X2Oトロフェー第5戦「アゼンクロス」で実現した今季3度目のマチューvsワウト対決はパンクが決定打に。全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は会心の走りで20位フィニッシュを果たした。

ファンデルプールとファンアールトの直接対決が実現。大観衆のファンがレースを見に訪れた photo:CorVos
クリスマスから年末年始の超過密スケジュールをフルスロットルで進行中の欧州シクロクロスカレンダー。デンデルモンデで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第8戦に続く12月29日(月)に開催されたのは、X2Oトロフェー第5戦「アゼンクロス」だ。ベルギーのアントワープ県に位置するロエンハウトの特設コースは前日に続いて完全ドライ。硬く締まった土はハイスピードレースを演出するが、表面部分だけが溶けてスリッピーというハイリスクなコース状況に仕上がった。
プライオリティ最高位のUCIワールドカップと比べれば選手層は薄いものの、男子エリートにはマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が二人とも参戦。今季3度目、ファンデルプールがCX引退を仄めかしていることで、来シーズンには叶わないかもしれない直接対決を目に焼き付けようと、熱狂的なベルギーファンが会場を埋め尽くした。
また、男子エリートレースには全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、オランダベース/ウォータスレイの梶鉄輝と岡山優太が連続参戦。男子ジュニアレースに参戦した山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)は優勝者から2分21秒遅れの31位に入り、12月21日のコクサイデからジュニアレースで5連続完走を果たしている。
女子エリート:ブラントが連勝記録を12に伸ばす ダークホースのゼマノバが驚きの2位

ブラント、バックステッド、ゼマノバが先頭グループを組む photo:CorVos
女子エリートレースでは連戦連勝中、実に連勝記録を11に伸ばしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)がこの日も独走勝利。しかし、「ここで差をつけるのは難しかった」と本人が振り返るように、決して楽な勝利ではなかった。
序盤は様子を窺い、スタートから15分が経過した頃にアタックしたブラント。圧倒的な力を誇る絶対女王に食い下がったのは今季トップ10入りを繰り返してきたダークホースのクリスティナ・ゼマノバ(チェコ)だった。

ゼマノバを引き離してフィニッシュしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) photo:CorVos

連勝記録を12に伸ばしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) photo:CorVos
ブラントは途中タイヤをノーマルからマッド用に切り替え、最終周回に強烈なアタック。ゼマノバや復帰2戦目のゾーイ・バックステッド(イギリス、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)を引き離したままフィニッシュラインに飛び込んだ。「もっとパワーを伝えられるようにマッドタイヤに交換。スプリントを待つのは得策じゃないと分かっていた。楽しいレースだったけど、どこでリードを奪うか見極めるのは難しかった」と、連勝記録を12に伸ばしたベテランはレースを振り返っている。
一方「すごいレースを走れた!」と喜ぶのはビッグレースでキャリアハイの2位に食い込んだゼマノバ。「何度もこんなレースを夢見てきた。憧れのルシンダと勝負できたのは本当に嬉しい。表彰台で撮った写真を待ち受けにしたい」と喜んだ。
男子エリート:マチューvsワウトの一騎打ちはパンクで決着 織田聖が会心の走りで20位

後続を引き離したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)だが、ファンアールトはパンクで後退 photo:CorVos
欧州王者トーン・アールツ(ベルギー、デスハフト・ヘンスCXチーム)がホールショットを奪った男子エリートレースは、序盤から大人数が一列棒状でスピードレースを展開した。「朝起きてからも嫌な疲労感はなく、もしかしていい状態かも、と思いながら会場へ移動した」と振り返る織田は、ファンデルプールの背後からスタートダッシュを決め、17秒遅れの19番手という好位置で一周目を完了。その後はトップグループから距離を空けられつつも、ワールドツアー選手たちと同じパックに加わり、ラップタイムを大きく落とすことなくレースを進めた。
先頭グループ内ではファンデルプールが手を伸ばした観客と接触してバランスを崩すシーンがあったものの、大きな動きはないまま2周回(周回数は8周に決定)を完了。すると「調子が良かったので序盤から主導権を握って、プレッシャーをかけてきたマチューとの一騎打ちに持ち込もうと思った」と決意したファンアールトが猛然と加速。飛び乗ったファデンルプールと共に後続を突き放し、ついに今季初のファンアールトとファンデルプールの直接対決が始まろうとした。
マチューxワウトの第1ラウンドとなったW杯第5戦は勝負にならず、第2ラウンドのX2Oトロフェー第4戦はファンアールトの落車で先延ばしになっていた直接対決が遂に実現。ファンデルプールも積極的にペースアップするファンアールトに同調して加速していたが、ファンの興奮が最高潮に達する中、ファンアールトが突如後退してしまう。原因は、なんとまたしてもリアタイヤのパンク。後輪を引きずりながら走る3度の世界王者は、ピットまでの距離が遠い不運も重なって完全にファンデルプールの背後から消え去ってしまう。ようやくピットでバイクを交換した時には後続グループに合流するのが精一杯だった。

