2012/09/17(月) - 23:16
最終日第3ステージは、リーダージャージを着るマキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)がふたたび圧倒のスプリントで制し、自らの手で総合優勝を決めた。山岳賞はニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)、そしてU23賞は中尾佳佑(順天堂大学)に。
各賞・順位の争いが焦点に
9月17日(月)、ツール・ド・北海道最終日第3ステージが美瑛から札幌市モエレ沼公園までの196.2kmで行われた。
スタート地点の美瑛の朝は曇りで気温20度。過ごしやすい天候だ。95名でスタートしたこの大会も、3日目には73名まで数を減らした。しかし前日の第2ステージが意外にも大差の付かない展開だったので、各賞や総合順位の差は数秒程度。この日2回あるホットスポット(3秒2秒1秒)とゴールのボーナスタイム(10秒6秒4秒)で十分に逆転が可能な範囲で、予断を許さない状況だ。
美瑛駅前をとおりパレード走行の車列も、パッチワークの路へ至る上りに差し掛かると正式スタート。いきなりアタックがかかるが、チームNIPPOがハイペースで展開し一切の逃げを許さない。この美瑛丘陵の20kmほどはアップダウンと直角コーナーが連続し逃げが決まりやすいもの。そのため佐野淳哉をはじめとするNIPPO勢が強烈にペースを上げてアタックを封じ込める。
一つ目のKOMは山岳リーダーのニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が先頭通過し、逆転を狙う井上和郎(ブリヂストンアンカー)は2位通過と差を広げられる。
その後はNIPPOの先頭引きにマトリックスパワータグの池部壮太と安原大貴もローテーションに加わりコントロールする。マトリックスの狙いは、ボーナスタイムを獲得して総合4位の窪木一茂のジャンプアップ。
窪木一茂が総合3位に浮上
一つ目のHSは窪木が1位通過、リケーゼ、総合2位の西薗良太(ブリヂストンアンカー)の順に通過。3秒を獲得した窪木は、同タイムながら増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を抜いて暫定3位に浮上。そして総合2位で窪木と5秒差だった西薗は3秒にまで差を縮められる。
この動きに総合U23賞を狙う、タイム差なしの中尾佳佑(順天堂大学)、雨宮正樹(日本大学)、山本隼(中央大学)の3人も動きを見せるが獲得できない。1秒でも取れば1位を確定的にできるところだ。
各所でそれぞれの戦いのあるのが最終ステージだ。
この後もNIPPO主導でマトリックスも加わる先頭はハイペースでコントロールし、数人の逃げはあってもすべて封じ込める。2つ目最後のKOMもニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が先頭通過して山岳賞を確定させる。
これら山岳を中心に清水都貴らブリヂストン勢が動き、西薗の逆転を狙うがこれら動きも封じ込められる。
そして最後のHSも一つ目と同じ順位で通過、西薗は3位通過で窪木との差をかろうじて1秒差にとどめる。これが結局功を奏する。
リケーゼ圧倒のスプリントで自身初のステージレース総合優勝
ゴールへ向けてペースが上がり、NIPPO主体のコントロールから、各チームのスプリント狙いの列車に切り替わる。そしてモエレ沼へ。ラスト300mの直線へは宇都宮ブリッツェン勢が先頭で入るがニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が豪快に先行する。ハミルトンの背後からリケーゼがスパートして圧倒的なスプリントで優勝。自らの動きで個人総合優勝を確定させた。
リケーゼはステージレースでの総合優勝は初めてだ。リケーゼの後ろにいた小室雅成(キャノンデール・スペースゼロポイント)が3位、最終コーナーで他選手と接触していた窪木は4位となりボーナスタイムを得ることができず、ジャンプアップは3位までとなった。
3ステージと短い大会だったが、最終日にステージレースの動きが凝縮される展開に。少しのミスが命取りになる展開でも自らで総合優勝を決められたリケーゼそしてNIPPOの強さはやはり世界で戦うチームのものだ。
大学生たちの戦い
大学生にとってはこの大会に出場することが年間の大きな目標の一つだ。そして出場した選手たちはプロ選手たちが戦うUCIレースで、成果を見せることもあれば洗礼を受けることも。まずはトラブルがあってもそれを乗り越えてモエレ沼までたどり着くことが、最低限だがハードルの高い目標だ。
第1ステージで鹿屋体育大学の黒枝士揮が優勝。他大学選手も上位に入り、フレッシュな状態でのスプリントでは上位に入ることができることを証明。
第2ステージはわずかだったが大学生が集団をコントロールする場面があった。山本元喜は逃げて存在感を示した。黒枝はその後にプロからの洗礼を浴びることになった。身を粉にして働いたアシスト選手たちは散っていった。しかしそのプロ達、たとえば西薗、窪木、清水、内間、吉田、飯野らは元学連選手。窪木にいたっては半年前まで大学生だった。
黒枝が陥落したあとは中尾ら3人が同タイムでU23賞を競う展開に。プロの走りには届かないが彼らなりの競い方で最終ステージを戦った。大学で自転車競技をすることの意味、特に海外を目指すにあたって決して遅すぎるとは言えないものがあることを示した。
結果
第3ステージ
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)4時間38分32秒
2位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)
3位 小室雅成(キャノンデール・スペースゼロポイント)
