2010/10/17(日) - 10:22
2010年10月16日、冷たい雨が降るイタリア北部・ロンバルディア州を舞台に、第104回ジロ・ディ・ロンバルディアが開催された。2年連続でヨーロッパ最終戦にあたるこの伝統レースを制したのはフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。他を寄せ付けない強さで、文句無しの独走勝利を収めた。
晩秋のロンバルディア州を駆け抜けるジロ・ディ・ロンバルディアは、通称「落ち葉のクラシック」。色づいた樹々に覆われたアップダウンコースを駆け抜ける難易度の高いクラシックレースであり、由緒正しき「モニュメント(5大クラシックの総称)」の一つに数えられる。
今年はスタート地点が26年ぶりにミラノに戻され、距離が260kmに延長。しかも終盤に「コルマ・ディ・ソルマーノ」という距離の長い上りが追加されたことで、コースの難易度が増した。更に追い討ちをかけるように、低い気温と冷たい雨が過酷なレースコンディションをもたらした。
大都市ミラノをスタートしたのは195名。北上してコモ湖に向かうにつれて天候は悪化し、レース後半には本降りに。最終的に34名だけが完走するというサバイバルレースが繰り広げられた。
15km地点で逃げを試みたのはミハエル・アルバジーニ(スイス、チームHTC・コロンビア)やキェール・カールストローム(フィンランド、チームスカイ)ら6名。この逃げグループは最大8分46秒のリード(50km地点)を得た。
レース後半に入ると、本降りの雨が落車を誘発した。特に、175km地点のレッコに向かう標高差500mのダウンヒル区間で落車が多発。
先頭グループではトニー・ギャロパン(フランス、コフィディス)とジャンルーカ・ミレンダ(イタリア、ISD・ネーリ)が落車で遅れ、メイン集団でもダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)が滑りやすい路面の餌食になってしまう。悪天候が荒れたレース展開をもたらした。
落車によって4名に絞られた先頭グループは3分のリードを保ったまま「マドンナ・デル・ギザッロ」の上りへ。
ここで先頭はアルバジーニの独走状態となり、オメガファーマ・ロットが牽引するメイン集団からはウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD・ネーリ)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、ケースデパーニュ)がアタック。ギザッロ教会が佇む上りの頂上通過後、アルバジーニに代わってこの3名が先頭に立った。
「ギザッロ」に続いて登場した「コルマ・ディ・ソルマーノ」の上りが始まると、メイン集団からバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)がアタックして先頭グループに合流。モレマはそのままグセフらを引き千切るハイペースで上りを進み、低温の標高1124m「ソルマーノ」の頂上を独走で駆け抜けた。
メイン集団ではこの「ソルマーノ」でミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタック。しかし決定力を欠き、ジルベールを千切ることが出来ない。結局有力選手たちのアタックが決まらないまま、テクニカルな下り区間に入った。
この「ソルマーノ」の下りでレースは重要な展開を見せる。メイン集団からジルベール、ニーバリ、スカルポーニ、パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)が抜け出し、先頭のモレマをパス。ニーバリは濡れた落ち葉が敷かれた下りコーナーでスリップし、先頭グループとのコンタクトを失ってしまう。
「一緒に下りで飛び出した選手に中には、強い選手が沢山いた。でもピエモンテを連覇をしたことで大きな自信を得ていたんだ。ピエモンテ=ロンバルディア連勝の可能性について全く疑いをもっていなかった」。レース後にそう語るジルベールは快調に下りを攻め、ゴールまで25kmを残して独走状態に。
後続のスカルポーニが何とかジルベールに追いつき、45秒遅れでニーバリ、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)ら8名が追走グループを形成する展開。
しかし追走グループは上手くローテーションが回らず、先頭2名とのタイム差は広がるばかり。ゴール5km手前の「サンフェルモ・デッラ・バッターリア」に差し掛かる頃には、1分15秒までタイム差が広がった。
降りしきる雨の中、狭くて急勾配の「サンフェルモ」を駆け上がるジルベールとスカルポーニ。薄暗いこの上りで、ジルベールがアタックを仕掛けるとスカルポーニが脱落。まさに王者の風格。悠々と独走に持ち込んだジルベールが、2年連続でコモのゴールに先頭で飛び込んだ。
最終的にスカルポーニを12秒、追走グループから飛び出したラストラスを55秒引き離して勝利したジルベール。直前のジロ・デル・ピエモンテとこのロンバルディアの連勝は昨年のデジャヴだ。
「独走でロンバルディアを制するなんて稀なこと。説明出来ないほど嬉しいよ。今日は他のレースと似て非なる闘いだった。過酷なレースの最後に、こうして単独でフィニッシュラインを駆け抜けるのは最高の喜びだ」。