独走勝利を挙げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

パンクに泣いたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は10位 photo:CorVos
「結局あの失敗が決定打になった。ピットエリアから遠く離れた非常に悪いタイミングで2回パンクしてしまったんだ。残念だったけど、コース沿いのファンの声援がモチベーションを保ってくれた」と、最終的に10位になったライバルを大きく引き離してファンデルプールが独走する。今季唯一ファンデルプールに食い下がったティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)不在のこのレースで、彼の独走に待ったをかける選手は誰もいなかった。
「地元に近いレースを走るのは楽しいよ。今日はかなり速く走れたのでハッピー」とレースを振り返るファンデルプールは、ファンアールトのパンクを残念がる気持ちを隠さない。「すぐには彼が遅れたことに気づかなかった。声援が大きすぎて何がなんだか分からなかったよ。ギャップが急に大きくなったのを把握し、何かが起きたと分かったんだ。レースの展開としては残念だったよ」。
接触したファンについても「彼はただ応援していただけだったと思う。悪意があったような感じもないしね。ただかなり高速だったから落車しないでラッキーだったよ。ファンがあまりにも多いとこういうことはあり得るからね」と、大人の対応でインタビューを締め括っている。

X2Oトロフェー2025-2026第5戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
ラップアウトの危険性もない位置をキープし続けた織田は22番手で最終ラップに入り、最後はフィニッシュライン手前でロットに所属するイェノ・ベルクムース(ベルギー)を下して20位フィニッシュ。会心の走りで渡欧後2回目のエリートレース完走を果たした。
「ワールドカップに比べれば選手層は厚くいないが、それでもこの結果は素直に嬉しい。コースとの相性、自分自身のコンディションもよく、満足のいくレースができた」と自身のブログでレースを振り返っている。

クリスマスから年末年始の超過密スケジュールをフルスロットルで進行中の欧州シクロクロスカレンダー。デンデルモンデで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第8戦に続く12月29日(月)に開催されたのは、X2Oトロフェー第5戦「アゼンクロス」だ。ベルギーのアントワープ県に位置するロエンハウトの特設コースは前日に続いて完全ドライ。硬く締まった土はハイスピードレースを演出するが、表面部分だけが溶けてスリッピーというハイリスクなコース状況に仕上がった。
プライオリティ最高位のUCIワールドカップと比べれば選手層は薄いものの、男子エリートにはマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が二人とも参戦。今季3度目、ファンデルプールがCX引退を仄めかしていることで、来シーズンには叶わないかもしれない直接対決を目に焼き付けようと、熱狂的なベルギーファンが会場を埋め尽くした。
また、男子エリートレースには全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、オランダベース/ウォータスレイの梶鉄輝と岡山優太が連続参戦。男子ジュニアレースに参戦した山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)は優勝者から2分21秒遅れの31位に入り、12月21日のコクサイデからジュニアレースで5連続完走を果たしている。
女子エリート:ブラントが連勝記録を12に伸ばす ダークホースのゼマノバが驚きの2位

女子エリートレースでは連戦連勝中、実に連勝記録を11に伸ばしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)がこの日も独走勝利。しかし、「ここで差をつけるのは難しかった」と本人が振り返るように、決して楽な勝利ではなかった。
序盤は様子を窺い、スタートから15分が経過した頃にアタックしたブラント。圧倒的な力を誇る絶対女王に食い下がったのは今季トップ10入りを繰り返してきたダークホースのクリスティナ・ゼマノバ(チェコ)だった。


ブラントは途中タイヤをノーマルからマッド用に切り替え、最終周回に強烈なアタック。ゼマノバや復帰2戦目のゾーイ・バックステッド(イギリス、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)を引き離したままフィニッシュラインに飛び込んだ。「もっとパワーを伝えられるようにマッドタイヤに交換。スプリントを待つのは得策じゃないと分かっていた。楽しいレースだったけど、どこでリードを奪うか見極めるのは難しかった」と、連勝記録を12に伸ばしたベテランはレースを振り返っている。
一方「すごいレースを走れた!」と喜ぶのはビッグレースでキャリアハイの2位に食い込んだゼマノバ。「何度もこんなレースを夢見てきた。憧れのルシンダと勝負できたのは本当に嬉しい。表彰台で撮った写真を待ち受けにしたい」と喜んだ。
男子エリート:マチューvsワウトの一騎打ちはパンクで決着 織田聖が会心の走りで20位

