来る9月23日(日)ロード世界選手権最終日にエリート男子ロードレースが行なわれる。世界各国の精鋭たちが、それぞれの国の威信をかけて闘う267kmのレースに、福島晋一、宮澤崇史、別府史之、土井雪広、新城幸也、畑中勇介が出場。注目の選手たちをチェックしておこう。

強大なチーム力を誇るベルギーvsスペインの様相

フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Unipublicロードレースのメイン会場となるのは、ファルケンブルフを中心とした16.1kmの周回コース。「カウベルグ(登坂距離1200m・平均勾配5.8%)」と「ベメレルベルグ(登坂距離900m・平均勾配5%)」の2つの登りが含まれており、1998年のロード世界選手権で使用された周回コースとほぼ同じだ。

前半はラインレースで、106km地点でフィニッシュラインを通過し、そこから16.1kmの周回コースを10周する。つまり「カウベルグ」と「ベメレルベルグ」を10回ずつ登る。登場する坂の数は27カ所。全長267kmのコースは起伏に富んでいる。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Unipublicアムステル・ゴールドレースとの決定的な違いは、ゴール地点が「カウベルグ」の頂上ではなく、1700m先の平坦直線路に置かれていることだろう。厳密に言えば、アムステル・ゴールドレースのゴール地点通過後も緩い登りが続き、ゴール1200m手前でピークを迎える。

アルデンヌ・クラシックで活躍するクラシックレーサー向きのコースであることに間違いないが、「カウベルグ」からゴールまでの1700mがレース展開を分からないものにする。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vos優勝候補に挙げられるのは、「カウベルグ」を精鋭グループの中でこなせる登坂力と、同時にゴール勝負で優位に立てるスプリント力の持ち主。具体的には、ベルギーのフィリップ・ジルベールやスペインのアレハンドロ・バルベルデらだ。レースはこの二国を中心に展開されると見られる。

ジルベールは今シーズン前半から低迷したものの、直前のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝。昨年「アルデンヌ・クラシック」3連勝を果たしたワロンの星は、復調ぶりをアピールした。コースレイアウトはまさにジルベール向きだと言える。

サイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ)サイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiベルギーには好調のトム・ボーネンもいる。トーマス・デヘントやビョルン・ルークマンス、フレフ・ファンアフェルマート、ジャンニ・メールスマンら、アシスト陣も充実。ジルベールとボーネンのダブルエース体制でレースに挑み、比較的大きな集団でスプリントに持ち込まれた場合はボーネンで勝負するはずだ。

対するスペインはブエルタの総合トップ3を揃える。アルベルト・コンタドール、アレハンドロ・バルベルデ、ホアキン・ロドリゲスの圧倒的な登坂力は、ブエルタの難関山岳で実証済み。マイヨロホを争った3人が手を合わせてアルカンシェル獲得を目指す。

ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vosスペインは他にも3度の世界選手権覇者オスカル・フレイレや、北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス、ダニエル・モレーノらが揃う。難易度的に、スプリント力のあるバルベルデが最も今回のコースに適していると見られている。

強豪イタリアはヴィンチェンツォ・ニーバリをエースに据えているが、小集団でのゴールスプリント勝負に持ち込まれた場合、その勝率はグッと下がる。最後の「カウベルグ」でエースを発射するためにも、イタリアはハードな展開に持ち込む必要がある。サブエースとして、若いモレーノ・モゼールにも注目したい。

コースを試走する日本チームの別府史之(オリカ・グリーンエッジ)らコースを試走する日本チームの別府史之(オリカ・グリーンエッジ)ら photo:Kei Tsuji上記の強豪国は、アムステル・ゴールドレースで3位に入ったペーター・サガン(スロバキア)の動きに目を光らせる。マイヨヴェールを獲得したツール・ド・フランス以降、コンディションが下降傾向であるとサガンは打ち明けているが、持ち前のレース勘で勝負に絡んでくるだろう。

オーストラリアのエースはサイモン・ジェランス。今年ミラノ〜サンレモを制したジェランスは少人数グループ内でのスプリントにめっぽう強い。直前にカナダで行なわれたGPケベックでも登りで飛び出し、スプリントで勝利している。

同様にエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア)、トマ・ヴォクレール(フランス)、マッティ・ブレシェル(デンマーク)らは精鋭グループに残る可能性が高い。開催国オランダはラース・ボームやニキ・テルプストラで勝負を狙う。

ディフェンディングチャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)も出場するが、コース的に大会連覇の可能性は低い。イギリスチームからはブラドレー・ウィギンズも出場する。展開によっては、ブエルタでステージ5勝を飾ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ)にもチャンスがあるだろう。TT連覇を達成したトニ・マルティン(ドイツ)らがデゲンコルブをバックアップする。

日本チームのエリート男子6名は、レース3日前の木曜日に現地に到着。オランダの自宅が近い土井雪広らが中心となり、U23やジュニアの選手たちと周回コースを入念に試走した。エースを決めることなく、日本チームは互いの調子を見ながらレース展開に合わせて走る。

9月22日(土)のU23男子ロードレースには木下智裕(エカーズ)、平井栄一、寺崎武郎、椿大志(ともにブリヂストンアンカー・エスポワール)が出場。同日のエリート女子には全日本チャンピオンの萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)が出場する。また、エリート男子と同じ9月23日(日)のジュニア男子には西村大輝(昭和第一学園高校)、小橋勇利(ボンシャンス飯田)、徳田優(北桑田高校)、横山航太(篠ノ井高校)の4名が出場する予定だ。

text&photo:Kei Tsuji in Limburg, Netherlands

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