ジルベールはこれが今シーズン6勝目(アムステル・ゴールドレース、ツアー・オブ・ベルギー区間優勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝、ジロ・デル・ピエモンテ)。その他にもヘント〜ウェベルヘム3位、ロンド・ファン・フラーンデレン3位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位、フレーシュ・ワロンヌ6位、ミラノ〜サンレモ9位という好成績を残している。シーズンを通してこうしてワンデークラシックで結果を残している選手は他にいない。
「今日は無線機を使っていなかったので、チームカーで並走するダミアーニ監督に何度も後続とのタイム差を聞きながら走った。オメガファーマ・ロットのチームメイトたちには大変感謝している。こうして勝利出来たのは彼らの働きのおかげ。今日の勝利は一生の思い出になりそうだ」。
ロード世界選手権とパリ〜トゥールでは思うような結果を残せなかったが、見事な2年連続ピエモンテ=ロンバルディア連勝で報いた。シーズン終盤は誰にも止めることの出来ないほどの勢いがある。来シーズンもワンデークラシックで派手に暴れ回ってくれるに違いない。
選手コメントはレース公式サイトより。
ジロ・ディ・ロンバルディア2010結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 6h46'32"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +12"
3位 パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ) +55"
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク) +1'08"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +1'12"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル) +2'07"
8位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム) +3'01"
9位 カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ) +3'25"
10位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'50"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla
晩秋のロンバルディア州を駆け抜けるジロ・ディ・ロンバルディアは、通称「落ち葉のクラシック」。色づいた樹々に覆われたアップダウンコースを駆け抜ける難易度の高いクラシックレースであり、由緒正しき「モニュメント(5大クラシックの総称)」の一つに数えられる。
今年はスタート地点が26年ぶりにミラノに戻され、距離が260kmに延長。しかも終盤に「コルマ・ディ・ソルマーノ」という距離の長い上りが追加されたことで、コースの難易度が増した。更に追い討ちをかけるように、低い気温と冷たい雨が過酷なレースコンディションをもたらした。
大都市ミラノをスタートしたのは195名。北上してコモ湖に向かうにつれて天候は悪化し、レース後半には本降りに。最終的に34名だけが完走するというサバイバルレースが繰り広げられた。
15km地点で逃げを試みたのはミハエル・アルバジーニ(スイス、チームHTC・コロンビア)やキェール・カールストローム(フィンランド、チームスカイ)ら6名。この逃げグループは最大8分46秒のリード(50km地点)を得た。
レース後半に入ると、本降りの雨が落車を誘発した。特に、175km地点のレッコに向かう標高差500mのダウンヒル区間で落車が多発。
先頭グループではトニー・ギャロパン(フランス、コフィディス)とジャンルーカ・ミレンダ(イタリア、ISD・ネーリ)が落車で遅れ、メイン集団でもダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)が滑りやすい路面の餌食になってしまう。悪天候が荒れたレース展開をもたらした。
落車によって4名に絞られた先頭グループは3分のリードを保ったまま「マドンナ・デル・ギザッロ」の上りへ。
ここで先頭はアルバジーニの独走状態となり、オメガファーマ・ロットが牽引するメイン集団からはウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD・ネーリ)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、ケースデパーニュ)がアタック。ギザッロ教会が佇む上りの頂上通過後、アルバジーニに代わってこの3名が先頭に立った。
「ギザッロ」に続いて登場した「コルマ・ディ・ソルマーノ」の上りが始まると、メイン集団からバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)がアタックして先頭グループに合流。モレマはそのままグセフらを引き千切るハイペースで上りを進み、低温の標高1124m「ソルマーノ」の頂上を独走で駆け抜けた。