欧州王者トーン・アールツ(ベルギー、デスハフト・ヘンスCXチーム)がホールショットを奪った男子エリートレースは、序盤から大人数が一列棒状でスピードレースを展開した。「朝起きてからも嫌な疲労感はなく、もしかしていい状態かも、と思いながら会場へ移動した」と振り返る織田は、ファンデルプールの背後からスタートダッシュを決め、17秒遅れの19番手という好位置で一周目を完了。その後はトップグループから距離を空けられつつも、ワールドツアー選手たちと同じパックに加わり、ラップタイムを大きく落とすことなくレースを進めた。
先頭グループ内ではファンデルプールが手を伸ばした観客と接触してバランスを崩すシーンがあったものの、大きな動きはないまま2周回(周回数は8周に決定)を完了。すると「調子が良かったので序盤から主導権を握って、プレッシャーをかけてきたマチューとの一騎打ちに持ち込もうと思った」と決意したファンアールトが猛然と加速。飛び乗ったファデンルプールと共に後続を突き放し、ついに今季初のファンアールトとファンデルプールの直接対決が始まろうとした。
マチューxワウトの第1ラウンドとなったW杯第5戦は勝負にならず、第2ラウンドのX2Oトロフェー第4戦はファンアールトの落車で先延ばしになっていた直接対決が遂に実現。ファンデルプールも積極的にペースアップするファンアールトに同調して加速していたが、ファンの興奮が最高潮に達する中、ファンアールトが突如後退してしまう。原因は、なんとまたしてもリアタイヤのパンク。後輪を引きずりながら走る3度の世界王者は、ピットまでの距離が遠い不運も重なって完全にファンデルプールの背後から消え去ってしまう。ようやくピットでバイクを交換した時には後続グループに合流するのが精一杯だった。


「結局あの失敗が決定打になった。ピットエリアから遠く離れた非常に悪いタイミングで2回パンクしてしまったんだ。残念だったけど、コース沿いのファンの声援がモチベーションを保ってくれた」と、最終的に10位になったライバルを大きく引き離してファンデルプールが独走する。今季唯一ファンデルプールに食い下がったティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)不在のこのレースで、彼の独走に待ったをかける選手は誰もいなかった。
「地元に近いレースを走るのは楽しいよ。今日はかなり速く走れたのでハッピー」とレースを振り返るファンデルプールは、ファンアールトのパンクを残念がる気持ちを隠さない。「すぐには彼が遅れたことに気づかなかった。声援が大きすぎて何がなんだか分からなかったよ。ギャップが急に大きくなったのを把握し、何かが起きたと分かったんだ。レースの展開としては残念だったよ」。
接触したファンについても「彼はただ応援していただけだったと思う。悪意があったような感じもないしね。ただかなり高速だったから落車しないでラッキーだったよ。ファンがあまりにも多いとこういうことはあり得るからね」と、大人の対応でインタビューを締め括っている。

ラップアウトの危険性もない位置をキープし続けた織田は22番手で最終ラップに入り、最後はフィニッシュライン手前でロットに所属するイェノ・ベルクムース(ベルギー)を下して20位フィニッシュ。会心の走りで渡欧後2回目のエリートレース完走を果たした。
「ワールドカップに比べれば選手層は厚くいないが、それでもこの結果は素直に嬉しい。コースとの相性、自分自身のコンディションもよく、満足のいくレースができた」と自身のブログでレースを振り返っている。
X2Oトロフェー2025-2026第5戦 女子エリート結果
| 1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) | 48:34 |
| 2位 | クリスティナ・ゼマノバ(チェコ) | +0:05 |
| 3位 | マノン・バッカー(オランダ、クレラン・コレンドン) | +0:12 |
| 4位 | ゾーイ・バックステッド(イギリス、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト) | +0:22 |
| 5位 | マリオン・ノーブルリブロール(ベルギー、クレラン・コレンドン) | +0:35 |
| 6位 | アンマリー・ワースト(オランダ、セブンレーシング) | +0:36 |
| 7位 | ラリッサ・ハルトグ(オランダ) | +0:37 |
| 8位 | ジュリー・ブラウワーズ(ベルギー、シャルル・リエジョワ・ロースタリー) | |
| 9位 | マリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス・プロタイム) | +1:20 |
| 10位 | レベッカ・ガリボルディ(イタリア、アレ・コルナゴ) | +1:21 |
X2Oトロフェー2025-2026第5戦 男子エリート結果
| 1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 57:48 |
| 2位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:46 |
| 3位 | ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ、リドレーレーシングチーム) | +0:57 |
| 4位 | ライアン・カンプ(オランダ) | |
| 5位 | トーン・アールツ(ベルギー、デスハフト・ヘンスCXチーム) | |
| 6位 | ジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア、アレ・コルナゴ) | +0:58 |
| 7位 | アントン・フェルディナンド(ベルギー) | +1:00 |
| 8位 | キャメロン・メイソン(イギリス、セブンレーシング) | +1:03 |
| 9位 | ヨルベン・ラウリッセン(ベルギー、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) | +1:15 |
| 10位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:26 |
| 20位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +3:15 |
| 39位 | 岡山優太(オランダベース/ウォータスレイ) | LAP |
| 43位 | 梶鉄輝(オランダベース/ウォータスレイ) | LAP |
text:So.Isobe
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