4位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)
5位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)
6位 ショーン・マズィク(ジェリーベリー・サイクリング)
7位 リカルド・ヴァンデルヴェルデ(ジェリーベリー・サイクリング)
8位 吉田隼人(ブリヂストンアンカー)
9位 雨宮正樹(日本大学)
10位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)
個人総合時間賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)12時間34分49秒
2位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+22秒
3位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)+23秒
4位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+26秒
5位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)+29秒
6位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)+30秒
7位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+35秒
8位 鈴木譲(シマノレーシング)+39秒
9位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)+42秒
10位 シルヴァン・マーティン(OCBCシンガポール)+44秒
個人総合ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)76点
2位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)41点
3位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)38点
個人総合山岳賞
1位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)21点
2位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)15点
3位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)9点
個人総合U23賞
1位 中尾佳佑(順天堂大学)12時間35分34秒
2位 雨宮正樹(日本大学)
3位 山本隼(中央大学)
チーム総合時間賞
1位 宇都宮ブリッツェン 37時間46分12秒
2位 ブリヂストンアンカー +05秒
3位 チームNIPPO +48秒
photo&text:高木秀彰
各賞・順位の争いが焦点に
9月17日(月)、ツール・ド・北海道最終日第3ステージが美瑛から札幌市モエレ沼公園までの196.2kmで行われた。
スタート地点の美瑛の朝は曇りで気温20度。過ごしやすい天候だ。95名でスタートしたこの大会も、3日目には73名まで数を減らした。しかし前日の第2ステージが意外にも大差の付かない展開だったので、各賞や総合順位の差は数秒程度。この日2回あるホットスポット(3秒2秒1秒)とゴールのボーナスタイム(10秒6秒4秒)で十分に逆転が可能な範囲で、予断を許さない状況だ。
美瑛駅前をとおりパレード走行の車列も、パッチワークの路へ至る上りに差し掛かると正式スタート。いきなりアタックがかかるが、チームNIPPOがハイペースで展開し一切の逃げを許さない。この美瑛丘陵の20kmほどはアップダウンと直角コーナーが連続し逃げが決まりやすいもの。そのため佐野淳哉をはじめとするNIPPO勢が強烈にペースを上げてアタックを封じ込める。
一つ目のKOMは山岳リーダーのニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が先頭通過し、逆転を狙う井上和郎(ブリヂストンアンカー)は2位通過と差を広げられる。
その後はNIPPOの先頭引きにマトリックスパワータグの池部壮太と安原大貴もローテーションに加わりコントロールする。マトリックスの狙いは、ボーナスタイムを獲得して総合4位の窪木一茂のジャンプアップ。
窪木一茂が総合3位に浮上
一つ目のHSは窪木が1位通過、リケーゼ、総合2位の西薗良太(ブリヂストンアンカー)の順に通過。3秒を獲得した窪木は、同タイムながら増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を抜いて暫定3位に浮上。そして総合2位で窪木と5秒差だった西薗は3秒にまで差を縮められる。
この動きに総合U23賞を狙う、タイム差なしの中尾佳佑(順天堂大学)、雨宮正樹(日本大学)、山本隼(中央大学)の3人も動きを見せるが獲得できない。1秒でも取れば1位を確定的にできるところだ。
各所でそれぞれの戦いのあるのが最終ステージだ。
この後もNIPPO主導でマトリックスも加わる先頭はハイペースでコントロールし、数人の逃げはあってもすべて封じ込める。2つ目最後のKOMもニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が先頭通過して山岳賞を確定させる。
これら山岳を中心に清水都貴らブリヂストン勢が動き、西薗の逆転を狙うがこれら動きも封じ込められる。
そして最後のHSも一つ目と同じ順位で通過、西薗は3位通過で窪木との差をかろうじて1秒差にとどめる。これが結局功を奏する。
