2017/03/24(金) - 09:17
春の息吹を感じる南房総にお邪魔したライドレポート後編。海岸線や林道旧道など房総を満喫しているシクロワイアード編集部のイソベ先輩と新人ムラタ、そして私カマタの3名。そろそろお昼ご飯の時間かな?
野島崎灯台で軽く補給を取りつつ出発する私たち。ここから海岸線を離れ、今度は半島の内側、山間部に向かうことに。ここで今回のルートを確認すべく地図を見返してみる。ここからは安房グリーンラインという大きな道を一直線か、なるほど、分かりやすい道だなと思っていると、いきなり脇道に逸れるイソベ先輩。一筋縄では行かないのが今回の南房総ライドだ。
渦を巻いたかのような地層を見せる
神秘的な空間に「心の洗濯」をされたような気分に
安房グリーンラインのトンネルを出てすぐの部分にも地層が見えるポイントがある
神明神社の脇を通り、辛うじて舗装された林道を行くと一つのトンネルが現れる。風情はあるが、よくある手彫りの隧道かと思って通ると、その出口には芸術作品かと思うほどの地層が出現。渦を巻くように作り上げられたトンネルで、圧倒的存在感に吸い込まれそうな気持ちになる。新道が出来るまではここを車が通っていたとのことで、イソベ先輩も初めて来たときは車だったそうな。人を引き付ける力か何かが働いているようで、ここにイスを置いて2時間は眺めていられそうだな、なんて思うほどだが、下は泥でぬかるんでいるので無理だなと思い後にした。
林道を抜け、正規の安房グリーンラインに戻ると、ここでイソベ先輩から「次のチェックポイントで昼休憩にしよう。ボリューム満点のハンバーガー食い行くぞ」とのこと。俄然やる気が入る豪脚ムラタは少々速めのペースで先頭を引き始める。正直足がほぼ売り切れていた貧脚カマタこと私はついていくのに精一杯で、ロード走行の辛さを久しぶりに思い出していた所である。今度来るなら、もう少し走れるようになるか、もう少し遅いペースで走れる面子で来るかの2択だなとか考える。
待ちに待ったお昼ご飯、ビックサイズのハンバーガーに食らいつく
観光客だけでなく地元民にも人気のビンゴバーガー
道の駅の中はお土産や房総半島の特産品が並ぶ
そんなこんなで楽し苦しのロードライドをこなしていると、見えてきたのが次のチェックポイント「道の駅三芳村鄙の里」だ。ここで昼休憩ということで、地元民にも観光客にも愛されるボリューム満点のビンゴバーガーを頂くことに。和牛100%のパティは180gとビックサイズで、野菜もシェフ自ら選んだ地元野菜を使用しているとのこと。私としてはメニューよりも実際のハンバーガーの方が美味しそうに見えるクオリティに、食べる前からよだれが出てくるのを感じてしまった。もちろん味も見た目に負けておらず肉とバンズのバランスが最高で、ハンバーガーってこんなに美味しかったっけ?と思うほどだ。
更に、日本酪農発祥の里として知られる三芳村は今でも酪農が盛んで、この道の駅でもこだわりの乳製品が頂ける。特に濃厚かつクセのない味わいのホットミルクがおすすめだ。また施設内には足湯もあり、ライドで疲れた足を少しばかり癒してくれたりもする。結構、立ち寄りマストな道の駅だった。
安房中央ダムにかかる鉄橋を通る
2010年の千葉国体で使用されたロードレースコースを示す標識
東京の喧騒から離れた林道を行く
タンパク質を補給し超回復したかと見せかけて若干お腹が重い私たちは山間部の道をさらに北上していく。国道410号を走っていると左手に見えてくるのは「安房中央ダム」。高さ36mもあるアースダムは農業用水を湛え地域の農業を支えている縁の下の力持ち。残念ながら冬場は降雨も少なくダムは空に近い状態だったが、それだけにその規模の大きさが浮き彫りになっており、そのダイナミックさを肌で感じた。
ゼブー種の牛乳で作ったソフトクリームは濃厚かつさっぱりな後味 途中、2010年に開催された千葉国体の自転車ロードレースコースを示す標識を発見。千葉のマスコットキャラクターチーバくんが描かれたそれには1周28.7kmとの記載が。イソベ先輩曰く国体は国の事業なんでお金がたくさん出るから標識が立てられるとのこと。なるほど―と感心する私。軽いアップダウンをこなし、人里を少しずつ離れていくと、「酪農のさと」に到着。
