2010/10/22(金) - 10:52
シーズン初戦、初出場のツール・ド・ランカウイで劇的にステージ優勝を掴んだ愛三工業レーシングチーム。ランカウイと同クラス、アジアツアーオークラスのツアー・オブ・ハイナンでも、ステージ優勝することを目標に掲げ、9日間のレースに挑んだ。
第1ステージ、街を使った周回レースで5位に食い込んだ盛一大。続く第2ステージでは西谷泰治がトップと僅差の2位に入賞する。幸先いいスタートが切れたが、その後成績が低迷してしまう。日々繰り返されるゴールスプリントだったが、ラインがうまく組めなかったり、行く手を阻まれてしまったり……。
そんな不調に追い打ちをかけたのが、自然災害ともいえる大雨だ。悪天候による過酷なレースや急なレーススケジュールの変更など、成績が出ないジレンマを抱える彼らにはツラい日々が続いた。
しだいに残りのステージ数が減り、目標のステージ優勝ができないまま最終日を迎えることとなる。第9ステージスタート前、表情を曇らせていた西谷。この日も集団スプリントになることが考えられたため、ステージ優勝のプレッシャーは彼に重くのしかかる。
結果はスプリントに絡み5位。プロツアーチームと混走での成績のため、決して悪いとは思わないが、彼らは目標を達成できなかった。
そもそも、今回のレースは逃げができた場合のエースは盛、集団スプリントの場合は西谷というWエース体制だった。
しかし、ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)がリーダージャージを着ると、アスタナはカザフスタン・ナショナルチームとタッグを組んで、集団を徹底的にコントロール。ゴールまで逃げ切るという展開を阻止し、日々勝負は集団スプリントに持ち越された。そのため西谷1人がエースとして走る形になった。
西谷はこう振り返る。「自分の実力に失望しています。ただ今回、何回もスプリントに参加できました。この経験は無駄ではない。最終日はできるかぎりのことをやろうと言って、途中のスプリントポイントでも動いたし、ゴールスプリントにも挑んだ。みんなでここまでやってきたので、結果は結果として受け止めて、また次のレースや目標に向かって頑張っていきたいと思います」。
田中光輝監督も「ステージ優勝できなかったけど、今後に繋がる収穫を得ることはできたのではないだろうか? でも、やっぱり1勝したかった……。勝つことの厳しさが身に染みましたね。選手もその重みを感じたはずです」と話す。
チームのキャプテン、綾部勇成にレースを総括してもらった。
「初めてのツアー・オブ・ハイナン出場でしたが、あと一歩でステージ優勝できそうな日があった。でも後半にきて、スプリントの場面で前半と同じような結果が出せなかったのは、チームのパフォーマンスが落ちてしまったのだと思う。
海口にゴールする第5ステージ、残り3km地点の橋で落車が起きたとき、チームメンバー全員が後ろに取り残されてしまって、スプリントに加われなかったことも反省点。ゴール前の位置取りができていなかった。
でも逆に第2ステージで、西谷さんが2位に入ったときはラインがうまく連携できていた。悪いこともあったけど、いいこともあったレースだったと思う。スプリントに加わって2位に入れたことでオークラスでも太刀打ちできることがわかりました。
今年、より多くのアジアツアーを回ってアジアのレース環境に慣れてきました。ヨーロッパに行かなくても、アジアへもプロチームやプロコンチネンタルチームなどの強いチームがくる。そこで戦えば自分たちの力を試すことができるし、実力の向上にもつながってくる。日本だけでなくレベルの高いレースに出ることが大事だと思います。
アジアで結果を出して、認められて、それからチームの規模を大きくするとともにヨーロッパのレースに挑みたいですね。だからまずはアジアでのビッグレースで活躍することが目標です。
来季も同じようにアジアツアーを回っていくかと思いますが、招待していただければ1月末〜のツール・ド・ランカウイに出場する予定です。すでにランカウイでステージ1勝を経験しているので、次はステージ2勝することが目標になります。
もちろん週末のジャパンカップに出場します。レベルの高いレースを走ってきて、経験したことを活かした走りがしたいです。海外のトップチームも出場しますが、日本のチームはジャパンカップのコースを走り慣れているし、レース展開も知っている。その強みを活かしたい。優勝するつもりで表彰台をめざします」。
アジアツアーでの挑戦を続ける愛三工業レーシングチーム。本場ヨーロッパのレースを目指す選手が多い中で、日本とヨーロッパの中間点にあるアジアに焦点を絞った彼らの動きは興味深い。
歴史が浅く、環境が整っていない地域もあるため、想像を絶するトラブルが多いのもアジアツアーの特徴。そのなかに、結果が付いてこない葛藤を抱えながらも、一生懸命前に進もうとする彼らの姿がある。
また、アジアツアーでのUCIポイントは、ロンドンオリンピックや世界選手権への国別出場枠に大きく関わってくる。UCIポイントを多く獲得した選手が代表選手になれるという確約はないが、彼らがアジアツアーで戦って得るポイントは間違いなく世界につながると言えるだろう。
