローザを失う結果となったオメガファーマ・クイックステップはここに噛み付いた。「キンタナが下りで飛び出していなかったら、ウランはマリアローザを守っていた。(大会ディレクターの)マウロ・ヴェーニは辞めるべきだ」と、パトリック・ルフェーヴルGMはカンカンだ。
「ニュートラル派」はキンタナやピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)、ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らが下りで稼ぎ出したタイム差(1分39秒と言われている)を、総合タイムから差し引くニュートラル措置を要求。これをAIGCP(国際自転車プロ選手協会)の正式な見解としてUCI(国際自転車競技連合)に提出した。
すぐさまUCIはプレスリリースを出してこれを棄却。ステージ成績に変更は加えないと発表している。
仮にステルヴィオ峠の下りで飛び出していなくてもキンタナがステージ優勝していたとの見方が強いが、総合争いに大きく関わる結果となっただけに、とにかく後味が悪い。プロトンは真っ二つに分かれている。
いつも表彰台でステージ優勝者とマリアローザ着用者が派手に振り回す(香ばしいフォトグラファーを生み出す)スプマンテは大会スポンサーである「アストリア」のもの。具体的には9.5コールドワイン・ピンクがそれだ。
第17ステージはそんな「アストリア」の産地を訪れる。波打つように葡萄畑が広がるトレヴィーゾ北方の丘陵地帯を蛇行しながらヴィットリオヴェネトのフィニッシュへ。選手たちが通り過ぎた畑の葡萄が、9.5コールドワイン・ピンクに姿を変えるかも知れない(プレスセンターで一人一本ずつ配られていたのでしっかり紹介しておきます)。
ステージ優勝したステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)のガッツポーズは、イタリアでは大変よろしくないとされるジェスチャー。長年「ピラッツィは勝てない」と言われ続けたことへの反逆心から反射的に出たのだと思われる。
しかし相手を侮辱するポーズであるとして、記者会見でピラッツィは謝罪した。ピラッツィはステージ優勝したと勘違いしたユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ.fr)のお手本のようなガッツポーズを参考にすべきだ。
ジロではここ数年インパクトのある走りを見せていたピラッツィだが、ずっと勝てていなかった。沿道には「TUTTI PAZZI PER PIRAZZI(トゥッティ・パッツィ・ペル・ピラッツィ=みんなピラッツィにぞっこん)」という文字が踊った。
この第17ステージは日本人選手にとって悔しさの残るものとなった。逃げる最後のチャンスに懸けて別府史之(トレックファクトリーレーシング)はリムハイトの高いカーボンホイールで挑んだが、アタックの末に逃げには乗れなかった。ラストチャンスを逃しただけに別府は心底悔しそうな様子。
一方、レインジャケットを運ぶ仕事をこなしていた新城幸也(ユーロップカー)は、急減速した他チームのチームカーと接触して落車。これまでの2度の落車で痛めている箇所をもう一度打ちつけている。無事にフィニッシュしているが、山岳3連戦を前にそのダメージが心配される。
裏では熱い討論がなされたものの、表向きには平穏な一日を過ごした総合上位陣。ジロは残すところパナロッタ山頂フィニッシュ、モンテグラッパ山岳TT、ゾンコラン山頂フィニッシュ、そしてトリエステ平坦レースの4ステージ。紆余曲折ありながらも、長い長いジロがクライマックスを迎える。
text&photo:Kei Tsuji in Vittorio Veneto, Italy
フォトギャラリー