ここ「酪農のさと」は日本酪農発祥の地であるこの安房地域に、酪農の理解を深める交流施設として建造。江戸幕府八代将軍吉宗が行った酪農改革によりインドから輸入された白牛(ゼブー種)が3頭飼育されている。日本ではここだけとのことで、かなり希少価値が高い乳牛だ。そんなゼブー種から取れた牛乳を使ったソフトクリームを頂くことに。これがこれまた濃厚で牛乳の甘い香りが鼻から抜けつつも、乳脂肪分が低いのかあっさりとした後味で、2つくらい食べられそうだと思えるバランスの良いソフトクリームだった。
峰岡山分屯基地は首都航空防衛の要だ 更に銀輪を進めると航空自衛隊・峰岡山分屯基地の標識が現れる。ここは首都圏の航空防衛を担うレーダーサイトを配備している基地だが、そこまでに至る約3kmの登坂が自衛隊が管理している故か非常に良い道となっている。特に登り始めから100m毎に現在の距離が表示される標識が立て続けに立っており、練習には最適だ。ただ、既に100km弱をハイペースで走り、限界を迎えつつある私の脚にトドメを刺しかねないインパクトを与えていったが。
因みにこの峰岡山分屯基地のある山が、千葉県が誇る最高峰「愛宕山」だ。と言っても標高はたったの408mで、各都道府県の中で最も低い最高峰の山だが、それだけ低い土地が広がっている千葉県の地形が窺え知れることが出来るスポットとなっている。
大山千枚田は東京から最も近い棚田だ
ここでイソベ先輩が予定にはなかったが、とっておきの場所を思い出したということで、東京から一番近い棚田、大山千枚田にも寄ってみる。どうやら日本で唯一雨水のみで耕作を行っている天水田というものらしく、貴重な動植物が多数生息しているとか。東西600mにわたって大小375枚の棚田が連なる風景は日本の棚田百選にも選ばれているそうだ。棚田ということで結構な高低差があり、地味なはずなのに不思議なダイナミックさを感じる事が出来る景観であった。
水を汲みに来る人がひっきりなしに来る人気スポットだ
滝の不動尊では美味しい湧水を頂くことが出来る
湧水量はかなり豊富だ
その後は有難いことに下り基調で走りやすいもみじロードを爆走。今回は枯れ木姿を見せるもみじの木だったが、県内屈指のもみじの名所とのことで、時期が合えば見事な紅葉を見せるというのはイソベ先輩の談。秋に来ても良さそうだ。そのもみじロードの末端には銘水・滝の不動尊がある。水を汲みに来る人がひっきりなしに来るほどの人気で、その味は非常にマイルド。パワースポットとも思える神妙なロケーションで、疲れた体に美味しい水が染みる。
ここに家を買うにはいくらかかるんだろうか
あまりの勾配に登坂注意の看板も
房総のミュール・カペルミュールこと天羽グリーンヒルが脚にトドメを刺す
再び海が見え始め、もう後はゴールするだけだと思った矢先、「房総のミュール・カペルミュール」を登った先に絶景があるから見に行こうと仰るイソベ先輩。正直、本当に脚が売り切れ状態ではあった私であったが、千葉県まで来たし、渋々ついていくことに。もう流石に自転車降りて押そうかと思うほどの壁を登り、見えたのは太平洋望む絶景。ここは東京湾を一望できる別荘地「天羽マリーンヒル」ということで洒落たお家にお高い車がズラリ。天気の良い日には富士山やスカイツリーも見えるという高台はちょうど夕暮れも相まって、「あかね色に染まる坂」が非常に美しく儚い、良い雰囲気を醸し出していた。登る価値が十分あり満足する私であった。
今度こそ帰られると思ったが、最後にもう一つ面白いトンネルがあるということで旧城山隧道へ。岩を切り落として作られたトンネルが石の回廊のように高くそびえており、神秘的な風格だ。ここにきて、今日一の隧道と言っていいかもしれない。それほどまでに圧巻なフォルムはどこぞのRPGゲームに出てきそうな雰囲気すらあった。
垂直に高くそびえる岩のトンネルは異様とも言える情景でゲーム世界かと錯覚を起こすほど
帰り道の途中、海沿いを走っていると、フェリーを発見。どうやら東京湾を挟んだ反対側の神奈川県・三浦半島と繋がっているらしく、フェリーでも来れるのかと感心してしまった。自転車を積む場合は輪行袋に入れずにそのまま積めるとのことで、かなり利便性が良い。房総半島は何気にアクセスがいい。