リケーゼ圧倒のスプリントで自身初のステージレース総合優勝
ゴールへ向けてペースが上がり、NIPPO主体のコントロールから、各チームのスプリント狙いの列車に切り替わる。そしてモエレ沼へ。ラスト300mの直線へは宇都宮ブリッツェン勢が先頭で入るがニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)が豪快に先行する。ハミルトンの背後からリケーゼがスパートして圧倒的なスプリントで優勝。自らの動きで個人総合優勝を確定させた。
リケーゼはステージレースでの総合優勝は初めてだ。リケーゼの後ろにいた小室雅成(キャノンデール・スペースゼロポイント)が3位、最終コーナーで他選手と接触していた窪木は4位となりボーナスタイムを得ることができず、ジャンプアップは3位までとなった。
3ステージと短い大会だったが、最終日にステージレースの動きが凝縮される展開に。少しのミスが命取りになる展開でも自らで総合優勝を決められたリケーゼそしてNIPPOの強さはやはり世界で戦うチームのものだ。
大学生たちの戦い
大学生にとってはこの大会に出場することが年間の大きな目標の一つだ。そして出場した選手たちはプロ選手たちが戦うUCIレースで、成果を見せることもあれば洗礼を受けることも。まずはトラブルがあってもそれを乗り越えてモエレ沼までたどり着くことが、最低限だがハードルの高い目標だ。
第1ステージで鹿屋体育大学の黒枝士揮が優勝。他大学選手も上位に入り、フレッシュな状態でのスプリントでは上位に入ることができることを証明。
第2ステージはわずかだったが大学生が集団をコントロールする場面があった。山本元喜は逃げて存在感を示した。黒枝はその後にプロからの洗礼を浴びることになった。身を粉にして働いたアシスト選手たちは散っていった。しかしそのプロ達、たとえば西薗、窪木、清水、内間、吉田、飯野らは元学連選手。窪木にいたっては半年前まで大学生だった。
黒枝が陥落したあとは中尾ら3人が同タイムでU23賞を競う展開に。プロの走りには届かないが彼らなりの競い方で最終ステージを戦った。大学で自転車競技をすることの意味、特に海外を目指すにあたって決して遅すぎるとは言えないものがあることを示した。
結果
第3ステージ
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)4時間38分32秒
2位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)
3位 小室雅成(キャノンデール・スペースゼロポイント)
4位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)
5位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)
6位 ショーン・マズィク(ジェリーベリー・サイクリング)
7位 リカルド・ヴァンデルヴェルデ(ジェリーベリー・サイクリング)
8位 吉田隼人(ブリヂストンアンカー)
9位 雨宮正樹(日本大学)
10位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)
個人総合時間賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)12時間34分49秒
2位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+22秒
3位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)+23秒
4位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+26秒
5位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)+29秒
6位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)+30秒
7位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+35秒
8位 鈴木譲(シマノレーシング)+39秒
9位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)+42秒
10位 シルヴァン・マーティン(OCBCシンガポール)+44秒
個人総合ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)76点
2位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)41点
3位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)38点
個人総合山岳賞
1位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)21点
2位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)15点
3位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)9点
個人総合U23賞
1位 中尾佳佑(順天堂大学)12時間35分34秒
2位 雨宮正樹(日本大学)
3位 山本隼(中央大学)
チーム総合時間賞
1位 宇都宮ブリッツェン 37時間46分12秒
2位 ブリヂストンアンカー +05秒
3位 チームNIPPO +48秒
photo&text:高木秀彰
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