そんなアジアの頂点を目指す愛三工業レーシングチームを応援したい。
text&photo:Sonoko Tanaka
第1ステージ、街を使った周回レースで5位に食い込んだ盛一大。続く第2ステージでは西谷泰治がトップと僅差の2位に入賞する。幸先いいスタートが切れたが、その後成績が低迷してしまう。日々繰り返されるゴールスプリントだったが、ラインがうまく組めなかったり、行く手を阻まれてしまったり……。
そんな不調に追い打ちをかけたのが、自然災害ともいえる大雨だ。悪天候による過酷なレースや急なレーススケジュールの変更など、成績が出ないジレンマを抱える彼らにはツラい日々が続いた。
しだいに残りのステージ数が減り、目標のステージ優勝ができないまま最終日を迎えることとなる。第9ステージスタート前、表情を曇らせていた西谷。この日も集団スプリントになることが考えられたため、ステージ優勝のプレッシャーは彼に重くのしかかる。
結果はスプリントに絡み5位。プロツアーチームと混走での成績のため、決して悪いとは思わないが、彼らは目標を達成できなかった。
そもそも、今回のレースは逃げができた場合のエースは盛、集団スプリントの場合は西谷というWエース体制だった。
しかし、ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)がリーダージャージを着ると、アスタナはカザフスタン・ナショナルチームとタッグを組んで、集団を徹底的にコントロール。ゴールまで逃げ切るという展開を阻止し、日々勝負は集団スプリントに持ち越された。そのため西谷1人がエースとして走る形になった。
西谷はこう振り返る。「自分の実力に失望しています。ただ今回、何回もスプリントに参加できました。この経験は無駄ではない。最終日はできるかぎりのことをやろうと言って、途中のスプリントポイントでも動いたし、ゴールスプリントにも挑んだ。みんなでここまでやってきたので、結果は結果として受け止めて、また次のレースや目標に向かって頑張っていきたいと思います」。
田中光輝監督も「ステージ優勝できなかったけど、今後に繋がる収穫を得ることはできたのではないだろうか? でも、やっぱり1勝したかった……。勝つことの厳しさが身に染みましたね。選手もその重みを感じたはずです」と話す。
チームのキャプテン、綾部勇成にレースを総括してもらった。
「初めてのツアー・オブ・ハイナン出場でしたが、あと一歩でステージ優勝できそうな日があった。でも後半にきて、スプリントの場面で前半と同じような結果が出せなかったのは、チームのパフォーマンスが落ちてしまったのだと思う。
海口にゴールする第5ステージ、残り3km地点の橋で落車が起きたとき、チームメンバー全員が後ろに取り残されてしまって、スプリントに加われなかったことも反省点。ゴール前の位置取りができていなかった。
でも逆に第2ステージで、西谷さんが2位に入ったときはラインがうまく連携できていた。悪いこともあったけど、いいこともあったレースだったと思う。スプリントに加わって2位に入れたことでオークラスでも太刀打ちできることがわかりました。
今年、より多くのアジアツアーを回ってアジアのレース環境に慣れてきました。ヨーロッパに行かなくても、アジアへもプロチームやプロコンチネンタルチームなどの強いチームがくる。そこで戦えば自分たちの力を試すことができるし、実力の向上にもつながってくる。日本だけでなくレベルの高いレースに出ることが大事だと思います。
アジアで結果を出して、認められて、それからチームの規模を大きくするとともにヨーロッパのレースに挑みたいですね。だからまずはアジアでのビッグレースで活躍することが目標です。
来季も同じようにアジアツアーを回っていくかと思いますが、招待していただければ1月末〜のツール・ド・ランカウイに出場する予定です。すでにランカウイでステージ1勝を経験しているので、次はステージ2勝することが目標になります。
もちろん週末のジャパンカップに出場します。レベルの高いレースを走ってきて、経験したことを活かした走りがしたいです。海外のトップチームも出場しますが、日本のチームはジャパンカップのコースを走り慣れているし、レース展開も知っている。その強みを活かしたい。優勝するつもりで表彰台をめざします」。
アジアツアーでの挑戦を続ける愛三工業レーシングチーム。本場ヨーロッパのレースを目指す選手が多い中で、日本とヨーロッパの中間点にあるアジアに焦点を絞った彼らの動きは興味深い。
歴史が浅く、環境が整っていない地域もあるため、想像を絶するトラブルが多いのもアジアツアーの特徴。そのなかに、結果が付いてこない葛藤を抱えながらも、一生懸命前に進もうとする彼らの姿がある。
また、アジアツアーでのUCIポイントは、ロンドンオリンピックや世界選手権への国別出場枠に大きく関わってくる。UCIポイントを多く獲得した選手が代表選手になれるという確約はないが、彼らがアジアツアーで戦って得るポイントは間違いなく世界につながると言えるだろう。
そんなアジアの頂点を目指す愛三工業レーシングチームを応援したい。
text&photo:Sonoko Tanaka
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