メイン集団ではこの「ソルマーノ」でミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタック。しかし決定力を欠き、ジルベールを千切ることが出来ない。結局有力選手たちのアタックが決まらないまま、テクニカルな下り区間に入った。
この「ソルマーノ」の下りでレースは重要な展開を見せる。メイン集団からジルベール、ニーバリ、スカルポーニ、パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)が抜け出し、先頭のモレマをパス。ニーバリは濡れた落ち葉が敷かれた下りコーナーでスリップし、先頭グループとのコンタクトを失ってしまう。
「一緒に下りで飛び出した選手に中には、強い選手が沢山いた。でもピエモンテを連覇をしたことで大きな自信を得ていたんだ。ピエモンテ=ロンバルディア連勝の可能性について全く疑いをもっていなかった」。レース後にそう語るジルベールは快調に下りを攻め、ゴールまで25kmを残して独走状態に。
後続のスカルポーニが何とかジルベールに追いつき、45秒遅れでニーバリ、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)ら8名が追走グループを形成する展開。
しかし追走グループは上手くローテーションが回らず、先頭2名とのタイム差は広がるばかり。ゴール5km手前の「サンフェルモ・デッラ・バッターリア」に差し掛かる頃には、1分15秒までタイム差が広がった。
降りしきる雨の中、狭くて急勾配の「サンフェルモ」を駆け上がるジルベールとスカルポーニ。薄暗いこの上りで、ジルベールがアタックを仕掛けるとスカルポーニが脱落。まさに王者の風格。悠々と独走に持ち込んだジルベールが、2年連続でコモのゴールに先頭で飛び込んだ。
最終的にスカルポーニを12秒、追走グループから飛び出したラストラスを55秒引き離して勝利したジルベール。直前のジロ・デル・ピエモンテとこのロンバルディアの連勝は昨年のデジャヴだ。
「独走でロンバルディアを制するなんて稀なこと。説明出来ないほど嬉しいよ。今日は他のレースと似て非なる闘いだった。過酷なレースの最後に、こうして単独でフィニッシュラインを駆け抜けるのは最高の喜びだ」。
ジルベールはこれが今シーズン6勝目(アムステル・ゴールドレース、ツアー・オブ・ベルギー区間優勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝、ジロ・デル・ピエモンテ)。その他にもヘント〜ウェベルヘム3位、ロンド・ファン・フラーンデレン3位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位、フレーシュ・ワロンヌ6位、ミラノ〜サンレモ9位という好成績を残している。シーズンを通してこうしてワンデークラシックで結果を残している選手は他にいない。
「今日は無線機を使っていなかったので、チームカーで並走するダミアーニ監督に何度も後続とのタイム差を聞きながら走った。オメガファーマ・ロットのチームメイトたちには大変感謝している。こうして勝利出来たのは彼らの働きのおかげ。今日の勝利は一生の思い出になりそうだ」。
ロード世界選手権とパリ〜トゥールでは思うような結果を残せなかったが、見事な2年連続ピエモンテ=ロンバルディア連勝で報いた。シーズン終盤は誰にも止めることの出来ないほどの勢いがある。来シーズンもワンデークラシックで派手に暴れ回ってくれるに違いない。
選手コメントはレース公式サイトより。
ジロ・ディ・ロンバルディア2010結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 6h46'32"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +12"
3位 パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ) +55"
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク) +1'08"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +1'12"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル) +2'07"
8位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム) +3'01"
9位 カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ) +3'25"
10位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'50"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla
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