ゴール地点となる「道の駅富楽里とみやま」に辿りつき、今回のライドはこれにて終了。軽食コーナーにてイワシのつみれ汁とアナゴ寿司、なめろうを焼いたサンガ焼きを頂く。ダシの効いたつみれ汁が全身に沁み渡っていく。サンガ焼きも初めて食べたが非常に美味しかった。房総半島は走りやすく、観光、グルメと楽しめる所が充実しており、とても良い場所だと感じた。
フェリーで東京湾挟んで反対側の神奈川県・三浦半島に上陸することが出来る
アナゴ寿司と南房総名物サンガ焼きを頂く
イワシのダシがこれでもかと出たつみれ汁が疲れた身体によく染みる
強いて言えば、今回の面子で来るならば、もう少し練習しないとなと胸に刻んだ次第である。フジワラ先輩とならばもうちょっとゆっくりライドを楽しむこともできそうな気がする。
編集部による南房総ライドはいかがだったでしょうか。ここで紹介したポイントを回れば、だいたい140kmの距離。足早に回れば1日でどのポイントも楽しむことができます。これから春を迎え暖かくなる季節、絶好のサイクリング日和となる季節に、出かけてみてください。今後も機会があれば編集部オススメのサイクリングコースを紹介していければと思います。次回もぜひチェックしてくださいね。
Text:Kosuke Kamata
Photo:So Isobe
野島崎灯台で軽く補給を取りつつ出発する私たち。ここから海岸線を離れ、今度は半島の内側、山間部に向かうことに。ここで今回のルートを確認すべく地図を見返してみる。ここからは安房グリーンラインという大きな道を一直線か、なるほど、分かりやすい道だなと思っていると、いきなり脇道に逸れるイソベ先輩。一筋縄では行かないのが今回の南房総ライドだ。
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神明神社の脇を通り、辛うじて舗装された林道を行くと一つのトンネルが現れる。風情はあるが、よくある手彫りの隧道かと思って通ると、その出口には芸術作品かと思うほどの地層が出現。渦を巻くように作り上げられたトンネルで、圧倒的存在感に吸い込まれそうな気持ちになる。新道が出来るまではここを車が通っていたとのことで、イソベ先輩も初めて来たときは車だったそうな。人を引き付ける力か何かが働いているようで、ここにイスを置いて2時間は眺めていられそうだな、なんて思うほどだが、下は泥でぬかるんでいるので無理だなと思い後にした。
林道を抜け、正規の安房グリーンラインに戻ると、ここでイソベ先輩から「次のチェックポイントで昼休憩にしよう。ボリューム満点のハンバーガー食い行くぞ」とのこと。俄然やる気が入る豪脚ムラタは少々速めのペースで先頭を引き始める。正直足がほぼ売り切れていた貧脚カマタこと私はついていくのに精一杯で、ロード走行の辛さを久しぶりに思い出していた所である。今度来るなら、もう少し走れるようになるか、もう少し遅いペースで走れる面子で来るかの2択だなとか考える。
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そんなこんなで楽し苦しのロードライドをこなしていると、見えてきたのが次のチェックポイント「道の駅三芳村鄙の里」だ。ここで昼休憩ということで、地元民にも観光客にも愛されるボリューム満点のビンゴバーガーを頂くことに。和牛100%のパティは180gとビックサイズで、野菜もシェフ自ら選んだ地元野菜を使用しているとのこと。私としてはメニューよりも実際のハンバーガーの方が美味しそうに見えるクオリティに、食べる前からよだれが出てくるのを感じてしまった。もちろん味も見た目に負けておらず肉とバンズのバランスが最高で、ハンバーガーってこんなに美味しかったっけ?と思うほどだ。
更に、日本酪農発祥の里として知られる三芳村は今でも酪農が盛んで、この道の駅でもこだわりの乳製品が頂ける。特に濃厚かつクセのない味わいのホットミルクがおすすめだ。また施設内には足湯もあり、ライドで疲れた足を少しばかり癒してくれたりもする。結構、立ち寄りマストな道の駅だった。
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ここ「酪農のさと」は日本酪農発祥の地であるこの安房地域に、酪農の理解を深める交流施設として建造。江戸幕府八代将軍吉宗が行った酪農改革によりインドから輸入された白牛(ゼブー種)が3頭飼育されている。日本ではここだけとのことで、かなり希少価値が高い乳牛だ。そんなゼブー種から取れた牛乳を使ったソフトクリームを頂くことに。これがこれまた濃厚で牛乳の甘い香りが鼻から抜けつつも、乳脂肪分が低いのかあっさりとした後味で、2つくらい食べられそうだと思えるバランスの良いソフトクリームだった。
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因みにこの峰岡山分屯基地のある山が、千葉県が誇る最高峰「愛宕山」だ。と言っても標高はたったの408mで、各都道府県の中で最も低い最高峰の山だが、それだけ低い土地が広がっている千葉県の地形が窺え知れることが出来るスポットとなっている。
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ここでイソベ先輩が予定にはなかったが、とっておきの場所を思い出したということで、東京から一番近い棚田、大山千枚田にも寄ってみる。どうやら日本で唯一雨水のみで耕作を行っている天水田というものらしく、貴重な動植物が多数生息しているとか。東西600mにわたって大小375枚の棚田が連なる風景は日本の棚田百選にも選ばれているそうだ。棚田ということで結構な高低差があり、地味なはずなのに不思議なダイナミックさを感じる事が出来る景観であった。
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その後は有難いことに下り基調で走りやすいもみじロードを爆走。今回は枯れ木姿を見せるもみじの木だったが、県内屈指のもみじの名所とのことで、時期が合えば見事な紅葉を見せるというのはイソベ先輩の談。秋に来ても良さそうだ。そのもみじロードの末端には銘水・滝の不動尊がある。水を汲みに来る人がひっきりなしに来るほどの人気で、その味は非常にマイルド。パワースポットとも思える神妙なロケーションで、疲れた体に美味しい水が染みる。
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今度こそ帰られると思ったが、最後にもう一つ面白いトンネルがあるということで旧城山隧道へ。岩を切り落として作られたトンネルが石の回廊のように高くそびえており、神秘的な風格だ。ここにきて、今日一の隧道と言っていいかもしれない。それほどまでに圧巻なフォルムはどこぞのRPGゲームに出てきそうな雰囲気すらあった。
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帰り道の途中、海沿いを走っていると、フェリーを発見。どうやら東京湾を挟んだ反対側の神奈川県・三浦半島と繋がっているらしく、フェリーでも来れるのかと感心してしまった。自転車を積む場合は輪行袋に入れずにそのまま積めるとのことで、かなり利便性が良い。房総半島は何気にアクセスがいい。
ゴール地点となる「道の駅富楽里とみやま」に辿りつき、今回のライドはこれにて終了。軽食コーナーにてイワシのつみれ汁とアナゴ寿司、なめろうを焼いたサンガ焼きを頂く。ダシの効いたつみれ汁が全身に沁み渡っていく。サンガ焼きも初めて食べたが非常に美味しかった。房総半島は走りやすく、観光、グルメと楽しめる所が充実しており、とても良い場所だと感じた。
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編集部による南房総ライドはいかがだったでしょうか。ここで紹介したポイントを回れば、だいたい140kmの距離。足早に回れば1日でどのポイントも楽しむことができます。これから春を迎え暖かくなる季節、絶好のサイクリング日和となる季節に、出かけてみてください。今後も機会があれば編集部オススメのサイクリングコースを紹介していければと思います。次回もぜひチェックしてくださいね。
Text:Kosuke Kamata
Photo:So Isobe
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